次の日〜海浜幕張駅にて〜
待ち合わせの12時より15分も早く来てしまった…なんでだろうな、遠足行く前の小学生の気持ちなのか!これは!だとしたらあいつと会うのが楽しみたいじゃないか!
小町め、俺を悩ましてくれる事を言ってくれるぜ……
今から90分前……
「ごみいちゃん、ちゃんと財布持った?お金多めに持った?ハンカチいっぱい持った?ティッシュ持った?」
「ATMに使われて尚且つ振られて泣いて帰ってくる俺のイメージをしてるのかお前は。寧ろ俺が泣かすまであるな」
うわ…と真面目に引かれてしまったので八幡はここで訂正に入った。
「嘘だよ、ま、まあ1日あいつに付き合うだけだからな、荷物持ちかなんかだろうよ」
「お兄ちゃん…人の気持ちに敏感なくせして都合のいい時だけ自分のいいように解釈するのは小町違うと思うなー」
彼より年下なのに、彼より生きている人生は短いのに、それでも彼よりずっと分かっている。
妹であり家族であるから、比企谷八幡と言う1人の人間をこうも指摘できる。
「人の想いに答えるのが、応えるのが、怖いのはわかるよ。しかもそれが勘違いだったりしたらそれこそ嫌だし、だけど小町はお兄ちゃんがその状況から目を背けて逃げ出してほしくないな」
「それじゃ、お兄ちゃんの嫌いなウェ◯系とやってる事一緒だよ?期待させて、遊ぶだけ遊んでって…小町はお兄ちゃんにそうなってほしくないなー」
八幡は黙って小町を見ている。その眼差しはとても熱くとても切ないものであった。
「……行ってきます」
「はい、いってらっしゃい!お兄ちゃん!」
背中をバシッと叩かれた彼の表情はいつもより前を向いていた。
朝の出来事を思い出しながら彼が少し周りを見渡すとそこにはよく知っている顔が二つあった。
ゆ、雪ノ下と由比ヶ浜……だと…!?
見つかったら面倒くさいな、隠れてやり過ごそう。ハイドスキル高いヒッキーなめんなよ。
物陰に姿を潜めやり過ごした八幡の横にはもっと見知った顔があった。
「何してるんですかせんぱい……」
どんよりした顔で彼を見る彼女の目線はとても冷たかった。
「い、いや違うんだよこれは。ほら見知った顔がいると隠れたくなるぼっちの習性があってだな」
「そんな事より♪せんぱいが私より早くに来てるなんて珍しいですね♪そんなに楽しみだったんですか〜?」
小悪魔めいた可愛い笑顔をみせるいろは。
「ちげーよ、早く起きちまってやる事ねーからいつもみたいに罵倒されないように早く来たんだ、俺優秀」
「はーいはい、楽しみだったんですね〜♪ほら、行きますよ!」
「お、おい……」
八幡が動揺するのも無理はない、いきなり手を繋いできたのだ。
こうして彼らの1日デート?は始まった。
〜ショッピングモール内〜
「せんぱいー!これどーですか!似合いますかね?」
ニットセーターを着てその姿を見せてる。
「(これ由比ヶ浜と来た時にあいつが着てたやつじゃねーか、意外に体型に関わらず一色にも似合うんだな…」
「ふぇ!?な、何言ってるんですか!」
「え?あ…」
八幡は気付くのが遅かったが、一色の耳は敏感に反応していた。
「俺どこから声漏らしてた?」
「意外に…からですぅ…」
余程恥ずかしかったのか彼と目を合わそうとしない。
「ほ、ほら次行くぞ、買うなら買っちゃえよ」
「なんでせんぱいは女心がわからないんですかね!!!!」
だって俺女じゃないもん…助けて小町…
そういえば朝あんな事言われたばっかだった。
小町に頼ってちゃダメだなうん、多分。
一色の買い物も少し落ち着いたようで
とあるカフェに入って軽食を取っている2人。
時刻は午後5時近く。
「てか、お前と買い物に来るのも二度目だな」
「そうですね〜♪懐かしいですね〜!」
「もう3年生か、受験だるいわ」
と言いサンドイッチを口に頬張る。
「お前も2年生か、せんぱいって呼ばれる立場には見えないけど」
「むっ!なんですと!私は立派な先輩ですよ♪」
えっへんと腕を組み自信満々な一色を見て八幡は小町の言葉が頭をよぎる。
目を背けて逃げ出してほしくないな…か。
俺はこいつの事を見ているようで見ていないのか、一色だけじゃない、雪ノ下も由比ヶ浜も見ているようで見ていない。逃げる…か…
「せんぱい?どうかしましたか?」
「いや、別になんでもねーよ」
遠くを見つめ、一色を見つめ、八幡の目に浮かぶ物とは一体何なのだろう。
彼は苦悩し、自問自答をし続ける。それしか「本物」を見つけ出す事は出来ないのだから。
「せんぱい、この後行きたいところがあるんですけどいいですか??」
「……どうせ拒否権ねーんだろ?」
「わかってますね♪ちょっとだけお願いしますね♪」
「はいはい、あざといろはす可愛いですねー」
「その言い方やめてくださいよー!」
そんなやり取りをして2人はそのカフェを後にした。だが、八幡はまだ知らなかった、この後控える質問攻めと起こる出来事を……
「って来たの屋上かよ、寒いんだが」
「まあまあー見てくださいよー♪」
午後5時30分くらいともなると辺りは暗くなり、黒い波が雲を覆い隠す。
そうして八幡はは辺りを見ると、ビルの明かり、噴水などの綺麗な景色に見惚れている。
「すげー…屋上って侮ってたけど普通にすごいわ、そこら辺の夜景のスポットの方が綺麗だろうがな」
「う…それを言われるとあれですけど、でも綺麗ですよね♪」
「まあな、普通に綺麗だ」
一色は俺の事を想ってここに連れてきたり、遊びに誘ったりしてくれてる。
それから目を背けるのは…ちょっと違うか…
「一色」
「なんですか??」
純情無垢なその顔が八幡を見ている。
「その、今日はありがとな」
「え、えぇ!?せんぱいがお礼!?」
「た、たまにはな、別にいいだろお礼くらい」
確かに彼の今までを考えるとお礼の1つもまともに伝えらなかった。そう考えると少しは進歩したのではないか。
「…いえ、私も、ワガママ聞いてもらってすいませんでした」
「そんなの毎度の事だろ?」
「そこは、そんな事ないよ!とか言うんですよ!本当に乙女心わからないダメダメせんぱいですね…」
「俺お前に何回見捨てられなきゃいけないの…」
いつも通りの彼らの会話。だけど、ほんの少し違うのは八幡の気持ちの変化。少しずつだけど彼は変わっている。一色もそれは気付いているいる。だから、だからこそ彼女はまたワガママを言うのだ。
「せんぱい…また私とこーやって遊んでくれますか…?夜景見に行ったりしてくれますか…?」
答えるのに躊躇いを見せている八幡。
答えてしまえば全てが決まってしまうから、これからの関係性など考えて彼が出した答え。
「…ああ、まあまたオトモとして付いて行ってやるよ」
一色が求めていた答えとは違う言葉が返ってきたが、気を利かせたのかそっぽを向きながら
彼女の頭に手を乗せている。
うわぁ…俺きも…
……俺にはまだ考えが纏まらないし、ちゃんとした「本物」の答えが見つからない、だからもっと模索するんだ。
「はぁ…せんぱいあざといです…。しかも、はぐらかすし…これは始業式の手伝いしてもらいますからね!絶対に!後、夜景も絶対に行ってもらいますからね♪」
「はぁ……なんで外に出なきゃいけないんだよ…さみーよ、しかも始業式の手伝いとか生徒会でやれよ…」
普段通りの会話に戻り、一色も八幡もいつも通りにしている。
「じゃーもう帰りますか!」
「だな、早く帰らないと小町が作った夕飯がなくなる」
「なんですぐ妹さんなんですかね……」
彼女の想いはまだ届かず、また新たなスタートを切る。
どうも皆さんこんばんは!
更新とても遅くなってすいません!
バイトやらテスト勉強やら風邪やらであまり考える暇がありませんでしたw
やっぱりいろはすは可愛いですね、ずっといろはす推しです!
小町もいい事言うなー。これから冬休みなのでちゃんと更新していくつもりなのでよろしくお願いします!
書き方や何か指摘するところがあったら教えてください!
ではではー!