一色いろはは宣言する。   作:材木島

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第13話

「お兄ちゃん、もう起きなよ!小町が同じ学校入って登校時間同じだからって余裕かましてたらダメだよ、兄とってゴミって呼ぶよ」

自分の妹の声がこれ程まで怖いと思ったことは無い。最後のゴミなんて低い声でいうもんだから怯えてしまう。

「ふっ、俺が起きてないと思ったのか小町。寧ろ7時から起きてゲームしてたまである」

「なんで起きないの!馬鹿なの!あほ!八幡!」

八幡は悪口なのか、と思いつつベットから起き上がり洗面所に向かった。

「今日も生徒会の手伝いか?」

洗面所からリビングに出てきて朝食を食べる。

「そうだよ、お兄ちゃんもでしょ?いろはさんに誘われちゃって〜」

「別にいつも通りに都合のいい先輩で使ってるだけだろ」

そういってパンを口にくわえる。

彼女の気持ちを理解しているのにこの言い草は照れ隠しなのか、それとも信用したくないのか、はたまた、自分の気持ちを殺しているのか。

入学式、始業式と終わり高校も終わりの3年生になった。それから1ヶ月も経ち、小町は小町で生徒会というか一色に憧れを持ち、知り合いという事で生徒会で手伝いをさせてもらい、彼女を陰ながら支えていた。だが一色も一色でちゃっかりできる女の子なのでちゃんと生徒会の仕事も回っている。

生徒会長に無理矢理と言うか、八幡の策略により生徒会長になったが半年経った今となってはやりがいもあるらしく張り切っている。

「だからってなんかある度に俺を呼ぶのやめような」

学校も終わり放課後、初夏が感じられるこの5月半ば。今日も生徒会の手伝いをしている八幡。

「だってー、せんぱい勉強なんてしないじゃないですかー」

「ふっ、違うな。しなくても頭いいんだよ。つまり俺は天才」

「はいはい、わかったから口ばっか動かしてないで仕事してよお兄ちゃん」

割と量の多い書類を席に置かれた。

「これ目を通してハンコよろしくね」

「おう、任せろ小町。お前の頼みなら何でも聞いてやるぞ」

珍しくやる気で乗り気な彼を見て落胆している生徒会長。

「今日3人だからそんな態度取れますけど、他の人いたらせんぱいアウトですよ?」

「いやいや他のヤツいたら俺は出向かねーよ。こんな兄がいるって知れたら小町が可哀想だからな」

「シスコンも程々にしてくださいね……

ところでせんぱい?」

一色の声がか細くなったと思ったら八幡の耳に小声で話している。

「せんぱい、この後って空いてたりしますか……?」

 

可愛いいいいいい、なんだこの破壊力は……

小町より可愛いだと……?前にも電車でこんな事あったような。そうだよね!責任取らなきゃだよね!よし!八幡頑張る!

 

「い、いやこの後は奉仕部行って由比ヶ浜と帰る約束しててだな」

口を膨らませてあざと可愛いアピールをしていふ一色に対して八幡はいつものように素っ気ない態度をとっていた。

「はいはい、いつものあざといろはすご馳走様。まあ明日なら空いてるかもな」

「本当ですかー!?じゃー美味しいパンケーキ食べに行きましょ♪」

生徒会室でイチャイチャする2人の姿を温かい目で小町は見守っていた。

 

 

生徒会の仕事も一段落して奉仕部へ。

「やっはろー!あれ?ヒッキーゆきのんと一緒じゃなかったの?」

扉を開けた先にはいつも通りの頭の悪そうな挨拶をしてくるビッチ系女子、由比ヶ浜結衣さんがいた。

「なんで俺がアイツといると思うんだ。平塚先生の所じゃねーの?」

「そっかー!ね、ねえヒッキー今日どこいく……?」

GWの話になるが、彼女と雪ノ下と出掛けるという約束をしたのだがそれを破ってしまい1人1人にお詫びをするという事になった八幡。

「無難にサイゼでいいだろ」

「それを女子にいうなんて女心分かってなさすぎ!」

何故かぎこちなさが香る八幡の言い方に彼女は気付いていなかった。

 

女子と2人で出掛けるとか全然ないからって声が裏返ったわけじゃないからね!ん?一色とはどうなんだって?知らんな。絶対葉山とか戸部とか得意だろ。マジそれ面白すぎでしょ〜、っべー!……。

 

「ま、まあそれは後で……ね?」

「お、おう」

少し色っぽさを出した言い方され、八幡はドキドキしている。普段一色といる彼だが、由比ヶ浜は彼女とはまた何か違った高揚感がある。

そんな時にガラガラ……っと扉が開く音がした。

「あら、女ったらし下衆谷君。今日は誰と何処で何をするのかしらね」

冷静な口調且つ冷徹な目で八幡を睨み殺すような目つきをしている雪ノ下。

「俺がいつ女ったらしな事をした。寧ろ女子の思わせぶりな行為に甚だ迷惑だと感じてるまである」

「あはは、ヒッキーは見かけによらず純粋だよね!」

「純粋なのかしら?この男の目腐ってるのだけれど?性格なんて黒一色じゃないかしら」

笑いあって3人で話し合える時間なんていつ以来だろうか。笑顔で他愛もない事を語り、いつものように罵りあっている日常。雪ノ下も八幡も由比ヶ浜も、この3人は自分の欠点をわかり己の足りない所を補う、性格や趣味は違えど型に嵌るのはこの3人しか居ないと思う。

 

それから依頼も皆無で1時間が過ぎ、今日の部活は終わり、雪ノ下は何かを察して一人で帰って行く。

「……と、とりあえず歩こうか!」

「そうだな、お前何か見たい物とかないの?」

彼なりに気を使い、一色に言われた事を思い出しながら質問をする。

 

せんぱい!女子は繊細なんですからね!少しの事でも男性がリードしてあげないとですよ♪

私の事も……ってここで振り返りエピソードおわりですかーーー!!?!?!

 

たまには、と八幡が由比ヶ浜の鞄を持ってあげた。

「ヒ、ヒッキー……今日なんか優しいね?」

「いやそんな事ないだろ、いつも通りのスペック高めの比企谷八幡だ」

「それはきもいよ」

「何その雪ノ下みたいなツッコミ、あいつに言われたみたいで不愉快だわ」

あはは、と由比ヶ浜の笑い声が囀る。2人は駅チカのデパートで買い物することにした。

彼女が天真爛漫でどっかのあざとい後輩に似てる部分もあり、八幡としてはとても気が疲れる買い物となった。無駄に露出度高い洋服を着たり、胸を強調したニットやあざといくらいに可愛いうさぎの耳など。もちろん荷物を持つのは彼で楽しく?デートしているようだ。

「お前……こんなに見るの?女子って面倒くさいな、一色もそうだが」

「いろはちゃんと買い物行ったりするんだー、

羨ましいな……」

「は?なんて言った?って言うかあいつと買い物行くと俺なんて荷物持ちの奴隷みたいなもんだぞ。今もさほど大差ねーけど」

「え、ごめん……」

何故かいつものように単調なツッコミはせず、落ち込んでしまった。

 

お、俺なんかした!?八幡はいつも通りの行動を取っただけなのよさ!

 

「……んじゃそのお礼、えい!」

八幡の口に何か冷たい物が入った。さっきから彼女が食べていたアイスだ。

「う、うまい……でもお前これ「さーて!まだまだ行くよ!ほらヒッキー!」

言いたかった事が言えずに無理矢理連れていかれる。その姿はまるで本当に、執事の様であった…

 

 

「ふぁーあ、楽しかったねー!」

「楽し……うん、まあ」

そうすると由比ヶ浜が荷物の中からゴソゴソと何かを取り出した。

「はいこれ!今日というか、まあ今までのお礼みたいな!」

そこには八幡に似合わないぬいぐるみがいた。

しかも目に傷をつけて目付きが悪いクマのぬいぐるみが。自分がぬいぐるみになったらこうなるんだろうなと思いつつそれを手に取った。

「お、おう、これ反応に困るわ」

「ヒッキー……あのさ、ヒッキーはいろはちゃんが好きなの?」

「は?」

反射的に声が漏れてしまった。何故か少し焦り気味である。

「いろはちゃんといると楽しそうだし、私達が知らないヒッキーも見れてるんだって、あんなに楽しそうなヒッキー見た事無いから…」

あんなに楽しそう、とはこの前、一色と八幡が海浜幕張で遊んだ時のことであろう。それを由比ヶ浜は目撃していた。

「私は……やっぱりヒッキーが好き。ゆきのんもいろはちゃんも好き。だから全部欲しい」

言ってしまった。言葉を濁してあの時3人で話した中身のない会話の核心を突いてしまった。

「あの時も言ったよね?私はそんなに優しくない。ずるい子なの」

「……。」

八幡は何も言葉が出なかった。というより頭が回転しなかった。この状況にはいつかなると思っていた。だが事が起こってからだと対処しようにもすぐには案が出て来ない。

「だけどね、今このままでも充分楽しいんだあ。ゆきのんとヒッキー、2人といる時間がすごい楽しい。後もう1年もないくらいで卒業だし、思い出もいっぱい作りたい。それでこの件もはっきりさせたい」

由比ヶ浜らしいと言えば由比ヶ浜らしい。他人を気遣い、自分の事は二の次のような性格である彼女が心の内をこんなに顕にしている。それに八幡は男としてこれからも……として応えなければいけない。

「由比ヶ浜、悪い、少し時間をくれ。すぐに答えが出せるほど簡単に考えたくない」

「うん……わかった!待ってる!」

いつもの満面の笑みを浮かべて八幡から荷物を取った。

「今日はありがとう!私反対の電車だからもう行くね!」

その小さな背中にどれだけ笑顔をもらったか、どれだけ救われたか、八幡の方が面倒を見ていた部分は多いが肝心な時に重要な役を担っていた彼女だからこそ考える猶予が必要だ。

だが彼の心の中では否定している気持ちが1つある。その気持ちも彼は応えなければいけない。

「俺は……」

その後の言葉は何を言ってるか分からなかったが、由比ヶ浜の姿が消えるまでその背中を見ていた。

 

 

 

「結衣先輩、告白したんですかあー!?」

甲高い声を出し、驚きを隠せない後輩の一色いろはちゃん。

「う、うん。一応ね、でもあの様子だといろはちゃんのこと好きそうだっけどねー……」

「いやいやそんな事ないですよ、せんぱい私に冷たいですし、たまにしか優しくないですよー!」

「でもそこがヒッキーの1番いい所だよね!」

「……はい、そうですね♪」

2人は笑いあって彼の事を話している。どちらがどんな結果になってもこの先輩後輩の関係が崩れない、固い絆が窺える。

「あはは、じゃ、また明日ね!いろはちゃん!」

「はい!結衣先輩おやすみなさい!」

プツっと電話が切れて布団にくるまった。

何かソワソワしている様子だ。

「せんぱい……貴方の気持ちは誰なん……ですか……」

疲れていたのか一色の意識は海底の底に埋まっていった。枕に一滴の綺麗な涙を垂らして。




皆さんお久しぶりです!
更新相当遅くなってしまい申し訳ないです!
グタグタって終わっていたので放置していました……
すいません。
今回は由比ヶ浜メインです!一途だなー由比ヶ浜泣
でもいろはが一番ですけどね!!
これからはちゃんと更新していくのでよろしくです!
メインは最近俺ガイルとアリアのクロスオーバーなのでこっちの更新少し遅れますけどちゃんと続けます!
誤字脱字やアドバイスがあったらよろしくお願いします!
ではでは〜!

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