一色いろはは宣言する。   作:材木島

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16話

「もう11月か、早いな。もうすぐ俺も大学生だと思うと絶望するわ小町」

「なーにいってんのお兄ちゃん、どうせぼっちなんだから1人で、あ、独りで頑張ってね」

「ばっか、独りでいるからこそ何やっても迷惑かけない。そして一人の時間がとても有意義に過ごせるだろ?そんな楽園他にないぞ」

愛くるしい妹から笑顔でそんな事を言われても尚、ドヤ顔で熱弁する彼の姿を見て引いている小町。

 

 

あれから月日が経つのが速かった。

8.9.10月と無駄に過ごしていたのかもしれない。この3ヶ月間で色々あった、あの2人にもこたえをつたえたつもりだ。そして受験勉強はしていた。だが、心に空洞が出来たみたいに、何に対しても無気力な自分がいた。あの夏の7月。一色に全てを打ち明けられてそれに応えられない自分がいる。

そんな自分がどうしょうもなく嫌いで今になってもその事を考えてしまう。彼女が本心で、本音で語ってくれた嘘のない言葉。

今でも尚、俺は何も言葉が返せない。自分の中の本物の正体。この3ヵ月彼女とは話はしたが、彼女の方からその事については何も言ってこない。

 

「なあ小町、お兄ちゃんってダメ人間か?」

「どうしたの急に、当たり前のこと聞いてきて」

よく焼けた朝食のトーストを頬張りながら答える。小町も彼の気持ちをわかっていた。

「ダメなお兄ちゃんだけど、小町は好きだよ?だからそんな事言ってくれる小町のために今日洗剤と小麦粉買ってきてね♡」

返ってくる言葉はわかっていた。八幡はその返答に対して少なからず笑みをはこぼしてしまった。

「だいぶ雑な愛情表現だな、まあ俺も大好きだぞ小町、んじゃ俺先に行くな」

いつも通りの学校指定のバックを肩に下げ、スタスタと歩き出し、家を後にした。

「お兄ちゃん!またトマト残してる。全く……」

その後ろ姿を見た小町はブツブツと何かを呟き微笑んでいた。自分の兄の事を全てわかっているように。

 

 

〜生徒会室〜

 

「という訳でせんぱーい、またクリスマスイベントやりますよ♪」

「は?嫌だよ、また海浜高校と合同だろ?あいつらとはインセンティブが取れないし、トークの中身もないからなあ」

「何ちょっと玉縄先輩みたいな事言ってるんですか、気持ち悪いです」

「いやだからね、一色さん、本当の事をざっくり言うのやめようね、傷つくからね」

いろははいつもの様に笑っていた。

この3ヶ月彼女と彼の関係は進歩していない。

それどころか後退している様にも見える。

彼女は机の上に座り、2人でクリスマスイベントの話をしているが、そこには何か空虚のようなものが存在していた。

 

「それではせんばい、また放課後に!」

「んああ」

生徒会室から自分の教室に走っていく彼女の後ろ姿を彼はその背中をずっと追っていた。

静まり返った教室で彼が考えていたこと、それは「本物」についてだった。

 

 

〜放課後、奉仕部部室〜

 

「んで小町なんでもお前がいるの?」

教室入る前から笑い声と騒がしさで彼はわかっていた。

「小町はねー、今日雪乃さんと結衣さんに依頼をしに来たの」

「なんだそれ、俺だけぼっちかよ。まあいいんだけどな」

クスクスと由比ヶ浜と雪ノ下は笑っている。

もう小町から何かを聞いたんだろう。

表情から何かを企んでいるのがわかる、彼女達が何かをしようとしている。

「んじゃー小町はこれで!結衣さん!雪乃さん!あとはよろしくお願いしまーす!」

笑顔で走り出して、どこかえ消えてしまった小町。だが、去り際に「頑張ってね、お兄ちゃん」と言ったのが聞こえた。

 

 

 

「えーっと……なにから話そうか!」

いつも通りの由比ヶ浜の感じをだし、どうするべきか雪ノ下に委ねている。

「そうね、とりあえず比企谷君そこに座ってもらえる?」

言われるがまま、その2人の前に座った。

3人の目線が交差する中、話を切り出したのは雪ノ下だった。

「比企谷君、前に私にも由比ヶ浜さんにも言ったわよね。「俺の本物の答えは、お前達で、この関係を失いたくない。だからこそ俺には選ぶ権利はない」って」

そう、雪ノ下の強い目線の先の八幡は首を縦に振る。

「それで、私と由比ヶ浜さんはそれでもいいからと答えを求めた。でもそれが間違いだったのね。」

由比ヶ浜は静かに、八幡はどこか寂しげに話を聞いている。

 

 

「あなたが本当に求めている本物ってそんなに難しく考えることかしら?」

「そうだよ、ヒッキー。私達は互いの気持ちが一緒だってわかったから、わかったから話して話して、お互いが納得するまで話した。」

由比ヶ浜も雪ノ下も強い意志を感じる。

何かの覚悟を決めたように。

 

やめろ……と彼は心の中で何かを押さえつけるように感情が出てきている。

「だからあなたの本物の答えはここにはないのではないの?気持ちに答えることが出来ない、自分の気持ちがわからない、とそう逃げてただ自分の考えを強引に押し付けてるだけではなくて?あなたの中の本物のと言うのは簡単に壊れてしまうものなの?」

由比ヶ浜も何かを訴えかけているような眼差しで彼を見ている。

静まり返る教室、由比ヶ浜の涙、雪ノ下の決意、八幡の思い。色々が交差し合っている。

「……俺は……本物だと思ったから壊したくない」

「でも一色さんは?あなたは思いを告げられたのよね?それに対しての答えは?」

強い目線で八幡を見ている雪ノ下。

数秒の沈黙が続いた、その沈黙を破ったのは彼だった。

「……俺が何かを選んだら全部壊れてしまう。だから何も選ばなかった」

「それが逃げてるんじゃないの!?」

涙を浮かべながら訴えかけている由比ヶ浜。

「私は……私達は……そんな事で壊れたりしないよ!!!」

雪ノ下は黙って八幡を見つめている。

由比ヶ浜は涙を浮かべ、彼をずっと見ている。

八幡はいつもの様に目線を別の場所に送っている。

 

静寂の漂う奉仕部の部室。

彼は何も言わずにその場を立ち去った。

八幡の中にも葛藤が生まれている。

一色いろはを、雪ノ下を、由比ヶ浜をどんな対応していいのか、黙るしかできなかった彼の心を理解できるのは、雪ノ下、由比ヶ浜、そして……。

残り4ヵ月となった学校生活。彼らの本当の本物の答え、導き出すことが出来るのか、本物とは一体何なのだろうか。

 

 




投稿だいぶ遅れて本当にすいません!!!
サボっていたのは自覚しています!!!
本当にすいませんでした!!!
僕の書くもので楽しんでいただけたらと思います!
ではまた次の話で!

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