学園浮遊都市ミストガン三番区郊外————
ミストガン周囲の空域でテオ達が戦闘を繰り広げている頃、E128小隊は避難誘導と逃げ遅れた市民の救助活動をする為に割り当てられた郊外区域を見回っていた。
「こっちは異常無しだ、そっちはどうだ?」
「こちらも異常無しです、ルークはどうですか?」
郊外と言うだけあって元々人気の無いゴーストタウンのような静けさの中、順調に安全確認を済ませて来たカナタとロイドが相互確認をする、この抗呪素材(アンチカーズ)製のドーム壁付近は元より人通りが少ないので避難も比較的円滑に進んでいたのだが。
「こっちも問題ねぇが・・・クロエはどうしたんだ?」
「さっき脚を挫いて捻挫して泣いていたガキを見つけて抱きかかえてシェルターまで飛んで行ったぜ」
「ええ、泣きじゃくる子供をあやしながら抱きかかえる様は包容力が高い姉のようでしたね」
ここにいないクロエの事を気に掛けるルークに二人はクロエの現状を話す、クロエが行方不明になったわけじゃないと安心したルークは意識を集中し絶対空気感覚(フィール・ザ・アトモスフィア)を使って周囲を探った。
—————空気がビリビリするぜ、嫌な感じの不純物が防護壁の小せぇ隙間から入って来て空気を汚染してやがる・・・これが【呪力】ってやつか・・・。
ミストガン近辺にいる魔甲蟲が放出する呪力の残滓が防護壁の僅かな隙間から入って来るのを肌で感じたルークはその悍ましさに僅かに身体を震えさせる、ルークは恐怖を感じないので気持ち悪いと感じたのだろう。
「子供は無事に届けて来たよ、任務を再開しようか」
そんな中でシェルターに子供を届けて戻って来たクロエが何故か嬉しそうに顔がにやけていた。
「なんだよ?なんかいいことでもあったのか?」
「うん!子供を届けたらシェルターの中にいた人達に沢山応援をもらっちゃった♪」
ニコニコしながら嬉しそうに自慢するクロエ、きっと市民達は空戦魔導士科(ガーディアン)の学生達を信じているのだろう。
「そっか、ならそいつらの期待に応えてやらなくちゃな!」
カナタの言葉でより一層気合いが入るE128小隊のメンバー達だったが、ルークは急に周囲の空気が重くなるのを感じてドーム状に覆われた防護壁が遮る空を険しい表情で見上げた。
「・・・嫌な予感がするぜ・・・」
空戦魔導士科指令センター—————
ミストガン周囲を防衛する精鋭連隊が魔甲蟲の先行部隊を順調に迎撃して行き緊迫した空気が少々緩んできていたオペレーター陣だったが突如ミストガンの真上と真下から敵の別動隊が出現した事によってどよめいていた。
「クッ!?俺としたことがもっと立体的に戦略を考えるべきだったぜ」
大規模通信結晶を介して指示を出していたジョバンニは自分の迂闊さを悔いながらも次の一手を打つ為に思考を張り巡らせる。
————各区域の市民の避難は大方完了し都市内部の各連隊の配置も済んでいる、上から来る奴等が防護壁を破って内部に侵入してもすぐさま迎撃できるだろう・・・問題は下から来る奴等だ、下方の外壁が破られれば一般市民が避難している地下シェルターまで一直線に侵入されてしまうだろう、それだけはなんとしても阻止しねぇとな、さてどうするか・・・。
ジョバンニが思考をフル回転させて迅速に戦略を考えていると彼の通信結晶に突然通信が入った。
『ジョバンニ、聞こえるか?俺だ、テオだ』
通信を繋いできたのは東側の空域を防衛していたテオだった。
「どうした?今新たな敵部隊の出現に対応する事に忙しい、手短に用件を言え」
『その敵部隊の迎撃についてなんだが、下の外壁を突破されたらヤバイんだろ?俺が単独で下から来る敵を迎え撃つ』
「何?今なんて言った?」
『俺が単独で迎え撃つと言ったんだ、この空域の【キメラ・デネブ】は二体共撃墜した、後はルーイにこの場の指揮を任せても大丈夫だろう』
ジョバンニはテオの提案を聞いて眉を顰める、幾らテオが優秀な空士だからといって単独で魔甲蟲の大群と交戦するのは非常に危険だからだ、下から来る魔甲蟲の数は約二千、プロの空戦魔導士のエースでもこの数相手に単独で渡り合うのは骨が折れるであろう。
『なに、心配しなくてもいい、【キメラ・デネブ】を撃墜したら援軍が来るまで無理はしないさ、北の最奥にいる親玉と戦る為の体力と魔力がなくなってしまうからな』
「・・・はぁ、仕方ない、マジで無理はするなよ、ヤバイと思ったらすぐに退避しろ、後はこっちで対応する」
そんなジョバンニの心情を知ってかテオは無理はしないと約束したのでジョバンニは仕方なく許可して通信を切った。
それと同時に大きな衝撃と轟音がミストガン全体を襲った。
「空戦魔導士科長!真上から接近して来た魔甲蟲の別動隊により防護壁が破られました!」
「敵が破られた防護壁から都市内部に侵入して来ます!侵入されたのは八番区、S45特務小隊のリオス・ローレ率いる連隊が配置されている区域です!」
オペレーター陣がジョバンニに現状報告をする、再び緊迫した空気が指令センター内を包む中ジョバンニはここからが正念場だと意識を強く持ち八番区にいるリオスの通信結晶に通信を繋いだ。
「ローレ、聞こえるか?応答しろ」
八番区中央通り—————
『おい!聞こえているのかリオス・ローレ!?』
「あ、ごめん、お客さん(魔甲蟲)が沢山来てウキウキしていたから気付かなかった♪」
ミストガンが誇る天才であるリオスは実はかなりの戦闘狂(バトルマニア)である、たった今上の防護壁を破って都市内部に侵入して来た【キメラ・デネブ】一体が率いる二千の魔甲蟲の大群を高層ビルの屋上から見たリオスは無邪気な笑みを浮かべ耳に装着している通信結晶から聞こえてきたジョバンニの声に気付かない程楽しそうにしていた。
『・・・まあ、敵が侵入したのを分かっているならいい、直ちにg『空戦魔導士科長!北の空域の防衛ラインが突破されました!!突破した敵は【キメラ・デネブ】二体とアルケナル級を中心とした小型魔甲蟲三千体!それらが三番区付近の防護壁を破ろうと真っ直ぐ突撃してきます!!』・・・チッ!そっちは任せたぞローレ、やり方は任せる!』
「りょーかい♪」
ジョバンニは緊急の報告が入った為、その場をリオスに任せて通信を切った。
リオスは楽しそうに敵の大群を視界に収め自分の魔装錬金武装(エモノ)である砲剣マクスウェルを構えて飛行魔術を発動した。
「みんなー行くよー!僕が【キメラ・デネブ】を墜とすからみんなは援護してねー♪」
「「「「「「「きゃーーーー!リオスきゅうぅぅぅうううんっ♥」」」」」」」
「かわいいーーー♥しびれるぅぅうううっ!!」
「絶対に私が護ってみせるわ!」
「ウチらのリオスきゅんに手出しはさせへんでぇぇえええ!」
「リオスきゅん、ハァハァ♥・・・」
リオスは空を舞い自分が指揮を取る連隊の空士達に指示を出すと各配置についた空戦魔導士科の女子達がドン引きする程高いテンションで飛行魔術を発動して空を舞い狂喜乱舞する、C~Dランク小隊の女子達の多くがリオスの連隊に入るのを志願したのでここにいるのは殆ど女子だった。
ミストガン空戦魔導士科の女子生徒達はフェイトを筆頭に殆どがショタコンである、イケメンより可愛い男の子を愛でるのが好きなのが彼女達なのだ、ミストガン空戦魔導士科女子のトップであるリカはブラコンだし・・・・・駄目だコイツ等、早くなんとかしないと・・・。
「そんじゃレッツゴー♪」
リオスを先頭に防衛連隊の空士達が侵入して来た魔甲蟲の大群の迎撃を開始した。
「ほっ!はっ!とうっ!」
リオスは向かって来る無数のアルケナル級を砲剣で斬り裂きながらこの群の将である【キメラ・デネブ】に向かって弾丸のような速度で飛んで行く。
【キメラ・デネブ】へと向かうリオスを亡き者にしようと無数のアルケナル級やプロキオン級が次々に襲い掛かるのだが————
「私のリオスきゅんに手出ししてるんじゃないわよ!」
「汚い脚でアタシの天使に触れるな塵蟲がぁぁああっ!!」
リオスの後から追従する女子達が阿修羅や鬼神の様な形相をして凄まじい火力の砲撃で襲い来る魔甲蟲達を撃墜・・・いや、塵一つ残さず消滅させていった・・・。
「アハハハハ♪凄く大きい」
彼女達のおかげで真っ直ぐと【キメラ・デネブ】へと接近したリオスは交戦を開始した。
先手を打って来たのは【キメラ・デネブ】だ、うじゅるうじゅると誰もが生理的嫌悪感を抱くであろう無数の触手を向かって来るリオスに向けて伸ばした。
「ばっちぃから触らないで」
魔砲剣戦技—————紅蓮一閃
放出した魔力を属性変換付与により紅蓮の焔に変化させて砲剣に纏い、横薙ぎの焔の一閃が広範囲に亘って空間を焼き払う、伸ばして来た無数の触手はリオスが放った戦技によって炭となり崩れ落ちた。
「アハハハハ♪行っくよー!」
とびっきりの笑顔で【キメラ・デネブ】に接近したリオスはその周囲を旋回するように飛行して翻弄しながら攻撃を開始する。
魔砲剣戦技—————風姫の剣舞(シルフィードブレイド)
砲剣を覆うように属性変換付与によって出現した真空の刃が伸びて【キメラ・デネブ】の下半身に突き刺さる、リオスは身体をクルッと回して砲剣を振るいまるでダンスをするかのように舞う、【キメラ・デネブ】に刺さった真空の刃がそれに連動して動き【キメラ・デネブ】の身体の内側を引き裂き回転して【キメラ・デネブ】の下半身をズタズタに斬り裂いた、惨い戦技だ。
「ビリビリいくよー!」
魔砲剣戦技—————感電捕縛弾(エレキテルバレット)
「固めてコッチン!」
魔砲剣戦技—————氷結拘束砲弾(フリーズキャノン)
リオスは一旦距離を取ってから激痛でもがき苦しむ【キメラ・デネブ】に砲剣の切っ先を向けて20万ボルトの電圧がかかった魔力弾を撃って【キメラ・デネブ】を感電させ冷気を纏った魔力砲弾を続けざまに撃って【キメラ・デネブ】を凍らせて動きを封じ込めた。
戦技を行使する為の魔術を発動する為の術式は魔装錬金武装に彫られているルーン文字で魔力に意味を与える《刻印術式》と心に思い浮かべたイメージで現実に影響を与える《心象術式》の二種類である、複数の属性変換付与を使う場合は普通【刻印術式】を使う、発動する魔術が予め決められている刻印術式の方がスムーズに属性変換を行えるからである、しかしリオスが使うのは全て【心象術式】だ、実は彼はよりイメージが働く右脳が非常に発達している、その為リオスは想像力が豊かなのだ、複数の属性変換付与を扱える空士でも扱える属性の数は普通は二・三個であるのだが彼はその想像力を活かして数十という属性変換付与を使いこなし剣の才能にも優れる天才だ、故にリオスは元素の剣聖(オリジン)と呼ばれるのだ。
「これでとどめっ!」
魔砲剣戦技————収束魔砲(ストライクブラスター)
シリンダー型魔力縮退炉を五回転させて縮退魔力を練り上げ収束魔砲を放つ、それはカナタの収束魔砲の三倍の大きさがありそれが凍り付いている【キメラ・デネブ】を飲み込んで破られた防護壁の穴を通って都市外に控えていた魔甲蟲達もろとも水平線の彼方へと飛んで行った。
「「「「「「「やったぁあああ!!」」」」」」」
「流石私のリオスきゅん!」
「可愛くてカッコイイ!」
「リオスきゅん抱いてー!いや寧ろ抱かせてー!」
リオスが【キメラ・デネブ】を撃破したことで戦闘中にも係わらず狂喜乱舞する女子達、その隙を狙ってアルケナル級が女子達に攻撃を仕掛けて来るが彼女達は邪魔だと言わんばかりにアッサリと撃墜した、ショタコンは無敵だとでもいうのか?(汗)
「さて、みんなー!あと一息だよ、頑張って行こー♪」
「「「「「「「はーーーーーいリオスきゅん♥」」」」」」」
リオスが気を引き締めて戦うように女子達に言うと彼女達は声を揃えてそう返事を返した、もはや宗教である。
とはいえ後は周りのアルケナル級を掃討するだけだ、返事と共に散開したリオス率いる防衛連隊は残りの魔甲蟲の掃討戦を開始するのだった。
三番区西側商業エリア————
リオスが【キメラ・デネブ】を撃破したのと同時刻、この場所付近の防護壁も北側空域の精鋭連隊を突破して来た魔甲蟲の先行部隊の一部に破られ、都市内に侵入を許してしまっていた。
侵入して来たのは先行部隊の司令である【キメラ・デネブ】一体と三千体のアルケナル級の大群だ、これに対するはミストガン最速の空士、魂の炎(スピットファイア)の二つ名で知られるS45特務小隊のレオ・オーバーグ率いる防衛連隊であった。
「はぁぁああああっ!!!」
魔双剣戦技—————聖人炎十字(セントエルモス・クロスファイア)
白い炎を身体に纏ったレオが音速を超えまるで彼が二人に分身したかのように見える、その二人が真上と正面から攻撃対象の中心で交差するように【キメラ・デネブ】を斬り抜け纏っている白い炎が【キメラ・デネブ】を焼き尽くし空に炎の十字架が建つ、この世に災厄をもたらす者は聖なる炎十字に焼かれ灰となり塵となって消え去った。
レオは超音速で斬り抜けた勢いのまま上空に舞い上がりドーム状の防護壁の天井ギリギリの位置で滞空して辺りを見回した。
————妙だね、北の精鋭連隊を突破した【キメラ・デネブ】は二体だった筈、だけどここに侵入して来た【キメラ・デネブ】は一体だった、そこの穴から外を見てももう一体の【キメラ・デネブ】の姿はどこにもない・・・監視の誤報だったのか?
推測しながら破られた防護壁の穴の外や商業エリアを注意深く見回すレオ、だがどこを見ても見えるのはアルケナル級を中心とした魔甲蟲の部隊とそれに応戦する彼が率いる防衛連隊の空士達だけであり【キメラ・デネブ】の姿などどこにもない、レオは何か嫌な予感を感じていた。
————何なんだこの胸騒ぎは?僕は何か重大なものを見落としているようn————
その時、突如かなり近い場所から爆発音が聴こえてきた。
「なっ!?今の音はこの区画の郊外からか!?」
咄嗟に聴こえてきた方角から爆発の位置を逆算して割り出したレオ、彼の飛行速度ならここから十秒と掛からないだろう、レオはすぐにその現場に向かおうとするがしかし———
「なっ!?コイツらいつの間に!?」
何処からともなく出現した無数のプロキオン級がレオの行く手を阻んだ、アルケナル級ならともかくコイツ等を全て突破するのは幾らレオでも少々時間がかかるであろう。
————くっ!あそこはまだEランク小隊が避難誘導をしている真っ最中だった筈だ!しかもシェルターの入り口も近いし、これは非常にマズイ!!
蟀谷に冷や汗を掻くレオ、彼は迅速に邪魔をするプロキオン級達を突破しなければならないと判断し多少の無茶を覚悟して魔双剣フレイムロードを構え行く手を阻む敵達に突撃した。
三番区郊外ドーム壁前————
担当区域の避難誘導を終えたE128小隊、チカラ不足で訓練生扱いとなっているEランク小隊は割り当てられた区域の避難誘導が完了した場合迅速にシェルター前に避難する手筈になっており、それに従い彼等は近くのシェルターまで後退しようとしていたのだが・・・その時————
「っ!?クロエッ!!」
「危ねぇっ!!」
「えっ?—————」
轟音と共に突然無数の触手が抗呪素材製ドーム壁を貫通して来て近くにいたクロエに襲い掛かって来た、絶対空気感覚を使うルークと殺気に敏感なカナタがいち早く危険を察知してクロエと迫る無数の触手の前に割って入り魔力障壁を展開するのだが—————
「うおぁああああああっ!?」
「ちぃいいっ!!」
「きゃあああああああっ!!」
触手が魔力障壁に激突した瞬間、あまりの威力と衝撃に耐えられなかったルークとカナタは庇ったクロエ諸共吹っ飛ばされ三人共後方の廃ビルの側面に小さなクレーターを作って激突してしまった。
「ルーク!カナタ!クロエ!」
「痛っつぅ!」
「何とか無事だ・・・」
「防護服着てなかったら重傷だったね・・・」
三人の身を安じたロイドが三人に駆け寄り声を掛ける、防護服を着ていたのが幸いして三人は無事だ。
三人が衝撃によるダメージの痛みを堪えながら立ち上がった瞬間ドーム壁が破壊されそこから一体の【キメラ・デネブ】が出現した、レオ達が戦っていた魔甲蟲達は囮だったのだ。
「何でこんなところに変異種(キメラ)が?」
「知るかよ!」
「僕等の敵う相手じゃありません、急いで退避しましょう!」
変異種は上位ランクの空士であっても撃墜するのが困難な難敵だ、ランキング戦でようやく一勝する事ができた程度の実力のルーク達が変異種と戦闘をしても返り討ちに合うのは目に見えている、ルーク達は一目散に退避しようとするが【キメラ・デネブ】が放った呪力弾が付近のシェルターの外壁を直撃して被爆した。
「なっ!?」
「シェルターが!!」
ルーク達は【キメラ・デネブ】が放った呪力弾がシェルターの外壁に直撃した事に動揺して声を上げた、抗呪性が非常に高い外壁なので呪力弾一発では破られないが何発も続けて撃ち込まれたら破壊されてしまうだろう、そうしたらシェルター内に避難した一般市民達が危ない。
「・・・やるしかねぇな・・・」
「・・・だな」
防衛連隊の空士が来る気配は無い、囮の魔甲蟲達が足止めをしているからだ、今シェルターを護れるのは自分達しかいない事を察したルークとカナタは前に出た。
「行くぜ、ストームブリンガー!」
「来い、グラディウス!」
魔術士の宝石箱(マギスフィア)から自分の魔装錬金武装(エモノ)を取り出して臨戦態勢に入る二人。
「何やっているんですか!?無謀ですよ二人共!!」
「そうよカナタ!ルーク!未熟なわたし達じゃ変異種には敵わないよ!」
変異種に向かって行こうとする二人を必死に引き留めるロイドとクロエ、しかしルークとカナタはそんな二人に強い意志を秘めた眼を向けた。
「確かに今の俺達の実力じゃ勝てねーかもしれねーな、でも今俺達がやらねーと避難させた皆が危ねーんだ、だったらやるしかねーだろ?」
「だけど!」
「クロエ」
カナタが真剣にそう言う、クロエが何とか引き留めようと反論しようとするが今度はルークが口を開く。
「俺達は空戦魔導士だ!Eランクでも浮遊都市を護る大空の守護者なんだよ!その俺達が浮遊都市の仲間達の危機を前にしておめおめと逃げ出すなんてやっちゃいけねぇんだよっ!!」
「っ!」
「・・・うん、そうだね」
確固たる信念を籠めたルークの言葉がロイドとクロエの心に突き刺さり、二人は戦場の定石に従って空士としての責務を放棄しようとしていたことに気が付いてそれを恥じ戦う覚悟を決めた。
ロイドとクロエも魔術士の宝石箱からそれぞれ自分の魔装錬金武装を取り出してルークとカナタと共に並び立ち、E128小隊の戦闘準備は整った。
「いくぜっ!!!」
ルークの一声を合図に全員飛行魔術を発動し【キメラ・デネブ】へと向かって飛翔して行った・・・今こそE128小隊全員の空士としての真価が問われる時だ。
次回予告
レオ「あれ?ちょっと待って」
リオス「ん?どうしたの?」
レオ「原作で【キメラ・デネブ】が呪力弾を放ったシーンなんてなかったような・・・」
リオス「レオ、メタ発言はげ~ん禁だよ」
レオ「今更何を言ってるんだい?毎回メタ発言どころか色々な人達に怒られそうな発言も連発しているのに(特に前回のフェイトという名の変態)」
リオス「・・・アハ♪それもそうだね♪」
次回、空戦魔導士候補生の情熱『新時代の空士達は集う、この大空に!』
レオ「翔け抜けよう!最強への翼の道(ウィングロード)!!」