それから1週間が過ぎ、ホワイトデーイベントまで3日となった。
その日は奉仕部の教室に八幡、雪ノ下、由比ヶ浜、いろはがいた。
「あと3日だねー!楽しみだね、ゆきのん!」
「ええそうね、私達はこれといってやる事はないのだけれど」
「なんで俺がやるんだよ、いやまあお返しができて楽なんだけど」
「せんぱいがどんなの作るか楽しみです♪」
と、4人は3日後の事を話して盛り上がっている。若干一名テンションガタ落ちしているが。
「そういえば材料は?一色さんが買いに行くのよね?」
「はい!明日せんぱいと買いに行ってきますー」
「「え!?」」
雪ノ下と由比ヶ浜は八幡を睨んでいる。
「あのな、一色が来いって言うから行くだけだぞ。それと一応依頼を受けてる立場だしな」
「で、でもなんかデートみたいじゃん!」
「そうね、一色さんこんな男と街を歩いてたら通報されかねないわよ」
「大丈夫ですって!せんぱい頼りになりますし、何より私が先輩と行きたいんです♪」
その場の空気はとても殺伐としている。
「(え、何この空気。みんな仲良くして!!)と、とりあえずだ、明日こいつと俺が行って材料買ってくるってことで異論はないな?」
「異論だらけなのだけれど…まあいいわ」
「い、いろはちゃん楽しんできてね!」
2人はいろはを見て笑顔でそう言った。
彼女もまた目を合わせて笑っていた。
「じゃ、明日よろしくです!私はまだ生徒会でやることあるので生徒会室戻ります!ではでは〜!」
「じゃー俺らもそろそろ終わりにするか」
「ヒッキー!い、一緒に帰ろ?」
由比ヶ浜が上目遣いをしてこちらを見てきている。
「は?」
と八幡は言いつつ、顔を赤くしている。
(こいつ…かわいいな、本当にゆるふわ系ビッチだな)
「なら私も一緒に帰るわ、平塚先生に部室の鍵渡してくるわね」
「お、おう、わかった、校門で待ってる」
そう言うと由比ヶ浜と八幡は校門に向かった。
「ヒッキーはさ、いろはちゃんの事どー思ってるの?」
「あざとい後輩」
「本当にそれだけ?」
そう言うと八幡の顔つきが少し変わったようにも見えた。
(俺はあいつの事どう思っているんだろう、いつも考えないようしていたが)
「ああ、それだけだ。あいつも俺の事都合のいい先輩としか思ってないだろ」
「……告白されたのに?」
由比ヶ浜は真面目な顔をしてそう問いかける。
「なんでもお前それを」
「いろはちゃんから聞いたんだー。この間先輩に告白して宣言しましたって」
声が震えている由比ヶ浜。口にしてしまったらどうなるかわからない。だが彼女は決心した。
「あのね、ヒッキー。私もヒッキーの事好きだよ」
「……」
彼女の目は潤んでいる。だがそれと同時に強い瞳が八幡を見ている。
「でも私もいろはちゃんみたいに頑張りたいと思った!だからヒッキーこれから覚悟してね!」
「なんで俺の事…」
最後の言葉は風に掻き消されて由比ヶ浜には聞こえなかったであろう。
八幡は平塚先生に言われた事を思い出す。
だがやはり彼は怖いのだ、好意を向けられるのが。
「ヒッキー、私も卒業まで頑張るから、それがどう転ぼうが私たちは友達だからね?」
「……ああ」
「約束だからね!」
そう由比ヶ浜が笑顔で言うと八幡は何か心に決心したように、覚悟を決めたように、彼は頷いていた。
「お待たせ」
「あ。ゆきのん!お疲れ様!」
「…早く帰りましょうか」
雪ノ下は何かを言おうとしていたが言わなかった。彼女は自分の本当の気持ちをまだ整理できないでいた。
春という季節にまだ冬を感じながら彼らの雪解けはいつになるのだろう。
〜次の日〜
「せんぱいー!遅い〜!」
「いやいやまだ15分前だからね、お前がいるのがびっくりだわ」
いろはの提示した集合時間は13時。2人とも15分前には駅に着いていたのだ。
「なんでですか?10分前行動は当たり前です!」
「お前にしちゃまともなこと言うな」
「そんな事より早く行きましょ!」
そう言うといろはは八幡の腕を引っ張って走り出した。
「お、おま!俺運動してないから走りたくないんだけど!」
「ほーらー♪さっさと行きますよー♪」
本当に迷惑だ、迷惑なのだが、こいつといるといつの間にか笑ってる自分がいる。今日の買い物も悪くないかもしれないな。
「おい、一色……もう疲れた…」
「もう着きましたよ!てか、少し走っただけでこんなに疲れるなんてせんぱい男ですか?」
と小悪魔めいた悪表情で八幡を見て笑っている。
「うるせ、俺は文学系男子なんだよ、言うならば秀才なんだよ、だから運動なんてしない」
「はいはい、わかりましたよ、早く行きますよー」
いろはと八幡は某有名なショッピングモールに入った。
「せんぱいー、このハートマークの型いりますか?」
「いやいらないだろ、男からハートマークの食べ物貰っても需要がないだろ。ただし葉山みたいなイケメンは別だが」
「私はせんぱいにもらったら嬉しいですよ?♪」
「はいはい、あざといろはすご馳走様」
そんなやり取りをして材料や飾り付けを買って2人は昼食をとる事にしたらしい。
「せんぱい〜お腹空きました〜」
「だな、なんか食うか」
「せんぱいの手料理!」
「あそこにサイゼあるし、サイゼでいいか」
いろはは、口を膨らまして拗ねていたが
八幡は無視して歩いて行った。
「なんで先に行くんですか!」
「いやだってこうしないとお前ついてこないだろ」
むーーーと言って八幡を叩くいろは。
「わかったよ、悪かったなんでも言う事聞くから許してくれ」
「今言いましたね?♪」
「あ…」
目を輝かして八幡を見るいろははとても嬉しそうにしている。
「一色さん…?俺が聞ける範囲にしてね」
「じゃあー、今日からいろはって呼んでください!それとお昼食べたらプリ撮りますよ♪」
「お前な…名前を呼ぶってのはちょっと」
「せんぱいは嘘つくせんぱいなんですね。
わかりました、強姦されたって警察に被害届出してきます」
「わかった、俺が悪かった、い、いろは」
八幡が否応なしにいろはの名前を呼ぶと彼女は顔を真っ赤にして硬直している。
(うわぁぁ……せんぱいに名前で呼ばれちゃった……)
「な、なんだよ」
「な、なんでもないですよー早く行きましょー」
サイゼに入るまで2人は無言で気まずい雰囲気が流れていた。
「ふぁー美味しかったです!ごちそうさまです♪」
「おう、さて、帰るか…ぐへっ!」
「返すわけないじゃないですかあ、プリ撮りに行きますよ♪」
「はぁ……本当に行くのかよ、撮った事ないぞ俺」
「大丈夫です!私がリードします♪」
「何その言い方お前もゆるふわ系ビッチなの」
「せんぱい、女の子にビッチなんて言えるんですね…」
嫌々プリ機の前にきてお金をお金を払わらされ、中に入る、いろはと八幡。
「ほら撮りますよー」
「あ、ああ」
3.2.1.パシャッ
「せんぱい表情硬いですよ、いつも通りです!」
「いやだって知らんし」
「ほら次きますよ」
3.2.1パシャッ
「なんで斜め上向いてるんですか!」
「いやいつも通りのつもりなんだけどな」
いろはは次の写真が撮られる前に
八幡に近づいた。
「は!?」
「ほらほら、可愛い後輩が近くにいますよ♪」
3.2.1
「今日の……お礼です」
「ん?」
パシャッと音ともに体は傾いていた。
何が起こったかわからない。わかったのは一色が手を回してほっぺにキスしてきた事だ。
プリ機から出てきて
「しちゃいました♪」
「そのラブホの後に出てきたカップルみたいな台詞やめて」
「どうでした?嬉しかったですか?」
八幡は無言でやり過ごすつもりだったが
「……まあそりゃ可愛い後輩にこんな事されたらな」
とボソッとつぶやいた
「え?」
「なんでもねーよ、早く写真とって帰るぞ」
「せんぱいー!なんて言ったんですかー!おーしーえーてーくーだーさーいーよー」
いろはは笑顔で八幡の姿を追いかけた。
「やだな、何にも言ってないですよ」
「誰の真似ですかー!教えてください!」
好意を受け取ることは怖い事だ。裏切られ、利用され、笑い者にされる。だけどまあ、好意を受け取るのもいいのかもしれない。
幸せな事もたまにはあるものだと青春の1ページに刻んでおこう。
少し八幡らしくない八幡を描いてみました。下手ですいません!
感想などよろしくです!