エイプリルフール(遅刻組
本編とは一切関係が無いので、ご了承下さい。
コレはジョーク商品です(察し
織斑一夏は目を覚ました。
眉間を寄せた理由はカーテンから差し込む光が原因ではない。加えて、鍵を新調したからか、ラウラ・ボーデヴィッヒが全裸で布団に入っていなかったからでもない。
ややボヤケた頭でも分かるノックの音。それが何度も何度も繰り返され、一夏はアクビをしながら布団から出た。
一体誰だ? という疑問は当然頭の中にあった。ソレに自分の知り合い達を列挙しても部屋にノックして入ってくる様な知り合いはいない。ノックをしてくれるセシリア・オルコットやシャルロット・デュノアならばこんな早朝に来訪しないし、予めに連絡がある筈だ。
ノックをしない人間代表であるラウラならば既に部屋の中にいるし、箒なら扉は既に無い。鈴音ならノックしてくれそうだが、力加減を間違えて扉は無残な姿に変わっているかも知れない。
そんな寝ぼけた思考で妄想しながらも織斑一夏は少しだけ時間を掛けて鍵を開けた。
「ふぁぁ……誰だ? こんな時か――」
一夏の言葉が止まった。そこに居たのは見知らぬ女の子であった。いや、そもそも自分と夏野穂次を除けばこのIS学園に男性は居ない。だから女の子なのは当然だ。そこは問題じゃない。
女の子はシャツを着ていた。シャツに描かれた何かよくわからない――何かの破片からデフォルメされた犬が飛び出ているイラストが胸によって歪められている。胸の所為でシャツが上がっているのか臍が見え、引き締まった括れまで見えている。
男物のトランクスから伸びる瑞々しい太ももが僅かに揺れて、ようやく少女は顔を上げて一夏へと向いた。
艷やかな黒い髪が額を流れ細い眉が覗く。茶色の混ざる瞳は僅かに潤んで、少しばかり童顔な印象を受ける。数々の美少女を普通に見てきた一夏にも「可愛い女の子」と言わせるぐらいの美少女が居た。
「助けてくれ、一夏」
「…………は?」
たっぷりと間をとって、一夏はようやく声を出した。疑問の声であったけれど、声を出した。
対して少女はあたふたとして、纏まらない言葉をどうにか絞り出そうとした。あぅあぅと声には出なかったけれど。
ここ一年で結構な事件に見舞われた一夏はなんとなく察した。コレは厄介事だと。
「あー……何処から逃げ出した実験体か何かか?」
「違ぇよ! いや、実験体ってのは間違ってないかも知れねーけど!」
「じゃあ、アレだ。魔王様から逃げるお姫様とか?」
「簪さんじゃねーんだからいい加減に現実に戻ってこい! つーか、助けろください、この唐変木!」
「ヘタレに言われたく……ん? 穂次か?」
「どうしてソレで気付いた!? 俺は最初から言ってただろ!」
「言ってねぇよ。というか、マジで穂次なのか?」
「そうだよ、ホモのお前の友人してる夏野穂次だよ!」
「違うな」
「待て待て待て! 嘘だから、ホモじゃないから、助けて! 相棒!」
一夏は眉間を寄せた。確かに、なんとなく、この美少女が相棒である夏野穂次だと言える。ソレは自分の感覚によるものだから、なんとも確証はないが、確実に。
けれど、少なくとも、厄介事であることだけは一夏にはわかった。コレは確証を持って言えた。
「いや、マジで助かる」
「というか、その格好なんだよ」
「俺の寝間着だ」
「ダサいな」
「ソレはお二人にも言われたから……」
しょんぼりしながら紅茶を入れた穂次(♀)はカップを一夏と自分の前に置いてクッションの上に座った。
淹れられた紅茶を一口飲んで、一夏はようやく目の前の女の子が穂次である確証を得た。
「それで、なんでそんな姿なんだ?」
「起きたらこうなってた」
「……」
「目が覚めたらこうなってました!」
「言い方の問題じゃねぇよ! 原因とか心当たりとかあるだろ」
「マジで心当たりとかねーから……ハッ、まさか俺は元々女の子だった可能性が?」
「ねぇよ」
「だよな……」
「昨日何をしてたから一から言ってみろ」
「昨日……朝起きて、いつもみたいに過ごして……ん、そういえば」
「何かあったのか?」
「いや、いつもみたいに訓練終わった後に、ウサミミをしてる美女に出会って、疲労回復の薬を貰ってソレを飲んだぐらいだ。何も問題はなかった」
「ソレが問題だ。絶対ソレだ。というかソレしかねぇだろ!」
「おま、人の良心を疑うとか……」
「いいか、あの人の良心は自分が楽しければ何でもいいって言う自分に対しての良心だ」
「くっ……美女だから油断したぜ」
悔やんでいる様に指を鳴らした穂次に対して一夏は溜め息を出した。原因はわかった。その原因が明らかに解決させるつもりの無いモノだって事もわかった。
一夏は改めて穂次をチラリと見た。紅茶を飲んでいる姿はどうにも形になっている。シャツが残念でしか無いが。
そんな一夏に気付いたのか穂次はニンマリと笑いを浮かべた。
「一応言っておくけど、この胸は本物だぞ」
「なんで言ったんだよ……」
「胸ばっかり見てるからだ。ちなみに感度も良好だった」
「必要ない情報をありがとう」
「どういたしまして。俺の一日がオナニーで潰れそうだった事も教えておこう」
「なんでソレを言ったんだよ!? というかお前その姿でそんな事言うなよ!」
「うっせー! 女の子になったらとりあえずオナニーするだろ!」
「はぁっ!? なんでそうなるんだよ!?」
「テンパるだろ? どうしていいかわからなくなるだろ? おっぱい触るだろ? 興が乗るだろ? オナニーだ!」
「お前の思考がオカシイ事が証明されました! バーカ! バーカ!」
「フッ、俺は阿呆だ!」
「威張る所じゃねぇよ! というか、なんで俺に助けを求めに来たんだよ。ほら、セシリアとか、シャルとかいるだろ」
「…………」
二人の名前を出した途端に黙りこむ穂次。何か拙い事でも言ったのかと、一夏は少しだけ息を飲み込む。
「あの二人に今の俺を見せてみろ」
「……」
「絶対に着せ替え人形にして遊ぶか、襲われるに決まってんだろ!」
「お前のその自信は何処から来るんだろうな」
「この美少女を見ろ! 俺は男になったらとりあえず自分の身体で二発は抜くネ!」
「お前さ、そういう事言うのは止めようぜ、マジで」
「お、やんのか!? 見るか、素晴らしいこの肉体を」
「脱ぐな脱ぐな脱ぐな! というかブラジャーぐらいしとけよ!」
「俺がブラなんて持ってる訳ねーだろ!」
「おうソウダナ、でも脱ぐのは止めろ。俺は知ってるぞ、お前が脱いだら絶対に誰か来るんだ。たぶん、箒あたり」
「…………そうだな、脱ぐのはやめる」
「そうしてくれ」
どうしてかションボリした様子の穂次が紅茶を飲み直して、一夏が一段落したように溜め息を吐き出した。
それにしても脱ごうとした穂次の腹部は実に素晴らしかった。僅かに浮き出た腹筋は彼女が彼であった名残なのだろうか。いや、あまりこういう事を考えないでおこう。一夏は浮かんだ妄想を振り払う。
「紅茶のおかわりはいるか?」
「頼む」
「はいはい」
立ち上がり、鼻歌を奏でながらポットにお湯を注いでいく穂次の背中を一夏は眺める。むっちりとした太腿と男モノのトランクスを僅かに押し上げる臀部。
数秒ほど眺めて、ハッとした一夏は自身のタンスを漁り始める。
「どした?」
「ジャージを着てろ。寒いだろ」
「いや、別に」
「寒いだろ」
「アッハイ」
投げられたジャージを受け取り、穂次は数秒考えた。天井を向いて、ふむ、と唸った。
よっこいしょ、と声を出しながらシャツに手を掛ける。
「待て! どうして脱ぐんだ!」
「いや、ほら、裸ジャージの方が魅力的だろ?」
「なんで魅力を求めるんだよ! 男だろ、お前!」
「今は女だ!」
「そうだったな! でも上から着てもいいから」
「なんでだよ! いいだろ、裸ジャージ!」
「そういう事じゃねぇよ!? 男の俺が居るんだからせめて気を遣え」
「攻めて気を遣えって!?」
「圧倒的に何かが違う! 違うそうじゃない!」
「わかってるよ。安心してくれ」
「安心出来る要素は一切ないんだけど……」
「お前が襲ってくれるまで、私、我慢するから!」
「……死ね」
「ヒェッ……冗談だよ、冗談」
ヘラヘラと笑ってジャージを着ていく穂次を見て一夏は溜まった疲労を吐き出した。同時にヘラヘラと笑う穂次を見て、いつもの穂次を感じるので。やっぱりコレに性的欲求を感じる事なんて一生無いと思う。
まあコレが一生続くなんて事はないか。
と一夏が思い直した辺りでノックが響いた。穂次に目配せをしてから一夏は扉へと向かう。
数秒程掛けて鍵を開けて、扉を開く。そこに居たのは金髪だった。しかも、二人。
「おはよう、セシリア、シャル」
「うん、おはよう一夏」
「おはようございます、一夏さん」
「こんな朝から何か用か?」
「穂次いる?」
「部屋に行っても居なかったので」
「あー……居ないけど?」
「ホント?」
「ああ、嘘じゃない」
「一ヶ月分の食券をあげますわ」
「穂次なら部屋の中にいる」
「一夏ァッ! 裏切ったな!」
あっさりと裏切った一夏に対して声を荒げた穂次。その声に思考が停止したセシリアとシャルロット。それもその筈、今の穂次は女の子声であり、いつもの様な低い声ではないのだ。
「穂次さん?」
「穂次、なの?」
「ワタシホツギジャナイヨー」
「穂次さんですわね」
「そうだね」
「なぜバレた!?」
「お前って嘘吐けないよな……」
「くっ、俺は女の子になっちゃったんだ……もう一夏に嫁ぐしかないんだ!」
「どうしてそうなった」
「別にわたくしは穂次さんが女性になっても気にしませんわ」
「そうだね、別に何の問題もないね」
「へ?」
「むしろ勝手知りたる女性の身体と申しますか……」
「ほら、女の子って男の子より凄いらしいよ。薄い本で見た」
「HELP!! 一夏助けて! いけない扉開いちゃう!」
「もう開いた後だろ」
「アッサリしすぎぃ! ほら見て、相棒の俺が困ってるから! 助けてください!」
「俺の相棒は……くっ」
「生きてるよ! まだ死んでないから!」
「ほら、穂次行くよ」
「まって、シャルロットさん。俺は男だから」
「ウンソウダネー。大丈夫大丈夫。いつもとそれほど変わらないから」
「ふぇぇ……二人が俺を苛めてくるよぉ!」
「ああ、あんまりそんな顔をしないでいただけますか? こう……ソソります」
「わかるよ、セシリア」
「ヒッ……助けて一夏!」
「お前の事は忘れ……ん、君は誰だっけか?」
「いつかの仕返しかテメェっ!」
腕をしっかりと両方から組まれた穂次がズルズルと引き摺られていく。
扉が閉まり、一夏は疲れた様に息を吐き出した。
せっかくの休日を寝て終わらせるつもりは無いけれど、もう少しぐらい寝ても問題無いだろう。
アクビをして、一夏は布団の中に潜り込んだ。
ゆっくりと意識を手放していき、
一夏は目を覚ました。
カーテンから差し込む光でもなく、ラウラが居ないからでもなく、ノックの音で眉間を寄せた。
時計を見る。
一夏は溜め息を吐き出して、布団に潜り込んだ。
きっと全ては夢なのだ。
>>穂次(♀)
黒髪ショートの童顔美少女。それなりにおっぱいがある。揉める。
程々に肉感的で男性ウケする体型。足とかは揉めば筋肉が奥にあることをハッキリ分かるので、鍛えられてない訳じゃない。
因みに天性的にマゾっぽい。
原因としては皆大好き束さんの栄養ドリンク(意味深)が原因。やったぜ……!
>>その後に関して
この後無茶苦茶
>>穂次’sシャツ
破片……犬……飛び出、ウッ頭が!
>>あとがき
エイプリルフール遅刻組です。スイマセン。
この話を思いついたのは2日なので遅刻もいい所です。
いつぞやに「穂次が女になれば解決だなwwww(白目」みたいな事を言った御仁が居られましたので、女体化させた。私は悪くないゾ!
ぶっちゃけた話をすれば、前の話投稿後に書き始めたから一時間ちょっとで書き上げた事になるので、かなり興に乗っていた事は確か。もっと言えば百合百合した話も書きたかった。でも