欲望にはチュウジツに!   作:猫毛布

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本当に遅れました。申し訳ありません。
何度か書き直しをしていたらこんな時間になってしまいました。

息抜き(8000字

読み直しもしてないので、誤字などあればお気軽に言ってください。

主人公のISは登場しましたか?(小声


ヘタレの置物に餌を与えないでください

「夢だ、きっとコレは夢なんだ……ハハ、ハハハ……」

 

 ぐったりとした俺は覚束ない足取りで寮へと戻ってきた。その左手薬指にはしっかりと指輪が嵌っている。

 俺のISの待機状態なのだが、どうしてかソコに納まってしまった。女の子が寄ってこない理由になるじゃねぇか。

 フィッティングと初期設定の終わった俺は武装を確認して思った。作ったヤツの頭は絶対にオカシイ、と。少なからず白式を作ったヤツと似たような思考で、ソレでいてソレよりもぶっ飛んでいる事は確かだった。極論にも程があると思う。

 いや、冷静に考えれば俺には過ぎたモノなのだ。だから返品とかって出来ないッスかね? へ? あ、政府の命令? ソウデスカソウデスカ。

 そんなこんなで何度も吐き出した溜め息をもう一度吐き出して俺は部屋の前に到着した。

 俺の目の前には三角座りをしているヘタレの置物がある。その置物に供える様にお菓子が並んでいるのだからもしかしたら結構な時間ココにいたのかも知れない。

 

「ん、おかえり。穂次」

「帰れ。俺は寝るんだ。俺は今すぐ寝てこの夢から覚めるんだ!」

「落ち着け!? ココが現実だ!」

「お前!? 今の俺には決して言ってはいけない事を言ったな……! もういい! ヘタレのいる部屋になんて居られるか! 俺はオルコットさんに慰めてもらいに行く!」

「それ死ぬヤツだから! サスペンスとかで絶対に次の朝には死んでるヤツだから!」

「ええい、離せ! ヤメテ! 襲われる!」

「変なこと言うな!? お前、また変な噂立ってるんだぞ!?」

「知ってるよ! その変な噂の発生源が誰だと思ってるんだよ! 全部知ってるに決まってんだろ!」

「お前かよ!! よくわかんないけど、俺が攻めでお前が受け? とか言われてるんだぞ!? なんだよ!? 攻め受けって! 普通攻めの反対は守りだろ!」

「お、おう……お前は知らなくていい世界なんだぞ……主に心の安寧の為に」

「……そんなヤバイ情報なのか?」

「心が弱ければ自殺するレベルには」

「お、おぅ……」

「まあ、入れよ。今更遠慮する事なんてないだろ。俺とお前の仲じゃねぇか。 今夜は、寝たいです……」

「ホント、疲れてるんだったら冗談とか言うなよ」

 

 無理。冗談言わなきゃそのままベッドにダイブしてる。そのまま明日の朝、というか夢の世界から脱出している事だろう。きっと現実の俺はオルコットさんに膝枕されて甘えている筈だ。そんな現実があってほしい。

 部屋の中へと案内してグラス二つとお茶のペットボトルを準備する。

 

「ん? 左手のソレ……?」

「俺のIS。ハハハッ、俺を離したがらないのか左手の薬指に納まりやがった。イヤー! モテる男ってのは辛いナ!」

「お、おう……泣いてもいいんだぞ?」

「誰が泣くかよー。マジで、俺のISチョースゲーから、マジで。 イヤー、コレで白式なんてメじゃナイネ! ……はぁ」

「おお……お前がココまで落ち込んでるの初めて見たかも知れないな」

「クラスの皆には内緒ダヨ! ……結構取り繕って頑張ってっけど、なんかドッと疲れがきた感じ」

「ホント、大丈夫か? 何があったんだよ」

「……一応、政府のあれやソレだから内容は言えない」

「あー、そういえばそんな事言ってたな……」

「ちなみに感想だけ言ってやろう。死ぬ」

「いや、ISに乗った感想でソレってどうなんだよ。安全は確保されてるだろ?」

「一夏。安全が確保されてるからって危険に飛び込むのはオカシイよな?」

「ま、まあ、そうだな」

「そういう事だ」

「どういう事だよ……」

「IS着用して怪我しないから織斑先生を馬鹿にしにいく感じ」

「いや、千冬姉はIS着てても無意味だから」

「お、そうだな」

「アッハッハッハッ」

「ハッハッハッハッ」

 

「「はぁ……」」

 

 同時に溜め息を吐き出した所でこの話は全てなかった事になった。夢なのだから、元々ありはしないのだけれど。

 

「つーか、普通に夜半に俺の部屋に用ってなんだよ」

「あー……まあ、聞いてくれ」

「待て待て。ハッハッ、分かったぞー、凰さんに怒られたなー」

「なんで分かったんだよ」

「マジか……かなり冗談で言ったんだけどアタリかよ。昨日の今日でお前何したんだ?」

「俺は何もしてない……事もないんだろうけど」

「アッハッハッ、どうせアレだろ? またラッキースケベを巻き起こしたんだろぉ? 死ね。死んでしまえ。もしくは今すぐ篠ノ之さんのブラの色を教えるんだ」

「なんでそうなるんだよ」

「んで、どうしたんだよ。何があったかわかんねーから、何も言えん。つーか、何も知りたくないってのが俺の本心だ」

「助けてくれよぉ」

「どうせお前が悪いのは目に見えてるけど、一応聞いといてやろう」

「まあ……。 事の始まりは――」

「お前が悪い。ハイ可決。ほらさっさと謝って来い。おやすみ」

「早ェよ! まだ何も言ってねぇよ!?」

「はいはい。とりあえず、全部言ってみろ。言うだけで意外にスッキリするかも知れねーし、自分で気付くかも知れないだろ」

「お、おう……なんか今日の穂次は頼れるな。ずっとそうなら印象もいいと思うぞ?」

「ハイハイドウモ。さっさと話せ唐変木」

「酷くないか? まあ、えっとだな――」

 

 

 話を簡単に纏めよう。

 凰さんが一夏の部屋に同棲を求めたら元々居た篠ノ之さんが反発。もう一緒に住むでいいんじゃないッスかね? という発言を抑えた俺を褒めてやりたい。

 それで凰さんが幼い頃に交わした約束の事を言い出し、一夏はソレを確認の為に口にしたそうだ。「鈴の料理の腕が上がったら毎日酢豚を奢ってくれる」という約束らしい。この時点で俺は頭を抱えた。そんな抱えた頭をどう思ったのか一夏は補足するように凰さんのご自宅が中華料理店であるという事を説明してくれた。ソコじゃない。ソコじゃないぞ、織斑一夏。

 

「――という訳だ」

「お前が悪い。ハイ閉廷! おやすみ」

「待て待て! どうしてそうなるんだよ!? 箒にまで馬に蹴られて死ねとか言われたんだぞ!?」

「俺は毎日死ねって言われてるわ! クソが、珍しくお前が本気で考えてると思ったら惚気話かよ! 死ね! マジで死ね!」

「今の話のドコに惚気要素があったんだよ!? 俺が怒られた話しかしてないだろ!」

「あーあー、アレですか? ISにしかモテない俺へのあてつけッスかね? 俺って人間の女の子にこんなにモテてるんダゼって」

「どうしてそうなったんだよ!? お前、今の話聞いてたのか!?」

「一言一句間違いなく聞いてましたー! かなーり嫌々だったけど聞いちゃいましたー! つーか、凰さんかなり怒ってただろ……泣いてたもありえるぞ、ソレ」

「お、おう……やっぱアレって泣いてたのかな」

「絶対泣いてる。あー、一応言っとくけど、泣いたのか? とか確認は絶対取るなよ」

「? なんでだ?」

「凰さんの性格考えてみろよ。泣いてたとしても泣いてないとか言って意地張りそうだろ」

「……なるほど」

「つーか、どうして凰さんとの付き合いの長いお前が高々一日話した程度の俺に諭されてるんですかね……」

 

 コレがワカラナイ。

 凰さんが不憫でならないし、篠ノ之さんと並んで俺の中で不遇さが増してきた。いたたまれない、というのはこういう時に使うのだろうか……。

 

「んじゃ、馬鹿な織斑一夏君の為に一つずつ解決していくゾ☆」

「穂次に馬鹿って言われた……」

「ん?」

「よ、よろしくお願いします?」

「ヨロシイ。では先ず一番大切なところを初めにしよう。お前、約束を間違ってるぞ」

「は? いやいや、約束は合ってるって。ちゃんとした」

「内容がたぶん違うと思うぞ。実際にそこに俺がいた訳じゃねぇけど、聞く限りの凰さんの反応を考えると、間違ってる」

「まさか」

「お、気付いたか」

「酢豚じゃなかったのか……」

「なあ、ふざけるなら俺寝るよ? 今日はもう疲れてるんだよ。寝たい中、お前の惚気話聞かされて、こうやって説教もして、わざわざ説明も入れてるんだぞ? 俺って優しい! はい復唱ッ!」

「俺って優しい!」

「違う! 確かに復唱されたけど圧倒的に違う!」

「お、おう……すまん」

「まあいいけどさー。とにかく、冗談はいいんだよ。この際、酢豚か味噌汁かボルシチかスコーンかパスタかはどうでもいい。なんでも一緒だ」

「そうなのか?」

「ああ。つーか、コレを俺が言っていいのかわからん、つーか、言うと俺が漏れなく全力蹴りされるし嫌われるから核心には迫らないぞ」

「ん、ダメなのか?」

「別に蹴られるのはいい。全力で蹴られるのもいい。いっそ踏まれるのも構わない。つーか踏まれたい」

「オカシクなってきたぞ」

「……まあ、核心を語らずして上澄みだけを言えば、凰さんはお前と仲よくなりたいんだよ」

「今も仲はいいだろ」

「あー、まあ、そうなんだろうけど。ほら、仲がよくても俺らみたいに二人きりでゆっくり話す機会とかもないだろ?」

「そりゃぁ……男と女だから仕方ないんじゃないか?」

「あのさぁ、お前って俺のこと馬鹿にしてる?」

「なんでそうなるんだよ」

「なんでそこまで分かってんのに重要な所で抜けてるんだよ! 馬鹿なの!? いいや、お前は馬鹿だ! バーカ! バァァァアアアカ!!」

「うっせぇ! 馬鹿って言う方が馬鹿なんだよ! 馬鹿!」

「やーい、お前も馬鹿って言ったぁ! お前の方が馬鹿なんだよぉ!」

「もういい! 帰る!」

「おう帰れ帰れ! ちゃんと考えて凰さんには謝るんだぞ!」

「わかってるよ! 馬鹿野郎! ちゃんと寝ろよ!」

「おう! おやすみ馬鹿一夏!」

「おやすみ馬鹿穂次!」

 

 扉が閉められた。肩を落として溜め息を吐き出してしまう。

 凰さんには冗談の上とはいえ、協力すると言ってしまったのでそれなりに手は出すつもりだ。まあアレで一夏が察してくれるとは思えない。察するようならきっと凰さんも篠ノ之さんも苦心しなくてよかっただろう。

 無理だろなぁ、と考えて苦笑する。

 戻って来た時よりも幾分か気分はよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 五月。徐々に気候も暖かくなり、長袖で厚手の制服もきっと夏に差し掛かれば薄手の制服になる事を願い心の躍る季節でもある。

 日本という国に四季があってよかったと本当に思う。春は初々しい女生徒、夏は水着美女、秋はスポーツ女子に冬には寒さに顔を赤くした女性がそこらに居るのだ。尤も、冬にはクリスマスとかバレンタインだとか、そんな日があった様な気もする、いいやなかったな、ないない。

 

「それで、夏野さんのIS調整はまだ続きますの?」

「らしいッスねー」

「そうですか。残念ですわ……」

「いやー俺も残念だわ……オルコットさんのISスーツ姿を長い間見れないなんて」

「せっかく名分を得てボコボコに出来ると思いましたのに、本当に残念ですわ」

「うわー、コレはマジなヤツですわ……」

 

 ISを所持してから数週間経過した。ある程度の日数を開けてオルコットさんや一夏から訓練(と称した俺虐め)に誘われているが俺はその全てを断っていたりする。表向きの理由はISの調整の為。実際はISに問題などない。かと言って俺が三人の訓練に付き合う事を嫌がっている訳でもない。むしろ、篠ノ之さんがISスーツを着てる事を聞いて見に行ったぐらいだ。

 当然の様に「いいおっぱいッスね!」と褒めた俺に対してかなり本気で刀を振りかぶっていた篠ノ之さん。そしてビットを飛ばしてきたオルコットさんにはちゃんと「オルコットさんも素敵な太股ですね、最高ッス!」と言ったのだが、そこから二日ぐらい目も合わしてもらえなかった。解せぬ。

 

「まあ、今日はアリーナに顔を出してから織斑先生の手伝いするし」

「お、今日は来るんだな」

「お前の姉が俺に色々頼まなきゃ毎日行ってるよ」

「……動機は不純じゃありませんよね?」

「一夏の特訓だろ? 手伝えないけどデータ取りぐらいは出来るぞ」

「そうですか……流石の夏野さんでもわかっていましたか」

「データ取りのついでにオルコットさんと篠ノ之さんを録画するのも忘れないぞ!」

「…………死んでもよろしくてよ?」

 

 死んだ家畜を見るような瞳が俺に突き刺さる。最近はこの視線にもなれて、こう、よくわからないけれど、ゾクゾクするようになった。人間、慣れると凄い事になるんだな。

 へらへら笑いながらエレクトしそうな思考を誤魔化していれば一夏が何かを疑問に感じたようで首を傾げている。それは可愛い女の子だけに許された行為なんだぞ! カッコいいお前がやっても絵になるのが非常に苛立たしいけどな!

 

「というか、毎度思うんだけど。なんで穂次って千冬姉の命令に従ってんだよ」

「おまっ!? あの人に逆らえって言うのかよ……さすがに命は惜しいぞ」

「え?」

「オルコットさん。その反応は何? 俺が命を惜しいことに驚いてるの?」

「てっきり夏野さんは死んでも復活するものと……復活しませんの?」

「この美少女って日本を覚える為にギャグ漫画とかで勉強したんですかね? ギャップはあるけど萌えるヤツじゃないぞ……」

「違う違う。俺が言いたいのは千冬姉の手伝いを率先してやってるみたいだったから」

「ほら、俺って、信☆頼、されてるジャん?」

「使い勝手がいい、の間違いじゃありませんこと?」

「ヒエッ……人を奴隷みたいに言いやがって」

「わたくしが使ってあげてもよろしくてよ?」

「奴隷でいい」

「お前ってプライドないんだな」

「いらないプライドなんて捨てた。俺はオルコット様の奴隷になるんだ!」

「プライドのない方はお断りですわ」

「フンッ、誰が貴様なんぞの奴隷になるか。俺以上の存在など天上天下に在る訳がないだろう、ハーッハッハッハッ」

「忙しいな、コイツ」

 

 決して忙しい訳ではない。コロコロと意見を変えているだけだ。

 さて、本当にオルコットさんの奴隷になれるんですかね? お仕置きよッ! とか言われて踏まれたり折檻されたりするんですよね! 今から楽しみだな! あ、されない? 知ってた。知ってた……。

 

「む、今日は夏野も一緒か」

「ってもデータ取りだけどなー。ISは調整中だし」

「……そうか」

「ん、不満そうな顔デスネ篠ノ之さん……。ハッ!? ま、まさか篠ノ之さんも俺をボコボコにしたいとか言い出すんじゃ!?」

「失礼なヤツだな。私がお前にそんな事を言うと思うか?」

「ほら、オルコットさん。コレが大和撫子というヤツですよ。実に素晴らしい」

「お前の事は唐竹割りにしたいと常々思っているんだ。ボコボコで済む訳がないだろう」

「ヒェッ……大和男児(ヤマトオノコ)もビックリの発言だぁ」

「よかったですわね、夏野さん」

「いったいドコにイイと言える言葉があったんですかね? 戦々恐々なんですがソレは……」

「死んでも生き返れることが証明できますわよ?」

 

 俺がギャグ漫画世界の住人だったとしても次のコマがこない世界だから甦らないんですよ! オルコットさん!

 キョトンとして可愛い顔してるからソレを眺めることの方が重要だから何も言わないけどね!

 俺を散々弄って気が済んだのか、二人はいつもの様に「中距離射撃型の戦術は一夏には無駄だー」や「IS使わない訓練とか意味ないですわ!」なんて言い合いをしている。いつもの事である。

 俺から言わせて貰えるならば両方とも一夏には必要な事だと思う。いや、剣術的なことはさっぱりだけど。そもそもオルコットさんはISの操縦関係を中心に教えているから別に戦術法を説いている訳では無いし、篠ノ之さんの剣術関係も刀だけしかない一夏にとっては必要になる事だろう。

 本当に美少女二人に教えてもらってる一夏を見ていると思う。

 

「なあ、一夏。お前っていつ死ぬんだ? 葬式とかいつ? 花火あげるから予約取らなきゃ」

「なんで俺が死ぬ前提で話をしてるんだよ!」

「お前死なないのか……オルコットさん! ギャグ漫画の住人はココに居ますよ!」

「は? 何を言ってますの?」

「あ、スイマセン何でもナイデス」

「あー、うん穂次。今のは流石に同情する」

「男の同情なんて要らないんだよ。薄い本が厚くなるだろ!」

「それも意味がわからないんだけど……」

 

 やいのやいのと騒ぎながらようやくアリーナへと到着した。圧縮空気の抜ける音を伴って開いた扉の置くには小さな陰。

 

「待ってたわよ、一夏!」

「えっと、ゴメン。凰さんって待ち伏せ癖か何かでもあんの?」

「ないわよ。失礼ね」

「あ、そうッスか……」

「それで、一夏。反省した?」

「……ああ、俺が悪かった」

 

 一夏の言葉に幾分か満足したような凰さんを見て心のどこかで安心する。尤も隣からスゲー怖い何かが伝わってきてるから何も言わないけど。オルコットさんまで珍しく俺の近くで怯えてるし。実にいい匂いだ。イイゾ、もっとやれ篠ノ之さん。

 篠ノ之さんになんでか睨まれた。サトリ妖怪か何かなのだろうか。それとも俺の思考って頭の上辺りに括弧付きで吹き出しと一緒に出てるとか?

 

「わ、わかればいいのよ」

「穂次に相談して色々と考えたんだ――」

「え?」

「あ……」

 

 ん、コレはマズイぞ。ヤバイ。かなりヤバイ。俺の心の警鐘がガンガンと鳴っている。

 少しだけ照れた様に赤くなっていた凰さんの顔が真っ青になり、俺の方を向いてる。そりゃぁ、凰さんからすると、きっとかなり勇気が必要だった告白を赤の他人、それも冗談に産み落とされた様な俺に知られたのだから気が気じゃないだろう。

 

「それで、穂次に説教されたんだよ。俺はお前の事をよくわかってなかったんだって」

「え、あ、そ、そう」

「だから、俺との親交を深める為に、酢豚を作ってくれ――」

 

 満点である。あの状態の一夏にしてみれば最高の着地点だったと思う。これには凰さんもご満悦。というか顔が真っ赤になってる。いやー可愛いなぁ。隣で鬼が刀を構えてなけりゃぁ集中も出来たのに。その鬼に結構本気で怯えているオルコットさんは少し震えながら俺に寄ってるし。よーし、いいぞ! 鬼! もっと怒るのだ!

 

「――幼馴染、友達として」

 

 ガッデム。どうしてその言葉を付け加えてしまったのだ一夏よ。しかも日和ったのか、幼馴染の後に保険の様に友達と足しやがった。

 凰さんは凰さんで輝いていた目から輝きが消えて、プルプルと震えている。

 

「夏野穂次ィ!!」

「は、ハイ!」

「集合!」

「ういッス!」

 

 呼び出されたでござる。凰さんに近付く為に何度か深呼吸をしてなるべく早足で向かう。オルコットさんが俺に手を伸ばして涙目になっていた。本当に、お姫様みたいで凄い可愛かった。尤もソレが鬼との間にあった肉壁を求めているモノって事は気付きたくなかったけど。

 一夏よりも少し低い身長である俺よりも幾分か低い凰さんと一緒に一夏に背を向ける。一夏はかなり怪訝な顔をしていたけれどそんな事はどうでもいい。

 

「アンタ、一夏に何を言ったの?」

「別に普通の会話をしただけだぞ。つーか、一夏から話を聞いたけどゴメンね。流石に言いふらす気はないから」

「それは、その、ありがとう」

「ドウイタシマシテ。んで、先に言っとくけど、凰さんが一夏を好きって事は言ってないから」

「なっ!? あ、あたしは、その」

「あーハイハイゴチソウサマデス。んで、そこらを誤魔化しながら、二人で一緒に話す機会を増やしたら? って一夏に促した」

「夏野、優秀」

「アザッス! まあソコから先は頑張ってって事で」

「アンタ、凄いわね……あたしがどれだけ頑張ってもさっぱり動かなかった一夏をこんなに簡単に……」

「ま、そこは男同士だからって事で。一応、手伝うって言っちゃったからこの程度は、ね」

「夏野……アンタ、いいヤツね」

「惚れた? まさか恋しちゃいました?」

「そういう所がなければ本当にいいヤツなのに」

「ま、そこも含めて俺って事で」

 

 へらりと笑ってみせれば可笑しそうにクスリと笑みを零した凰さん。やっぱり可愛い女の子である。性格は随分と男らしいけれど、それも魅力なのだろう。

 

「それで、内緒話は終わったか?」

「ええ、もういいわ」

「何喋ってたんだよ」

「そ、それは……」

「クラス対抗戦で凰さんと一夏が戦うだろ? だから勝った方がなんでも一つ命令できるって約束をだな」

「なんでソレを俺じゃなくてお前がしてるんだよ! というか、なんでも一つ命令って――」

「何でも一つ命令できるだって!?」

「お前が言ったんだろ!」

「あ、そうか。いやぁ、是非とも凰さんに着てほしい服装があるから、頑張れ! 一夏!」

「いや、頑張りはするけど、お前の願いを通すのは絶対ないから安心しろ」

「なんでだよ! 凰さんにゴシックロリータとか着せたくないのか!? 絶対似合うぞ! 身長とかおっぱイッタイ」

「夏野、何か言ったかしら?」

 

 凄いいい音でお尻を蹴られてしまった。オホホホホ、だなんて口にしている凰さんは怒っている様な感謝しているような、微妙な表情だった。

 一夏の向こうにいる二人は汚物でも見るような視線をしていたような気がするが、きっと気のせいだろう。うん。そうに決まってる。




>>主人公のIS
 待機状態は左手薬指に嵌ったフィンガーバンド。色は黄色。
 武装面やパーソナルカラー、その他の設定などは盛り込むだけ盛り込んだので後は名前ぐらいです。いっそのこと村雨とかでもいい様な気がしてきた(震え声

>>ヘタレの置物
 もしくは唐変木の御神像。お菓子を備えると笑顔をくれる。
 ISで、みんなに笑顔に……

>>××のいる部屋にいられるか!
 死亡フラグの一つ。正確に書くなら
「殺人鬼のいる部屋にいられるか! 私は部屋に戻らせてもらう!」
「いえ、ここは大人数でいるほうが」
「鍵を掛けるから誰も入って来れないだろう。朝食になれば呼びに来てくれ」
 なお……。

>>薄い本が厚くなるだろ
 (百合要素は)ないです。

>>「集合!」「ういッス!」
 即時反応できる穂次はやっぱり異常だと思うの

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