恋姫†有双   作:生甘蕉

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二十四話  正体?

「華琳、なんてことを!」

「あわわわ……」

 蓮華の初体験後、華琳ちゃんに殺されて道場で引継ぎ確認した俺。

 蓮華は出現するなり華琳ちゃんを怒鳴る。

 雛里ちゃんは突然の状況にキョロキョロ。

 

 そして、二人とも異変に気づいた。

 

「皇一さん!?」

 勢いよく近づいてきて、俺の眼鏡を奪う蓮華。君もか……。

「本物の皇一さん! ……いったいどうなってるの?」

 眼鏡を取ったのは俺が偽者じゃないかって思ったからか。

 まあ、目の前で首を刎ねられた男がぴんぴんしてるの見たら、そう考えてもおかしくないかな。

 他の方法選んでほしかったけど。

 しばらく俺を見つめた後、はっとして辺りを見回す蓮華。俺以外のメンバーにも気づいたようだ。

「それにここは? なんでみんながいるの?」

 

「ここは、小覇王道場」

 姿を見せた道場主に蓮華の動きが止まる。

「……姉様の偽者?」

 それを聞いた孫策は、わざとらしく肩を落として大きくため息。

「混乱してるのでしょうけど、私が本物かどうかくらい一目で見抜きなさい」

「その声、その物言い……でも、姉様は確かに死んだ……」

 助けを求めるようにこっちを見たので説明するかな。でもその前に眼鏡返してね。

 

「あ」

「でゅわっ!」

 蓮華から眼鏡を回収して装着。蓮華が落ち着くように、俺はゆっくりと説明する。

「その孫策はね、たぶん、本物だよ」

「たぶんって、随分ねえ」

「ね、姉様っ!」

 まだなにか言いかけてた孫策に蓮華が飛び込んでいった。

「姉様……姉様……!」

 姉の胸で泣きじゃくる蓮華。優しい顔でその頭を撫でる孫策。

 あんな顔初めて見た気がする。

 

 

「ここはあの世みたいなもんかな。その孫策は、幽霊みたいなもんだと思ってくれればいい」

 やっと落ち着いてきた蓮華。みんなに泣いているところを見られたのが恥ずかしいのか、その顔は赤い。

「あの世? みたいなもの? 皇一さんはやっぱり死んでしまったの?」

「うん。でも、死んじゃったけど、俺は死ぬ前に戻るから」

「どういうこと?」

 この状況を説明するの、何度目かな。説明用のカンペを道場の壁に張っておきたい気分だ。

 

 

「そんなことが……」

 雛里ちゃんはすぐに理解したみたい。さすが天才ロリ軍師だ。

 

「この者たちみんなが、皇一さんに抱かれたの?」

「あ、孫策は別だから」

 驚く蓮華に補足した。

「ふしだらって軽蔑した?」

「……いいえ。ただ、手馴れてたのを納得できただけよ」

 

「そう。蓮華は優しくしてもらったのね」

「ね、姉様っ!」

「まったく、まさか呉で一番初めにくるのが蓮華とはね」

「そ、それは……敗軍の将として仕方なく……」

 蓮華の声がどんどん小さくなっていく。身体の方も縮こまらせているようだ。

 それでも孫策は続けた。

 なんか体育会系の負けた試合の後のミーティングみたいだな。

 

「なんで赤壁から出たの? 冥琳も止めたでしょう」

 負ける原因になった部員が、顧問やキャプテンから駄目出しされてる、そんな感じ。

「だ、だって姉様ならきっと出撃するって思って……」

 またもため息の孫策。

「私を引きずってどうするのよ。蓮華は私と違った王にならなきゃ駄目じゃない」

「でも……」

 そうか。真・恋姫†無双でも孫策を失った蓮華は死んだ姉を目標にしていたっけ。一刀君に指摘されて改善されたけど、この蓮華はその機会がなかったんだ。

 

「それにいくら私でも、作戦ならおとなしく待機するわ」

 いや、どうだろう。真や萌将伝だとそんな気はしませんが。少なくともおとなしく、ってのはないんじゃない?

 蓮華もそう思ったみたい。

「そ、それは嘘です! 冥琳に聞いてみますか?」

「ふふっ。それぐらい言えれば大丈夫かな。呉が負けちゃったのは悔しいけれど、今回は蓮華が変わるきっかけになると思うことにするわ」

 ……今回は、か。次があるような言い方されると気になるなあ。

 

 

 

 ロードして再開する。

「本当に生き返った……」

 俺の首筋に触れ、繋がってるのを確認中の蓮華。……そんなにさわさわされると感じちゃうって。

「と言うより、死ぬ前に戻ったんだ。記録したのがやる前だから、今の蓮華はまだ処女だよ」

「え?」

 

 使ったのはセーブ3。

 記録したタイミングは蓮華が閨に入った辺り。

 どうせ死ぬってわかってたから、セーブしといたんだよね。

 朝のセーブ1からやり直すのは大変だし、セーブ2は上書きしたくなかったんでセーブ3。

 

 

 現在のセーブ状況。

セーブ1 毎朝のセーブ用

セーブ2 華琳ちゃんと愛紗との初めての直前

セーブ3 蓮華との初めての直前

 

 

 うん。セーブ2に上書きなんてできないよね。……もっとスロットあればなあ。

 天の声バンクとか、ターボファイルとか、どこかで入手できればいいのに。

「さっきしたのは孫策に会わせるため。だから華琳ちゃん、今夜はもういいでしょ?」

「ええ。その美尻をたっぷり堪能したしもういいわ、蓮華。皇一、蓮華の分まで楽しませてくれるんでしょう?」

 全裸の華琳ちゃんが俺にしな垂れかかってくる。

 俺の顔を撫で回し、そして眼鏡を奪う。

「で、でも……」

「辱めや罰はもういいの。皇一に抱かれたいのなら、本当に皇一の嫁になる覚悟ができてから」

 華琳ちゃんに諭され、真っ赤になる蓮華。

「楽しみたいだけなら、私が相手をしてあげるけど?」

 ぺろりと舌なめずりする超絶美少女に、蓮華はさらに赤くなって逃げるように閨を出て行ってしまった。

 

「可愛いわね」

 華琳ちゃんの耳に囁く。

「華琳ちゃんも可愛いよ」

「……やっぱりずっと眼鏡を外してなさい」

「それは無理」

 

 

 

 

 赤壁に残っているはずの一刀君たちは既に撤退していた。

 それも、決戦に参加できなかった呉の水軍の大半を引き連れて。

 もしかして劉備も仲間にいるの? そう思うぐらいのカリスマと手際。

「ドサクサにまぎれて上手いこと言いくるめたんでしょう」

 桂花はそう解析したけどどうなんだろ。白装束が絡んでないといいなあ。

 蓮華を捕らえたのは愛紗だと聞くし、呉の予想外の無印的な展開に俺は不安で仕方がなかった。

 

 

 魏に戻ってきた俺たち。

 呉の主だった将、軍師も連れてきている。

 捕虜、ではなく華琳ちゃんの部下として。

 もはや魏の一部となった呉領の統治と、水軍の育成が主な仕事。

 一刀君たちに呉の水軍を奪われた以上、魏も水軍を強化しないといけない。

 ……それはわかっているんだけど。

 

 わかってるんだけどさ、呉キャラ全員くることないじゃないさ!

 性教育の授業を前に、ため息が止まらない。

 この授業を褒美として要求したたんぽぽちゃんや翠はまだいいとして、なんで前回の参加者までこんなにいるかな?

 一応、引継ぎしてる娘たちは半泣きで頼んで参加を見合わせてもらったのにさ、張三姉妹は前回いなかったからって参加してるし、華琳ちゃんは監督役よって当然のようにいるし。

 気が重いけど早く終わらせよう……。

 

 

「とにかく、処女は大事にしなさい!」

 これが言いたいがために恥ずかしい目にも耐えたんだ。

 ……うん。やっぱりわりに合わない。もう絶対やらない!

 驚いたことと言えば、クールビューティな周瑜が俺のを赤い顔で見ていたこと。結構可愛い表情だった。

 その理由は嫁からの嘆願でわかったけれど。

 

 

 俺の嫁ではない。

 周瑜の嫁。小喬ちゃんからの……お願いっていうよりはお誘い。

「悪いけど、俺は処女じゃないと」

「冥琳さまもあたしも、初めてに決まってるじゃない!」

 頬染めながらも小喬ちゃんが怒る。

「嘘!?」

「なんでそんなに驚くのよ!」

 そりゃ驚くでしょ。

 だって小喬ちゃんは乙女だらけなはずの無印でまさかの中古ロリだったじゃん! 周瑜と結婚してるし、大喬ちゃんには生えてるし!

 

 あ、でも本当に処女だって言うんなら、俺のを観察していた時の周瑜の表情には納得がいくかも。

 

「処女は大事にしなさいって言ったでしょ! 結婚する相手とだけにしなさいって!」

「冥琳さまとあたしはもう夫婦よ!」

 あ、そうか。なら、いいのか。

 ……あれ? いいのかな?

 

「しゅ、周瑜は同意してるの?」

「無論だ」

 い、いつのまに背後に。

 呉の軍師さんは戦闘力も高いからって、俺に気配を悟られないぐらい余裕なの?

「俺でいいの? 俺、二人とも嫁になってくれるって思っちゃうよ」

 

「貴殿は祭殿の命の恩人だ。それに……」

 ふっと優しい魅力的な微笑みを浮かべる。

「私の恩人でもある。華佗に聞いたのだが、治療が遅ければ命の危険もあったようだな」

「周瑜は孫策の残した呉を支えようとして無理しすぎたんだよ。でも、これからはもっと自分の身体も大事にしないといけない。周瑜が倒れたら泣く人多いんだから」

 うん。俺も呉ルートでは泣かされたもん。

 

「そうです。この男の言う通りです冥琳さま。冥琳さまが死んだらあたしも、お姉ちゃんや孫権さまだって悲しみます!」

 想像だけでも辛いのか涙いっぱいに潤んだ瞳を見せる小喬ちゃん。

「小喬ちゃんもいいの?」

「あ、あんたの協力があれば冥琳さまと一つになれるんでしょ! 嫁ぐらいかまわない。……冥琳さまの恩人だし」

 一周目でいっしょに泣いた仲だし、いいかな?

 周瑜を孫策に会わせて、孫策から道場の詳しいこととか聞き出してほしいし。

 二人ともなぜだか処女だし!

 

「わかった」

「我が真名は冥琳。そう呼んでくれ」

「悪いけどあたしの真名は冥琳さまにしか教えないから」

 ああ、そうだった。大喬、小喬の二人も真名が無かったんだっけ。

「いいよ。ありがとう冥琳。俺には真名がないから好きに呼んで。あ、小喬ちゃんはおじ様、って呼んでくれたら嬉しいな」

 

 

 小喬ちゃんの話は嘘ではなく、二人とも処女だった。

 真・恋姫†無双でさえ、冥琳は男性経験のない非処女っぽかったのになあ。

 孫策がいないから無事だったのかな。でも、大喬がいるしどうなってるんだろう?

 

 

 

 その謎と、二周目になってずっと気になっていた謎が同時に解決した。

 ……解決、ってのは違うか。問題が解消したわけじゃないし。

 とにかく、正体が判明した。

 

 周回ボーナスで増えてしまった、もう一本の俺のナニの正体が!

 

 

「これ、大喬ちゃんのだったのか!」

 思わずそう叫びそうになって、ぐっと飲み込んだ。

 そんな俺を大喬ちゃんとシャオちゃんが怪訝そうに見ている。

 

 

 

 夜中、下半身に違和感を感じて目覚めた俺。

 なんかデジャヴュと思いつつ確認したら、星ではなくシャオちゃんと大喬ちゃんが剥き出しの俺のをじっくり眺めてる。

「え?」

「おはよう」

「まだおはようの時間じゃないでしょ」

 上目遣いに見ている二人。俺の顔と股間を交互に。

 

「シャオたちね、夜這いにきたんだよ♪」

「……はあ」

  取ってつけたようなため息を大きくつく。

 

「なによう」

 ぶぅ、と大きく頬を膨らませるシャオちゃん。

「処女は大事にしなさいって言ったでしょ!」

 人差し指でつん、と膨らんだ頬を突っつく。

「シャオの大事な初めてをあげるんだから、もっと嬉しそうにしなさいよ!」

「結婚する相手とだけにしなさいって! 大喬ちゃんまで連れてきちゃって」

 シャオちゃんは大喬ちゃんの身体のこと、知らないのかな?

 

「だって皇一のって一人じゃ大変だって沙和が言ってたもん」

「沙和、なに話してるのさ……」

 江陵での留守番中、沙和も両方同時を経験したしなあ。でも、結構悦んでた気もするけど。

 

「大喬ちゃんも嫌なら嫌ってはっきり言わないと……」

 大喬ちゃんに向き直った時に気づいた。二人は準備万端、全裸で俺のを眺めてたんだけど。

「あれ?」

 おかしい。

「ない? ……ちょ、ちょっと大喬ちゃん、いい?」

「え? きゃっ!?」

 大喬ちゃんの両脚を持って、ぐいっと開脚させる。

「やっぱりない!?」

 そう。大喬ちゃんの股間にあるはずの……女の子の股間にあってはならないはずの……ナニがなかった。

 

 

 

 叫ぶのをなんとか堪えた俺は、自分と大喬ちゃんの股間を交互に見比べる。

 半陰陽、つまり両性具有、所謂ふたなりだった大喬ちゃん。そのナニがなくなって……俺のナニが増えていて……。

 サイズはたぶん違うけど。

 袋が……玉がどこへ行ったかわからないけど。

 俺のナニが増えたことは大問題だけど、大喬ちゃんが普通の女の子になったことは素直に喜ぼう!

 うん。俺にはふたなりとか男の娘といった、ちん娘属性ないからね。

 

「なによなによ! 皇一はシャオより大喬の方がいいって言うの!?」

 ますます頬を大きく膨らませるシャオちゃん。童話の蛙みたいに破裂するんじゃない? って心配するほど。

「いやコレはね……」

 ……いったいどう説明しよう。生えてるはずだったから思わず確認しちゃったなんて。

「ないのがいいんなら、シャオだって生えてないんだから!」

 自ら開脚してみせるシャオちゃん。

 生えてないってそりゃそうでしょ。

 ……い、いやまてよ、恋姫は性別反転だから貂蝉みたいにシャオちゃんも生えてた可能性もあったのか……。生えてなくてよかった!

 

「どう? つるつるでしょ!」

 って、ああ! そっちか。生えてないのはしっとり艶々の方ね。

「うん。生えてないのはわかったから、もういいってば」

 大喬ちゃんの脚を広げていた両手を離してアピール。

 

 

「なんで俺なの?」

 仕切り直し。

 ……無理があるのわかってるけどさ。

「だって格好いいもん!」

 シャオちゃんの言葉に大喬ちゃんがコクコクと頷く。なんで大喬ちゃんまで……あ、寝る時に眼鏡外したままだ。

 眼鏡を探してキョロキョロ。あれえ? どこに置いたっけ? いつも枕元に置いてるはずなのに。

 

「顔だけが理由なら俺は嫌なんだけど」

 一周目のシャオちゃんは、眼鏡外す前から仲良くしてくれただけに余計にそう思う。

「それだけじゃないもん! 冥琳や祭を助けてくれたよ!」

「そのお礼は真名もらったでしょ?」

「捕虜になってる時だってシャオのこと、大事にしてくれたし」

 そりゃ、このシャオちゃんとは違うけど一周目のシャオちゃんは俺の大恩人だし。大事にするのも当然でしょ。

「とにかく! シャオは皇一のこと好きになっちゃったの!」

 そう言われたら何も言えないわけで。好きって言われて嬉しいのは間違いないし。

 

「……大喬ちゃんは?」

「あ、あの、小喬ちゃんがお世話になりました。ありがとうございます」

 ぺこりと頭を下げる大喬ちゃん。ああ、こっちは小喬ちゃんに話を聞いたのか。

「大喬はね、雪蓮お姉ちゃんを失ってからずっと寂しそうなの。元気になってほしいの!」

 そっか。シャオちゃんは義姉のことを考えて連れてきたのもあったのかな。

「大喬もおっぱい小さいし、皇一って小さい方が好きなんでしょ!」

 ……なんかそれで連れてきたのがメインの理由っぽいなあ。

 爆乳の陸遜とか黄蓋を普段からよく見てるから気になっちゃうのかな?

 

「それにシャオと大喬に大事なところを見せて、大事なところを見ちゃったのよ。責任とりなさいよ!」

 なにその理屈? たしかにじっくりと凝視しちゃったけどさ。俺の大事なとこを見た、っていうか眺めていたのはシャオちゃんの差し金でしょ。

 でも真っ赤な顔でこっちを見つめる大喬ちゃんには、そんなこと言えないしなあ。

「いいの? 初めてでしょ?」

「は、はい。お願いします。おじ様」

 ううっ。そう呼ばれちゃ応えるしかない!

 そうだよ。大喬ちゃんは生えてないし、まったく問題ないじゃないか!

 孫策と会わせてあげたいのもあるし。嫁や妹なんだし。

 ちゃんと処女みたいだし!

 

「シャオもいいんだから!」

「うん。……一つ聞いていい?」

「なに? シャオももちろん初めてよ! 優しくしてね♪」

 それはわかってますって。

「いや、俺の眼鏡知らない?」

「なんだ、その事? 終わったら返してあげる♪」

 やっぱりシャオちゃんが持っていたのか。

 

 

 

 後で小喬ちゃんに怒られた。

「お姉ちゃんの処女は、孫策さまのものだったのに!」

 でも本当は自分も混ざりたかったのかもしれない。だって今度は二喬いっしょに、って誘われたし。

 よく考えると、無印一刀君でさえ奪えなかった二喬の初めてをもらえたってのは凄いよな。ボーナスのおかげか。

 ……なんで俺んとこにきたのかがいまだに理解に苦しむけど。

 大喬ちゃんの玉の行方も不明だ。三周目やったらボーナスで玉増えたりするのかな? 怖いなあ、考えたくない。

 

 

 

 

 愛紗が一刀君の元へ帰るらしい。

 呉との決戦で蓮華を捕らえたことで、通行料分の働きはしたと華琳ちゃんも認めた。

「捕虜になるのをよしとせず、蓮華が自害する可能性もあった。それを説得して降らせたのだもの。十分な功績よ」

「では?」

「ええ。好きになさい。でもいいの? 皇一が泣くわよ」

 本人の前でそんなこと言わないで。だってもう泣きそうなんだから。

 

 

「本当に行っちゃうの?」

「はい。私はやはりご主人様の家臣なのです」

 やっぱり一刀君を選ぶのか……。

 そりゃおっさんより若い子の方がいいよね。俺だってBBAよりロリの方がいいもん。

 って、頭ではわかってるけど悲しいのは止められない。

 

「……止めても、無駄なんだね」

「一度決めた主を(たが)えるつもりはありません」

「そう……」

 止められないのか。愛紗が行っちゃうのも、俺の涙も。

 

「そのような情けない顔をしないで下さい」

「そ、そんなこと言ったってさ」

「まったく。私を嫁にしてくれる方がそれでは困ります」

「え?」

 今なんて?

 

「なんですか、今度は驚いた顔をして。私を嫁にするのでしょう?」

「で、でも愛紗は俺よりも一刀君を選んだんじゃ?」

 そうだよ。だから一刀君のところへ帰るんだろ?

「ご主人様は我が主。……とはいえ、夫というわけではありません」

「……ええとつまり、一刀君は上司で、俺は夫ってこと?」

「そうですね。何も問題はないでしょう」

 うん。愛紗は俺の愛紗のままなのはわかった。

 ……でも、相手はあの主人公様。心配だ。一刀君いい男だもん。

 

「一刀君は違うよ。武将や軍師のほとんどが既に一刀君の女になってる」

 愛紗が戻りたくなるかもしれないから黙っていたけど、鈴々ちゃんも朱里ちゃんももう……。魏延はわからないけど、黄忠や厳顔は確実に。

「なっ!」

「俺はそんなところに行かせたくない!」

「そ、それでも私は……」

 もう止められないのか。

「俺を置いて、行っちゃうの?」

「私の矜持ゆえ」

 

 愛紗を止められないと悟った俺は、涙を呑んであきらめるしかなかった。

「泣かないで下さい」

 ……呑みきれずに涙は溢れていた。堪えられるわけないでしょ、この俺が!

「まったく。そんなに私を信用できないのですか?」

「信じてる。信じてるけど……」

「……ならば、安心できるよう、女としての私はここに置いて行きましょう。春蘭、剣を貸してくれ」

 

 春蘭に借りた剣を、テールを纏めている髪飾りの少し上に当てる愛紗。

 え? それってもしかして!

 躊躇うことなくバッサリと切断。愛紗の綺麗な黒髪が床に落ちていく。

 それは蓮華のイベントじゃ?

 ほら、蓮華や甘寧が微妙な表情してるってば。

 っていうか、美髪公が髪切っちゃうなんて!

 

「これが私の覚悟です」

 剣を春蘭に返し、髪飾りを外して持った手を俺に向ける。受け取れってこと?

 両手を揃えて差し出す。震えてるその上に髪飾りを置く愛紗。

「でも、髪が短くなったって愛紗が綺麗で可愛いのは変わらない。う、浮気はしないでね」

「どの口でそれをいいますか?」

 ギロリ、と俺を睨む。

 もしかして冥琳とかシャオちゃんとかのこと、ばれてる?

「……浮気じゃない。みんな俺の嫁」

 我ながら図々しい言いわけ。

 

「浮気が心配なら、しっかり刻み付けておくことね」

 華琳ちゃん?

「私のことも忘れないように、しっかりと刻んであげる。愛紗とは初めての時だけだったし、お別れする前にもう一度くらいいいでしょう?」

「華琳殿……」

「それとも、愛紗も初めての娘とじゃないと嫌なのかしら?」

「そ、そのようなことはありません!」

 真っ赤になった愛紗が咄嗟にそう返してしまった。

「なら、決まりね」

 華琳ちゃんがただで手放す気があるはずもなかったか。

 ……やっぱり雛里ちゃんの時のことも、ばれてるんだろうか?

 

 


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