今回からルーク達の本格的な戦闘があります。
そして原作主人公のアイツも登場!!
ではどうぞ!!
正門前——————————
「やれやれ、誰かさんを待っていたせいですっかり暗くなってしまいましたね」
「仕方ねえだろ、ソラ兄達の話長かったんだからよ」
辺りはすっかり暗くなり、他の生徒達はとっくに下校していて不気味なくらい静まり返った正門からルークとロイドが駄弁りながら出てきた、空戦魔導士科執務室での話が長引き夜になってしまうまで義理堅く待っていたロイドは表情こそ笑顔であるが内心穏やかではなかった。
「いえ、別に怒っているわけではありませんよ、しかしこんな夜遅くまで今日知り合ったばかりの人間を待っていたんですから夕飯の一つくらい奢るのがスジだとおもいますが違いますか?」
「・・・ホント足下見るなお前・・・」
他愛もない(?)会話をしながら歩く二人、ルークがロイドに夕飯を奢るのは決定事項のようだ。
「それにしても【連続拉致事件】ですか・・・今時そんなことをする変態がいるんですね」
「だな、しかも魔甲蟲から浮遊都市を護っている空戦魔導士科の学生を拉致するなn「ピュ・・ピュイ!」へ?なんだ?・・・・ハヤテ?」
二人が空戦魔導士科執務室での話の内容を話していると空から一羽の白い隼がフラフラと飛んで来てルークの右肩に乗った。
「シロハヤブサじゃないですか!?どうしてここに?」
「俺のダチのハヤテだ、ここにいるのは俺についてきたからだ」
もっと南の空域に生息しているはずのシロハヤブサが飛んで来たことに驚くロイドにその理由を説明するルークであったがハヤテの右肩を見てそこに傷を負っているのに気づき驚愕する。
「なっ!?どうしたんだハヤテ!その怪我!?」
「ピュ・・・ピュイ!」
「お・・・おいっ!?そんな怪我した身体で飛び上がんな!」
ルークが必死に呼び掛けても辛そうに必死に飛ぶハヤテ。
「ピュイッ!ピュイッ!!」
そしてその場で滞空して三番区の方を左の翼で指して何かを訴えるハヤテ。
「・・・・何かあったんだな、この先に!?」
「ピュイ!」
必死に訴えるハヤテを見て察するルーク、ダチと言うだけあってこの意思疎通は流石といったところだ。
「ピュイーッ!!」
そしてそのまま勢いよくハヤテは三番区の方へと飛んで行った。
「すまねぇロイド、俺はハヤテを追う」
「手伝いましょう、寄り掛かった船ですから」
「・・・いいのか?」
「ええ、夕飯を奢ってもらわないといけませんしね」
「お前なぁ・・・・・・ありがとよ」
ロイドの協力も得てルーク達は嫌な予感を胸にハヤテの後を追って行った。
三番区噴水広場———————————
時刻は間もなく午後九時となろうとしている、昼は大勢の人で賑わっているこの場所も今は人っ子一人おらず噴水池の水の流れる静かな音だけが辺りに木霊していた。
「こっちかハヤテ!?」
「ピュイ!」
一直線に広場の大通りを飛行するハヤテを必死に追うルークとロイド、私用での飛行魔術の使用は禁止されている為二人は仕方なく走って追っていた。
「ピュイッ!!」
「ハヤテ!?・・・なっ!?あれは!」
ハヤテが大通りの先のT字路の方を見据えて何かを見つけたかのように鳴く、二人がそのT字路の方を見るとそこには茶色のロングコートを着た左右にだけ薄い髪を残した禿頭の中年男性が気味が悪い薄ら笑いをしながら黒髪ポニーテールでルーク達と同じくらいの歳の少女を肩に担いで移動している姿が見えた。担がれている少女は気絶しているようでありどう見ても親子には見えない、故にその中年男性が不審人物だということは見るからに明らかである。
「おい!何してるんだオッサン!?」
「ちぃっ!?見られたか!」
明らかに不審に思ったルークはすぐに中年男性を呼び止めようとするが、中年男性はそれに対してバツが悪そうに舌打ちして何故か右手のひらを地面に着くようにしてしゃがみ込んだ。すると突然手のひらを着いた場所の地面半径20cmが赤く光りだす。
「な、なんだ!?」
「あれは!もしかして!!」
「ピュイ!」
「来たれ地の魔人達よ!不滅の軍勢をもって我が敵を殲滅せよ!!」
魔導人形生成魔術————————土人形の軍勢(ゴーレムフォース)
男が詠唱しそれが済むと突然男の目の前のコンクリートでできた地面が盛り上がり砕けそこから出てきた巨大な土の塊が人の形に変形する、身長は成人男性の二倍はあり全体的に角ばった形状をしており手足と胴体が巨大な岩のように太く強靭で顔に口と鼻は無く不気味に光る紅い眼光が獲物を狙う鷹のようにルーク達を視界に捉えていた。
「なっ!?これは!」
「土の人形・・・【魔導人形(ゴーレム)生成魔術】ですねこれは」
「それって空戦魔導士科長が言ってた、じゃあこのオッサンが・・・っていねえっ!?」
突然生成された魔導人形に動揺するルーク達は気が付くと男がすでにいないことに気付く、しかもその隣にも同じようにもう一体魔導人形が生成され数が二体となっていた。
ルークはどうしようかとロイドに聞こうとするとロイドはいきなり魔術士の宝石箱(マギスフィア)から魔剣を取り出していた。
「ちょ!?おいっ!」
「緊急事態です!交戦しても問題無いでしょう」
空戦魔導士科の学生は飛行魔術と同様に基本本格的な戦闘も許可なしに行うことは禁止されているが自分の身や民間人の身が脅かされそうな緊急事態に限り自らの判断で戦闘を行うことが許されている。
「・・・そうだな、よしっ!やるかっ!!」
戦意高揚したルークは右手の薬指にはめた魔術士の宝石箱を何故か自らの足に向けて光を照射した。
強い突風と共にエメラルドグリーンのウェーブのラインが入った魔装錬金(ミスリル)製の空色の靴がルークの足に装着された。
「!?・・・その魔装錬金(ミスリル)武装は!」
「《魔装靴》《ストームブリンガー》、俺の相棒だぜ!」
【空の王(アトモス)】ソラ・グローリーと同じタイプの魔装錬金武装をルークが装着するのを見て驚くロイドに対し自分の武器をまるで友を紹介するように答えたルークは続いて副武装の籠手を両手に装着して魔導人形の方を向きサッカーボールを大袈裟に蹴ろうとするように右脚を後方に高く上げてその場で静止すると上を向いた右足の裏の上に空気の球が発生した。
「ソラ兄直伝の戦技をくらえっ!!」
魔蹴術戦技——————————竜巻杭打(パイルトルネード)
大袈裟に蹴り飛ばすように右脚を振りぬくルーク、すると蹴りぬいた瞬間にそこから打ち出されるように先が尖った竜巻が正面の魔導人形一体に延びて行きドリルのように貫いて魔導人形を砕いた。
「一気に終わらせてやるぜ!」
一体の魔導人形を撃破して調子に乗ったルークは弾丸の様な勢いでもう一体の魔導人形に突進する、それに対して魔導人形は向かって来たルークを迎撃しようと強靭な右腕をルークに向かって振るうがルークはそれを当たる直前に身体を捻って横に一回転するようにして回避してそのままの勢いで回し蹴りを魔導人形に叩き込み、魔導人形は砕け散った、怒涛の連続撃破である。
「一丁上がりっ!!」
「なるほど、空の王直伝の戦闘術でしたか、お見事ですねルーク」
「こんなのソラ兄に比べたらまだまだだぜロイド」
流れるように魔導人形達を撃破したルークを称賛するロイドだがルークは教えてもらった人にはまだまだ届かないと謙遜する、しかしそれは謙遜ではなく事実を言っているだけでありもしソラがやったのなら最初の戦技だけで二体の魔導人形を後方の建物ごとミストガン外の水平線の彼方までフッ飛ばしていただろう。
「ハヤテ、ちょっと来い」
「ピュイ!」
ルークはハヤテを呼びハヤテの右脚に紙を一つ縛った。
「ソラ兄達のところにそれを届けてくれ」
「ピュイ!」
ルークがそう言うとハヤテはこの場を飛び去っていく、脚に縛ったのは手書きの手紙のようだ。
「さてと、これd「ルーク!!まだ終わっていません!!」へっ?」
これで終わったかと思い安堵をするルークだったがその時、ロイドは前方に五体の魔導人形が生成されていることに気づき叫んだ。
「なん・・・だと・・・!!?」
「!?・・・ルーク、後ろです!!」
「うおっと!?」
術者もいないのにいきなり追加で生成された魔導人形達を見て驚愕するルークだったが、突如後方から一体の魔導人形が二人を強襲、なんとか二人は正面に飛び込むようにして地面を転がって緊急回避に成功する。
「後ろにも現れやがったのか!どうなってんだよ!?」
「ルーク、空に逃れましょう!奴等はどうやら近距離攻撃だけで飛び道具を使えないようですから空なら安全のはずです!」
「わかった!!」
形勢不利を感じたロイドは敵の攻撃パターンを推測し一時態勢を整える為に空へと逃れることを提案し二人は飛行魔術を発動して高度200mの空域まで飛び上がった。
「よしこれで・・・・・・嘘ですよね?」
しかし下方を見やると魔導人形達が肩の後ろに土でできた大きな両翼を形成してこっちに向かって飛んで追って来るのが見えた。
「おいおい、空なら安全なんじゃなかったのかよ・・・」
「何事も100%推測道理に行くわけではないんですよ」
「間違いは間違いだろ?つーわけで迷惑かけたんで奢りはなしな(笑)」
「そう言う貴方は何も策も立てずに無駄に動き回って迷惑をかけたので明日の朝食も奢るのがスジだと思いますがね?(笑)」
無駄口を叩いている間に魔導人形達に360度取り囲まれてしまった。
「・・・・・・これはマズイですね・・・」
「諦めんな!空戦魔導士科長に教えてもらった事忘れたわけじゃねぇよな!?」
「【空士の回廊】を歩む為の心構えですか?貴方じゃないんですから忘れませんよ」
「どういう意味だテメェ!?」
絶体絶命の危機、だがそんな時こそ空戦魔導士に必要不可欠な【不屈の心】が必要だ。
『どんな困難や逆境でも絶対に諦めるな!信じろ自分の感覚を!今までの訓練を!そして仲間達を!!俺達が勝つと信じて戦い抜け!!』
一人の男が言った【黄金の精神】全開の言葉が二人の頭の中を過ぎる、絶対に諦めない、二人の眼に闘志が宿るのだがしかし絶体絶命の状況は変わらない。
「おしっ!なんとしてでm「ルーク!?危ない!!」しまった!?」
気が付けばルークの目の前とすぐ後方、二体の魔導人形がルークにその強靭な右腕を振るわんとしていた。
完全に不意を突かれたルーク、防護服(プロテクター)も着ていないうえにこんな岩の様な腕で殴られたら大怪我では済まないだろう。
—————くっ!諦めてたまるかっ!俺は最強の空戦魔導士になるんだ!こんなところでやられてたまるかよチクショオオオオオオオオオオッ!!!
抱いた不屈の心もむなしく一人の空の守護者が墜とされようとしていた—————
魔砲剣戦技——————拡散多弾頭射撃(マルチプルバースト)
・・・その時、突如下方から十六発の漆黒の魔力弾が飛来しルークに襲いかかって来た二体の魔導人形ごとルーク達の周囲半径20mにいた魔導人形達が撃ち抜かれた。
「なっ!?何だ!?」
「・・・どうやら思わぬ援軍が来たみたいですね」
突然の出来事に戸惑うルークと冷静に状況を分析するロイド、そんな時に撃ち抜かれて崩れ墜ちる魔導人形達の残骸の間を弾丸の様な速度で飛んで来てルークと背中合わせになるように滞空する一人の黒髪痩躯の少年———
「ったく、いい気分で寝ていたらリーガルに叩き起こされるわ、無意味な反省文書かされたりするわ、正直に書いたらリーガルの奴何故かブチギレてやり直しさせられるわ、クロエは薄情にも先に行ってしまうわで散々な一日だと思ったけど、面白そうな事やってんじゃねーか!」
漆黒の魔砲剣《グラディウス》を携えた少年【カナタ・エイジ】が不敵な笑みで————
「俺も混ぜろよ!」
と言い放ち戦況は一瞬で逆転した、真打ち登場といったところか。
「・・・・・・へっ!いきなり派手に登場して加勢とは大した役者だな、カナタ・エイジ!!」
同じく不敵な笑みを浮かべてそう言いながら向かって来た魔導人形一体を蹴り砕くルーク。
「んっ?お前に名乗った覚えもなければ会ったことすらねーぞ、ルーク・スカイウィンド!!」
そう言いながら不敵な笑みを浮かべたまま向かって来た魔導人形一体を袈裟斬りにするカナタ。
「お前もうC組じゃあ有名人だぜ、入学初日をサボった黒髪の何考えてんのかわかんねぇ奴ってな!」
そう言って向かって来た魔導人形二体を連続で殴り砕くルーク。
「ルーク、彼が今貴方の名前を言ったのはスルーですか?」
そうツッコミをさりげなく入れて魔導人形一体を切り裂くロイド。
「へっ!リーガルから聞いたぜ、お前クラスの自己紹介の時【最強の空戦魔導士に俺はなるっ!!】ってクラスの連中に啖呵切ったそうじゃねーか!そういう【蟲の触覚みてーなアホ毛をした変な髪のガキがいる】って言ってたぜ!!」
そう言いながら斜め上30m先で滞空する魔導人形三体を砲撃で撃ち抜くカナタ。
「ふざけんな!俺のチャームポイントを蟲の触覚言いやがって!!」
「それチャームポイントなんですか!?」
「プッ!?面白れーなお前」
「そこっ!気持ち悪い含み笑いすんな!!」
「ぎゃははははははははっ!」
「だからって高笑いすんなぁぁぁぁぁぁっ!!」
・・・・・・今日知り合ったばかりだというのにまるで昔からの友人同士の様なくだらない会話をしながら不謹慎に戦闘を続け優勢状態を維持する三人、しかし魔導人形の数は一向に減らずにむしろ増えていることにカナタは疑問を抱いた。
「・・・あのさ、なんなんだこいつ等?」
「どうもこうもねぇよ、こいつ等は禿頭のオッサン・・・多分空戦魔導士科長が言っていた【モンド・スミー】だろうよ、そいつが地面になんか魔導人形生成魔術っつうのを使ってできた土人形共だぜ、なんで次々と増えやがるんだかわかんねえんだ」
「ふーん、魔導人形生成魔術ねぇ」
ルークがカナタの質問に答えてカナタは何か思い当たった事があったようなと考える。
「・・・・・・それって確か土や水みてーな細かい物質や液体以下の物に使うには何か魔力が入ってる核みてーなもんが必要だって聞いたことがあるぜ」
「核?そういえばさっきの術者は術を発動するときに地面に手を着いていましたね・・・」
カナタの言った事に心当たりがあったことを思い出すロイド、そして三人は下方の三番区を見るとそこには先ほどルークとロイドがいた噴水広場の近くの大通りのT字路のところが紅く光っているのが見えた。
「・・・・・・あれだな」
「ああ、あれだな・・・」
ルークとカナタは互いに顔を見合わせて呟いた後に間をおいて不敵な笑みを浮かべてそれぞれの魔装錬金武装(エモノ)をその紅く光る場所に向けて—————
魔蹴術戦技——————————竜巻杭打(パイルトルネード)
魔砲剣戦技——————————収束魔砲(ストライクブラスター)
それぞれが得意とする戦技を放った。
三番区と四番区の境界付近の郊外、再開発地区最奥の三十層構造耐魔シェルター付き倉庫内———
「うう・・・うん?・・・」
過去に遺物発掘科(レリック)と機械科学科(マキナ)と万融錬金科(アルケミスト)がそれぞれの最高ランクの危険物を保管する為に造られたこの場所は今ではもう廃棄されていて中は埃が溜まっており、そこらに多数の害虫が徘徊しているのが見られて衛生上に非常に悪い場所となっていた。
「あ、あれここh『ドオォォォォォォォォォン!!』なに!?爆発音!?」
そんななかで今まで気絶していたクロエは眼を覚ますのだがその瞬間どこからか爆発音が聞こえてきたので彼女はなにが何だか分からず戸惑う。
「一体・・・えっ!?なにこれ?なんでわたし縛られているの!?」
クロエは何事かと思い起き上がろうとするが自分の両腕と両脚がウィザード拘束専用の耐魔ロープで縛られていた事に気づき、動揺しながら倒れ込んでしまった。
「ちぃっ!?【人工魔核】が破壊されたか、あのガキ共め」
「えっ!?誰っ!!」
今度は薄暗い物陰から左右にだけ薄い髪を残した禿頭の中年男性がクロエに近づいて来て目の前で彼女と同じ目線の位置になるようにしゃがみ気色悪い下品な笑みを浮かべながら彼女の頬をいやらしい手つきで撫で始めた。
「ひっ!?なにするの!?」
「ウヒヒヒヒ、やっぱり幼女はいい!お肌プリプリで可愛くてウヒヒヒヒッ!」
「嫌ぁっ!!」
嫌がるクロエの頬を満足するまで撫でてからようやく手を放して立ち上がり気色悪い笑みをしながらクロエを見下ろす中年男性。クロエは男に生理的嫌悪感を感じながらも勇気を振り絞り怒鳴る様に疑問をぶつけ始める。
「貴方誰っ!?何でわたしは縛られてこんなところにいるの!?それにここは何処!?貴方の目的は何っ!!?」
「ウヒヒヒヒ、一遍に質問するなと幼年学校で教わらなかったのかな?・・・まあいいか」
威勢良くも必死に質問をぶつけてくるクロエに対してその姿を楽しみながらも鬱陶しく思いつつ男はそれに応じて話しだした。
「ワシはモンド・スミーという偉大なる魔導科学者なのだよ!」
「魔導科学者?」
「そう、もっとも少々ヘマをしてベベルの監獄に投獄されていたがね」
「っ!?やっぱり貴方何か罪を犯した犯罪者なんだね!それで!?こんな事をしているということは明らかに出所したんじゃなくて脱獄したという事、そうだよね!?」
「ウヒヒヒヒ、御明察!いやぁ察しのいい幼女だねぇ、えらいえらい・・・まったくなにが【幼女誘拐・監禁の罪でお前を拘束する!!】だあの青二才が!全空戦魔導士のトップエースが調子にのりやがって!!」
中年男性・・・モンドの発言を聞いてクロエは推測しその答えを察してモンドにその答えをぶつけるがモンドはそれを聞いて何かを思い出したのかいきなり怒りだした、相当気に入らない嫌な出来事だったのだろう。
「今すぐわたしを開放して自首して!こんな事が許されると思っているの!?」
「うるさいわい!!今何もできない癖に威勢のいい幼女だな!!自分の立場をわかっているのか?これからワシと一つになるのに」
「えっ!?」
モンドは喚きだすクロエに怒りを顕わにして怒鳴ると突然身体を気味悪くくねらせ始める。
「貪欲なる獣、この現世(うつしよ)に現出せんが為に我が身を捧げんっ!!」
身体変態(メタモルフォーゼ)—————————暴喰王変身(トランスグラトニー)
身体をくねらせながらの詠唱を終えると突如モンドの身体が変化し始める。
身体中の肌は不気味な紫色になり身体は約四倍程肥大化して口が裂けて太い針山の様に鋭い牙が裂けた口の中に生えてきて前頭部にはまるで闘牛の角の様な角が生えてきた、その姿はまるで巨大な暴喰鬼(グール)のようだ。
「きゃあぁぁぁぁぁっ!!?」
「ウヒヒヒヒッ!!いいねぇ幼女の悲鳴は!!でも叫んだところで無駄無駄!この場所は耐魔シェルター三十層の廃棄施設の中で仮にここに学園の空士が駆けつけても手出しできまい!さあ、ワシと一つになろうかウヒヒヒヒヒヒッ!!!」
巨大な口を開き恐怖する身動きができないクロエを喰さんと彼女に迫るモンド。
「嫌っ!来ないで!!」
「ウヒヒヒヒッ!!」
そしてクロエの目の前に来たモンドは思い切り口を裂いて彼女を今まさに喰さんとしていた———————
—————————助けて!カナタッ!!!
その時、二人から見て左方30mの耐魔シェルターの防壁をいきなり先の尖った竜巻と漆黒の砲撃が突き破ってきてモンドを直撃、逆方向の壁にふっ飛ばされた。
「ぐぼげえぇぇぇぇぇっ!!?」
「・・・・えっ!?」
もう駄目かと思い目をきつく閉じていたクロエは突然の出来事に目を見開き恐る恐る突き破られた方を向く、そしてそこに姿を現した人物を見た時彼女は心から安心した、先程から心を支配していた恐怖が消えたのだ、なぜなら—————
「俺の幼馴染になにしてんだ変態ヤロー」
「運良く直撃したな、スカッとしたぜ!」
「これって耐魔シェルターですよね?・・・一撃ですか・・・」
その人物は自分が最も信頼する幼馴染(+二名)だったのだから。
「カナタッ!!」
「よっ!クロエ、んっ?何だ縛りプレイか?お前そんな趣味が・・・」
「ないからっ!?早くこれ取ってよ!」
「台無しですね」
せっかくの再会シーンがカナタの無神経な一言で台無しになりながらも彼女を縛って拘束している耐魔ロープを全て切断してクロエを解放する。
「何故だ!?何故三十層の耐魔シェルターが!!?」
再会も束の間、ふっ飛ばされたモンドが起き上がってきた。奴はさっきの攻撃が直撃したのにぴんぴんしていたが突然襲撃してきたルーク達に驚愕の表情をしながら問う。
「へっ!この程度の壁抜きも出来ねぇで最強の空戦魔導士になれっかよっ!!」
「クロエ、いけるか?」
「うんっ!大丈夫!」
ルークが不敵な笑みを浮かべてモンドに言い放つ横でクロエが魔術士の宝石箱(マギスフィア)から先が碧い花の様な装飾になっていてそこに砲口がある杖・・・魔砲杖《ベネトナシュ》を取り出してルークの右にいるカナタの右に並び立った。
「さあ、あとはこいつをブッ倒すだけだぜっ!!」
今ここに主役の星達が揃った。
入学したばかりだというのにこんなに戦闘できるなんて変だと思ったと思いますが、原作第二巻のユーリの入学時の回想を見るとその時のユーリはある程度は戦闘できたみたいなんですよね。
だからこんな感じにしました。
でも【一撃で突き破るのさ!】って感じで耐魔シェルター三十層壁抜きしたのはやり過ぎだったかなぁ・・・・・・まいっか!!