一色いろはは宣言する。   作:材木島

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特別編!いろはの日!

特別編!いろはの日!

 

 

「あー……やらかした」

ムクっと起き上がり、携帯を見てみたらメールが168件きていた。

今日は4月16日金曜日。メールの主は大方予想がついている。

 

4月15日木曜日

23:59分

比企谷先輩

 

まさか寝てませんよね♪

 

せんぱいーせんぱいー、寝てませんよねー?明日はかわいい後輩の誕生日なんですよーーーー

もしかしてサプライズとかやってくれたりしますか♪

でも私、プレゼントにはうるさいですからね♪

それと……

 

ここで彼は読むのをやめた。この手の内容のメールが168件受信されていた。いろはなりに考えたのであろう。

「だからって自分の名前に因んだ数字までメール送る必要ないだろ、あのアホ後輩」

八幡はそう言うと電話をかけ始めた。

 

プルルル…

 

「せんぱーーーーーーい!昨日寝ましたね!!」

「いや寝るつもりはなかったんだけど、ほら、俺って夜遅くまで起きてると目付き悪くなるじゃないですか〜」

ちょっとオカマ口調でいろはに話しかけると彼女は素で引いていた。

「せんぱい、ちょーきもいです」

年頃の女の子にキモイなど言われると男は本気で死にたくなるか、本気で喜ぶかのどちらかである。八幡は小町にいつも罵倒され、そこに喜びを感じているのでいろはには全くと言っていいほど感情がなかった。

「はいはい、わかったよ、誕生日おめでとう、一色いろはさん」

「んじゃあ、今日の放課後奉仕部に顔を出すので色々と期待してますね♪ではまた学校で〜!」

「は?ちょっと待て……」

という頃には電話は切れていた。

大きな溜息を一つして彼は自分の部屋を出た。

 

 

「おはよー、ゴミーちゃん」

「お前今どさくさに紛れて自分の兄の事ゴミって言ったよな?言ったよね?小町ちゃん?」

仲良く洗面台に立って歯磨きをしている。

ボサボサな髪の毛は兄妹のつながりを感じられるものがあり、よく似ている。

「で、お兄ちゃんはいろはさんになにか上げるの?」

「なんでお前があいつの誕生日知ってるんだ、まあ……何も上げるつもりない」

「何今の変な間は、もしかして買いたいけど結衣さんと雪乃さんとは全くタイプが違うから何を上げていいかわからないんだ」

視線を逸らすお兄ちゃん。

 

そう、一色のあのキャラは作って出来ているのでぬいぐるみやら何やらを上げたところで「ありきたりですね、先輩は……」とか言われかねないし、第一なんで俺がこんな事で悩んでんだ。

 

「むっふっふー!だと思って小町が用意しました!」

ばん!と机の上に置かれたチケットが2枚。

「は?これディスティニーランドのアフターシックスじゃん、どうしたんだこれ」

「いや昨日ね、お父さんが貰ってきて小町に彼氏とでもいけって渡してくれたんだけど彼氏いないし、行く人いないからさー」

「小町に彼氏ができたらお兄ちゃんに紹介するんだぞ、どんなやつか見極めてやるから」

真顔でそんな事言うシスコン兄貴を見て落胆している。

「そんな事より……ちゃーんといろはさんと行ってきなよ!」

チケットを胸に殴られるように押し付けられた。

「お前、俺は人混みが嫌いだし、あいつが嫌がるだろ」

「本当に鈍感だよね……いやまあ気づいてるんだろうけど」

聞こえない声でボソッと呟いた。

いろはは1度八幡に告白している。そして答えを出さずに待たせているのだ。

「はぁ……わかったよ、ありがとな小町。それと親父」

「あいあいさー!」

シュビッと敬礼してウインクをするあたり小町はあざと可愛いと言える。

 

いやまあ俺の中じゃ天使なんだけど。ウリエル、ガブリエル、コマチエルだからな。

 

二人は食事を済ませて、ちょっと時間を遅らせて八幡は家を出た。

 

 

 

 

〜放課後〜

「(もう放課後かよ!!小説って便利!!!)」

とまあ訳のわからないことを言いつつ、奉仕部の部室前に着いていた。

ガラガラ……

「うぃーす」

「こんにちは」

「ヒッキーやっはろー!」

「お先に来てます♪」

全員勢揃いだった。

 

う、うわぁぁぁぁぁぁぁ、い、言いにくい!!!!一色一人な可能性は皆無だったけど、ここまで仲良くやってるところ見るといい辛い!!!!助けて!!!小町!!!!!

 

いろはは早速キラキラと目を輝かせて八幡を見ている。彼はどうにか上手く躱していたが……

 

「雪ノ下先輩も結衣先輩も誕生日プレゼントありがとうございましたー♪」

その言葉に八幡が一番反応する。

「いいえ、別に大した物じゃないのだからいいのよ」

「うん!私のも気に入ってくれたら着てくれればいいからね!」

二人は笑顔でいろはに答える。

ニヤニヤした表情でこちらを見ている。

彼女の狙いは……

「ヒッキーはなんかないの?」

「比企谷君、もしかして買ってきてないのかしら?」

この二人を動かして俺にプレゼントを出さざるを得ない状況にするためだった。

「……はぁ、わかったよ、渡せばいいんだろ」

ぽいと置かれたそれを全員が注目した。

「なんですか?この薄っぺらい紙は?」

「なんだろー!食事券かなー?ヒッキーやるねー!」

次の瞬間、彼に光と闇が見えた。

「うわぁぁぁぁ!ディスティニーランドのアフター6じゃないですかー!!!!すっごい嬉しいです♪先輩ありがとうございます♪」

一人はこんなに子供のように大喜びではしゃいでおり、

もう二人は私達の誕生日は2人で出掛けるようなものじゃなかったよね?なんでいろはちゃんはいいの?と言わんばかりの目線を送ってきている。

「せんぱい!今日いきましょ!という訳でこの人借りてきますね〜♪また明日です!結衣先輩!雪ノ下先輩!」

と八幡の腕を引っ張り、彼の有無を確認せずにその場から連れ去った。雪乃と結衣はその場にぽかんと残されていた。

 

「お、おい、一色。別に俺とじゃなくてもいいだろ」

駐輪場まで引っ張り出され、そんな事を言う八幡に彼女は笑顔で答えた。

「何いってんですかー、もう!さっさと行きますよ!(好きな人と行くのが一番に決まってるじゃないですか、馬鹿なんですか先輩は……)」

「今なんか言ったか?」

キョトンとして答える彼を見て落胆した。

「もー!いいからいきますよー!」

学校の鐘が鳴る。ごく普通に鳴り響いているそれが彼を後押ししている、そんな感じがした。

 

 

 

 

「冬きたのとは全く違いますねー!うわぁー!」

子供のように目を輝かせているいろは。

人混みを面倒くさそうな感じをしている八幡。

「早く行きましょ♪」

何気なく彼の手を繋いでいる彼女。

「お、おい……」

「へ?あ!す、すみません……でも嫌じゃなかったらこのままが……いいです 」

顔から目を逸らし火照っているいろはは八幡から見てこれ以上にないくらいあざといけど可愛らしい姿だった。

「別に嫌じゃないけど……」

「じゃあ、いきましょ♪」

 

今日はこいつにとって特別な日だしな。少しくらいのわがままなら聞いてやっても悪い気はしないしな。俺のお兄ちゃんスキルを発動しまくっちゃおうかな!?別にこの状況ドキドキしてないからね!?!?!

 

 

18時から来たのでもう時間はとっくに21時を回っていた。乗り物にいくつか乗り、パレードを見て少し疲れて高台にあるベンチに座っている。ここなら人が少ないと思ったらしい八幡。

 

「あー、不幸だーーー」

彼が上条〇麻のセリフを言うのも無理はない。

人混みにつれて来られた挙句、乗り物には並ばされ、荷物は持たされ、おまけにいろはが食べていたアイスを食べさせてもらって「間接キスですね、せーんぱい♪」と人前で言われていた。

 

いやあの最後のだけ見るとすごい羨ましく見えるだろうけど、地獄だからね……?ぼっちにとってリア充が来る場所というのは体に毒でしかないのだ。

 

とそんな事を思っていると、ほっぺたに冷たい何が触れた。

「はい、これどうぞ♪」

そう言われて渡されたのはボトルの部分にミッ〇ーが着いたお茶だった。

ちなみにいろははミ〇ーちゃん。

「なんだよ、お前トイレいってたんじゃないのかよ、悪いな、いくらだ?」

「いいんですよー、今日のお礼ってことで!」

「ばっか、お前ここで貸し作ったら何されるかわかったもんじゃない」

そう言うと財布から小銭をだし、彼女に渡す。

「むぅーー、素直じゃないですね、先輩は」

「はいはい、あざといそのプク顔ちょーかわいいのは分かったから」

そう言うといろははもっと顔を膨らませて怒った表情をしてそっぽを向いてしまった。

 

え?俺なんか今悪い事した?ここは夢の国じゃないの?夢なら覚めて?

 

「せんぱい!せんぱい!見てください!」

「ん?お、おー……」

言葉にならなかった。そこから見た風景は数多の星が見え、灯りで照らされている乗り物やショップ、それらと夜空が合わさってとても綺麗な物が彼等の目に写っている。

 

「……せんぱい、今日は本当にありがとうございました♪すごいいい思い出です……」

いろは声が震えていた。その笑顔の先には一滴の綺麗な涙がこぼれていた。

「お前泣くなよ、こっちまで泣いちゃうだろ」

「ち、ちがいますよ!泣いてません!こ、これはあれです!風が強すぎて目から涙が……」

ここでいろはの言葉が切れたのは何故かと言うと、八幡がハンカチを取り出していた。

「本当は葉山とかじゃなきゃ格好つかないけど……一応」

彼も照れていながらいろはを気遣っていた。

「ほ、本当ですよ!第一、せんぱいじゃ葉山先輩に勝てませんよ!!(何でこんな余計なこと言っちゃうんだろ……)」

顔が火照ってちょっと大人っぽく見えるいろは。八幡はそんないろはを見て言いたいことがあったが、心の奥底にしまった。

「はいはい、そんなことわかってるからさっさと行くぞー」

荷物を持ち階段を下っていこうとする彼の後を追いかけてきた。

「せんぱーい!待ってくださいよー!」

「早くし……え?」

「今日のお礼です♪」

彼も何が起きたかわからなかった。

いきなり自分の頬に柔らかい何がが触れたのだ。それは他の誰でもない、いろはの唇だった。

「この事は2人だけの秘密ですよ?♪もしバラしたらその時は、責任……取ってくださいね……♪「 」

小悪魔めいた表情をして上目遣いをして八幡を見るあざといろはす。

彼は何も反応できずにただただ、ボーッとしていた。

「さ、早く帰りましょ♪せーんぱい♪」

「……うるせえ、あざといんだよ」

「ちょ!何怒ってるんですか!せんぱいってばー!」

気持ちと態度とは裏腹に八幡は少し冷たい態度をとっているが、いろははお構い無しに笑顔で彼のあとをついていった。

 

彼の心がざわつく。彼女といる自分に安心感を覚えている。だがそれが彼は怖い。いつ裏切られるか、いつ嫌われるかわかったものじゃないから。

だが、彼は気付くべきだ。もうそんな関係ではないと。上辺じゃなく、欺瞞ではない関係性が築き上げられていると。

 

「(今日見たこいつは今まで見た中で一番の笑顔を浮かべていた。楽しんでくれてよかったと思う。そしてこいつの気持ちに……)」

「?せんぱい?どうかしました?」

「何でもねーよ、ほら帰るぞ」

いつも通りの感じで面倒くさそうにしている八幡の後を彼女がついてきていた。

「一色」

「はい?」

「誕生日おめでとう」

少しぎこちないが八幡が照れくさそうに言った。

「なんですか改まって……こっちも照れるじゃないですか、ばか……でも、ありがとうございます♪」

満面の笑みを見せるいろはを見て八幡も笑顔になるかと思ったら一言だけ、「おう」と言って歩き始めた。

夢の国のこの時間がいつまでも続きますように、と彼女は心の中で願うのであった。




どうもお久しぶりです!
4月16日はいろはの誕生日って事で書いたのですが、少し遅れてしまいました、申し訳ないです。今書いてる本編の特別編と言うことで書かせて頂きました!是非ご覧下さい!
誤字脱字やアドバイスや感想お待ちしています!
ではでは〜!

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