いつもの様に、一応宣言しておきます。
さぁ、始めましょう。
俺は高鳴る動悸を押さえ込んで、深呼吸をする。目の前に建つ一軒家をしっかりと見据え、インターホンを押した。
数秒程して扉が開き、扉を開いた存在は俺の顔を確認した。流れる汗を拭うこともせずに、なるべく笑顔を浮かべて、少しの恥じらいを見せながら俺は口を開いた。
「来ちゃった☆」
バタン、と織斑家の扉は閉じられた。
俺はめげずにインターホンをもう一度押した。するとスゲー嫌そうな顔をした一夏が扉を開く。
「おいおい、閉じるなよー」
「いや、今のは誰でも閉じるだろ……」
「えへへ、来ちゃった☆」
「…………」
「待て待て待て! 閉じるな! 俺が悪かった! 暑いから入れてくれ」
「……はぁ、入れよ」
しっかりと溜め息を吐き出した一夏が苦笑を浮かべて、大きく扉を開いた。ココは織斑家。そう、人外魔境である。
「お前さ、今変なこと考えただろ」
「ひっ……やっぱり吹き出しが出てるんですかね……」
やっぱり一夏はサトリ妖怪か何かなのだろうか。いいや、それだと普段の唐変木な振る舞いが嘘になってしまう……。
いや、俺の考えが透けて見えるだけなのだろう。たぶん。
「というか、なんで息切れしてるんだよ」
「いやぁ、恋してる気持ちとか分からないからとりあえず心臓を高鳴らせる為に走ってみた」
「馬鹿だろ、お前」
「ああ!」
「肯定されても困るな」
「あ、コレはツマラナイモノですが」
「あ、どうも」
「駅近くで評判だったケーキと織斑先生にお酒な。ちなみにお前の好みは分からなかったから全種類を買ってきた」
「……は?」
「全種類だッ!」
「…………穂次ってやっぱり馬鹿だったんだな」
「まあ、全種類買ってきたのにはちゃんと意味があるんだぜ、相棒」
「一応、聞いとく。なんでだ?」
「クククッ、俺は貴様に復讐をする為に今日ココに来たのだっ!!」
「…………」
「スッゲー冷たい目をされてるんですが……だが、今日の俺は一味も二味も違う!! そう! 買ってきた三層のプリンの様に!」
「美味そうだな」
「ククク、織斑一夏! 俺は夏祭りに行く時に心の準備もなく美少女に囲まれるというちょっと嬉しいハプニングがあった! その仕返しをしてやる!!」
「……ああ、皆来るのか」
「ああ!」
「というか、ソレって今言うと意味無くないか?」
「…………」
「…………」
「おのれェ! 謀ったな! 一夏!」
「何もしてねぇよ」
「まあ冗談はココまでにして、一応冷蔵庫に入れといてください。いつ来るかわかんねーし」
「そうだな……というか、お前、走ってきたんだよな」
「フッ、恋心が知りたくてな」
「いや、ソレはどうでもいいんだけど。ケーキは無事なのか?」
「安心したまえ、織斑一夏。この夏野穂次、細心の注意を払い、ケーキの箱は揺らさずにダッシュをした。箱を開けてみればわかるだろう」
「……マジでズレてもないな」
「どうだ、スゴイだろー」
「おう。確かに三層のプリンが美味そうだな」
「あのさ、一夏。せめて話のキャッチボールはしようぜ」
穂次、悲しい。
シクシクと泣いている振りをしていれば冷蔵庫にケーキを入れたであろう一夏がグラスを持ってきた。
中には麦茶が注がれ、氷がグラスを鳴らす。
「麦茶でいいよな?」
「ありがとう。つーか、お前って熱いお茶派じゃなかったっけ?」
「そうだけど。他人に押し付けるような事でもないだろ」
「そりゃぁそうか」
グラスを持ち上げて、茶色の液体を飲み込む。冷たい液体が喉を潤し、冷たすぎたのか少しばかりの頭痛がした。美味しい。
「あー、美味い」
「走ってきたからだろ」
「恋心はさっぱり分からなかったけどな」
「それで分かると思ってるお前はやっぱり馬鹿なんだな」
「ふっ、天才にしか理解出来ない方法、と言ってくれたまえ」
「はいはい。じゃあ束さんに聞いとくから」
「本物を出されると困るんですがソレは……」
テキトーな会話をしながらお茶を啜る。幸い、と言うべきか、俺の到着は早かったようで他の五人が来るにはまだ時間があるようだ。
俺と一夏、二人だけの時間はまだ続くんだなって。まるでホモみたいな感情になってしまった。決して俺はホモではないのである。俺は善良に女の子が好きなのだ。おっぱいが好きなのだ。
ああ、おっぱい、素晴らしい。
「……あ」
「どうした? 穂次」
「織斑先生の部屋ってドコだ?」
「…………入ると殺されるぞ」
「安心しろ……俺だって命は惜しい」
「そうだよな……」
「布団に入って深呼吸するぐらいはバレないだろ」
「いや、バレる。穂次は千冬姉のことをまだ侮ってる」
「なんだよ、あの人。鬼か何かなのか?」
「
「ハッハッハッ、乙女って歳でも」
チャイムが鳴る。
俺と一夏は咄嗟に身構え、逃げる体勢へと移り、扉を注視する。いや、そんなありえない。あの人は今仕事中で、IS学園にいる筈だ。
一夏に視線を合わせ、力を抜く。ハハハ、ありえる訳が無いじゃないか。
「この話はココまでだ、一夏」
「ああ……。というか、なんで俺まで身構えたんだろ」
「連帯責任だよ、相棒」
へらりと笑ってみれば一夏は肩を落として溜め息を吐き出した。
そのまま疲れた様子を見せながら玄関へと向かった一夏を見送り、俺はのんびりお茶を啜る。美味しい。
扉を開く音が聞こえ、女の子達の声が聞こえる。目を閉じて、足音を感じていれば扉の開く音がし、瞼を上げる。
「アンタ、早いわねー」
「一夏の家って聞くとドキドキしちゃって、早く起きちゃった☆」
「キモいわよ」
「ああ、このツッコミが久しぶりに感じる……ハッ! コレが恋か!」
「はいはい」
「穂次さん?」
「ひえっ……どーしてセシリアさんはそんなに俺を睨んでるんですかね?」
「自身の胸に聞いてみればよろしいのでは?」
「……うーん、いや、アレはバレていない筈だし、それともアレか……いや、もしかして」
「どれだけヤマシイ事があるんだ、コイツは」
「いいかい、ボーデヴィッヒさん。生きている限り、人は隠し事をするのだよ」
「ラウラで構わない。なるほど……いい言葉だな」
「ラウラ、穂次の言葉を真に受けない方がいいよ?」
「そうなのか?」
「シャルロットさん、言い方が酷くないですかね……」
「夏野だから仕方ないだろう」
「篠ノ之さんも酷いッスよ!」
「む……そうか」
「いや、そこで引かれても落ち着かないんですが……」
もう一度、「……そうか」と呟いた篠ノ之さんを疑問に感じて、何かしたかと考える。少なくとも彼女との接触はあまりなかったと思うし、夏祭りの事を思い出しても、テキトーに煽っただけで屋台周りも別行動だったし……。
それにしては随分と変である。煽りの内容を思い出しても、いつもとそれほど変わらない。差し障りない、とは言えないけれど。
「……あー、この時間だし、全員昼食って食べてないよな? 人数多いし蕎麦でもするか。穂次、手伝ってくれ」
「ん、あいよ」
「わ、わたくしも手伝いますわ!」
「セシリアさんは座っててください! お願いします!!」
「……そこまで強く言われるとは思いませんでしたわ」
「悪気はないけど、他意もない。ま、まあ女の子達はついさっき着いたんだし、な、一夏」
「お、おう、そうだな」
「……そうですか。ではお言葉に甘えて」
セシリアさんが座ったのを確認して思わず息を吐き出してしまう。同じように安堵の息を吐き出した鈴音さんはコチラを向いて頷いた。セシリアさんを台所に立たせてはいけない……。備えよう。
◆◆
「と、言うか。アンタはどうしてこんなにケーキを買ってきてるのよ」
「そう言ってる割には顔がニコニコしてますよ、鈴音さん」
「パーフェクトよ、穂次」
「感謝の極み」
何も問題は無く蕎麦も食べ終わり、食後のデザートと言わんばかりに穂次はケーキの箱を開けてみせる。
ケーキの群を見て頬を緩める女子諸君。銀髪の少女だけは相変わらず表情は薄かったけれど。
「お前ら仲いいよな」
「まあ俺は鈴音さんの事好きだし」
「な、なんですって!?」
「ど、どういう事かな穂次!?」
「え? 俺って今変なこと言ったのか?」
「いや別に普通だったと思うけど」
迫ってきたシャルロットとセシリアから視線を外した穂次は一夏に助けを求めてみた。残念極まりないが、一夏にはさっぱり理解出来ない無い様である。相手が悪い。
穂次はスグに助けを求めるのを諦めて鈴音へと視線を向ける。その視線を受けた鈴音は溜め息を吐き出してしまう。
「穂次、コッチを向くとややこしくなるんだからちょっとは自重しなさいよ……」
「鈴音さん! どういう事か説明してくださるかしら!?」
「別に、普通のことでしょう? 友人として! ゆ、う、じ、ん、として好きってだけでしょ」
「いや、つーかソレ以外に鈴音さんを好きになれる要素がないんですが……」
「アンタ、今ドコを見て言ったか言ってみなさい」
「言うと殴られるから言わないッス」
「そ、そういう事でしたのね……オホホホホ」
「セシリアさんが変な笑いをしてるんですが……」
「今は放っておきなさい」
はぁ、と要領を得ない様に声を漏らした穂次はお茶を啜りながらケーキをボンヤリと眺める。
その後にセシリアを視界に収めて、パチクリ、と瞼を動かした。
「……あ。紅茶淹れないと」
「茶ならあるだろう、穂次」
「フッ、甘いな、ラウラさん。ケーキには紅茶で、紅茶を淹れるなら俺に任せてくれ! なんせ俺は紅茶淹れのタツジンだからなッ!」
「……セシリア。アンタ、アレに何かしたの?」
「ど、どうシてわたくしでスの?」
「変に声が裏返ってるわよ」
「セシリア、何かしたのかなー?」
「しゃ、シャルロットさん。笑顔が、笑顔が怖いですわ!」
セシリアはシャルロットから目を逸らし、ちょうど視線の先に居てしまった一夏に向く。
一夏もその視線に気付いた様で持っていた湯呑みを机の上に静かに置いた。
「穂次! 俺も手伝うぜ!」
一夏は逃げ出した。それはきっと正しい選択だったに違いない。少なくとも、誰も咎めはしないだろう。
「酷いなー。でも抜け駆けはもっと酷いなー」
「ぬ、抜け駆けじゃありませんわ。そ、そう! 交友を深める為のお茶会であって」
「ふーん……いいなぁー」
「そ、それを言いますと穂次さんと一緒に寝泊りしてたシャルロットさんに言われたくありませんわ!」
「スゴイ惚気合戦ね」
「私たちも嫁の話をしている時は大概じゃないのか?」
「ラウラ、ソレは言わない約束だ」
「ん? そんな約束はした覚えがないが……」
「じゃあ今からの約束よ」
「そうか。むぅ……わかった」
「スゲー向こうが姦しいんですが……一夏が逃げ出すのも理解出来るな」
決して話の内容を頭の中に入れない様にしてた穂次がお湯を沸かしながら言葉を漏らした。やいのやいの、と内容自体は聞こえないけれど騒がしいのは伝わるのである。
隣にいる一夏は可哀想なモノを見るように穂次を見て溜め息を吐き出した。お前も一緒なんだぞ、とココに他の人物が居たならば言った事だろう。
「それにしても、お前って箒のことが苦手なのか?」
「俺が篠ノ之さんの事を? なんでだよ」
「ほら、他の皆は名前で呼んでるし」
「コレでもちゃんと名前を許されてから呼んでる訳で。許されなけりゃ呼べねーだろ」
「変に律儀だよな、穂次って」
「普通だろ。つーか、俺からよりも篠ノ之さんが俺に苦手意識持ってるんじゃねーの?」
「……そうなのか?」
「なんつーか、変に距離を感じるからなぁ……やっぱりおっぱい触らせてとか言うのが悪いのだろうか……」
「いや、ソレは悪いだろ」
「くっ……じゃあお尻にするしかないか」
「余計に悪くなった気がするぞ……」
冗談の様に言っているが、一夏は箒が変に穂次を意識している事は分かっている。何か理由がある、という訳ではないけれどなんとなく、そんな感じがするというだけなのだが。それでも一夏は確信を持って言える程度には分かっていた。
遠慮もなく、ベシンベシンと穂次を叩いていた箒が穂次をまったく叩かなくなったのだ。……いや、こうして見ればいい方向に転がっているのだが……。
「何かしたとかないのか?」
「普段してるような事以外はさっぱり」
「……その普段してる事が問題なんだな」
「いや、ソレだったら前からだろ……なんか臨海学校終わった時辺りから変になったんだけど」
「臨海学校か……」
「あ!」
「わかったのか?」
「篠ノ之さんの水着みるの忘れてた……」
「お前な……」
「でも臨海学校での接点ってあんまり無いぞ? まさか臨海学校であんまり構わなかったからか?」
「それは違うと思うぞ」
「んー……じゃあマジで思いつかん」
「……そうか。まあお前が箒のことを嫌いとかじゃなくてよかったよ」
「むしろ好きな部類なんだよなぁ」
「今ならお前の考えてることを一言一句間違わずに言えそうだよ、相棒」
ヘラリと笑った穂次を見た一夏は疲れたように溜め息を吐き出してカップを用意し始めた。
「なんだ騒がしいと思ったらお前たちか」
「ヒッ……」
騒がしくも楽しい時間を過ごして数時間。バルバロッサという色粘土で何かの形を造り、その何かを当てるというボードゲームを興じていた七人は開かれた扉を見て、私服姿の織斑千冬に暫し見惚れる。一名だけ怯えたように声を出していたが。
その怯えた声をした人物を睨んだ千冬が口を開く。
「……怯えるという事は、何かを仕出かしたんだな、夏野」
「いえ、そんな、滅相もありません! お、織斑先生。きょ、今日もお美しいです!」
「……まあいい」
「そういえば穂次がお酒買ってきたって」
「ふむ……ソコの紙袋か」
「織斑先生に合うモノを買ってきましたよ!」
「……ほう、コレが、か」
紙袋から取り出したる瓶。
そのラベルにはイヤに達筆で二文字。『魔王』と描かれている。
肩を揺らす六人。噴出さなかった事は不幸中の幸いであろう。
買ってきた本人は冷や汗をダラダラと流している。決して他意はなかったのだ。本当に焼酎もいける口である事は夜の鍛錬で知っていた。だから少しばかり値の張るモノを買ってみた、それだけなのだ。
まさかこんな言い回しになるなんて、穂次は予想してなかったのだ。
「お前がどう思ってるか、よくわかったよ、夏野」
「ヒッ、魔王様! ち、違うのです!」
「ぶはっ」
「ひっ……ふふ」
「お腹痛いッ」
「ッ、……ッ」
「息ッ、息出来ないッ」
絶対零度の睨みと口をスラスラと滑らせる穂次。その後ろには笑いを必死で堪える六人。いいや、堪えているとは最早言いがたい状態なのであるが、ソレはいいだろう。
あれよあれよと墓穴を掘りまくる穂次とソレを淡々と聞いている魔王様。そして外野はその状況に腹筋を引き攣らせている。
「まあいい。ああ、一夏。私は今日は帰らないから好きにしても構わない。ただし、女子は泊まるんじゃないぞ」
「わ、わかったッ」
「あと、夏野。ノってやったのだから他にも何か買ってくるように」
「了解ですッ!」
「……ただし、次は無いからな」
「ハイッ!」
バタン、と扉が閉じられようやく全員が深呼吸をして呼吸を整える。ヒーヒー、と鳴らしていた呼吸をどうにか戻し、笑いにより溜まった涙を指で拭う。
「穂次、不意打ちはやめてくれ」
「悪気は無い。つーか、俺も織斑先生がノってくれるとは思わなかった。反省はしてる」
「というか、アンタどうやってお酒なんて買えたのよ……」
「贈与の為、って事で頼んだら包んでくれたゾ☆」
ヘラヘラと笑って答える穂次に溜め息を吐き出した一同。そしてまた先ほどの場面を思い出し、もう一度笑いを堪えるのである。
「んじゃ、おじゃましましたー」
「おう。また学校で」
「そうだね」
夕食も食べ終わり少しして、日も落ちて街灯が街を照らす時間になり六人は織斑邸を後にする。
ノンビリと歩きながら適当な雑談に花を咲かせる。なんてこともない、いつもの会話だ。
「それにしても、夏野。大丈夫か?」
「何がッスか?」
「いや……まあ、ホラ」
「……ああ! 大丈夫ッスよ。お腹が痛いよりも何か変な汗が出てきた辺りで死ぬ覚悟が出来たから」
「穂次さん、大丈夫ですの?」
「ダイジョウブ、ダイジョウブ」
穂次には言えなかった。その大元の原因はアナタなのですよ、セシリアさん。という言葉は決して言えなかった。
ともあれ、彼の胃袋は彼女の料理の腕が上がる前より早く耐性をつけた様である程度の料理は問題なく胃袋に押し込めることが出来る様になった。ソレが悲しい事なのか、喜ばしいことなのかは彼にしか分からないが……。
「穂次も頑張るわね」
「俺はいつだって頑張ってますよ。鈴音さんの胸部と一緒にしないでください」
「あ゛?」
「スイマセン、冗談デス。許してください」
「デザートを何日かで許してあげるわ」
「やったぜ。つまり何日か後でもう一回言えるって訳ですね!」
「何日を永遠にしてあげてもいいわよ?」
「ヤクザの所業じゃないですかヤダー」
ヒッ、と怯えたように声を出した穂次の顔は相変わらずヘラヘラと笑っている。
その穂次の足が突然停止する。
全員がソレに気付かずに一歩だけ進み、穂次の異変に気付いたのか後ろを振り向いた。
「穂次?」
「穂次さん?」
首を傾げてセシリアとシャルロットが声を掛けると穂次は何かを口篭り、「あー……」と言い迷いながらも声を出し、結局言葉が思いつかなかったのか、指で頭を掻いて溜め息を漏らした。
その視線は前を向いていて、ソコには黒塗りの車が何台停まっている。そこから現れた黒スーツにサングラスまでしっかりと着用した存在達は六人を囲む。
鋭い目付きでソレらを見渡したラウラが舌打ちをする。
「セカンドだな。我々に着いてきてもらおうか」
「……夏野穂次はIS学園が身柄を預かっている筈だが?」
「そんな事を我らが知らないと思っているのか?」
「……チッ」
「抵抗は無意味だ。セカンドをコチラに渡してもらおう」
「あー、まあまあ。ラウラさん落ち着いて。この人たち政府関係の人だから」
「……何?」
「んで、このタイミングで来たって事は学園側からの了承は?」
「セカンド、お前には嫌疑がかかっている。抵抗した後に連れて行かれるか、抵抗せずに連れて行かれるか。選べ」
「あたし達が抵抗してココから逃げるって選択肢もあるんじゃない?」
「あー、鈴音さん。ソレは色々問題になるから……ちなみに嫌疑にはまったく身に覚えがねーんですが?」
「それはコチラが判断することだ」
「そうッスか……」
穂次は溜め息を吐き出して空を見上げて瞼を閉じる。舌打ちを一つだけして、瞼を上げる。どうにも心配そうな顔をしているセシリアとシャルロットを見てヘラリとした笑みを浮かべた。
「大丈夫だよ。身の潔癖を証明すればソレで終わりさ」
「安心しろ。吐きたくなる様にしてやる」
「わーい、嬉しくねーな」
「ちょ、ちょっと待って下さいまし! 正式な手順を踏んでないのでしょう?」
「……セシリアさん、だからマズイんですよ」
「は?」
「スゲーッスよね。ココに居る人達がカモフラージュで遠距離に狙撃手がいるとか。俺を捕まえるのにどれだけの人使ってるんですかねー」
「まだ足りない、と思っているが?」
「そりゃまた過大評価な事で……まあそんな感じ。だから抵抗は無駄って事」
「そんなっ」
「まあ俺が連れてかれるだけですしー、なるようになるでしょ」
「セカンド」
「はいはい! 行きます、行きます。んじゃ、ミナサンココでオワカレって事で」
「また学校で会えるんでしょ?」
「……んー、どうだろ? まあサヨナラにならないようには頑張ってみるさ」
「穂次さん!」
穂次はヘラリと笑って黒塗りの車の中へと入り込んだ。
セシリアの伸ばした手は無情にも空を掴み、車は走り去る。
>>誤解潰し
夏野穂次を連れて行ったのは正しく政府です。以前穂次が数日所属し、検査と称して非人道的な調査をした政府です。決して超絶美人の亡霊さんが所属する機業じゃないです。
まあ屁理屈だったりもしますので、適当に。
>>穂次「ああ、このツッコミが久しぶりに感じる……」
本当に久しぶり
>>「来ちゃった☆」
原作リスペクト
>>とあるバーでの話
千「なあ真耶君。あの夏野が私に合う酒を買ってきたんだ」
胸「はい? 夏野君がですか? ……日本酒とかですか」
千「いいや。芋焼酎だ」
胸「焼酎ですか。また渋いモノを買ってきましたね」
千「私に合うモノを、と言って買ってきたラベルには『魔王』と書いていたんだ」
胸「っ、ゲホゲホ」
千「ふむ。意外にウケるか」