不死の英雄伝 〜思い付き短編集〜   作:ACS

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if もしもブレンが色々開き直った神様だったら。

注意

ギャグ、設定崩壊、キャラ崩壊が含まれます。


体現者短編3

短編3 転生者死すべし慈悲は無い

 

 

其処は始まりの火が鎮座する場所、本来の世界線の不死の英雄は己の存在を嘆き、存在が希薄に成る程の深き眠りに付いていた、のだが。

 

 

「と言うわけで、幸か不幸か私はこの世界の覇者、つまり神となってしまったのだよ」

 

「いや、だからな? 俺はテメーの事なんてのは微塵も興味ねーんだよ」

 

 

この世界の彼はなってしまった以上仕方ないかと逆に開き直ったようで、現在は有り余る神様パワーを使用して魂レベルで消滅した放浪者を再構築し、強制的に話し相手として居る所であった。

 

満足した人生だったと綺麗に幕を引いた放浪者には気の毒な話なのだが、それ以上に不死の英雄は暇であり、この場で生き返らせることが出来るのが放浪者のみだった為、所謂不可抗力と言う物であった。

 

 

「君の意見など知った事では無いよ、我が逆しま」

 

「少し見ねぇ内に随分偉くなったなァ、えぇ!!」

 

「神だからな、偉いに決まってーーーーん?」

 

 

ふざけた調子の口調だった不死の英雄だったが、唐突にその穏やかな雰囲気は四散し、刃のように鋭い殺気を放つ。

 

胡座を掻きながら鍾乳洞に凭れていた放浪者は、常人なら圧殺される程の殺気を全身に浴びながらも暇そうに欠伸をかまして居る。

 

 

「で? どうしたんだよ、んなに殺気立って」

 

「私の大切な世界に鼠が紛れ込んだ様だ、今から排除しに行くぞ」

 

「いってら〜、俺は現代の漫画読み漁るっつー大事な用事があるんだ、テメーだけで殺って来いよ」

 

「私はコミュ障な上引き籠りでね、通訳の君が居なければ目的が果たせない、という訳でボッシュートだ」

 

 

そう言って不死の英雄は指を鳴らし、放浪者の足元へ穴を開けて地上へと叩き落とす、ドップラー効果で流れる罵声を聞き流しながら次元の壁を斬り裂き自分だけは悠々と海鳴公園に足を踏み入れるのだった。

 

落下した放浪者、転生者狩りに無理やり参加させられた彼が落ちた場所は次元の狭間に浮遊する時の庭園、ーーーーの大浴場だった。

 

盛大な水飛沫を上げながら熱湯の中に着水する放浪者、なんたって自分がこんな目に合わなくてはならないのか、そんな悪態を吐きながら、銀髪のあんちくしょうを必ず殺すと誓いながら湯船から立ち上がると、其処には全裸の金髪幼女と同じく全裸の妙齢の女性が浴場に入る所であった。

 

 

時が止まった様な錯覚、顔立ちが似ている所を見ると親子の様だが、幼女の顔が下から赤く染まって行き悲鳴を上げる。

 

その瞬間放浪者は湯船から飛び上がる、それは彼の才能がプッシュした回避行動、そしてそれは正しく、先ほどまで彼が居た場所に紫電が叩き込まれていた。

 

派手な音を立てて水面に走る電流、いきなり攻撃された為、訳が分からないが目の前の女は自分の敵だと判断した放浪者はその脅威を排除すべく墓王の大剣を取り出し、一閃。

 

ーーーーしたつもりだった。

 

 

空中で墓王の大剣を取り出したまでは良かったのだが、自身の身体が何故か幼くなっており、その所為で身の丈を超える大剣に身体が引っ張られ、真空波を飛ばす一閃を振るう事が出来ずタイルの床に叩きつけられた。

 

 

「んだこれ!? 何で俺がガキの姿に『言い忘れていたが転生者は幼児の様でな、世界に負担を掛けずに地上に出るには彼らの通った道を使う必要があったのだが、その結果がこれだよ』ーーーーッ!! 逆しまァ!! そう言う事は先に言えぇぇえ!!」

 

 

人の思考を先回りする様な念話、その上『それと追伸だ、如何にも私は一目惚れと言う物をしたらしい、転生者狩りは全面的に君に任せたよ』と言う糞巫山戯た言葉を言い放ち、彼はそのまま念話を打ち切った。

 

 

「野郎……!! 決めた何時か殺すッ!! 必ず殺すッ!! 絶対に殺してやるッ!!」

 

「物騒な事を言うのは構わないけれど、貴方は何者かしら? 本来ならフェイトの肌を見たと言う罪で極刑物、けど貴方は失われた力を使用している様だし、場合によっては実験動物扱いにして生かしてあげるわよ?」

 

「吐かせよババァ、血色の悪りぃ面しやがって、病人風情が俺を殺れると思うんじゃねぇぞ」

 

 

さっきの一振りで以前の身体と今の身体の違いはハッキリと理解出来た、身体ごと持って行かれる何て事はもう無い、次は殺れる。

 

それ以前に幻影の刃で串刺しにすると言う方法も残っているのだ、万に一つも負けは無い。

 

 

そんな事を思いながら墓王の大剣を握る拳に力を込め、身を低くしながら敵の動きを注視していたのだが、向こうの方から臨戦態勢を解き、脱衣所から二人分のタオルを持って来て自分と幼女にタオルを巻き付ける。

 

 

「……取り敢えず貴方は只者では無いようだし、此処は大人しく引きましょう、分かったらさっさとお風呂から出て行ってくれないかしら? 私はこれからフェイトを治療(意味深)しなきゃいけないの」

 

「実の娘に欲情した上でヨダレを垂らす母親か、世も末だな……」

 

 

肩を落として湯船から上がり、浴場から外へと出る放浪者。

 

 

ーー彼はこの後、テスタロッサ家に居候する事となり、後に起きるジュエルシード事件や闇の書事件でブレン・シュトッフと名乗って高町家に居候する神と壮絶な殺し合いを開始する事になり、低級な神から無限の剣製や勝利の剣、必中の槍を貰って意気揚々と原作介入しようとした転生者の度胆を抜く事となる。

 

 

尚、転生者達は知らなかったが、この世界は敷かれている理によって神によって与えられた能力の悉くが一切通用しない世界となっている。

 

その為、事件開始時の思念体にすら重症を負わされたり、100%踏み台転生者のブレンに素手で伸されたり、ジュエルシードを求めて放浪者と対峙して半殺し以上の九割殺しにされたりと散々な結末となってしまうのだった。

 

しかも、ブレンは別の世界線の自分以上になのはに骨の髄まで骨抜きにされてしまった所為か、ゴキブリ以下の転生者に微塵も興味が無くなり、出会い頭に始まりの火を使って『どの様な事をしたとしても世界の流れを変える事が出来ない』と言う呪いを魂レベルで刻んで放置すると言うだけの処置で済ませている。

 

 

ある意味この世界線は平和な、なのかもしれない。


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