空戦魔導士候補生の情熱   作:蒼空の魔導書

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原作空戦第8巻マジ感動!!

色々と考えさせられる巻でした。【命の選択】かぁ。

皆さんは明日世界が滅びるとしたらどう過ごしますか?

自分はエミリーと同じで遊び倒します。


眠りの森(スリーピングフォレスト)

本棟、空戦魔導士科(ガーディアン)予科一年C組教室—————————

 

「ふむ、この学園浮遊都市は治安が悪い・・・ですか・・その様な話は聞いたことがありませんが」

 

ルークは指定された席が前後同士だったことで先ほど知り合った金髪の少年《ロイド・オールウィン》と話をしている。ロイドに対するルークの第一印象は【なんかウスィーそうな奴だな】であり、せっかく知り合ったのに名前を忘れてしまわないか心配だった。

 

「つってもなぁ、実際に俺らと同じ新入生がサボろうとしていたり、喫茶店でどう見ても【The 不良】って感じの先輩らしき奴らが騒いでいたり、正門前で引ったくりがあったりしたんだぜ、そう思いたくもなるだろ」

 

———————一番おかしかったのはその後に現れた痛々しい奴だけどな・・・・

 

「新入生がサボろうとしていた・・・ですか、そういえばもう指定集合時間間近だというのに僕の後ろの席の人はまだ来ていませんね」

 

ロイドはいまだに空席である自分の真後ろの席を見やりそう言う、今この教室の席はロイドの真後ろの席以外すべてクラスメイトで埋まっていて、これから来るクラスの担任教官を今か今かと待つ態勢であり教室内はピリピリとした空気に包まれていた・・・・・・・・その時。

 

「お~、集まってんなぁヒヨコ共!」

 

教壇側のスライドドアが開き、そこから桜色の髪で右耳に青と白の縞柄のビーズアクセサリーを身に着けた大雑把そうな青年が出席簿らしき黒い書物をもって入室してきて教壇の前に立った。

 

この青年がどうやらこのクラスの担任教官の様であり、ホワイトボードに自分の名前をでかでかと書いて教卓の前に立ち不敵な笑みを浮かべて教卓の上に両手をついた。それを見たルーク達を含むクラスの新入生達は速やかに静まり返り青年に視線を向けた。

 

「今日からお前等の担任をさせてもらう《リーガル・エンディオ》だ、出身浮遊都市は《リューン》特技は木の板に木の棒をこすり付けて十分以内に火を熾すこと、趣味は木彫りの模型製作、25歳独身、現在彼女募集中だ!お前等とは一年間の付き合いになるが、まあよろしくな!・・・と言っても交替で他の教官もくるから形式だけの担任なんだがな」

 

「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」」

 

担任であるリーガルは自己紹介をするが【彼女募集中】などとふざけたことを言ったので緊張して張り詰めた空気が一瞬でビミョーな空気になった。

 

学園浮遊都市は基本、完全学生運営であるのだがさすがに座学については学生だけでは不可能であり、座学の時間である午前中のみプロの空戦魔導士が講師として交替勤務で講義を行うこととなっているのである。(空戦魔導士の数は絶対的に数が不足している為、午後は防衛担当都市に戻る)

 

「んじゃ、これからお前等には自己紹介を前から順番に行ってもらう、そんじゃまずは・・・・・ん?一人来てないみたいだが休みか?」

 

リーガルは不在の生徒の名前を確認する為に出席簿を開いて確認する、するとリーガルの表情がいきなり固まる。

 

「・・・・・・・入学するのは知っていたが、まさか俺が担当するクラスとはな・・・」

 

リーガルはボソッと呟き生徒達に顔をむける。

 

「・・・・・お前等《カナタ・エイジ》っていう黒髪で何考えてんのかわかんねぇガキを登校中に見かけなかったか?」

 

まるでその不在の生徒を知っているかの様な口振りで生徒達に尋ねた。

 

————————カナタ?・・・・んん~その名前どっかで・・・。

 

その問いの答えを相談する為に周りの生徒達がひそひそ話をするなかルークはその名前に聞き覚えがある様な気がして首を傾げて考える。

 

「俺の予想だとそいつはどっかの芝生の上でクロe・・・幼馴染の女の子を巻き添えにして眠りこけていると思うんだが・・・」

 

————————って、あいつかぁぁぁぁぁぁっ!?十一番区出てすぐ近くの芝生でサボろうとしてた奴!

 

ルークは通学路を歩いている途中で見かけた少年の事を思い出して驚愕する、そしてルークは引きつった表情を浮かべながらリーガルに伝える。

 

「リーガル教官、俺そいつ十一番区近くで見ました・・・・教官が言った通りにサボろうとしてました・・」

 

「・・・・・はぁ、やっぱりか・・・・仕方ねえ、奴はあとで反省文書かせるとして・・・とりあえず自己紹介始めんぞ!それじゃあお前から」

 

不在の生徒の行方をきいたリーガルは呆れた表情をしながら気を取り直して目の前の生徒から自己紹介を始めさせた。

 

「まさか、ここに来て最初に見たサボりがクラスメイトだとはな」

 

クラスメイト達の自己紹介があまりにも地味なのでしらけてしまいロイドとひそひそ話をするルーク。

 

「縁というのは不思議ですね」

 

「ああ、つっても初日からサボるとかやる気あんのかって言いてぇな」

 

「ええ、しかしそういう人とは知り合っておいて損は無いと思いますよ?その人の犯した悪事をネタにして色々とたかr・・・ゲフンゲフンッ!・・・交渉できそうですから」

 

「・・・・お前意外と腹黒いな・・・・」

 

「いやですねぇ、要領がいいといって下さい」

 

「お前・・・「次、そこのお前!」お?俺の番か、よしっ!」

 

話の最中に明らかになるロイドの意外な面に顔を引きつらせていると順番がルークに回ってきた様でありルークは立ち上がり、そして・・・

 

「浮遊都市《イーストスラム》出身、ルーク・スカイウィンドだ!趣味は筋トレとハヤt・・・ダチと駄弁りながら散歩することと特技は喧嘩と風を感じることだ!・・・・・・・そして今ここにいる・・・いや、このミストガンにいる空士全員に宣言するぜ!!」

 

ルークは簡潔に自己紹介をしてからいきなり突拍子もないことを言い出す、ルークにはこの学園浮遊都市にきた目標があるのだ、その瞳に情熱と野望の炎を宿しそしてリーガルに向けて指をビシッと指して宣言する—————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺はこのミストガン・・・・いや、世界中全ての空士をぶっ倒して世界最強にして最高の空戦魔導士になる!!最強クラスの魔剣術でも戦略破壊兵器級の極太魔砲でもなんでもきやがれ!!全部打ち砕いて俺が大空のテッペンをいただくぜ!!!」

 

ルークはその内に秘める情熱を解き放った—————————————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

闘技場——————————

 

広さ縦横約1000m、高さ最大約300m、形はすり鉢状のスタジアムで学園浮遊都市中の空士達がその戦闘技術とチカラを競い合う為にあるこの場所に今、この学園浮遊都市《ミストガン》の関係者ほぼ全員が新たに仲間に加わる新入生達の入学式を執り行うために集まっており、現在その入学式のプログラム進行中の真っ最中であった。

 

「おーおー、今年もイキの良さそうなガキ共がぎょーさん入ってきとるやないか!」

 

そんななかですり鉢状の側面外周部の一部をくり貫くようにして作られている選手専用の待機所、そこにあるトンネルのようにくり貫かれた場所からフィールドに出場するための出口付近からフィールドを覗く五人の影。

 

「君はそう言うが大半が【バツ】だな・・・・まあ一昨年前の奴ら(今の予科三年生)よりは見込みがありそうだが」

 

「大事なのは今じゃなくてこれからどう成長するかが大事だろう」

 

「アハハハハッ!そうだね、ボクもそう思うよ」

 

それぞれが今年の新入生について今見たまんまの評価を付けている、彼らからは鍛えられた空士が持つ絶対的な制空圏を支配する風格や緊張感を漂わせる威圧感を感じさせる、明らかに強者だろう。

 

「・・・・今年から【あの子】も入ってくるのね・・・」

 

そんななかで今まで黙っていた一人の少女らしき人物が憂鬱そうに呟いた。

 

「おっ、そういやああのボウズも今年からやったな、なんや不満なんか?」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「弟に危険なことやらせたくあらへんのはようわかる、せやけどあのボウズが自分で選んだ道やで、それに文句を言うのは野暮言うもんやろ」

 

「だけど!」

 

「ほんならボウズが魔甲蟲に落とされへんよう見守ってやればええ、それが姉の役目とちゃうんか?」

 

「・・・・・・・・・」

 

「まあせいぜい見させてもらうで、こいつらがこの先の未来このデッカイ【空】を任せられるのかに値すかを」

 

少年らしき人物は新入生達の未来を期待するようにそう言った。

これから彼らに空の祝福があらんことを願って————————————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱデカイものはええのぉ!空もオッパイも!!」

 

「・・・って!どさくさに紛れて私の胸揉むなあぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「ぐほぉぉぉっ!!・・・・ええ・・・・ブロー・・・・や・・・・ガクッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

闘技場フィールド——————————

 

「ちょっと喧嘩売り過ぎだと思いましたよさっきのは」

 

「へっ!あそこで宣言しないでいつするんだ?」

 

入学式のプログラムが進行する中、ルークとロイドはまたひそひそ話をしていた。

 

「これで君はクラス中を敵に回した様なものですよ、あの後皆君のこと睨んでいたしリーガル教官も【最強を目指すのも結構だが空戦魔導士は魔甲蟲から人々を護る為に存在することを忘れるな】とも言っていましたしね」

 

「忘れたわけじゃねぇよ、それに構わねぇだろどうせ全員ぶっ倒すんだし」

 

「でもそんな態度じゃどこの小隊にも入れてもらえないと思いますよ」

 

「小隊?」

 

ルークは聞き覚えのない話に首を傾げる。

 

「もしかして知らないんですか?今朝正門前でも勧誘していたと思いますが空戦魔導士は基本集団戦で戦闘するため小隊を組んで行動をするんですよ、学園浮遊都市で成り上がるのも個人ではなく最小三人、最大五人の小隊でやる為小隊に所属していないとランキング戦に出場することもできないんですよ」

 

「・・・・・・・マジ?」

 

「マジです」

 

全く知らなかった情報を聞いたルークは驚愕の表情を浮かべてから落胆した、入学案内にも書かれていたはずなのだが字だけの本を読むのが嫌いなルークはまともに読んでいなかったのだろう、大事なことは嫌いでもやらないと取り返しのつかないことになりかねない為しっかりやるべきだろう。

 

「まあ今決めなくてもこの後にやる新入生歓迎のレクリエーションでやるエキシビジョンマッチを見て決めればいいんじゃないですか?」

 

「・・・・・・そうするか・・・・」

 

『続きまして、《空戦魔導士科長(ガーディアンリーダー)》就任の挨拶です』

 

「・・・・・どうやら今年就任した空戦魔導士科長が出るみたいですよ」

 

新入生達の正面三階辺りの突き出たところに設置された壇の上で司会進行をしている黒髪で左眼下になきぼくろがある予科二年生の少女がプログラムを読み上げ壇に上がってくる人物に場を明け渡した。

 

その人物は身長190cmあるだろう長身で筋肉質なガタイ、癖っ毛のある黒髪でとてつもなく強い意志を秘める鋭い眼をしていて黒い学生服の上着を袖を通さずに肩に掛けるようにして着こなしているさまは上に立つものの風格を漂わせていた。

 

「今年から空戦魔導士科長に就任した《ジョバンニ・ジョルフィード》だ、このような責任感のある役職に就けたことを光栄に思う」

 

新空戦魔導士科長にして本科二年生であるジョバンニはフィールド内にいる新入生達を真っ直ぐと見て堂々とした態度で演説を始めた。

 

「これからお前達にこのミストガンで六年間切磋琢磨して学び、競い合い、生活している間に考えてほしいことがある」

 

ジョバンニは一呼吸おいて新入生達に問う。

 

「お前達にとって【空】とはなんだ?」

 

ジョバンニは毅然とした姿勢でさらに問う。

 

「夢か?護るべきものか?自由の象徴か?あるいは逆に魔甲蟲に怯えて過ごす地獄、牢獄と捉えるか!?この答えをこの六年間でお前達一人一人だけの答えを見つけてほしい!!」

 

この空をどう思うのか?それがジョバンニの問いだった、飛行魔術で空を舞い守護をする空戦魔導士、しかしその空に対しての想いがなければ、その役目の意味は理解できない。

 

「最後にこれからすぐに教えられるであろう《空士の回廊》を歩むことで重要な心構えの一つを俺の口から伝えさせてもらおう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どんな困難や逆境でも絶対に諦めるな!信じろ自分の感覚を!今までの訓練を!そして仲間達を!!俺達が勝つと信じて戦い抜け!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

様々な困難に立ち向かいどんな強敵にも勝利できるのは決まって諦めない【不屈の心】を持った奴だ、空戦魔導士ならば避けて通れない【空士の回廊】を歩む為に必要な秘訣こそそれだった。

 

「話は以上だ、新入生諸君!健闘を祈る!!」

 

ジョバンニは強くそう言い放ち、壇を降りた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

闘技場、東側観客スタンド———————

 

———————俺にとって空とはなにか?・・・か。

 

入学式が終わり新入生歓迎のレクリエーションであるエキシビジョンマッチが始まる為、ルーク達新入生は観客スタンドに移動して始まるのを待っていた。

 

———————俺にとって空とは上を目指す為の舞台だ・・・・・・けどなんか違う気がする・・・・。

 

ルークは四階観客スタンドの前にある落下防止のための柵の上に腕をついて伏せて考え込んでいた。

 

———————空戦魔導士科長が言っていたのはそんな見た通りのことじゃねぇ、もっとこう・・・・・・ああっ!わかんねえっ!!

 

「ルークそろそろ始まりますよ、見なくていいんですか?」

 

「おっと、考えていても仕方ねえか」

 

フィールドの中央上に浮かんでいる球体モニュメント《ソーサラーキューブ》が起動し、フィールド内でのダメージを精神的ダメージ・・・つまり非殺傷ダメージに変える《ソーサラーフィールド》が展開された。

 

そして、北側と南側それぞれにある選手入場口にある発煙筒から勢いよくカラースモークが噴出した。

 

『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ待たせした★ZE!!新入生歓迎レクリエーションのエキシビジョンマッチ!いよいよ開戦DA★ZE!!』

 

西側観客スタンド二階にある実況中継用の席にいる右が赤、真ん中が黄、左が緑のアフロで青い星形フレーム眼鏡を掛けた軽薄そうな青年が実況を開始しているのがみえる、よく見ると闘技場の至る所に中継カメラによる撮影スタッフが配備されているのも確認でき、どうやらこのエキシビジョンマッチはミストガン中で生放送されるみたいだ。

 

『実況・解説はお馴染、この《シグナルエースマン》DA★ZE!!さぁぁぁぁて、今年のエキシビジョンマッチは去年の《空戦武踏祭(エリアルソード)》に出場し見事ミストガン代表初優勝に輝いた現《特務小隊(ロイヤルガード)》《S45小隊》へのランクフリーチャレンジマッチ!!エントリーした勇気ある格下共が順番に立て続けにS45小隊に挑むという、最初ムリゲーで後の方になるにつれて有利になっていくアンフェアルールでのゲームDA★ZE!!』

 

実況開始と同時に南側の選手入場口から五人の空士が入場と共に飛行魔術を発動してフィールドに舞い上がり歓声が沸いた。

 

『先に現れた負け確のアンラッキーチームは、去年最終クォーターにてAランク入りを果たしたA42小隊!Aランクになっての初戦の相手が消耗無しコンディション万全の特務小隊とはアンラッキーにも程がある★ZE!!これで気を落とさないか心配だぁぁぁぁっ!!』

 

「・・・・ウゼェ実況だぜ、勝手に負けるときめつけてよ」

 

「まあ仕方ないでしょう、相手はあの・・・」

 

あまりにもチャレンジャーアンチな実況にルークはイライラしていると今度は北側の選手入場口から五人の別格の雰囲気を醸し出す空士がフィールド内に舞い上がり闘技場は爆発的な大歓声に包まれヒートアップする。

 

—————————・・・・・なっ!?あれは!!

 

『さあぁぁぁぁあお待ちかね!S45小隊の入場DAAAAAAAAAAAA!!ミストガン・・・いや、現全学園浮遊都市最強の小隊!!去年の空戦武踏祭では他を寄せ付けない圧倒的実力で優勝し、プロの空戦魔導士から見ても強すぎると評価されたミストガンの絶対的守護神達!!ここに降臨DA★ZEEEEEEEE!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

S45小隊側空域————————

 

「アハハハハハッ!お祭り騒ぎだね!」

 

綺麗でサラサラの黒髪で透き通った碧い眼の幼い顔つきの少年が観客達に笑顔をふりまきながら手を小さく振っている。

 

「まったくこんな茶番に何故私達が出なければならないんだ!?エントリーしているのは全てバツな小隊じゃないか!」

 

計算高そうな少年が失望したかのように言葉を吐き捨てる。

 

「空戦魔導士科長が決めた事だから仕方ないんじゃないかな、まあこれも新入生への空の戦いの厳しさを教えるいい機会だと思っておこうか」

 

燃えるような白い髪でヘアバンドを額に身に着けた吊り眼の少年が腕を組みうんうんと頷いている。

 

「そやな、ザコ共を叩き潰すのを見せつけるんも良うも悪うもガキ共の刺激になるわな、ナハハ!」

 

ゴーグル付きの革の被り物を被る糸目の少年が同意して笑った。

 

様々な思考を巡らせるS45小隊の隊員達、そんなことをしている間に試合開始のカウントダウンが始まり隊員たちは指にはめている指輪・・・《魔術師の宝石箱(マギスフィア)》に魔力を注ぎ込み何もない空間からそれぞれ《魔装錬金(ミスリル)武装》を取り出して対戦相手の方を向き構える、だが糸目の少年だけ魔術師の宝石箱を自らの脚に向けて魔力を照射し特殊な魔装錬金武装が少年の脚に装着された。

 

「はじまるわ【ソラ】、【あの子】への選別としてこの試合は十秒で終わらせるわよ!」

 

空色の長髪の少女が魔弓を構えて意気込むと、カウントがまさに今ゼロになろうとしていた。

 

「・・・・・・こないなザコ小隊に十秒もいらんわ」

 

糸目の少年がそう言った瞬間、カウントがゼロになって試合が開始された——————————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「二秒あれば十分やで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間、A42小隊の隊員達は全員地に墜ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東側観客スタンド————————

 

『瞬★殺ぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!何が起こったんだ!?ド凡人のオレには理解不能DA★ZE!!だがこんな結果は判りきっていた事!当然勝者はS45小隊DAAAAAAAAAAAAAA!!!』

 

——————あの人達が出てきた時点でなんとなく分かっていたけど瞬殺かよ!?

 

S45小隊が入場してきたころから真剣に観戦していたルークは参考にもならない試合結果に呆れながらも驚愕していた。S45小隊に知り合いでもいるのだろうか、ルークはフィールド上空で余裕そうに元の北側空域にもどって次の挑戦者を待ち構えるS45小隊をじっとみつめる。

 

そして次のチャレンジャーであるA97小隊が入場してきてまた試合が開始され、今度は手加減しているようだが、それでもS45小隊優勢で試合が進む—————————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

闘技場フィールド内上空——————————

 

『さぁぁぁぁてここで新入生達に最強無敵の特務小隊、S45小隊のメンバーを紹介する★ZE!』

 

「そろそろ一人墜とさせてもらうよ!」

 

「クソッ!なめんnうおあ!?」

 

南側の空域でA97小隊の一人の魔剣士と戦闘をする黒髪碧眼の少年は青を基準にした白いラインが入った魔砲剣《マクスウェル》で魔剣士の魔剣と鍔迫り合いをしていて魔剣士がチカラを加えた瞬間に後退し、その為に大きく魔剣を空振りしてよろめく魔剣士、そこに少年はマクスウェルの切っ先を体勢を崩す魔剣士に向け魔砲剣に付いているリボルバー式シリンダー型の魔力縮退炉を五回転させた。

 

「クッ!《収束魔砲(ストライクブラスター)》か!?」

 

「ハイ残念賞!」

 

魔砲剣戦技————————————感電捕縛弾(エレキテルバレット)

 

「あ”べべべべべ!?じびれるぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

 

「もいっちょおまけだよ!」

 

魔砲剣戦技————————————氷結拘束砲弾(フリーズキャノン)

 

「冷たっ!!ってええっ!?動けねえ!?」

 

「んじゃ、最後にリクエストにお応えして」

 

「ま、待ってくれ!!!」

 

「ダーメ♪」

 

20万ボルトの電圧がかかっている魔力弾で魔剣士を感電させ、冷気を纏った魔力砲弾で魔剣士の体中を凍らせて拘束し、命乞いをする魔剣士に対して無情にも切っ先を向ける。

 

魔砲剣とは大剣の切っ先に砲口があるオールラウンドな戦術な可能な武装だが、非常に扱い難くそのために使い手は少ない。

 

『まずは一人目、その少女の様な愛くるしい容姿と笑顔の為女子達のアイドル的存在であり、魔砲剣士としても凄腕でしかも様々な属性変換付与の戦技を使うことから《元素の剣聖(オリジン)》の二つ名を持つ本科二年F組所属《リオス・ローレ》!!こいつホントに男なのかぁぁぁぁぁ!?』

 

魔砲剣戦技————————————収束魔砲(ストライクブラスター)

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

『ってえげつねえぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!』

 

虹色の魔力の奔流が魔剣士に至近距離で放たれ、そのままフィールド内の地面に魔砲ごと叩き付けられ大爆発が起こり、A97小隊一人目の撃墜判定が下された。

 

「ハイ、おしまい♪」

 

観客スタンドに向かって満面の笑顔でピースをするリオスであった。

 

『・・・・・それじゃあ続いて・・・・』

 

変則的加速(チェンジオブペース)——————————燃焼噴射超加速(アフターバーナー)

 

『ってうわあぁぁぁぁぁぁっ!?』

 

「あ、レオそっちは終わったの?」

 

「ああ、これで二人目撃墜だね」

 

闘技場最北端の空域でソニックブームによる空気の爆発が起こったと思ったらその直後にヘアバンドを身に着けた吊り眼の少年が炎の紋様が刻まれている魔双剣《フレイムロード》を携えていつの間にかリオスの横にいた。

 

『ふ、二人目は炎の魔双剣士、しかしその男の真骨頂は圧倒的飛行速度!!そのスピードはゆうに音速を超えていて通り道には炎しか残らねえんDA★ZE!!《魂の炎(スピットファイア)》の二つ名を持つ男!!本科二年F組所属《レオ・オーバーグ》!!っつうかあんなトコから一瞬でここかよ!?』

 

魔剣戦技———————————空間強震破(ショックブラスト)

 

『うぼあぁぁぁっ!?地震、いや空間震動か?って親方ぁぁぁぁ!空から女の子があぁぁぁぁっ!!』

 

「囮で私を引き付ける策はマルだが、お前ではバツだ」

 

突如空間が揺れたと思ったら震動が止まった瞬間レオ達の右側真上から魔双剣士の少女が墜ちてきてそのまま墜落し、上から計算高そうな少年がゆっくりと降りてきた。

 

「キリク、そっちも終わったんだね」

 

「当たり前だ、こんなバツ共に遅れなどとってたまるものか」

 

「アハハハハ!キリクおつかれ~」

 

『さ、三人目は《石の審判者(ストーンジャッジマン)》の二つ名をもつ男、本科二年A組所属《キリク・リーヴェルト》言葉がでねぇ・・・』

 

「フンッ!どうやらこっちを狙って狙撃しようとしている輩がいるようだが・・・・・あれもバツだな」

 

リオスの収束魔砲(ストライクブラスター)の発砲からこの間わずか十秒であり、その為フィールド中が煙だらけの状態であるため、一人の魔銃士がそれにまぎれてキリク達を狙撃しようとしていたが・・・・次の瞬間その左方向から飛んできた一本の魔力矢が魔銃士を貫くのが見えた。

 

魔力矢が飛んできた方を見て見るとそこには魔弓を携えた空色の長髪の少女が澄ました表情で佇んでいた。

 

『四人目はS45小隊の紅一点、その魔弓の矢に狙われた敵はまるで茨に絡まれてしまったかのように逃げることができず、射貫かれる運命!!《茨の女王(ヴィターニア)》の二つ名を持つ空の女王!!本科二年A組所属——』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「《リカ・スカイウィンド》・・・・・・俺の姉貴だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東側観客スタンド—————————————

 

「姉・・・・・ですか?」

 

「ああ、そうだ」

 

S45小隊の茨の女王はなんとルークの姉だった。

 

一瞬驚くも平静を保つロイドは興味深そうにして話を続ける。

 

「ひょっとして最強の空戦魔導士を目指すのは姉を目標にしているからですか?」

 

「リカ姉じゃねぇ、俺が最強を目指すきっかけは——————」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔蹴術戦技—————————————竜巻杭打(パイルトルネード)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如西側から【伸びてきた】巨大竜巻が煙を全て吹き飛ばし、東側観客スタンドの上を通過してソーサラーフィールドの結界を破壊して、空の彼方へと飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっ!?ソーサラーフィールドが破壊された?確かあれは収束魔砲にも耐えうると聞いていたんですが・・・」

 

流石に驚愕したロイドは・・・・・いや、ルークを除く観客全員が巨大竜巻が飛んで行った方をみて唖然としている。その威力、まさに災害級だろう普通の空戦魔導士が出せる戦技じゃない、そして・・・・。

 

『ああっと!ここでA97小隊の小隊長が三番区に落下してきたとの情報が入ってきた★ZE!!試合終了!!最後に勝負を決めたのはこのバケモノ小隊の小隊長にしてミストガンの英雄!!《空の王(アトモス)》の名は世界中に知れ渡っていてこいつを知らない奴はモグリDA★ZE!!!本科二年A組所属《ソラ・グローリー》!!!』

 

巨大竜巻が止むとそこにはゴーグルのついた革の被り物を被った細目の少年が翼の装飾が施されている魔装錬金でできた靴を履いている左脚(右脚にも当然履いている)を正面に蹴り上げた体勢で滞空していた。

 

「【ソラ兄】ならこれくらいは楽勝だな、ホント相変わらずバケモンだぜ」

 

ルークは目標にしている憧れの人物を見据えて最強の空戦魔導士への道の困難さを感じるのだった。

 

『強すぎる、特務小隊のS45小隊!!彼らと対峙した敵はまるで脱出不可能の森に迷い込みその森の中で永遠に眠らされるかの如く成す術も無く敗北する!!故に彼らをひと呼んでこう呼ぶ—————————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

—————————《眠りの森(スリーピングフォレスト)》と!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




原作空戦第6巻で空戦武踏祭はカナタ達が幼少学校時代が最後でそれ以降開催されていないそうですが、この物語では独自設定でまだ開催しています。

また、座学の教官はプロの空戦魔導士が務めるの下りも独自設定です。というか完全学生運営なんてムリじゃね?

原作改変のタグを追加しておきます。

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