転生もとい落としたセシリアは、龍美に記憶を封印されたらしく何も思いだせない状態で、セイグリッド家の令嬢、アンナに保護されたのであった。
一方その頃、クジョウの島のとある一族桜の神様を祀っているのだが、そこに住んでいる、カスミの実家、朝宮家はいつも通りに、茶熊学園の寮に入っている娘のことを気に掛けながら過ごしていたのであった。
「母さん、カスミが茶熊学園に通うようになって、友達が出来たし、安心だね~」
「そうね、カスミ、いつもフローリアちゃんと一緒にいること多かったしね、最近、フローリアちゃん見ないわね?」
相変わらず仲がいいようでカスミの両親は、氏神の声が聞こえる我が子が旅立って、友になったフローリアのことは認めているのだが、幼い頃から、コミュ障だったこともあって、なかなか友達がいなかったのだが、茶熊学園に入学してから、龍美達には完全に妹同然に扱われていると、龍美が、カスミになりすました手紙を、送っているのであった。
両親も我が子に友達が出来ていることに嬉しそうに話していたのであった。
その時だった、
「母さん、あれなんだ?」
「何でしょう? 行ってみましょうか?」
「そうしよう‼」
何か光を放ちながら神社の境内の方角に落ちていくのを見つけたカスミ父は、カスミ母に質問し、一緒に確認しに落ちてきた光の下に向かったのであった。
「あ、おじさん、おばさん、こんにちは、どうしたの?」
「カゲツ、実は、神社に何か落ちたみたいらしいんでな」
「お父さん急ぎますよ」
「そういうこと‼」
「一緒に行きます‼」
朝宮家は神社に向かう途中で、中性的な顔立ちの弓使いの男、カゲツに遭遇したので、急いでいる理由を尋ねられたのが、カスミ母に急かされてしまったので、カゲツも巻き込んで一緒に神社に向かうことになったのであった。
「なんだ、この光は‼」
「おじさん、光が収まってく」
「こりゃ! たまげた‼ カスミと同じくらい別嬪さんだぞ‼」
「まぁ~どうしましょう、とりあえず、家に運びましょう‼」
「ボクも手伝うよ‼」
神社の賽銭箱の前に落ちていた光が収まっているを見た朝宮一同は、なんと、カスミと同じ黒い長い髪の少女「篠ノ之箒」が倒れていたのであった。
このままほったらかすわけにもいかないので、朝宮夫婦とカゲツは篠ノ之箒を家まで運ぶことにしたのであった。
「う・・・・」
「気が付いたかい?」
「‼」
「目が覚めたのか、安心しなさい」
「はい」
「わたし達にも、あなたと同じくらいの娘がいるんだけど、ちょっと、寮に入っているから、いつ帰って来るかわからないんだけど、お名前聞かせてくれるかしら?」
「・・・思いだせない‼ 何故‼」
「まさか‼ おじさん‼ これ記憶喪失じゃ‼」
「どうやら、余程、怖い思いをしてきたんだろう、どうしようか?」
「このまま、放り出すわけには、あ、そうだわ‼ この子、うちの子になってもらうのは?」
「大丈夫かい、母さん?」
「大丈夫よ‼ 養子の一人二人増えた所で‼ 騒ぐわけないじゃない‼」
「いいんですか? なにも思いださないわたしを」
「別に無理して思いださなくてもいいじゃないか、そうだ、名前言ってなかったね、ボクはカゲツ、カゲツ・トウヅキ、よろしく」
「よろしくお願いします‼」
「名前がないとね、そうだわ、弥生はどうかしら?」
「いいじゃないか、今日から、君は、ヤヨイ・アサミヤで、わたし達の子だ‼ 誰がなんと言おうと」
「はい、今日からお世話になります、お義父さん、お義母さん‼」
朝宮家の部屋で目を覚ました「篠ノ之箒」だったが名前と肝心な幼馴染みのことが思いだせないようで、このままほったらかしては、行き倒れるので、カスミ母は養子にすることを提案したところ、満場一致で、弥生と言う名前を貰って、無事にカスミの妹になったのであった。
「来てくれたのですね、我が、主、お願いです、この場所までたどり着いてください‼」
先ほどの神社の社屋に祀られている二尺三寸の柄巻が赤く、鍔に龍の彫刻が彫られた鞘まで真っ赤な日本刀が、弥生の到着を待ち望んでいたのであった。