欲望にはチュウジツに!   作:猫毛布

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柔らかくて、イイ匂い

 セシリア・オルコットは息を潜める。

 辺りを始終キョロキョロと見渡し、誰もいない事を確認して小さく息を吐き出す。

 頭の中にある教員達の見回りルートを思い出し、刻一刻と変わるルートを計算し尽し、比較的人の目の無いところを通り抜ける。

 なんとも簡単な事である。尤も、その簡単な事の相手が織斑千冬とかいう障害を除いての話だけれど。

 

 

 

 

 

「セシリアは夜這いとか行かなくていいの?」

「なっ!?」

 

 時間にして数分前。セシリアと同室になった女生徒の言葉にセシリアが狼狽するのは何もオカシナ所などなかった。

 それこそ女生徒はにやにやとした笑みをセシリアに向けていたのだけれど。

 

「どうしてわたくしがそんな……それに、わたくしと穂次さんはその様な関係じゃありませんわ!」

「誰も夏野君のことって言ってないんだけどなー」

「ぐっ……」

「まあまあ落ち着きなよ、セシリア」

 

 肩を腕で抱き寄せ顔を寄せる女生徒。その顔はイケナイオクスリを売りつける存在の様にニヤニヤとした笑みを浮かべており、そして懐からイケナイオクスリ……ではなく一枚の紙を取り出し、広げた。

 セシリアはソレを一目見て、何かはわかった。花月荘の見取り図である。その見取り図によく分からないラインと矢印が引かれているからこそ、セシリアは眉を寄せたのだ。

 

「……これは?」

「先生達の巡回ルート」

「どうしてソレをアナタが持ってますの……」

「いやぁ、女将さんから渡されたんだよー」

 

 セシリアの脳裏に若々しい女将さんが浮かぶ。穂次と話している最中にコチラを見て優しそうに笑っていた姿は記憶に新しい。

 むぅ、と唸ってからセシリアは迷う。今朝の事もある。自身はそれほど引き摺ってもないし、穂次自身もいつもの調子に戻っていたけれど、それでもやはり事件はあったのだ。

 時間が解決する、というよりは既に解決しているのだけれど、僅かに残る()()()は時間が流してくれるだろう。

 

 ともすれば、穂次とセシリアの関係を急ぐ理由もなく、それこそ彼の競争率なんて物は低いのだから何事も問題なし。じっくりと、自身の魅力で落とせば問題は無い。ない筈。

 

「そういえば、コレをシャルロットも受け取ってたような」

「寄越しなさい」

「あ、ハイ」

 

 コレは決して穂次に夜這いをする為ではない。そんな事をしようとしているシャルロットを抑える為の行動なのだ。

 決して居なければ、穂次と夜を過ごすだとか、そういう妄想は抱いてない。

 見取り図を数秒程睨めたセシリアはソレを女生徒へと返す。

 

「え? 持って行かないの?」

「覚えましたわ。それと、一つだけ赤いラインがありましたが……」

「女将さん曰く、強敵だってさ」

「……理解しましたわ」

 

 頭に浮かんだ漆黒の髪を持つ世界最強。門番にしては強すぎる彼女を思い浮かべて、スグに振り払う。最短ルートを頭から除外して新たにルートを構築していく。

 

「じゃあ頑張ってね!」

「べ、別に、シャルロットさんを抑えるだけですわ」

「うんうん、そうだね! 大丈夫、朝までちゃんと見回りの先生達を騙すからね!」

「もう! だから違うと言ってますわ!」

 

 少しだけ怒ったように口調を激しくしてみた所で女生徒はめげずにニタニタと笑ってセシリアを見送る。

 部屋から出たセシリアはとりあえず深呼吸をして、自身の胸に手を当てる。

 思ったよりも鼓動は激しかった。

 

 

 

 

 

 

 そんな数分前のやり取りを思い出しながらセシリアは予定していたルートを歩く。浴衣姿で何事もなく歩いているのだけれど、頭の中はルート構築などで一杯だ。

 ソレで一杯にしておかなければ他のモノでパンクしそうなのだから、ある意味は順当とも言えた。彼女とて人間で、それでいて乙女なのだから。仕方ないとも言える。

 

「あっ」

「あっ」

 

 さて、丁度曲がり角、セシリアの目の前にシャルロットが現れた。お互い目を合わせて、ニッコリと笑う。いや、笑っていたのだろうか。ニッコリと擬音が付くぐらいなのだから、笑っていたのだろう。

 ともかくとして、ニコリと笑い合う二人は同時に一歩を踏み出した。

 

「ねえセシリア。こんな夜半に出歩くなんてエリート様としてはどうなのかな?」

「あら? 優等生様も同じ事は言えましてよ?」

 

 バチリと何かが二人の間に走る。

 そして、更に一歩、一歩、二人はいつの間にか競うように、けれども決して急かず、同じ方向へと移動をしている。

 目指す場所は離れである。そしてソレは同時に穂次の部屋であり、二人の目的が同じである事を示す。

 

 いいや、彼女ら乙女の為に少しだけ補足するとするのならば、それこそ健全たるこの物語において不必要な行為はするつもりはない。いや、もしも穂次に迫られたなら……いやいや、あのヘタレにその様な甲斐性も度胸も無いのだから論じるに値しない。

 よくて一緒の布団で眠る程度だ。もしくは夜の旅館という少しばかり淫靡な空間に酔いたいだけかもしれない。ちょっとだけ甘えたり、あわよくばキスなんてしたり。

 まあその程度の願いなのだ。

 

 閑話休題。

 

「ねえセシリア。そろそろ諦めたらどうかな?」

「あら? シャルロットさん。アナタだけなら見つかっていたと思いますが?」

「セシリアも何度かルートを間違っていた気がするけれど?」

 

 コソコソと言い争うという中々に難しい芸当をしている二人は少しだけ睨み合い、何かに反応して身を隠す。

 彼女らの視線の先にいるのは黒い髪をした戦乙女。元、と頭に付いてはいるが世界最強を冠した女。織斑千冬その人である。

 

――どうして織斑先生がいますの!?

――わかんないよ! 巡回ルートは?

――ココは通らない筈でしたわ!

――そうだよね。僕もそう記憶してる。

 

 二人の秘匿通信による会話は実にアタフタとしたものである。当然、最低限とは言えない高すぎる警戒度を持ち合わせての会話だが。

 さて、普通の巡回ルートではいない筈の織斑千冬がどうして最後の関門の様に立っているのか。理由は簡単である。夏野穂次が居るからだ。

 セカンド、夏野穂次は世界的に見れば一夏に続いて保護されるべき対象である事は間違いない。あんな阿呆だけれど、それでもアレがセカンドである事は間違いない。阿呆だが。

 二人がアタフタとしている中、織斑千冬は小さく溜め息を吐き出した。それこそ隠れた二人の存在は気付いているし、その隠密性の甘さに溜め息が溢れた。

 どうしてか痛くなった頭を抑える事もせずに、次は二人に分かる様に溜め息を吐き出した。

 

「……ふむ。ココは異常なしか」

 

 ワザとらしく声を出して、千冬は二人とは別の方向へと足を進めて、少し歩いてから足を止める。

 

「ああ、コレは独り言だが。阿呆の部屋には朝食前に行くぐらいで、もう今夜は行くことは無いな」

 

 と意味の無い様な、大きな独り言を呟いて、これまたワザとらしく「まあ独り言だが」と付け加えて足を進めた。

 見逃されたのがわかった二人は冷や汗を拭って、ようやく息を吐き出した。緊張感によってどうやら忘れていたようだ。

 

「ば、バレてたね」

「そう、ですわね……」

「どうする?」

「……どうするも何も」

 

 ココまで来て、逃げるなんて選択肢は無い。ソレはお互いのようで目を見合わせて自然と握手を交わした。

 

「今夜だけは共同戦線って事で」

「そうですわね。まあ精々頑張ってくださいまし」

「アハハ、穂次の事を理解してないクセに」

「あら、穂次さんを魅了出来もしないクセに」

「……」

「……」

 

 空気が停止して、握手している手がギリギリと音を立てている。

 お互いに表情は笑顔であるのに、どうしてか四つ角が浮かんでいる。共同戦線とはいったい……。

 

 

 ともかくとして、こんな所に立ち往生していても時間の無駄でしかない事は理解出来ていたのか、二人は数秒も経たない内に握手を解いて、外へと出た。

 カラリ、と石畳に歯の無い下駄で音を鳴らして二人は歩く。あの織斑千冬が最終ラインだと直感していた二人はある程度の警戒心は持っていたけれど、花月荘本館に居たとき程警戒は無い。

 それこそ、巡回ルートに含まれていない、という理由が頭に過ぎっている。まあその巡回ルートは従来のモノであり、織斑一夏と夏野穂次の存在のお陰でかなりの変更を有したのだが、ソレを二人は知る事もないし、知る必要もない。少なからず、情報を渡した花月荘女将は「あらあらどうしましょう」と困ったように頬に手を当てていることだろう。尤も、顔は決して困ったようには見えず、明らかに楽しんでいる様な、「若い子っていいわねぇ」と追加で呟きそうな顔だ。

 

 カラリ、コロリ。

 

「セシリアはさ」

「はい?」

「……穂次の事、好きなの?」

「――……」

「変態で、どうしようもなくて、ヘタレで」

「いつも胸を見てくるような変な人で」

「冗談を言って、からかって……そんな人だよ?」

「そうですわね……こうやって考えても、わかりませんわ」

「ホント、どうしてなんだろうねー……」

「でも、気付いたら目で追ってて」

「そうだね……やっぱりちょっとだけカッコイイのかもね」

「ほんのちょっとだけですわ」

「そうだね。だから、そんな穂次が――」

 

 好き。

 お互いにその言葉は言わずに、微笑む。いつかの穂次が目の前に居た時にした暗黙の宣戦布告ではなく、互いに互いを認めた上での、宣戦布告。

 燃える様な感情でもなく、冷たい拒絶的な感情でもない。どうしてか温かく、けれども同時に黒い何かも燻る様な、苦く、甘い感性。

 微笑んでいた二人は何かが可笑しくなって、少しだけ噴き出す。

 

「でも、穂次なんだよねぇ」

「そうですわね、穂次さんですわ」

「え? 俺がなんて?」

「――」

 

 ギギギギ、と音が鳴りそうな、まるでブリキの玩具の様に首を動かした二人はどうしてか後ろに居た件の男を視界にいれた。

 湯気立つ男の髪は僅かに濡れており、彼の性分なのか肌蹴てしまっている浴衣からはそれなりに鍛えられた胸板が僅かに見えている。首に掛けられたタオルと抱えられた桶。なるほど彼は風呂上りだという事は分かる。

 そんな事はどうでもいい! この男には聞かれてはいけない事が聞かれたかもしれない!

 いいや、結局は聞かせないといけないのだけれど、今はそんな時じゃなくて、もっと、こう、ロマンチックな感じに、出来るならこのヘタレに言われたかった!!

 目を白黒させている二人にキョトンとしながら穂次は頬を掻く。

 

「何喋ってたか知らないけど、お二人さんが急に噴き出して俺としてはその疑問が尽きないんだけど?」

「いいから!」

「気にしなくてもいいですわ!」

「アッハイ」

 

 馬鹿でよかった!

 二人は安堵した。安堵の仕方が随分とアレなのだが、ともかくとして二人の矜持は守られたのだ!

 

「つーか、お二人さんはこんな夜半に散歩ですか? 仲イイッスね!」

「そ、そう!」

「月が綺麗でしたので!」

「何を慌ててるんですかね……ハッ!? まさかお二人は――」

「――ッ」

「実は他には言えない恋人同士……なるほどなるほど、夏野穂次はクールに去るぜッ!」

「無いから」

「無いですわ」

「全否定ですかそうですか……百合の花はないんだなって」

 

 分かる様に落ち込んだ穂次は溜め息を吐き出した。彼の妄想している様なことは決してない。金髪娘と金髪娘との絡みなんて、そんな!

 果たしてどちらがお姉様なのだろうか。受けは? 攻めは? 穂次の中で広がる世界。その世界は受け入れられないし、スグに終結するのだが。

 

「そういう穂次はこんな時間にお風呂?」

「そ。汗かいちゃったから二度目のお風呂。ちなみにちゃんと織斑先生とかには許可を貰ってるから覗きとか、混浴とか、そういう事はありませんでした! ありませんでした……」

「どうして落ち込んでるの」

「汗? 何か運動でもしてましたの?」

「……いやー、織斑先生に馬鹿してたらそんなに元気なら走ってこいって言われて」

「また何かしましたのね……」

「アッハッハッ。あの超絶美人教師めー」

「……ふーん」

「あの、シャルロットさん? どうしてそんなに意味深な瞳を俺に向けてるんですかね……」

「べっつにぃ」

「む……シャルロットさん、何か知ってますのね!」

「ふふ、秘密だよっ」

「穂次さん! 何を秘密にしていますの!?」

「えぇ……シャルロットさんの秘密なんて俺はわかんねーです。男装してたぐらい?」

「もう秘密でもないねー」

「あとはおっぱいがちょっと成長した事ぐらいだな!」

「……穂次のえっち」

「男はみんなエッチなのさ! ね、セシリアさん!」

「どうしてわたくしに振りましたの……そんな事知りませんわ」

「……いや、色々墓穴掘るからいいや。この話はオシマイ!」

「……まだ午前中のことを引き摺ってますの?」

「そんなマサカハハハ。引き摺ってる人がセシリアさんに向かっておっぱい触らせてくださいとか言わないッスヨーヤダナー」

「引き摺ってるねー」

「引き摺ってますのね」

「ホント、申し訳無いです」

 

 土下座でもする勢いで頭を下げた穂次に対して困ったように二人は息を吐き出した。

 面倒くさい男、というのは確かに二人の共通の認識だった。まあその面倒な男に惚れてしまったのも二人なのだけれど。

 

「まあ良いですわ。部屋に案内してそれなりにもてなしていただければ」

「へ? 部屋に来るの?」

「そうだね。夏って言っても寒いし、ほら、穂次も湯冷めしちゃうよ」

「さぁ行きますわよ」

「美少女二人が男の部屋に行くのかぁ……え?」

 

 果たしてキョトンとした穂次は両腕を二人に持たれて、半ば引き摺られて部屋へと向かう。その頭の中には疑問符が大量に乱舞し、どうしてかお茶を淹れてもてなしている所でようやく混乱から脱した。

 

「いやいやいや! おかしいから! もっと危機感持とうぜ!」

「だって穂次だし」

「まあ穂次さんですし」

「どうして俺が傷つく返答が来るんですかね!? ほら、コレでも男だから!」

「そういえばそうですわね」

「男として見られてなかった!?」

「……そういえば本国にはハニートラップって言ってたんだっけ」

「ハイ、この話はヤメ!」

「えー」

「据え膳食わぬは恥、という諺があった様な気もしますわ」

「どうしてそういう事は知ってるんですかね……。恥でいいから。お二人さんは美人なんだからもっと自分を大切にしなさい! お兄さんとの約束ダゾ☆」

「……」

「……」

「何? 二人ともジト目で見て。可愛いから別に気にしないけど」

「ヘタレ」

「根性なし」

「普通に落ち込むから……」

 

 部屋の隅で三角座りをした穂次を眺めながら二人はお茶を啜る。少し薄めのお茶が喉にすんなりと入る。

 

「つーか、マジで何しに来たのさ。俺を虐めて楽しみにきたの?」

「それもいいですわね」

「虐めるなら踏む感じでお願いします!」

「絶対に、嫌ですわ!」

「ぐぬぬ……どうすれば踏まれるのだろうか」

「いや、穂次。悩むところがおかしいから」

「シャルロットさんも気が向いたら踏んでもいいですよ!」

「また今度ね」

「あ、コレは次が無いヤツだ。俺は知ってるんだ……」

「そうですわね……穂次さんの事が聞きたいですわ」

「そういえば穂次の事は何も知らないかもね」

「俺の事? 何もねーぜ?」

「それでも聞きたいよ」

「ふーん。まあいっか。んじゃドコから話しましょうかね」

 

 部屋の隅から部屋の真ん中に置かれている机に戻ってきた穂次は二人の対面になるように胡坐をかき、お茶を少し啜る。

 

「んー。ホント普通の人生なんだけどなー。ISを起動する前は普通に学校行って、馬鹿やって、友達と遊んで、みたいな?」

「本当に普通だね」

「もっと何かありませんの?」

「何かって言われてもなァ……」

「そういえば穂次さんのご実家はドチラに?」

「……あー、うん。実は実家も何もないんだなー」

「え?」

「あ……申し訳、ありません」

「まあまあ。普段の失言レベルだと俺はずっと謝り倒さないといけなくなるから、問題なし!」

「……問題無い訳ないじゃない」

「問題なんてねーですよ。政府が俺の戸籍を抹消してたり、実家とも言える家にもう帰れなかったり、挙句の果てには両親って言える人達にもう会えなかったり。アッハッハッ。笑えるー」

「笑えませんわ! どうしてそんなにへらへら出来ますの!?」

「そうだよ!」

「あー、なんで怒ってんの?」

「怒りますわ! そんな、そんな――」

「うーん、嬉しい、んだと思うんだけど。別にそういうのはイイよ。ほら、終わった事だし」

 

 へらりと穂次は笑った。笑ったからこそ、セシリアとシャルロットは言葉を飲み込んだ。

 どうして彼はソレを受け入れる事が出来たのか。どうして彼はソレを受け入れてしまったのか。

 理解出来ない。いいや、理解なんてしたくない。少なからず怒りを顕わにしていたならば理解も出来た。けれど、穂次はその表情を笑みで隠した。

 

「穂次は……大丈夫なの?」

「大丈夫も何も、仕方ない事だからなー。現状にも満足してるし、おっぱいも見放題だぜ、やったね!」

「……無理してませんこと?」

「してないしてない。欲望に忠実で、へらへら笑えて生きてればそれで俺は満足です」

 

 また、へらりと笑った穂次。その表情をどう思ったのか、セシリアとシャルロットの中にある彼が虚空になる。ポッカリと彼に穴が空いて、いつしか彼が消えてしまうのではないかと不安になってしまった。

 二人は顔を見合わせて同時に立ち上がり、穂次の隣へと座った。

 

「え? おっほ」

「少しだけ黙っててくださるかしら?」

「そうだね、うん。ちょっとだけ黙っててね」

「アッハイ」

 

 だからこそ、二人は穂次を抱き締めた。彼がドコかに行かない様に、しっかりと胸に抱き締めた。

 からっぽな彼がフザケタ事を言う前に封殺し、カラッポを埋めていく。どうしようもなく、愛おしさが溢れる。

 

 柔らかい四つの乳房が穂次の顔面に当たって穂次としては気が気ではないのだけれど、どうにも手を出せる雰囲気でもなく、とりあえずその柔らかさに脳内で「ありがとう! ありがとう!!」と唱えるばかりである。柔らかく、どうしてイイ匂いがする。ゆっくりと脳が溶けていきそうだが、穂次は頑張って意識を保った。手を出す雰囲気でもないが、手を出さないのは彼がヘタレであるからである。

 果たして浴衣の生地越しに伝わる熱と柔らかさに浮かされた穂次とからっぽな彼に愛おしさを注ぎ込む二人の極めて奇妙な耐久戦が始まった。

 

 当然、負けるのは決まって穂次である。




>>織斑千冬が最後の関門の様に立っている理由
 ベタ展開だからだ!

>>穂次の汗の理由
 運動(意味深)ではなくて、真面目に砂浜走っていたから。基礎体力って大切

>>穂次の話
 別に今まで出た内容。真面目に喋った事はたぶんコレが初めて

>>カラッポな相手に愛しさ溢れる
 愛したい。

>>カラッポな穂次
 コレが平常。彼は受容する人です。

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