不死の英雄伝 〜思い付き短編集〜   作:ACS

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(ギリギリ)クリスマスだから短編の方を投稿いたします(白目)


体現者短編 8

短編8 メリークリスマス!!

 

 

 

––––––––12月25日、この日はイエスキリストと言う人物の誕生日らしい。

 

右手にチキンを持ちながらカレンダーの日付を見ていた俺はそれが何故この様などんちゃん騒ぎと関係があるのだろうかと少し真面目に考えていたのだが、視界の端にいるなのはが楽しそうにはしゃいでいる姿を見ると割とどうでも良い事なのかも知れないと思い直し、彼女の側へと移動する。

 

 

春先に厄介になる事になった高町家では情操教育とか言う物の一環で季節の行事と言う物を極力行う事にしているらしく、クリスマスも例外では無い様で食卓の上には所狭しと様々な料理が並び、桃子さん特製のケーキが中央に鎮座している。

 

兎に角クリスマスとは目出度い日なのだろう、そう俺は思っていたのだが、何やら美由希さんの様子がおかしい。

 

 

『カップルなぞ滅んでしまえ』とか、『キリストの聖誕祭にイチャかましてんじゃないわよ』とか、『なのはにすらブレンが居るって言うのに』とか、ブツブツ言いながらジュースを飲んでいる。

 

カップル云々の話がクリスマスと何の関係があるのか聞きたかったのだが、なのはがケーキを一緒に食べようと誘ってくれたので其方を優先する事にした。

 

……………と言うより、純粋に負のオーラが全開になっている美由希さんに近寄りたく無かったのが本音である。

 

 

 

ケーキや料理をなのはと一緒に食べ終えてから暫くゲームなどで遊んでいると、士郎さんが赤い靴下をクリスマスツリーに掛けていた。

 

あれはクリスマスの前日から渡されていた物で、欲しい物を紙に書き込んで中に入れておくとそれが『サンタクロース』なる人物の手によって翌日枕元にプレゼントされると言う物らしい、取り敢えず紙が渡された直後に『なのはのしあわせ』と書き込んだら士郎さんが凄く悩んでいた事が印象的だったのを覚えている。

 

ツリーに掛けられた靴下は俺の分となのはの分の二つ、願い事は子供限定で叶う物らしく、美由希さんや恭弥さん達の分は見当たらない。

 

なのはの欲しいものは一体何だろうか? 覗いてみたい衝動に駆られていた俺だったが、格ゲーに熱中していたなのはが船を漕ぎ始めたので彼女を寝かせて部屋まで連れて行く。

 

義手のお陰でなのはと一緒にゲームをする事が出来るのは嬉しいのだが、手加減が出来なかったり、致命的に下手くそだったりするお陰で、何時も何方か一方的な展開になってしまうのが困りモノだ。

 

昔取った杵柄とでも言うのか、格ゲーやパズルゲームだと相手の動きをフレーム単位で見切れてしまうため、後出しジャンケンで勝っている感が否めない。

 

なのはは負けず嫌いな上、頑固だから勝てるまでゲームを止めようとせず、ひっそり手を抜いて負けようにもあっさり見抜かれてしまい、涙目で睨まれるためどうしようも出来ず、こうして寝落ちを待つしかゲームから解放される道は無い。

 

逆に双六ゲーやRPGでは赤マスに百%とまったり、回復を忘れて全滅の連打となるためゲームにならない、数え切れない程のブレンが破産したり死亡したりしているのでその手のゲームは直ぐに終わってしまう、…………切実に中間のゲームが欲しい。

 

 

そんな事を思いながらなのはを部屋にまで運び、眠たげに眼を擦る彼女をパジャマに着替えさせる。

 

もぞもぞと着替え始めたなのはだったが、心身ともに限界が近いらしく殆ど眠った状態の様だったため、着替えが途中で止まってしまった。

 

仕方ないので俺がそのままパジャマを着せてあげたのだが、彼女はそのまま俺に抱き付いて寝てしまって離れなくなってしまった。

 

何時もの事なのでなのはを抱き上げてベッドへと潜り、瞼を閉じる。

 

昔は''寝る''と言う事すら忘れていた為、意識が途切れるまで起きて–––––いや、忘れていたと言うのには語弊があるか、戦い詰めの人生だった為寝る事を恐れていた所為で眠れなかったと言う方が正確だな。

 

初めてこの家で過ごした一夜は常に混沌の刃を抱えており、起こしに来た恭弥さんに『抜き身の刀』と称される程酷い顔をしていた。

 

だがなのはが隣で寝ていてくれると不思議とそんな事は無く、自分でも驚く程安心して眠る事が出来た、一目惚れとは言えだ、どうやら俺は骨の髄までこの子を愛しているらしい。

 

俺はなのはの温もりや匂いに包まれながら、懐かしい事を思い出して眠りに落ちて行った。

 

 

 

 

–––––––朝まで目を覚ます事は無いだろうと思っていた俺は深夜に意識を覚醒させる。

 

僅かにだが板張りの床を歩く音が聞こえる、意識を集中させなくては聞き逃すような小さな音だが、確実にその音はこの部屋を目指して進んで来ている。

 

なのはの腕の中から抜け出し、音を殺しながらベットから出た俺は床に耳を当てて相手の歩幅や床の軋みから大凡の体重と体格を割り出した。

 

相手は十代から二十代の男性、然も足音や床音を最大限に殺している所を見るとかなりの手練れと見た。

 

 

混沌の刃をソウルから取り出し、鞘付きのまま突きの体勢に入る、抜刀しない理由は単純に血でこの部屋を汚したく無かったからだ。

 

息を殺し、気配を周りに溶け込ませながら殺気を四散させる、気取られる前に一撃で仕留める。

 

ドアの前に男が立ち、扉が開く、その瞬間に足音を殺しながら踏み込み、鳩尾に向けて刺突を放つ。

 

扉の先に居たのは白い髭を蓄え赤い帽子と服を来た大きな袋を携えた男、彼は扉を開けた瞬間刺突が放たれたと見るや否や、開いたドアを閉める事で擬似的な白刃取りを行い、直撃を間逃れる。

 

ある程度の手練れなのは分かっていたので、止められた事に落胆はせず、義手の力を最大限に発揮しそのまま柄を殴りつけて挟まっている混沌の刃を射出、男はそのまま横っ飛びに避け、一目散に逃げ出した。

 

何が目的かは知らないが、なのはの寝込みを襲おうとしたのだ、死んで貰う。

 

混沌の刃を拾い直した俺は赤い不審者との鬼ごっこを夜通し繰り広げる事になるのだった。

 

 

後々知ったのだが、俺がこの時執拗に追い回していた人物が『サンタクロース』で、更に成人してから告げられたこのサンタの正体は実は兄さんだったらしく、『あの時は本気で死ぬかと思ったぞ』と呆れた。

 

 

 

 

「––––––とまあ、コレが私の子供の頃のクリスマスだよヴィヴィオ」

 

「うわぁ……、叔父さん御愁傷様」

 

「今では私はサンタの格好をしてシュテル達にプレゼントを配る番なのが感慨深いよ」

 

 

–––––––この後私はヴィヴィオにプレゼントを渡し、寝ているシュテル達にプレゼントを渡しに行ったのだが真改とカイムがかつての私と全く同じ行動を取るとは思いもせず、街中を鬼ごっこしながら二人を仕留める事になるとは思いもしなかった。

 





尚、なのはのクリスマスプレゼントのお願いは『ぶれんくんといっしょにたのしめるげーむとぶれんくんのしあわせ』

ゲームの方は美由希さんがチョイスし、鬼ごっこしてるブラザーズの隙を突いてひっそりとなのはの枕元に置きました。

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