恋姫†有双   作:生甘蕉

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三話    26?

 ロード

 ヤる

 ()られる

 

 を何セットか。

 二桁は軽く超えているはず。もう数えてはいない。

 

 少しは上達したと思うがやっぱり上手くいかない。

 でも自身の快楽も凄いんで選択肢を見もせずに連打でロードしていた。

 まあ即効再ロード道場スキップの一番の理由は、孫策ってこっちのこと知ってるジャン。なんか言われるのって恥ずかしいジャン。なワケで。

 

 

「もしかしてこっち?」

 ふと気付いて前だけじゃなくて後ろの処女ももらった。

 やっぱり殺された。

 

 

「ええと……ええと……」

 なんか思い出してきた。

「そうだ! 無印だと北郷一刀は確か曹操ちゃんを縛ってからだったじゃないか!」

 もっと早く思い出せばよかった。

 ……なんかもっと大事なことを忘れているような気がするような?

 

 

「正気を取り戻してくれ!」

 出た後、入れたまま強く抱きしめる。

「殺す!」

 いつものように言う曹操ちゃん。

 だが今回は縛っているおかげで俺はすぐに殺されない。

 

「今度こそ術を解く!」

 そう叫びながら再チャレンジ。

「殺す!」

 

 

「……」

 四回戦を終えた時、曹操ちゃんは無言だった。

 唇を噛みしめて俺を睨み続けていた。それも涙をたくさん溢れさせた瞳で。

 

「ごめん」

 いたたまれなくなる俺。曹操ちゃんから離れる。

 それでも睨み続ける曹操ちゃん。

 

「曹操ちゃんに掛けられた術を解くのは無理そうだから、もっと前からやり直すよ。本当にごめん」

 頭を下げて謝る。

 

「……なんて謝っても覚えているワケないんだよな」

 曹操ちゃんを縛っている縄を解く。

 当然のようにすぐさま、曹操ちゃんの両手が俺の首を捕らえる。いつものごとく俺は抵抗しない。暴れたって辛いのが長引くだけだ。

 

「忘れるわけないでしょう! この私の初めてを奪ったのよ、二十六度も!」

「!?」

 薄れゆく意識の底でそんな声と、自分の首の骨が折れる音を聞いた。

 

 

 

 

「ずいぶんとお楽しみだったみたいね」

 予想通りのニヤニヤ孫策。

「なあ……」

 そんな孫策よりも、別のことが気になっていた。

 

「記憶があるのって俺だけ?」

「さあ?」

 ニヤニヤニヤニヤな表情。

「教えて下さい! 曹操ちゃんが言ったことが気になって……」

 頭を下げて頼み込む。

 

「やっぱまだ気付いてないのね」

「?」

「項目、増えてるわよ」

 ここで項目といったらアレのことだろう。さっきまで連打で済ましていた、空中の文を確認。

 その文はいつも通りの『つづきから』『はじめから』ではなかった。その下に『ひきつぎ』の一行が追加されている。

 クリックしてみる。

 

 

 だれをひきつぎますか?

 ???

 ???

 ???

 ???

 ???

 ???

 ???

 ???

 ???

 ???

 

 ???が続いていくのを眺めていくと。

 

 ???

 ???

 曹操

 ???

 ???

 ???

 

 となっているのを発見。おおっ、漢字使えるんじゃないか。しかも曹操の一行は色が反転しており、選択済みになっているように見えた。

「これって?」

 曹操の下に続く???の最後に、もどるを発見。クリックしてみる。

 

 つづきから

 はじめから

 ひきつぎ

 

 となった。

 

「もしかして……」

 空中の文から孫策の方へ視線を向けると、その後ろに曹操ちゃんがいるのに気付く。

 

「え、ええええええ!!」

「そ。こういうコト」

 最高のニヤニヤ面を見せる孫策。

 

 眼光鋭く俺を睨みつける曹操ちゃん。今度は泣いてはいない。

「どういう事か説明なさい」

 

 

 

 

 

「そんなこと信じられると思う?」

 全てを正直に話した俺。なのに返ってきたのはそれ。

「ですよね」

 曹操ちゃんの前に正座したままうなずく。

 

「けれど、私は二十六度もあなたに襲われたわ」

「スミマセン。他に術を解く方法知らなかったんです」

 即行で土下座。

 ずっと術が解けてたのに俺、殺されていたのか……。

 いきなり殺さないでくれれば二十六度も繰り返さないですんだのに。

 そう。さっきから何か言うたびに二十六度って。

 なんて中途半端な数だ。チクショウ! もっとヤってればよかった!!

 

「なにか言ったかしら?」

「い、いえなにも」

「で、これからどうするつもり?」

「夏侯惇将軍たちは、北郷軍へと降っています」

「そう」

 土下座したままなので曹操ちゃんの表情は見えない。怒ってるのかな?

 

「す、全ては曹操ちゃんを助けるためです」

「どういうこと?」

「将軍たちは曹操ちゃんの様子がおかしいのに気付き、白装束に操られていることを察知、恥を忍んで北郷軍に助けを求めているはずです」

 俺が人形とすり替えたせいでちょっとは変わってるかもしれないけれど、あの人形そのまま輿に乗せてる可能性が一番高いもんなあ。

 

「あの子たち……」

「将軍たちは曹操ちゃんのために」

「わかっているわ!」

 

 

 しばらくみんな無言で俺は土下座したまま。

「面を上げなさい」

「はっ」

 やっと曹操ちゃんの可愛い顔が見れる。相変わらず俺を睨んでるけど少しキツさ減ったかな。俺の希望的観測?

 

「なぜ私はあなたの力に巻き込まれたのかしら?」

「それはたぶん……」

 たぶんじゃなくてきっとそう、なんだけど怖くて言えない。

「たぶん?」

 言わなきゃ駄目なのか……。

 

「や、ヤっちゃったからです」

「抱かれたからってこと?」

「はい。俺以外の記憶の引継ぎができたのは曹操ちゃんが初めて。曹操ちゃんが記憶を引き継ぐ前にしたことといえば……。その他にも条件があるかも知れないけど、可能性が一番高いのは間違いなく」

「あなたに抱かれるってこと?」

 ドキドキしながらうなずく俺。

 曹操ちゃんの様子にあまり変化は無い。

 よかった。もうそんなに怒ってないのかな?

 

「試してみましょう」

「え?」

「他の女を抱いてみなさい」

「……無理」

 なんて無茶を言うんだ、この可愛い覇王様は。

 

「私の命令に逆らうの?」

「だ、だってこの歳まで童貞だったんだ。曹操ちゃんのような超絶美少女で筆おろしできただけでも奇跡なんですよ!」

 鋭さを増した曹操ちゃんの睨みに怯みながらも反論。

「超絶美少女?」

「うん。最高で究極に可愛い! そんな子とできて運まで使い果たした俺が、この上さらに他の娘となんてできるなんて奇跡があるわけない!」

「命令するわ」

 俺の正当な評価が通じたのか、頬を染めながらの曹操ちゃん。

 

「俺には無理ですってば」

「命令するのはあなたにではないわ。そうね、成功してあまり記憶の引継ぎをされても困るでしょうから魏の重要人物、夏侯惇、夏侯淵、荀彧あたりかしら?」

「無理です」

 即答する俺。そう、その三人はやっぱり無理。

 

「私が命令する。あの子たちは逆らえない」

「でも無理です。季衣ちゃんならともかく」

「季衣の真名は預かっているのね……あなた、そういう趣味なの?」

「うん!! い、いえ、ちっちゃい娘が大好きなのは確かですが、もっと別な理由が……」

 重大な理由。譲れない理由。

 

「理由?」

「非処女は嫌! 俺の未熟なテクニックを比較されたくない!」

 俺は処女厨だ!!

 

「てくにっく?」

「あ、技術って意味かな?」

「こんな男に……」

「あと季衣ちゃんは俺を殺さないし!」

「春蘭たちには殺されたの?」

「ついさっきまで俺を殺したトップ……第一位が夏侯惇将軍」

「今は……聞くまでもないようね」

 はい、俺の前の美少女です。

 

「そんな理由が通ると思ってるの?」

「そんなこと言われてもできません。怖くて起ちませんし」

「……私の時は起ったじゃない。あんなに殺したのに」

「そ、それは……」

 イカン、顔が熱い。おっさんの赤面なんて見て誰が面白いんだ。

 

「それは?」

「す、好きだから! 曹操ちゃんのことが好きだから!」

 うひゃぁ、言っちゃったよ。ううぅぅ、この歳で告白なんて……恥ずかしくて死にそうだ。ここで死んだらどうなるんだろう?

 元々曹操ちゃん狙いで魏を選んだワケだが、俺の初めてを捧げてもう無茶苦茶好きになっていた。

 これはもはや愛!

 

「そ、そう……」

 面食らった顔の曹操ちゃん。

 え? そんな答えは予想してなかったの?

 俺の気持ちが、愛が通じて干吉の術が解けたんじゃなかったの?

 

 なんか急に冷めた俺。そうだよな、俺なんかに告白されたって「なに言ってんのこのおっさん、キモ」なワケだよな。

 

「ちょっと、だいじょうぶ?」

 呆けていたらいつのまにか美少女の顔が間近にあった。可愛いなあ。

「そんなに無理なの?」

「は、はあ」

 間抜けな返事を返す俺に、曹操ちゃんはあきれ顔。

 

「仕方ない」

「わかってくれましたか」

「季衣を抱きなさい」

「え?」

 ぱちくりと思わず瞬き。

 

「言ったじゃない。季衣ならばできるのでしょう?」

「そ、それはそうですが、こういうのは両者の合意がないと」

「両者の合意、ねぇ。二十六度の内の一度たりとも合意した覚えはないのだけど」

「スミマセン!」

 即土下座。いつまで言われるんだろう、トゥエンティシックス。

 

「まだ蕾の内なのは心が痛むけれど、たまにはそれも悪くない」

 なんか声が嬉しそうなんだけど、怖くて頭は上げられない。

「はじめての時はどんな顔をするのかしら?」

 やっぱ楽しそう、っていうかさ。

「あ、あのもしかして、季衣ちゃんとの時って」

 土下座したまま聞く。

 

「もちろん私も参加するわ」

 マジですか!!

「わかったらさっさと始めなさい」

「はい喜んで!」

 

 俺はすぐさまセーブ2をロードした。

 

 

 ってセーブ2って……。

 

 

 

 

 今度は二十七度って言われ続けるのか。

 大きなため息をつきながら寝台の曹操ちゃんを縛るのだった。

 

 


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