恋姫†有双   作:生甘蕉

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五話    名前?

 

「ううぅっ」

 道場の隅っこ、体育座りで涙する俺。

「うまくいったのかしら?」

 可愛らしく首を傾げる曹操ちゃん。

 

「殺された……曹操ちゃんに殺された! 通じ合ったと思ったのに!」

「引継ぎを確かめるためよ。苦しくはなかったでしょう?」

 言われてみるとたしかに今までで一番苦痛の少なかった死に方だったかもしれない。そうか! あれが曹操ちゃんの愛だったのか!!

 

「季衣の引継ぎはできそう?」

「ええと……」

 

 ???

 曹操

 ???

 ???

 ???

 季衣

 ???

 

「うん。オッケーみたいだ」

 名前の反転を確認すると道場に季衣ちゃんが出現する。そういう仕様なのかな?

 

 出現したピンク髪ロリボクっ娘は寝ていた。

 淫乱じゃないピンクの頬をプニプニする曹操ちゃん。

 あれ? デジャヴュ? なんか大事なことを思い出しそうな? 思い出したらヤバいことのような……結局思い出す前に季衣ちゃんが目を覚ました。

「にゃ?」

「おはよう」

 

「華琳さま、ここどこですか?」

「死後の世界よ」

 正確には俺の死後の世界です。

「ええっ、ボク死んじゃったんですか!?」

 季衣ちゃんに現状を説明するのには苦労した。

 この状況をすぐに理解した曹操ちゃんが異常だったのを差っ引いても、なかなか解ってもらえなかった。

 

「ええと、とにかく向こうに戻ったら北郷軍に降らずに、華琳さまと合流すればいいんですね!」

「上手くやりなさい」

「はーいっ!」

 元気よく季衣ちゃんがお返事したのでセーブ2からロードする。

 

 俺の燃え盛る愛によって術が解けた曹操ちゃん。

 もう縛られていないのに俺を殺さないのは愛だよね、そう感動してたらポツリと一言。

「人選、間違えたわ」

 

 その言葉通り、季衣ちゃんたちが合流したのは前回と同じタイミング。

 結局、季衣ちゃんは夏侯惇将軍たちに上手く説明できなくて失敗した。王佐の才を持つという荀彧をもってしても理解できなかったようだ。

「だってボクが寝ぼけてたって信じてくれなくて。酷いんですよ! 春蘭さまたちボクのことひん剥いて股間確認して、まだ膜があるではないか! ってボクのこと怒って」

 真っ赤になって半泣きな季衣ちゃん。いかに大好きな夏侯惇だろうとかなり恥ずかしかったらしい。それとも信じてもらえなかったのがつらいのかな?

 それを楽~しそうに眺めてる曹操ちゃん。

 あれ? もしかしてこうなるってわかってて人選ミスしました?

 

 本陣にて曹操ちゃんが説明する。

 曹操ちゃんとシたと知ったら夏侯惇が俺を殺そうと剣を振りかぶった。

 曹操ちゃんと季衣ちゃんが止めてくれなければ、俺は即死だっただろう。

「止めないで下さい華琳さま!」

「そうです。春蘭の言う通りです。華琳さまを汚した男など生かしておく必要はありません!」

 バカの夏侯惇はともかく、ネコミミ軍師さん話聞いてました?

 俺を殺したらまた曹操ちゃんが汚されるんですよー。

 

「そう。もはや私は汚れているのね」

「い、いえっ! 華琳さまはお綺麗です! で、ですが!」

「殺すのは桂花たちを抱いてからよ」

「え? か、華琳さま?」

「季衣の話を信じてあげなかったんでしょう。あなた達には罰を与えないと」

 曹操ちゃんの視線に夏侯淵将軍までもが身を竦める。

 

「けど結局、俺また殺されるの……」

「せめてどんな死に方がいいか選ばせてあげる」

 ならば、ここは男らしく即答しよう。

「腹上死!」

「……いいでしょう」

 なんか凄い笑みを浮かべられました。

 

 

 

 白装束でうやむやになった北郷軍との戦闘。おっとり刀で駆けつけた呉軍も入れて停戦協定。

 悪いのは全部白装束に押し付けたらしい。

 

 そして本城へ戻るなり曹操ちゃん、夏侯惇、夏侯淵、荀彧と連続耐久プレイ。

 曹操ちゃん以外の三人じゃ起たないなんて以前言ったけど、起ちました。

 起たされました!

 恋姫がお口ゲーって思い出しました!

 お口は初めてだったけどよか(えが)った~。

 あ、曹操ちゃんの術を解く時はお口は試せませんでした。

 だって絶対噛まれるって! 千切られるって!

 あと、もしかしたら貧乳以外のおっぱいも悪くないのかも知れない。大きな発見だった。

 

 俺以外は交代しながら食事や休憩をしてたけど、俺にはそんなの無し。

 排泄はどうしたかなんて聞かれたら死にたくなる。

 抜けてる間に曹操ちゃんや荀彧は仕事もしてたようだ。

 途中で季衣ちゃんも混じってきた。

「二回目は痛くないって聞いたのにー!」

 また泣かしちゃいました、ゴメン。その身体は初めてだったんです。っていうかやっぱり理解してなかったのね季衣ちゃん。

 最後はたぶん曹操ちゃんだったと思う。

 最低で最高の死に方だった。

 

 

 

 道場にて引継ぎ確認。夏侯惇たちも出現した。

「ここは?」

「まさか本当に?」

「ほらほらほらぁっ! ボクの話本当だったじゃないですか!」

 信じてもらえなかったのがよっぽど悔しかったんだろう。鼻息荒く得意気にぺたんこな胸をはる季衣ちゃん。

 

 急に人数が増えたせいで道場主が愚痴をこぼす。

「ここは会議室じゃないっての」

「事件は会議室で起きてるんじゃない! 閨で起きてるんだ!」

「今のは?」

「孫策よ」

 ぐっすん。俺の渾身のギャグ、スルーされました。

 

 孫策の言う通り会議室みたいになった道場。

 曹操ちゃんが状況を説明。

 凄い目で夏侯惇と荀彧に睨まれました。オシッコちびりそうとです。もちろん嬉ションとです。

「無理やり華琳さまの貞操を奪っただと!」

「死になさい、強姦魔!」

「スミマセン。他に方法が無かったんです!」

 

 マスターしたクイック土下座を発動する前に、曹操ちゃんが二人を止めてくれた。

「落ち着きなさい、春蘭、桂花」

「しかし!」

「それ以上の責めは私を辱めることになるわよ。私がただ陵辱されるがままだったと」

「か、華琳さまを辱めるなどと……」

 言いよどんだ後、赤い顔でにへらーっとだらしない表情をする夏侯惇。なにを考えているのやら。

 

 

 曹操ちゃんが四人に指示を終えると、やはりセーブ2からロード。

 北郷軍に降らなかった夏侯惇たちと合流。白装束たちを倒して北郷軍と停戦。

 今度こそ借りなんてないんで強気な魏勢。

「ふん! 白装束は北郷を狙っているというではないか! 我らはそのとばっちりを受けた。いい迷惑だ!」

「なんだと!」

 白熱してるなあ。

 てかなんで俺、この場にいるのさ?

 

 

 

「停戦協定など信じられない。曹操が覇業を諦めるなど!」

「道士に阻まれる程度の天命だったというだけ。今はあいつを殺す方が重要よ」

「信じろと?」

「まあ、そうでしょうね。だからこちらからはその証明を預けるわ」

「証明?」

「曹魏の宝よ」

 宝か。剣かなんかかな? それともハンコ?

 

「宝……って」

「ええ。人質にするなり好きにしていいわ」

「人質って、人間か! あの人材マニアの曹操が宝と呼ぶほどの人物……そんなすごい人がいるのか」

「……生きて再び私の元へ戻ってくることができたら、私の夫となる者よ」

 嘘っ! そんな奴いるの!?

 って、曹操ちゃんもしかして俺を見てる?

 ゆっくりと自分を指差したら頷かれた。

 

 え? えええええええええええええええ!?

 

「お、夫!? 曹操って男嫌いじゃ?」

 北郷軍や呉勢にも動揺が走っている。

「それにもう一つ。名を聞いたら興味がわくかしら」

「え?」

「名乗りなさい」

 

 うっわ、凄い注目されてるよ俺。

 曹操ちゃんに促されて緊張しまくりながらも名乗りを上げる。

 

 

「姓は北郷」

「ええ!?」

「名は達刀」

「そ、それってまさか?」

 動揺してるね、北郷軍。

 

「久しぶりだな、一刀。達刀お兄ちゃんだ」

 できる限り精一杯のスマイルを浮かべる。

「ご主人様に兄弟など!」

「そ、そうだ、俺には兄貴なんていない!」

 いや、後から出てくるかもしんないぞ、妹みたいに。

 

「そうか、いなかったことにされたのか。親父たちつらかったのかな」

「え?」

「俺は幼い頃この世界へとばされた。お前が覚えていないのも無理はない」

 ふっと空を見上げる。

「俺が覚えているのは花見や花火大会の時の人ごみくらいだしな」

 浅草といったら、祭りとか隅田川の桜や花火だよね。北郷一刀の知識じゃスカイツリーなんて完成する前だろうし。あ、無印主人公は浅草じゃないのかな?

「う、嘘だ。そんなことあるわけ……」

 

 

 

「うん。ない」

「へ?」

「冗談だよ。後から御遣い君の兄貴とか親父とかが出てくる展開になったら困るから先にギャグにさせてもらった」

「馬鹿にするのか?」

 ズッコケてる北郷軍。ドッキリ成功?

 

「いやあ、普通に登場しても俺、インパクトないし~。曹操ちゃんの台詞でハードル上げられちゃったからガッカリ確実そうでつい」

 俺、地味なおっさんだしね。あと自分の緊張を誤魔化すためにギャグモードにもってかないとさ。

 

「インパクトとかハードルって……」

「俺の名は天井(あまい)皇一(こういち)。字と真名はない」

 本名教えるのって()なんだよなあ、中途半端な厨二ネームで。姓の方も『てんじょう』とか『あまーいっ』ってよくイジられたし。

「こういち?」

 俺の名に反応する北郷一刀。そうだろう、読みだけらならごくありふれた名前だ。

「真名がない?」

 北郷軍の他の将たちも気付く。

 

「そう。誰かさんと同郷だそうよ」

「先にそれ言えばいいのに」

「うさんくさいだろ。それに曹操ちゃんが俺のこと夫にとか言うからもう頭ん中パニックで」

 ちょっと頭ん中で曹操ちゃんとの新婚生活一週間ぐらい早送りで妄想してました。裸エプ週四くらいで。

 

「あら? 死ぬほど私の身体を貪っておいて責任とらないつもりかしら?」

 せ、責任?

 それが夫ってことなの?

 

「死ぬほど華琳さまの身体をだと!!」

「まあたしかに死ぬほどだったのは間違いないな。姉者、私たちもいっしょだったではないか」

「これだから脳筋は……今はそれが羨ましい。わたしも春蘭みたいに記憶を消したいわ!」

「ボクも痛くて大変だったよー」

 魏上層部が俺を責め立てる。死ぬほどって言うけどさ、死んだの俺なんですけどー。

 

「お、俺と結婚してくれるの?」

「私の真名を預けるわ。知っているでしょうけれど私の真名は華琳。どう? これで納得した?」

 俺ではなく、北郷軍の連中を振り返る曹操ちゃん。……いや、華琳ちゃん俺の質問に答えてくれてないよね?

 

「曹操を篭絡した? しかも将軍たちまで? ……そ、そのような危険な男を引き受けるわけには」

「なんか厄介者押し付けようとしてないか?」

「ちょっと! 俺なんかすげえ勘違いされているじゃないか!」

 北郷軍の俺を見る目が冷たい。あんまりだ。俺は初心(うぶ)晩生(おくて)なのに。

 

「なんかお兄ちゃんみたいなのだ」

「え? 俺ってそんな風に見られている?」

 心外そうな天の御遣い。いや見られるも何も君はち●こでしょ? ファンからの愛称がち●こさんじゃないか。

 

「大丈夫よ。その男は中古には興味ないらしいわ」

「待って! それ違う! 俺以外の男を知っている女が嫌なだけですー!」

「だ、そうだから」

「うん、なら大丈夫か」

 ホッと胸をなでおろすち●こ君。

 

「ご主人様、どういう意味ですか?」

 意味わからないのかな関羽。親切な俺が教えてあげよう。

「説明しよう! 北郷軍に処女なんているわけがない。みーんな天の御遣い様のお手つきです」

「あ、あははははは」

 

 

 御遣い君が北郷軍の武将たちに引きずられていってやっと緊張が解ける。

 どうやら俺の人質が確定したようだ。

 ……なんか泣きたくなった。華琳ちゃん、夫とか浮かれさせておいて俺は邪魔なのね。顔も見たくないのね。

「おっちゃん、きっと助けるから! だからもう泣かないでよ」

 慰めてくれる季衣ちゃん。泣くなって、季衣ちゃんだって俺に抱きついてわんわん泣いてるよね。……また泣いてたのか俺。

「ふむ。華琳さまが真名を預けたのならわたしも預けねばなるまい。春蘭だ」

「私の真名は秋蘭。立派に人質の務めを果たすがよい」

 泣いてた俺が惨めすぎて同情したのか夏侯姉妹が真名をくれた。

 

「わ、わかったわよ! 桂花。これでいいんでしょ!」

 俺にではなく、じっと見つめていた春蘭、秋蘭にむかって叫ぶ桂花。

「いい! 真名を教えたからって呼ぶことは絶対に許さないから! ……まあ、もう会うこともないだろうからどうでもいいか」

 暗い笑みを浮かべている。きっと北郷一刀たちに俺を殺させるつもりなんだろう。俺が死んだらまたやり直しって忘れてるのかな?

 

 ううっ、抱きついてる季衣ちゃんの締めつけ、かなり凄いんですけど。

 いや、締めつけが凄いって、そっちの意味じゃなくてね。マジ鯖折り。

 俺の背骨とか鳴っているんだってば。

 

「嬉しそうね」

 死にそうの間違いです華琳ちゃん。

「餞別よ」

 いきなり唇を奪われた。そうやってまた俺を惑わすのか小悪魔め。

 

「お、俺のセカンドキスが……」

 ファーストキスは生後九ヶ月の姪っ子に奪われたのは秘密だったりする。

 え、こっちでヤってる時キスしなかったのかって?

 お口臭いって言われたらヤだから我慢してましたがなにか?

 暫く歯磨くの、いや、ガム噛むの止めよっと♪

 

 

 てなワケで俺は人質となって北郷軍に預けられることに。

 ……もしかしなくても死亡率上がってね?

 

 


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