恋姫†有双   作:生甘蕉

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十八話   涼州戦?

 ボーナスというかペナルティというか、とにかく増えてしまった俺の息子には不思議な能力があるらしい。

 女性二人を同時に相手にした時、俺に貫かれてる女性は、もう片方の女性への挿入感や発射感を得られるというのだ。

 つまり、自分側ではない方の俺のからフィードバックを受けているっぽい。一時的に両性具有になれる感じだろうか?

 女性と男性の快感を同時に味わえるなんてすごいなあ。

 まあ、俺の方は自分の感覚だけだけど、女性二人を同時に感じられるんで不満は全くないんだけどさ。

 

 

「よかったわ愛紗。私はこの初めてを忘れない」

「っ!?」

 一瞬で耳まで真っ赤になっちゃったよ愛紗。

「愛紗も忘れては駄目よ。……皇一が忘れさせてはくれないかしら」

「わ、私は……」

「諦めなさい愛紗。皇一は例え死んでも離してくれはしない」

 まあ確かに、もう一刀君には渡すつもりないけどさ。

「いずれわかるわ」

 

 

 

 その後は待たせた分を取り戻すかのごとく嫁たちと。

 真・世界になったからな桂花はともかく、驚いたことに春蘭と秋蘭も処女だった。

「だから優しくしろと言ったのだ!」

 ゴメン。泣くほど痛かったのね。

 秋蘭も泣いて……るのはもしかして嬉しかったから?

「姉者の初めてを奪うことができるとは……感謝してるぞ天井」

 

 桂花も感涙かな?

「華琳さまぁ。華琳さまに捧げることができて幸せですぅ」

 ……なんか自分が双頭バイ●になった気がしてくる。

 

「一周目で叶わなかった三人の初めてが貰えた。嬉しすぎるけど、なんで?」

「ふふ。あなたに会うまでに他の男としてない証拠よ」

 一周目では彼女たちの処女を奪った覇王様がとっておいたくれたのか。俺の為に!

「信じてるって。でも、ありがとう」

 華琳ちゃんと桂花と同時に繋がりながら会話する。華琳ちゃんとキスしたいのに桂花の後頭部に邪魔された。

 

 

 季衣ちゃんだけは、流琉やねねに気を使ってるのかまだだった。

「兄ちゃん、もうちょい待ってね」

「兄様、ごめんなさい」

「兄殿、あと一人見つけるまで待つのですぞ!」

 ん? 二人づつにしたいのかな? 三人同時だと一本足りないか。いや、三本あっても物理的に三人同時はキツイかも? 触手ならともかく。

 可愛い義妹たちに軽くキスして頭をなでる。

「待ってるから」

 

 

 

 

 張遼と真桜が言い争っていたのでワケを聞いてみた。

 真桜が改良した偃月刀の出来に張遼が不満というものだった。

 強化したんだから角を増やさないと強そうに見えないって、真桜の気持ちはよくわかる。

 なのに張遼は猛反発。そんなに文句言うなら前の使えばよさそうなものだが、以前の物は折れちゃったそうだ。

 

「あのさ」

「何やおっさん!」

「張遼は、愛紗とお揃いがいいんだよね?」

「せや! なのに」

 張遼の不満を遮って提案する。

「真桜、愛紗の偃月刀も新調してあげて。これと同じ意匠で」

「……おお! 了解や」

 

 ポカーンとしている張遼に聞く。

「これでどう?」

 ドン、と背中を叩かれた。結構痛い。

「やるやないのおっさん。気に入った。ウチの真名預けたる。霞や」

 バンバンと背中を叩かれる。痛い痛い!

「お、俺は真名ないから皇一でいい」

 

「ん? 皇一?」

 じっと俺を見る霞。

「……華琳の婿の、魏の双頭竜!」

「気づいとらんかったんかい」

「しゃあないやろ、あん時はチ●コばっか見とったんやし」

 授業の時だろうけどその言いわけもどうかと。あとさ。

 

「なんですかその恥ずかしいの?」

「二本もあるからってそない恥ずかしがらんでもええやん」

「それじゃなくて!」

 そりゃいまだに恥ずかしいけど俺が気になったのはそっちじゃない。

「魏の双頭竜?」

「うん」

「知らんの? 隊長の二つ名や。街のみんなも知っとるよ」

 まさかまた情報操作? 軍師たちに聞いてみよう。

 

 

「そうよ。華琳さまがただの男を夫にしたんじゃないって知らしめるのよ!」

「……華琳ちゃんの趣味が悪いとかそんな噂にならない?」

「やっぱり没案の蛇おじさんのがよかったですかねー」

 ひぃぃぃぃぃぃ。なにその怪奇漫画のタイトルみたいの。

 

「こ、皇一さんが普通じゃなくてもそれは天の人の証拠になるんです」

「天といえば、蛇おじさんの牙門旗も完成したのですよ」

「蛇おじさんは止めてって。……天?」

「おかしいことはないでしょう。あなたの姓が天井なのだから旗印が天なのは当然のこと」

 そうは言いますけど稟さん。

「なんか色んなとこに喧嘩売ってない?」

 皇帝とか天の御遣いとかに。

「わかりますか」

 

「なんかこう変に、俺に箔をつけようとしているのはわかった」

「仕方ないでしょ。あんたの能力は人には説明できないんだから。そうなるとただの泣き虫強姦魔でしかないじゃない!」

「皇一殿の能力?」

「気になりますねー」

 余計に俺を注視する稟と風。照れるってば。

「お顔のことでしょうか?」

 帽子で顔を隠してるけど、頬を染めてるのがわかる雛里ちゃん。

「……なに? この三人はまだなの? 私の時は無理矢理だったのに!」

 ジト目で俺を睨む桂花。また仲間内の俺の評判を下げようというつもりか。

 

「わかったよ。もう桂花とはしないからさ」

「え?」

「だってそんなに嫌なんだろ? 俺も双方の合意がないのは嫌だし」

「そ、そんなこと言ってないじゃない! あんたは嫌いだけど華琳さまと繋がるにはあんたが必要なの!」

 おおっ。桂花が必要って言ってくれた。思わず抱きしめちゃう。

「は、放しなさい!」

 現金な話だが処女を貰ってから、前以上に桂花が可愛い。じたばたともがくのを構わずに頬ずり。

 

「か、華琳さまと繋がる?」

「なるほど。能力というのは女性二人を繋げるということでしたかー」

「あわわ……」

 いや違うから。俺は双頭バイ●じゃない!

「……華琳さまのが私の中に……私のが華琳さまの中に……ぶーーーーーーーーーーっ!」

 出来たばかりの牙門旗に鼻血が降り注ぐ。……血染めの天旗か、やだなぁ。

 

 

 

 

 北方四州を支配下においた魏。

 魏ルートだとたしか次は劉備が攻めてきたんだけど、一刀君は攻めてこなかった。

 攻めてきてたら俺が胸の痛みで、消えるENDの兆しがあったのかな?

 董卓陣営引き入れまくりに白蓮救出等、改変しまくってても、痛くならなかったから大丈夫だと思いたいけど。

 まあ愛紗も星も白蓮も呂布もこっちにいるんじゃ戦力無さすぎて攻めるとか無理か。一刀君、益州でも苦労してるみたい。袁紹が役に立ってればいいいけど。

 

 実はあのくぱぁの後、袁紹は北郷軍へ送られている。

「もういらないでしょう? 皇一も嫁にする気はなかったし」

「だからって一刀君のとこ? 殺しちゃうよりは後味悪くないけどさ」

「惜しいと思ってる?」

「いや、同じ教材となった仲間意識」

 あれ、すごい恥ずかしいんだって。

 あ、でも金髪さんだったからお守り貰っておけばよかったな。たしか貰えなかったからアムロ死亡フラグだったんで貰えれば生存フラグだったかも知れない。……惜しかったかも。だって華琳ちゃん生えてないし。

 

「通行料として愛紗は貰いすぎだから、お釣りね」

「愛紗を返す気ないんだね?」

「それは皇一もでしょ。愛紗が北郷に犯されるのを許せる?」

 無言で首を横に振る。

「ならいいでしょう。愛紗のかわりとしては無理があるけれど、嫌がらせとしては最高よ」

「……案外助けになるかも。一刀君のとこまだ人材少ないし、袁家の名とか幸運力とか。二枚看板がついてないのはかわいそうだけど」

 

 文醜と顔良は季衣ちゃんと秋蘭の薦めで魏軍に加わっている。

「あたいは文醜。アニキなら猪々子って呼んでいいぜ!」

「顔良です。真名は斗詩です」

 頬を染めて自己紹介してくれる斗詩。理由はやっぱりアレだよね。きっとこないだの授業を思い出してるんだろう。いまだに俺と会った時こんな反応する子数名いるし。早く忘れて下さい。

 

 そしてなぜか猪々子に付きまとわれている俺。いや、理由はわかっているけどね。

「なー、あたいと斗詩のためにさー、チ●コ貸してくれよー」

「だから斗詩の許可なしにそんなこと言うの、やめなさいって」

「だって、アニキ言ったじゃん。斗詩の処女貰ったらあたいの嫁確定になるじゃんよー」

「俺の嫁ということにもなるけど?」

「んだよ、アニキは斗詩が嫁じゃ嫌なのかよ! つーか斗詩はあたいの嫁!!」

 猪々子には手を出したくない。いや、可愛くないなんて思ってないよ。馬鹿で強引だけど嫌いじゃない。季衣ちゃんとも仲いいし。

 ただ、せっかく兄と呼んでくれる緑髪義妹のフラグクラッシャー効果を失いたくはないわけで。

「じゃ、そういうことで」

 深入りすると斗詩も納得しちゃいそうだから逃走。あの子、猪々子ちゃんの言うこと結局聞いちゃうし。

 

 

 

 

 久しぶりに一人寝の予定だった。

 今夜は華琳ちゃん、馬騰の所に行くからしばらく会えない春蘭を可愛がるらしい。

「皇一ががんばったら明日の長距離の移動が大変でしょ」

 てな理由で俺はハブ。そんなに激しくしないと思うけどなあ。

 

「白蓮も明日、春蘭と行くんじゃなかったっけ?」

 白蓮も漢の官位を持ってるし、白馬長史として有名だから悪い印象はなさそうなんで選ばれている。

「ですからこうして送別会をする次第」

「送別会ってのはちょっと違うような……。って俺の部屋は飲み屋じゃないんだけど、星」

 言いつつもテーブルと杯を用意する俺。

 

「馬騰をさ、ちゃんと華佗に診せてやってくれ」

 二人に頼む。驚いたことに馬騰は女性らしい。真・世界ならそうなんだろうだけど無印スタートだから男なんじゃないの? 変な泉で溺れたとか?

 とにかく、馬騰が女性なら患っているはず。で、華琳ちゃんと勝負せず服毒自殺。馬超と馬岱ちゃんは北郷軍へ。

 だけど、そうはさせない! そのために華佗も春蘭たちに同行してもらう。

 

「華佗といえば、まだ礼を受け取っておりませなんだ」

「礼?」

 飲みつつ聞く。

 ふっふっふ。たとえ酔っても真桜に頼んだ眼鏡バンドが完成した今、簡単には眼鏡は奪われまい。

「うむ。そのために白蓮殿を連れてきた次第」

「なんで私まで?」

「私一人で受けるのは無理……とまでは言わぬがいささか大変なのでな」

「って星、まさか!」

「白蓮殿といっしょにお願いする。今回は誤魔化されませんぞ!」

 ちっ、読まれていたか。

「大事にしときなさいって言ったでしょ!」

「何の話だ」

「白蓮殿も見たであろう、皇一殿の双頭竜を。アレは私一人では受け切れん」

 星までそれか。その呼び方は止めてって。

 

「礼ってそういうことか!?」

「ほら星、白蓮だって困ってるじゃないか」

「べ、別に構わないぞ、皇一なら」

「え? ……酔ってるだろ」

「酔ってなきゃこんなことは言えないだろ!」

 真っ赤になってる白蓮。赤いのは酔ってるだけじゃないよね。……だって白蓮そんなに飲んでなかったし。口調もまともだし。もしかして酔ってるフリ?

「皇一は命の恩人だし……その、見ちゃったし……私と同じで地味だし」

「いやいやいや。知らないとは不幸な白蓮殿。……ふむ、この場合幸いか?」

「白蓮は地味じゃないよ。十分可愛いって。けどそんな理由でいいの? 俺、抱いた女は離さないらしいよ」

 華琳ちゃんに言われてみたら納得できたけどさ。

 頷きも、首を横に振りも、どちらもせずに無言でじっと俺を見ている白蓮。これは了承したってことでいいの?

 

「……私の時はそんな話はしてくれませんでしたな」

 不満そうにされてもね。だって星は一刀君のとこに行くって思い込んでたし。

「アレは数に入らないって言ったろ。星もいいのか?」

「二言はない」

 

 

 華琳ちゃんの言ってたことは正しかったかも知れない。翌朝、白蓮は辛そうに旅立っていった。……大丈夫かな?

 

 

 

 

「月に近づくなっ!」

 緑髪義妹候補だった詠にはあの授業以来かなり避けられることに。……元から避けられてたけどさ。

「詠ちゃん、失礼だよ。命の恩人に」

「命の恩人?」

「洛陽ではありがとうございました」

 深々と頭を下げる月ちゃん。

「強引でゴメンね」

「いえ。あのままでしたら北郷軍に捕まってたかもしれません」

「それはたしかだけど一刀君なら二人のこと、酷い扱いはなかったんじゃないかな」

「それはないわ。北郷は愛紗を売るようなやつよ。月やボクたちなんて簡単に捨てる」

 うーん。通行料の話は詠まで知ってるのか。やっぱりこれも情報操作なのかな。一刀君の評判を下げるための。

 

「詠、ねねはどう?」

 詠にはねねの軍師としての教育をお願いしている。

「まだまだね」

 一言ですか。

「ねねちゃん賢いですよ」

 俺にお茶をくれながらフォローしてくれる月ちゃん。すっかりメイドが板についてきてるな。

「ありがとう」

 

「だから月に近づかないっ! ……ねねにも誘うなって言っといて」

「誘う?」

「あんたとの……っ、枕事!」

「ねねちゃん、季衣ちゃんと流琉ちゃんは二人で皇一さんとすればいいから、自分が余ってしまうって気にしてるみたいで」

 あっちの話は恥ずかしいのだろう、赤くなった二人が教えてくれた。

 むう。嬉しいけどねねも聞く相手考えた方がいい。……いや、焦ってるのかな?

 

「まったく。月ちゃんも詠もどっちかだけでって無理だろうに」

「ちょっと待ちなさい。それだと二人いっしょならあんたと……みたいに聞こえるじゃない!」

 あれ? ……そう聞こえるかも。

「へぅ……」

 さらに真っ赤にならないで月ちゃん。

「そ、そんな意味で言ったんじゃなくてね。と、とにかく、ねねのことよろしく頼むね」

 俺は逃げ出すしかなかった。

 

 

 

 

「己は最後まで漢の臣である。……それが、馬騰のこちらに対する回答でした」

 戻ってきた春蘭たちの報告はともかく、華佗は馬騰を診ることがかなわなかったらしい。

「曹操の薦める医者など信用できるか、だそうだ」

 ため息つく白蓮。ああ、これで涼州遠征が決定か。

 

 

「本格的に戦ったら馬騰が自害すると」

「うん。華琳ちゃんが戦うことはできないよ」

「……そう。そこまで弱っているの」

 閨で話す話題じゃないけどね。あんまり他の人に聞かせる話でもないと判断したから。道場でできればいいんだけど、無理に死にたくないし。

 

「んっ」

「無理しないでいいよ」

 今夜は俺と華琳ちゃんの二人きり。

 双頭バイ●扱いを俺が気にしてるのを察知したのか、一人で相手してくれている華琳ちゃん。

 なんだか辛そうで痛々しい。

 俺の方は途轍も無く気持ちいいんだけどね。華琳ちゃんの全てを感じているという満足感もすごいし。

「一人で二本同時に相手をするのは初めてだったわね」

「うん。俺の初めては全部華琳ちゃんに奪われてるな」

「逆よ」

 まあ一番最初は奪われたっていうのは語弊があるか。

 

 

 

「でさ、馬騰と涼州は諦めない?」

 たっぷり出した賢者な頭で話をする。

「皇一、あなた本数だけじゃなくて精力も倍になってない?」

「え?」

 そんなこと……言われてみれば体力とか一周目より少ないかも知れないのに、閨では一周目より頑張れてる気がしないでもない。

「二人で抱かれる時のあの感覚もないようね」

 そうなの? その辺は俺にはよくわからないんだけど。

 女の子二人といっしょじゃないと、もう片方の感覚がフィードバックされる効果が発動しないのかな?

「……まあいいわ。呉や北郷と戦う時に涼州に奇襲されたくないと言ったでしょう」

「だからさ、こんなのどう?」

 ちょっと思いついたことがあった。

 

 

 

 

 遠征を始め進軍を続けていた魏軍。涼州へと入る手前で動きを止める。

 そして、俺たちは作戦を開始。

 

「ほあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」

 現在俺たちがいるのはシスターズのライブ会場。魏ルートで涼州兵の奇襲を減らしたあれである。

 俺たちは観客席へと注意を向けていた。

「わかった? 今の元気な女の子が馬岱ちゃん」

 指差してみんなに説明。

 

「あの眉毛っ子やな。ホンマにきとるとは」

「ふむ。予定通り明日決行しましょう」

 驚いた様子をあまり見せない稟。うん。華琳ちゃんが絡まないとクールなんだよな。

「明日もきてくれるといいな」

 

 翌日。獲物がかかったとの報告に、俺はライブ会場の別室へと向かった。

「しすたーずのらいぶ総来場者数百万人記念だって、ここに案内されたんだけど」

 うん。ちゃんと馬岱ちゃんを連れてきてくれた。……百万人って随分サバ読んでないか?

「おめでとうございます。それでは記念品を受け取って下さい」

「やった! サボってきた甲斐あったかも」

 サイン色紙やシスターズの新曲の歌詞カード、その他グッズなどを渡す。

 

「もう一点あるのですが、そちらはライブの後にお渡しすることになります」

「え?」

「シスターズと同じ舞台衣装をお贈りしたい。お客様に合わせて調整しますのでライブ終了後にもう一度おいで下さい」

「うん。絶対くるから」

 馬岱ちゃんは嬉しそうに観客席へと向かう。

 ふう。なんとか上手くいくかな?

 

 

「お待たせー」

 馬岱ちゃんは先ほどの部屋へ一人でやってきた。ライブの興奮さめやらぬ様子でテンション高い。うん。説得にはいい状態かもしれない。

「はい、約束の衣装だよー」

「わあ♪」

 天和自らのプレゼントにさらに舞い上がる。この辺は年相応っぽいなあ。

 

「ちょっとお話よろしいですか?」

「うん。いいよー」

 ご機嫌で了承してくれた。

 

「馬岱殿、ですね」

「え?」

 一瞬驚いた表情を見せるもすぐに出口に目を向けるのはさすが。けれどそこはすでに凪、愛紗、白蓮が抑えている。

「え? 伯珪さん?」

 ああ、白蓮には会ってたんだっけ。

 

「騙したみたいでゴメンね」

「むう。たんぽぽが騙されるなんて……悔しいぃ!」

 暴れても無駄だってわかっているのかおとなしくしている馬岱ちゃん。

「安心してほしい。ちょっと交渉したいだけだから」

「交渉? こんなに見張りつけて?」

 ここで馬岱ちゃんに気を使って見張り減らしたりしたら逃げられるんだろうな。

「うん。それぐらいの価値が君にはあるからね」

 

「価値? たんぽぽそんなに強くないよ」

「可愛い子には油断しないようにしてるんだ」

 だって可愛い子は能力が高い世界だから。

「……もしかしてたんぽぽ口説いてる?」

「それはまた今度。今回はお願いがあって」

「お願い?」

 そう。そのためにこんな回りくどいことをしている。

 

「馬騰を華佗に診せてやってほしい」

「曹操の送り込んだ医者なんて信じられないよ」

「華佗が治療以外の行為をしたら俺を殺していいよ」

 じろりと俺を観察する馬岱ちゃん。

「おば様とおじさんの命じゃつり合わないってば」

 

「そうかな? 曹操ちゃんは悲しんでくれるよ」

 たぶん悲しんでくれる。まあ、実際には道場行くだけだけどね。

「……おじさん、誰?」

「名乗るのが遅れちゃったね。俺は天井皇一。字はないよ」

「天井……曹操の婿?」

 おお、馬岱ちゃんも知ってたか。

 

「嘘! だって曹操の婿って」

 俺の顔を覗き込む。やっぱりアレか。まったく桂花め、変な噂流さないでほしい。

「これでどう?」

 眼鏡バンドを外して眼鏡を外す。前髪を手櫛で整える。

「え?」

「ええ!?」

「なんと!」

 馬岱ちゃん以外からも驚きの声が上がる。……稟や白蓮には見られてなかったっけ。

 

「ほ、本物?」

「信じてくれた?」

「うん。えー、どうしよう?」

 どうしようって言われても。

「お願い。治療の間は魏軍が涼州へ攻め入ることはしないから」

 俺の独断じゃないよ。最初からそういう作戦。

 

「うーん。……じゃあさ」

「なに? できることならするよ」

「さっきの舞台衣装、もう一つくれない? お姉様の分」

「そ、それでよければ……」

 すぐに用意されて馬岱ちゃんに渡される。この要求、誰が予想してたんだろう。あと衣装のサイズとか。……衣装のサイズは華琳ちゃんの見立てかな。

 

 

 馬岱ちゃんと共に城へと向かう俺と華佗。護衛として白蓮。白蓮は白馬長史としての勇名を期待ってことで。この辺でも結構知られてるはずだったよね。

「たんぽぽっ、なんだそいつらは?」

 出迎えたのは馬超。

「公孫賛と華佗は会ったことあるよね。こっちは曹操の婿」

「捕まえたのか! よくやった。……でも曹操の婿ってのは人違いじゃないか?」

「うーん。捕まったのはどっちかっていうとたんぽぽかなー」

「なに?」

「あと人違いじゃないよー。曹操のお婿さんはお姉様の膀胱と同じくらい涙腺が緩いって噂だから、試してみたら?」

 なにそれ? そりゃ俺涙腺緩いけどそんなことまで噂になってるの? ……泣きたい。

 

「なっ、なんだよそれ!」

「あはっ♪ 皇一さん、お願ーい」

 仕方なく眼鏡を外す。……いつも思うんだが、これで俺の身分証明になるってどうなの? 一刀君のポリエステルみたいに服とかじゃ駄目なの?

「★□△○×っ!?」

 馬超が動揺してる間に馬岱ちゃんが説得。というか言いくるめて馬騰と面会。

 

 

 驚いた。

 馬騰が本当に女性だったとかそうじゃなくて。

 

 ロリBBA!

 

 まさか馬騰が馬岱ちゃんよりも幼く見えるなんて。

 もう馬騰ちゃんでしょこれ!

 馬超、馬岱ちゃんと同じ太眉ポニテでかなり可愛い。華琳ちゃんが欲しがるのもわかる。

 

「え? ええ? ……妹さん?」

 わかっていながらつい聞いてしまう俺。

「んなワケねえだろ。オレが馬騰だ」

 しかもオレっ娘。無印公孫賛が俺って言ってたけど真・世界となった今じゃ私だし。

 むう。非処女なのが残念でならない。……まさか処女ってことはないよね。馬超いるんだし。

 

「おば様、これが曹操の婿」

「天井皇一。字はない」

 面倒なんでまだ眼鏡を外したまま。

「ほう。お(めえ)が。わかってるだろうがオレが馬騰。なんの用だ?」

「華佗の治療を受けてほしい。お願いします」

 頭を下げる。

 

「おば様、華佗が治療以外の行為をしたら殺してもいいって」

「ええ。どうぞお好きなように」

「……曹操は何が目的だ」

「曹操ちゃんは馬騰ちゃんが欲しかった。けれど、馬騰ちゃんに断られてしまったから、せめて馬騰ちゃんとの戦いを楽しみにしている」

「ふん。曹操の気持ちはわからんでもない。それよりも! 馬騰ちゃんだと?」

 あ、ついそう呼んじゃってたか。

 

「俺は曹操ちゃんにだってちゃん付けしている。本人に断られた娘には止めているけど」

「言うじゃねえか孺子(こぞう)。気に入った。いいぜ華佗、やってくれ」

 おっさんを子供扱い? 馬騰ちゃんて呼んでるのの仕返しかな。

 まあ気が変わらない内に治療してもらおう。

 

 

「行くぞ! うおおおおっ!」

 ……そりゃ俺、治療以外したら殺していいって言ったけどさ。

「全力全快! 必察必治癒!」

 華佗が叫ぶ度に俺に槍向けるの止めてくれないかな馬超。

「五斗米道ぉぉぉぉっ!」

 治療に思えない気持ちはわかるけど。

「げ・ん・き・に・なれぇぇぇぇぇぇっ!」

 華佗の針が馬騰ちゃんに刺さっていく。

 

 

「治ったのか?」

「かなり衰弱していた。体力の回復を待ちながらあと数度の治療が必要だ」

「……ふん。言うだけのことはあるようだな。オレの身体を見抜くとは」

「母様!」

 馬騰ちゃんの言葉にショックを受けたのか青褪めている馬超たち。

「だいぶ楽になった。礼を言う」

 でも完治には遠そうだな。

 

「けど、その様子じゃまだ曹操ちゃんとは戦えそうにない」

「んだと!」

「翠」

 馬騰ちゃんの一声で馬超が静かになる。

「では聞こう。オレは曹操に仕えるつもりはねえ。だが曹操の使者であるお前は戦えそうにないと言う。曹操はなにを望んでいる?」

「曹操ちゃんは万全の状態なら馬騰ちゃんとの戦いを望む。あと、別に仕えてくれなくてもいい。同盟でどう?」

「ふん。あまり変わらねえな」

 

「今、魏軍と戦って勝てると思う?」

「西涼の騎馬部隊をなめるな!」

 吠えたのはやっぱり馬超。

 馬騰ちゃんは黙って考え込んでいる。兵数とか武将とか計算したら勝ち目がないことわかってるんだろうね。

 

「そんなに馬に自信あるならさ、賭けをしよう。こちらの代表者とそちらの代表者で競馬……馬での競争をする。魏の代表が勝ったら馬超と馬岱ちゃんに客将として働いてもらう。そちらの代表が勝ったら魏はこのまま引き返す」

 これこそが本題。魏が手に入れるのは馬超と馬岱ちゃん。そうすれば呉や一刀君と戦ってる時に奇襲されにくいだろうし。

 

「そんな話、信じられるか! 曹操が引き返すワケがない」

 馬超は予想通りの反応を返してくれるんで扱いやすいかな。

「その心配は必要ないよ。だって負けないからね」

「ほう?」

 馬騰ちゃんの視線が鋭くなる。

 外見ロリなのに迫力あるなあ。かなりビビる。

 

「……魏の代表は、白馬長史公孫賛と神速の驍将張遼」

 まあ霞の神速は用兵の方なんだけど、馬でも速いしね。白蓮は聞いてなかったのか驚いた顔してるな。

「む」

「どう? やっぱり勝てそうにないから止める?」

「面白えこと言うじゃねえか孺子。翠、蒲公英。西涼騎馬の速さを思い知らせてやれ」

「おう!」

「ちょ、ちょっとお姉様!?」

「なんぴとたりともあたしの前は走らせねえっ!」

 うん。計画通り。

 

 


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