欲望にはチュウジツに!   作:猫毛布

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息抜き(5800字

海の話を分割します。
コッチはセシリアさんに重点を置いてます。ラブコメ……というには少し違うような気もしますが、なんとも不器用な二人をご覧下さい。


脳内には特殊なフィルターが存在している

「海だ……」

「今更だな」

「海……水着、女の子……ウッ、股間が!」

「……さて準備運動をするかな」

「無視はやめてッ!」

 

 はいはい、と言わんばかりに面倒そうな顔で準備運動をしながら俺の方を向いた一夏。というか、コイツはどうして準備運動なんかしてるんだ……。

 

「お前……なんで準備運動なんかしてるんだよ……」

「準備運動は大事だろ。足がつって溺れてもカッコ悪いだけだろ」

「海にまで来て泳ぐのか……」

「お前は海に何をしに来たんだ、いや、聞きたくない」

「ふっふっふっ、聞きたいか、織斑一夏ァ!」

「いや聞きたくないって言ってるだろ」

「…………じゃあいい。もう言わん!」

「ああ、そうしろ」

「なあ、一夏。ノリ悪いぞー。もっと構えよー」

「俺は束さんとお前のボケ倒しに疲れたんだ。ちょっとは休ませろ。というか、お前も準備運動しとけよ」

「ふっふっふっ。俺は問題ない。なんせ海に入らないからな!」

「…………ああ、なるほど。うん、それなら仕方ないな」

 

 俺の言葉に何かを察したのか、一夏は可哀想なモノを見る目で俺を見た。俺はヘラヘラと笑ってなるべく冷や汗を見せない様にする。

 泳げなくっても、女の子は見れるから(震え声。

 

「い、ち、か!」

「うわっ」

 

 遠目でドコかを見ていた俺は声でようやく一夏の方向を見る。そこには一夏へ乗っている鈴音さんがいた。オレンジと白のタンキニを着ている彼女は自身の良さである快活さを遺憾なく発揮し、そしてまるで猫の様に一夏にじゃれ付いている。羨ましい。

 

「アンタは真面目ねぇ。穂次を見なさいよ。何もしてないわよ?」

「いやー、鈴音さんに見惚れてただけッスよー。実に可愛らしいと思う。つーか、イイネ!」

「ふふん! そりゃぁ、あたしだからね」

 

 いやー、ホント! おっぱいありゃぁ完璧だったと思いますよ! とは口が裂けても言わない。言えば口が裂けるどころか身体が裂けそうだ。

 それにしても程よく引き締まった腹部である。愛らしい臍まで見えて実に素晴らしい。やはり海は最高だ。

 

「お前もちゃんと準備運動しろよ。溺れても知らねぇぞ」

「あたしが溺れたことなんてないわよ。前世は人魚ね」

「人魚? ……いやいや、無いだろ」

「穂次、ドコを見て言ったのか教えてみなさい? もしくは黙って殴られる?」

「どちらにしても殴られると思うんですが、ソレは……」

 

 貧乳な人魚なんている訳ねーです。貝殻の水着を着こなせる様な胸になってから言うんだ。

 けれど、そんな彼女が傷つくような事は言わない。なんて俺は紳士なんだ! バレてっけど。

 鈴音さんから視線を外してボンヤリと女の子達を眺める。あのおっぱいの大きな子なら、きっと似合うかも知れない……いや、あの子だろうか。なんだろうか、胸がドキドキする。なるほど、コレがトキメキというヤツか……!!

 

「穂次さん?」

「トキメキじゃなかったんだな、って……」

「どうしましたの?」

「いや、なんでも――」

 

 息を飲みこんだ。

 果たしてコレは夢なのだろうか。少なからず現実ではないのだろう。砂浜に反射した光か、それとも彼女の金髪が光を反射しているのか、もしくは彼女自身が輝いてるのか。白い肌を青いビキニで隠したセシリアさんはとにかく素晴らしかった。

 小首を傾げているその姿も。パラソルを持っている事すらも。実に夏らしくてグッドである。

 熱い何かを鼻の奥に感じながら、上を向く。空は素晴らしい青空だ。

 

「ほ、穂次さん?」

「……いやー、空が青いッスなァ」

「え? はぁ、まあ、そうですが」

「ふぅ……」

 

 なんとか熱を遠ざけた俺は今一度セシリアさんに向く。煌びやかな淡い金髪から視線を下げていき、整った美貌を過ぎる。扇情的とまで言えるおっぱい。その谷間には先日プレゼントした雫型のシルバーの飾りが付いたネックレスがアクセントとして乗っている。羨ましい。更におっぱいは青いビキニにより強調されてはいるが、それほどの下品さは感じない。果たしてソレは彼女の雰囲気のなせる業なのか。

 更に下へと視線を動かす。括れている柔らかそうなお腹。腰にはパレオが巻かれておりその奥にあるであろう秘境を実に心躍る。パレオの先から伸びた足は健康的であり、そのおみ足に踏まれたいとすら感じてしまう。つーか、踏まれたい。

 さて、視線をおっぱいに戻そう。谷間まで強調されたそこに潜りたい。顔を突っ込みたい。けれどそんな感情を言ってしまえば彼女に嫌われてしまうかも知れない。ここは我慢だ。我慢の時である。

 

「おっぱいを触らせて下さい!」

「…………」

「…………」

「あれ? なんで黙られるの?」

「いや、むしろなんで大丈夫だと思ったんだよ」

「コレでもだいぶ妥協に妥協を重ねた願いだったんだけど……」

「よし、穂次。お前はもうこれ以上喋るんじゃない! もう手遅れかも知れないが、傷を広げることはないんだ!」

「なんでだよ!? あんなステキな格好してんだぞ!? 一瞬女神かと思ったわ! むしろ触らなきゃ失礼だろ! 了解取ってるだけマシだろ!?」

「お前の考えがオカシイ事はよくわかった」

「オカシイのはお前だろ!? ――あ、いや、うん、なんでもないゾ!」

「待て穂次。お前絶対に俺のことをホモだとか思ってるだろ、違うからな?」

「こ、コホン」

「ヒッ、セシリアさんゴメンナサイ! 出来心なんです! 下心しかねーです!」

「ま、まあ許してあげますわ」

「ん? そりゃぁ、ありがたいけど……なんか耳赤くないッスか?」

「!? た、太陽が暑いんですわ!」

「お、おう……」

「ん? なんで鈴はニヤケてるんだ?」

「なんでもないわよ。そうね熱い熱い」

「鈴さん!」

「はいはい。それじゃ、一夏泳ぎに行きましょ。穂次も後から来ていいわよ?」

「あっはっはっ。行けたら行くさ」

 

 来てもいい、とは言われたけれど、鈴音さんの目は来るな、と言っていた。流石に俺はソコまで空気の読めない男ではない。フッ、俺は察しのいい男なのである。

 さて、セシリアさんからパラソルとシートを奪って適当なところにシートを広げる。太陽を見上げて影の位置を調整しながらパラソルを砂浜に差し込む。手を放して動かない事を確認してから頷く。

 

「さて、どうぞ。セシリアさん」

「あ、ありがとうございます……」

「いえいえ。つーか、マジで眼福状態なんで。むしろお礼を言うのは俺の方だ。ありがとう! ありがとう!!」

「……はぁ」

 

 一つ溜め息を吐き出されて俺をジト目で睨んでいるセシリアさん。そんな様子も可愛いのでむしろご褒美である。

 

「あー! 夏野くんがセシリアに何かしてる!」

「なんですって!?」

「どういう事!? 夏野くんには織斑君という嫁がいる筈でしょ!?」

 

 遠くから声が聞こえた様な気がする。いや、気のせいじゃないだろう。振り向いて、手を軽く振っておこう。いつもの様にヘラヘラ笑っていれば問題は先送りに出来るだろうし。

 何より、否定するのも面倒で、面白くない。

 

「あー……いや、まあいいか」

「よかったんですの?」

「ま、訂正は後でも出来るし。セシリアさんのサンオイル塗りはセシリアさんの気分とかが変わらない内にしないと出来ないと思うからなー……というよりも、サンオイルって、肌でも焼くの? 白くて綺麗なのに」

「…………」

「おーい、セシリアさん?」

「あ、いえ、申し訳ありませんわ」

「いや、いいけど。大丈夫か? 熱中症なら早く言うんだぞ? 介抱なら任せろーバリバリ」

「いえ、大丈夫ですわ」

 

 本当に大丈夫だろうか。少しばかり上の空な気もするけれど。もしも熱中症だったならば、俺はセシリアさんをおんぶして旅館に戻るだろう。旅館までの道のりでは背中におっぱいを感じながら帰るんだ……!

 

「それで、肌を焼く訳じゃありませんわ」

「そうなの? オイルって言うぐらいだからてっきり」

「日焼け止めとしての効果が高いものなので……」

「はへぇ……んじゃ、セシリアさんの肌はそのままなのか」

「う、嬉しいですか?」

「へ? 別に」

「…………」

「えぇ……急に不機嫌になるのもどうかと思うんですが」

「ふん……」

「あー、まあ、あれッス。セシリアさんの肌が白かろうが、黒かろうが、俺にとってセシリアさんはセシリアさんなんで、可愛い事は変わらねーですなぁ」

「そ、そうですか!」

 

 チョロいなぁ。可愛い、と一言混ぜただけでこの機嫌の戻りようである。変な男に騙されないか非常に不安だ。いや、むしろ俺のせいで手遅れなんだろうか。

 

「で、では、お願い致しますわっ!」

「へいへい。微力を尽くします、女神様。 つーか、オイルのことを聞いたから分かると思うけど、初めてだから何かあったら言ってくれ」

「わかりましたわ」

「あとおっぱいに手が滑るかもしれないけれど、決して故意ではない。そう、つい、手が滑るかも知れない。でも故意じゃないから――」

「……」

「そんな腐った魚でも見る目で見ないで下さい。気をつけます」

「よろしいですわ」

「触っても!?」

「死ね」

「スイマセン。絶対にしません」

 

 というよりは、恐らく出来る度胸は出ないだろう。ヘタレと言われようが関係ない。それこそラッキースケベでもない限り本当にする気は無い。むしろそんな余裕はない。

 こうして水着姿のセシリアさんを見ているだけでだいぶ下半身がイケナイ事になっているというのに、こんな状態でおっぱいに触ってみろ。絶対に俺は賢者タイムに入れる。

 こうしてセシリアさんがパレオを脱ぎ、ブラを抑えながら首紐を器用に片手で外す仕草を見ているだけでだいぶキている。

 うつ伏せになったセシリアさんの体重によって潰されたおっぱいが僅かに歪んで脇の下から見えている。更に視線を動かせば無防備な背中。その沈んだ背骨を辿れば、発育のいいお尻が見える。果たして桃源郷はここにあったのだ……。

 

 生唾を飲み込んだ。果たして動いた喉の音が彼女に聞こえていない事を願う。

 暑さだけではない口の渇きを幾らか誤魔化して、なるべく彼女に悟られないように口を開く。

 

「あー、じゃ、じゃあ揉むからな」

「穂次さん?」

「すいません、真面目にします」

 

 セシリアさんの冷たい声でようやく俺の自制心が働き出す。深呼吸を一度だけして気持ちをちゃんと落ち着ける。とにかく、俺の下半身が完全に臨戦態勢な訳であるが、鎮める前にバレる事は本気で避けたい。本当の意味での変質者になるべきではない。手遅れかも知れないが、それでも俺だって守るべき尊厳はわかっているつもりだ。

 頭の中でISの初期理論を唱えながら、サンオイルを手に出す。粘りも無いオイルの冷たさが俺を冷静にしてくれる。冷静になった俺はまた目の前に横たわる美女を見てエレクトしそうになる。

 なんだ、この幸せ無限ループは……!!

 いや、果てれないことを考えれば生殺し以外の何物でもないけれど。

 

 今一度、再度深呼吸をして、手にオイルを延ばしていく。果たしてコレが合ってるかどうかなんて俺には既にわからない。今の俺が正常に思考しているのはセシリアさんに危害を加えない事だけだ。

 背中に触れる。

 

「んっ」

「わ、ごめん。冷たかったとか?」

「い、いえ、その驚いただけですので……そのまま」

「オッケーッス。お姫様のご要望のままに」

 

 自分の軽口にこれほど感謝した事はない。普段からヘラヘラ笑って軽口を言ってることが幸いした。

 セシリアさんの声に驚いて離してしまった手をもう一度背中へと向け、触れる。

 オイルによる滑りではない。こういう肌がきめ細かいと言うのだろうか。スベスベでずっと触ってても飽きないだろう。ずっと触ってるなんて出来ないけれど。

 セシリアさんの体温と僅かに感じる鼓動。触れている肌は柔らかく、スベスベで、ああ、ヤバイ。何も考えれなくなってきた。ヤバイ。スゲー。女の子ってスゲー。いや、この場合はセシリアさんがスゲー。マジスゲー。

 

「――次さん? 穂次さん?」

「あ、うん。どうした?」

「その、せっかくですし……手の届かないところは全部お願い致しますわ」

「…………と、言いますと?」

「脚と、その……お尻も」

 

 俺は目の前が真っ白になった。

 まてまて、俺の意識ちょっと待つんだ。まだ意識を飛ばすには早い。もう少しだけ頑張れ。

 

 無意識で吸い込んでしまった空気を小さく、細く吐き出していく。相変わらず煩い心臓と、ソレと同期でもしてるのか炉に火をくべたように熱を持っていく。

 頭の中で解法していたISの理論を思い出す。果たして欲望に塗り潰されたソレはどこまで進んでいたのだっけか。

 

 軽口も一つ二つ言いながら俺は脚へと視線と手を伸ばす。実に肉付きのいい脚である。むっちり、というべきなのだろうか。いいや、コレは言葉に出さない。

 そもそも軽口の一つ二つを言いはしたけれど、そんなモノ五秒も経たない内に忘れてしまった。俺は目の前の魅惑的な脚の方が大切に決まってる。

 ふくらはぎに詰まった柔らかい感触にゾクリと何かが走る。僅かに揉む様に力を込めればしっかりと筋肉の感触もするのだけれど、何より肌が気持ちよすぎる。

 膝裏を通過して、太ももに。コチラも触り心地のよい、素晴らしい脚だ。挟まれたい。入念に、けれど決して本格的な下心は隠し、一息。

 さて、俺の目の前には魅力を詰め込んだのか、魅惑的なお尻がある。発育のいい、柔らかそうな、いや確実に柔らかいであろう、お尻である。

 

 大きく、息を吐き出す。いつの間にか止まってた呼吸をどうにか起動させて脳に酸素を送る。口に溜まりもしない唾液をどうにか喉に押し込んで、決して魅惑に負けない心を持ちながらお尻に触れる。

 

「んぅっ」

 

 セシリアさんの艶かしい声が耳に聞こえる。けれど俺を止める様な声はない。

 ふにゅりと俺の手の力によって歪むお尻の形と手に広がる何にも例え難い感触が俺の脳内と下半身を蝕んでいく。もしかしたら俺はココで死ぬかもしれない。幸せで死ぬことはあるのだろうか。腎虚とか?

 ちょっとした賢者モードである脳内がそんな結論を出してきたが、賢者であろうが、愚者であろうが、俺はこの柔らかい感触を堪能する。堪能したい。むしろすべきである。

 少しだけ力を込めて尻たぶを揉む。柔らかい感触が手に広がると同時に自分の中にある黒い感情がフツフツと湧き上がる。

 

「――ッ」

「あ……」

 

 それは本当に小さな声だった。けれども確かにセシリアさんは痛みを訴えるように声を出した。

 次第に冷えていく頭が今の現状を嫌になる程伝えてくる。

 息を飲みこんだ。次は彼女が綺麗であった、という理由ではない。

 

「わ、悪い」

「あ、いえ――」

「――頭冷やしてくる。悪かった」

 

 立ち上がった俺をチラリと見たセシリアさんは何かを否定したい様な顔をしていたけれど、ソレはそれ。俺は決して彼女を振り返らずに海へと向かった。

 

 なんとも格好の付かない、敗退である。




>>シャルロットは?
 次で書くから(震え声

>>なんかセシリアへの想いが爆発してない?
 むしろ不発してコレだという事を理解していただきたい。

>>おっぱいが無い……
 お尻はあるから(震え声



>>で、一夏は?
 次々回だ。安心したまへ

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