実況パワフルプロ野球~あの空のムコウまで~ 作:たむたむ11
再び、溝浜疾風のグラウンドにて100m走の再測定を行う事となった隼。
前回は足の怪我に耐えきれず気を失って失格してしまったが、今回は全く異常は無い。
そして、前回と大きく変わっているのは足の怪我だけでは無かった。
「今日は防具をつけなくてもいいんですか?」
ほぼ普段着の姿のまま、隼は足を屈伸運動させながら八剣に問う。
すると八剣はストップウォッチの調整をしつつも、隼の問いにこう答える。
「ああ、防具をつけたときの記録はこの目に焼き付いてるからな」
「……?」
その言葉に首を傾げる隼。彼は自分が防具をつけて走っていた時の事を覚えていないのだ。
隼が痛みに耐えながら凄まじい激走を繰り広げていた事は、セレクション会場に居た者しか知らない。
しかし、一度見れば忘れる事は無いであろう隼の激走は八剣の目にしっかりと焼き付いていた。
「今回は小細工なしに、あんたの本気をしかと見させてもらおう」
「……わかりました」
ストップウォッチに手を掛け、鋭い眼光で隼を見つめる八剣。
彼は純粋に気になっていた。隼が本気で走ったら、一体どれほどの記録が出るものなのか――と。
そして軽く準備運動を終え位置に着く隼、そしてそれを見て測定を手伝う事となった女子野球部員が火薬銃を空に向ける。
「それじゃあいきますよー。
位置についてー、用意スタート!」
「はぁあっ!」
火薬銃が鳴り響くと同時に、大きく声を上げながらコースへと駆けだす隼。
その凄まじいスタートダッシュは最初に踏み込んだ地面を抉るように、大きく砂煙を上げて踏み抜かれる。
そしてその勢いそのままに、駆けだされた躰はとても安定しており美しいフォームのまま駆け抜けてゆく。
目にも止まらぬ速さとその美しさに、その場に居た者は全員隼の走りに魅了されていた。。
そして一瞬で駆け抜けた隼がゴールテープを切った瞬間は、まるでその場の時が止まったかのように誰一人動く事が出来なかった。
「はっ……、しまった……」
思わず恍惚し計測していた事を忘れてしまった八剣は、慌ててストップウォッチのボタンを押す。
隼がゴールしてから何秒ボーっとしていたのかは定かではない。場合によってはもう一度計測し直さなければならないだろう。
しかし、そこに写し出されていた記録は、明らかに再計測の必要が無い文句なしの記録であった。
「え……、何だと……?」
ストップウォッチを見たまま硬直した八剣に、走り終えた隼は清々しい面持で声を掛ける。
「それで……、今の走りどうでしたか?」
しかし声を掛けられても尚、驚いたまま目を見開き無言でいる八剣。
隼は八剣の後ろから回り込み、ストップウォッチに写し出された記録を見る。
少しボタンを押すタイミングがずれた事を知らない隼であったが、画面に写しだされている数値を見て上機嫌の様子。
「おお、10.2。久しぶりに計測しましたけど、これってかなりすごい記録なんじゃないですかね?」
「お……、おう……」
「ふふ、僕は体力は無いですが速さには自信があるんですよ」
自慢げにそう振舞っている隼であるが、今の八剣にとってはその態度ですらも謙遜気味に見えてしまう。
すごい、どころじゃない。今までで見てきた瞬足という概念の枠からは明らかに離れているだろう。
もし、今の走りをきちんと計測していたら一体どんな記録が誕生していただろうか。八剣は想像するだけで恐ろしかった。
(コイツ……、まじかよ……)
以前、隼の姿に化け物を見た八剣であったが、今回ばかりはそれどころではない。
言葉で言い表す事ができない程のスケールを目の当たりにし、八剣はますます隼という人物に惹かれていた。
だが、それと同時に恐怖を感じていた。これ程の人物と出会ってしまったという恐怖を。
「流石に文句ねぇよ……。だが、いいのかよ……」
八剣は嬉しそうにしている隼に対し、心の奥底から感じていた疑念をぶつける。
「あんた、陸上に行けば絶対伝説になる男だぜ? 野球だけがお前の選択肢では無いはずだぜ?
野球部の監督が言うセリフじゃねぇかもしれないが、野球っていうのは必ず勝者になれるもんじゃねぇ……。
如何に優れていようが、記録がきちんと残る陸上のように確実性は無ぇ。母さんにいい所見せるなら陸上のがいいんじゃねぇのか?」
八剣の言う事は概ね正しかった。
野球には調子の良し悪しや対戦相手による相性が関係する事もあり、確実に活躍できるという保証は無いのである。
ドラフトやら育成枠で入団するプロ野球選手達はそれぞれが優秀であるにもかかわらず、二軍を抜け出せずプロ野球人生の幕を閉じる選手も多い。
例え調子が良く一軍に上がったとしても、好成績を継続し続け、良い記録を残さなければ一流の選手としてなかなか認めてもらえない。
高校野球であっても同じだ。例え実力はあったとしても、打てなければ、抑えられなければ選手としての意味はないのである。
如何に足が速かろうが、如何に肩が強かろうが、如何に速い球が投げれようが、如何に良い変化球を持っていようが。
それらが勝ちに繋がらないと判断されれば、たとえ実力があったとしてもその選手は切り捨てられてしまうのだ。
しかし陸上は完全に個人での競技故、それに応じた実力さえあれば勝ち負けを決める事は団体競技よりも容易く、記録もはっきりと残る。
さらにこれは野球にも共通している事であるが、足や肩にはスランプが無いのだ。
怪我した時や疲弊、病気。本来の力が発揮できない場合はあれど。身体能力はスランプに陥らない。
それはこの野球部を率いる八剣が信条にしている事であり、八剣はその事を深く理解していたのである。
もし隼が陸上の道へと進めば、確実に世界を取れる実力で陸上界を牛耳るであろう。
しかし陸上ならば世界を取れたとしても、野球でも同じ事が出来るかと言えば話は別。
この地点で、八剣は隼がどれ程の実力を持っているのかは知らなかったものの、内心では野球ではなく確実に世界一を目指して欲しいと思っていた。
だが、隼の意思は揺るがない。
「僕の心は、今も昔も野球だけを追いかけて生きてきました……。
それを今更、自分の欲望の為に裏切るような真似だけはしたくないです……、それに」
「それに?」
八剣が訊くと隼は大きく一呼吸をあけてから、こう告げる。
「……母さんとの約束、守りたいんです。
“高校野球最難関、神奈川高校野球を制して甲子園も制してみせる”――と」
純粋で少女のような瞳を輝かせながら、隼は八剣の心に訴えかけた。
八剣が想っていた以上に、隼は途轍もなく重い運命を背負っている。
もはや一指導者の言葉では揺るがす事も出来ない運命を前にし、八剣は隼を説得するのをやめた。
そして、八剣は最後に、無表情のまま意地悪な質問をぶつけてみる。
「もし、俺が今あんたを落としたとした場合は……その時はどうするつもりだ?」
すると隼も表情一つ変えず返す。
「その時は……、アルバイトしてでも高校に入学して、ここの野球部を完膚無きまでに叩き潰させていただきますよ」
「クックック、言ってくれるじゃねぇか」
隼の無礼とも取れる発言を受け、呆れるというよりも嬉しそうに笑みを浮かべた八剣。
彼は少しだけ、隼という男を理解した。
「では、俺はあんたに野球部を叩き潰されないよう、ここの野球部に入ってもらう事にしようかね」
八剣は冗談交じりに笑ってみせると、同じく嬉しそうに笑みを零した隼に手を差し伸べた。
「よろしくな、期待の勇者君」
「はい!」
がっちりと固く手を握る監督と受験生。そしてそれを取り囲むように見ていた女子部員達も、大きな拍手を浴びせかけ祝福する。
しかし今の二人のやり取りを少しだけ快く思っていない者も、この女子野球部の中には居たのであった――。
「ちょっと待ちなよっ、二人とも!」
突如、隼達の元に届く大きな声を受け、二人は声の方向を覗く。
目の前には堂々と一人の少女が仁王立ちし、明らかにムッとした様子で二人を睨んでいた。
「野咲さん?」
「どうした、野咲。ガラでもなく怖い顔して」
隼と八剣が少女の態度を受け、心配そうに声を掛ける。
それは野咲夢花だった。涼子や他の女子部員が驚いた様子で見つめている中、彼女は一人前にでて二人に物申す。
「監督っ、悔しくないんですかっ!?」
「何がだよ、野咲」
訳が分からなさそうにしている八剣に対し、隼の指さしながら突っかかる。
「隼君は今完全に舐めきった事を言ってましたよねっ!? ウチの野球部をコテンパンにするとかっ!」
「え、ああ……。確かに言ってたは言ってたが……、それがどうした?」
「もーっ! 普通野球部の監督ならそこは否定してくださいよーっ!
もっとこう、“俺の野球部があんたみたいなのに負けるわけがないだろー”とかさーっ!」
どうやら隼が調子乗った事を言ったのに、監督が何も言わずに話を受け入れていたのが余程気に食わなかったのか。
女子野球部には全く関係の無い話にも関わらず、夢花はやたらと八剣と隼に対し突っかかって行く。
(いきなりなんかスイッチ入ったな、一体何をしたいんだ?)
その一方でムキになって出しゃばる夢花の様子を目の当たりにし、首を傾げる八剣。
八剣は夢花が無理して突っかかってきている事に、指導者としてこの場にいる誰よりも早く気づいていた。
夢花は本気で怒っている訳ではない、と。八剣は夢花の演技臭い尖った目から推測していたのである。
一方、隼の方は完全に夢花を怒らせてしまったと勘違いしており、その場で少しあたふたとしだす。
「あ、あの……。野咲さん、落ち着いて――」
「隼君、甘いよ~っ! 私結構根に持つタイプだもんね~っ!」
「嘘つけ、人一倍忘れっぽい癖に……」
普段とは全く違う夢花の様子に、彼女の耳に聞こえないよう小声で突っ込みをいれる八剣。
一体何故、夢花はこんな事をしているのか。八剣は何となく指導者として夢花の行動が気になってしまう。
(まぁいい、このまま話を聞けばボロを出すだろ……)
原因を探るためにしばらくの間は何も言わず、夢花の話を聞く事に専念する。
すると夢花は八剣が何も言わない事を良い事に、今まで指導者としての八剣に対しストレスを解放すべく責めはじめた。
「監督はいつもそうじゃないですかっ、事が適当に進めば進んだでその過程なんてお構いなしっ!
高校野球っていうのは私たち部員にとって自らが主人公の人生を掛けた壮絶なドラマなんですよ!
それなのに、監督がその物語の芽を摘むなんて空気が読めないにも程がありますっ!」
「いや、ゆーちゃんの方が空気読めてないとおもうよ……」
明らかに空気の読めていない発言を受け、近くに居た涼子も突っ込みを入れずには居られない状況。
しかしそんな涼子の事などお構いなしに、その後も夢花は何も言わない八剣と隼に対したきつける様に語り続ける。
だが、しばらくすると段々と苦しい言い分が続くようになり。最終的には息切れしながら二人を睨みつけるだけになってしまう。
「ハァッ、ハァ……。でえっ、監督っ!」
散々語りつくした後、夢花はもう一度八剣に先ほどと同じ質問を繰り出す。
「本当に悔しくないんですかっ!? 負けを認めるんですかっ!?」
段々と夢花の尖った視線が涙目のようになって行くのを感じた八剣。
どうやら、夢花は監督に隼の事を認めさせない方向に誘導させようとしているらしい。
これ以上適当にあしらえば、夢花は何をしでかすかわからなくなる。
そう感じた八剣は夢花の問いに頷いてしまいそうになる。
しかし、もう少しで答えが出そうになり頷くのを躊躇わせてしまう。
「どうしたんですっ! はっきり言ってくださいっ!」
やがてなかなか返答をしない八剣に対し、しびれを切らした夢花が思わず怒鳴ってしまう。
普段は逆の立場である上、こうも怒鳴っても全然言い返されない快感は次第に夢花を調子に乗らせてしまっていた。
そして、調子に乗った夢花は八剣に対し、自慢のドヤ顔を見せつけながらこう言い放つ。
「もし悔しかったなら、この天才一年生エースの私が隼君を懲らしめてあげてもいいんですよ~っ!」
「えっ!?」
いきなり名指しでターゲットにされてしまった隼が目を見開きながら驚いていると、夢花の先ほどまでの尖った表情が嘘のように活き活きとしだす。
「へへへ……、隼君に先輩として社会の厳しさを教え込んであげないとねーっ。
あんまり調子に乗ってると、――ね?」
そう隼に対し言い放ちながら小さくウインクする夢花。
彼女は傍に落ちていた金属バットを手に取ると、それを引きずりわざと音を立てながら、ゆっくりと隼の元へと近寄って行く。
本人は威圧している様子であるが、その表情はまるで玩具を前にした子供の様に明るく嬉しそうに見える。
しかし、その表情は逆に隼を振るえ上がらせた。
「わ、わわっ、そういうのはやめましょうよ!」
「邑子さんには悪いけど……。生意気な後輩には制裁が必要そうだねっ!!」
「わっ!」
慌てふためく隼に対し、夢花はとても楽しそうに全力の素振りを見せつけて威圧する。
そのバットの風圧は体の小さい夢花が放ったものとは思えない程の威力があり、さらに隼を怖がらせる。
しかし、当然ながら夢花も野球選手だ。野球道具を暴力に使う気はさらさらなくすぐにバットを隼の方へと放ると、苦しそうに大声を上げて笑い出す。
「あはははっ、隼君ビビりすぎだよ~っ!
勝負は野球でに決まってるでしょ、そんな怖がらないでいいからっ!」
あまりに隼が夢花の想定通りの反応を見せた事で、夢花はご満悦の様子。
しかしその直後、先ほどまで何を言っても反応を示さなかった八剣が、夢花の背後でを呆れた目つきで見つめているのに気づいて身構えた。
「わっ、監督!?」
「……おいコラ、野咲」
いつもよりとびっきり低い低音が夢花の耳に響くと、夢花は覚悟を決めたように歯を食いしばる。
八剣は怒り出したり何か嫌な事を言い出す時、いつもよりも低音の声で話し始める事が多い。
きっと調子に乗った事で怒られてしまうのだろう、と夢花は監督の怒号を覚悟して俯く。
しかし、八剣は怒鳴りつける事はなかった。
その代わり、八剣は先ほどまでずっと考え込み、ようやく出た結論を夢花にぶつけて行く。
「さっきから無理して隼に突っかかってたが――、お前はただ、隼と戦いたいだけなんじゃないのか?」
「え……、えっ? な、何の事ですかね~っ?」
否定しつつも夢花の表情が途端に凍りだすのを目の当たりにし、八剣は図星を引いたと確信する。
あくまでシラを切ろうとする夢花に対し、今度は八剣が夢花に突っかかって行く。
「そういや野咲、最近試合形式の実戦投球とかやらせてなかったもんなぁ。時期的にはそろそろ刺激が欲しいと感じてくる頃だろう。
そんな時に現れたすごい奴。そりゃあ当然、すごい奴であればあるほど戦いを挑んでみたいって思うときもあると思うなぁ。
どんな些細な事でも理由にして、戦う雰囲気を作り出そうとしても可笑しくないよなー?」
明らかに確信をついた例えを受け、夢花は首を横に振るいながらもピクピクと小さく体を震わせていた。
「い、いやぁ~。全くの本心ですよーっ! 誰が私欲の為に思ってない事を言いますかーっ?」
「そうかー、本心なんだなー?」
「うんうんっ!」
とてもわざとらしく確認を取る八剣とそれを知ってか知らずか尚もシラを切ろうとする夢花。
すると、今度は八剣が少し寂しそうな演技を交えながら、焦りの表情を浮かべる夢花をさらに追い詰めて行く。
「じゃあ、さっき言ってた“監督は生徒の気持ちを全然考えない”ってのも、本心なんだなー。
すごくショックだなー、これでも練習方法とか合宿の予定先とか決めるのにすごい気をつかってるんだけどなー。
野咲が気に食わないって思うなら、合宿中止しちゃおっかなー」
「えっ!? ちょ、ちょっとそれは違っ!」
「えー、だって本心なんだろー? それとも、さっきまでのはやっぱり隼と戦いたいから言ったのかね?」
「ぐぬぬぬぬ……」
完全に夢花を手玉に取り、悪魔のような笑みを浮かべながら状況を楽しむ八剣。
先ほどまでふざけ半分で隼を脅かした天罰だろうか、夢花の立場が完全に逆転してしまっている。
一方、夢花の方はというとシラを切る事を諦めたのか潔く、監督に向かって頭を下げた。
「す、すみませんでしたっ! ……戦いたいだけですっ」
「正直でよろしい」
きちんと頭を下げて謝罪をした夢花の態度を受け、八剣は文句も言わずその場で頷く。
「それじゃ、早速だが勇者君。野咲と勝負してやってくれないか?」
「えっ!?」
間髪入れずに語り掛けられた八剣の一言に、隼はおろか夢花までもが驚いてしまう。
普段勝手な練習をしようとすれば鬼のように叱って来る監督が、こうもすんなりと要望を聞いてくれるとは思わなかったからだ。
一方、八剣は驚く夢花の様子を目の当たりにし、逆に拍子抜けしたように息をつきながら呟く。
「野咲が戦いたいって言ったんだろう、今更何を驚いてるんだ?」
「だ、だって! 本気で戦わせてくれるとはおもわないじゃないですかっ!」
八剣の態度を前に逆切れしだす夢花。
あまりにすんなりと話が進んでしまい、先ほどまで無理をして演技を行っていた事が馬鹿らしく思えていた。
ムッとした表情を浮かべ頬を膨らませる夢花、しかし八剣はそんな夢花を宥めるように語り聞かす。
「どの道、俺もあいつがどこまでやるかは知りたいからな。
お前がそう簡単に打たれる投手じゃないって事は俺が良く知っている、片倉の力を引き出させてみてくれ」
「そ、そういう事なら――」
渋々、納得したように夢花は監督の言葉に頷いた。
褒められたからなのか、それとも必要とされているという事を認識したからなのか。夢花もこれ以上駄々をこねるのを止める。
夢花は一度深呼吸をした後、改めて隼の前へとバットを突きつけた。
「隼君、勝負だっ!」
「……」
夢花に名指しで呼ばれた隼は黙ったまま、突きつけられた金属バットを手に取る。
新品の金属バット。幼い頃に拾いいつも使い続けてきたボロボロの金属バットの感触とは全くの別物。
されど、その一つの棒から伝わって来る夢花達の熱い意志。隼は改めて自分がこれから野球をするのだと再認識する。
(想い、夢、希望……。これが野球か……)
しかし、ここで隼は邑子の言葉を思い出す。
“負けたら終わり”。その言葉が頭をよぎった時、隼は目を大きく見開く。
ガラリと雰囲気が変わる隼。その変化に夢花も八剣も気づいていたのか、二人とも息をのみながら隼を見つめていた。
(隼君が……、変わったっ……)
(これだ……! あの最初のセレクションの時も感じてた違和感、気迫……!)
両者が隼にたじろいでいる中、当の本人は静かに笑みを浮かべていた。
そして彼は夢花の方へと金属バットを突きつけながら、高々と宣言する。
「私は負けるわけにはいかない。私は誰よりも強くなる男、片倉隼!
貴女の野球を想いごと、叩きのめさせてもらおう!」
それはこの溝浜疾風高校野球部グラウンドに、勇者“片倉隼”が降臨した瞬間だった――。
予想以上に長くなってしまい、試合回は次回になるのと一章の話数が一つ伸びますございます・゚・(ノД`;)・゚・
ご了承くださいでございます><
最後辺り文が思いつかなかったのでおぼついてますございますが内定決まりましたございますね!
ただ、良い話には裏がありますございますよね(ボソ
というわけで次回は夢花さんとの初打席試合でございますね!
高々と勝利宣言の隼君ですが、一体何が待ち構えているでございますでしょう!
感想などありましたらいただけると嬉しいございますヾ(*´∀`*)ノ
前回沢山のお気に入り登録、コメントありがとうございますした!