楽しんでいただければ幸いです。
大空に情熱を懸ける少年
何世紀も前に突如出現した異形の脅威《魔甲蟲》
この脅威の怪物達に地上を奪われた人間はいつしか空へと追いやられ数々の浮遊都市を建設しそこに移住して魔甲蟲の脅威に怯えながら生きていく事を余儀なくされることとなった。
人間には体内に魔力という事象干渉によって超常現象を引き起こすチカラを生まれつき持っている《ウィザード》と何も持たない《ナチュラル》の2種類に分かれており、魔甲蟲に対抗できるのは今のところ魔力のみであった。
それ故にウィザード達は魔甲蟲の脅威から人々を護る為に《魔術》や《戦技》などの戦闘術を創りあげ、魔甲蟲との闘争に赴くこととなり、何世紀にもわたって戦いが続いたが人類は日に日に追い詰められていった。
大空を支配し、蹂躙する魔甲蟲の脅威に怯えながら生きる人類だが、彼等には希望があった。
それは飛行魔術を行使し大空を自由に飛び回り、最前線で魔甲蟲達と戦闘を繰り広げるウィザード達・・・大空の守護者の存在である。
人は彼らを—————————《空戦魔導士》と呼んだ。
エグザイル歴四三六年、四月一日
学園浮遊都市《ミストガン》十一番区発着場—————
「おっ・・・おぷっ・・・・・うぇぇ・・」
絶対的数の少ない空戦魔導士の候補生を育成する学生による教育機関、それが学園浮遊都市である。
「ピュ・・・ピュイ?・・・・」
「あ・・ああ、大丈夫だハヤテ・・おぷっ・・」
たった今ここに着陸した連絡艇から一人の少年が顔色を悪くしながら気持ち悪そうに降りてきた。乗り物酔いというやつだろう、この少年はどうやら乗り物に弱いようだ。
「・・・ふう、落ち着いたぜ、んじゃ行くか!俺の空のテッペンに飛ぶための第一歩だ!!」
「ピューイ!」
その少年——————《ルーク・スカイウィンド》は、髪の色は基本的には空色だが髪型は規則性の無い様々な方向に髪束が突っ立ていて中でも異質なのは前頭部から触覚のように飛び出している二本の細い髪束であり、その髪束の毛先ともみあげと後ろ髪が黒い・・・なんか某カードゲームに出てきそうな奇抜な髪型であり、右肩に白い隼をのせている、眼は少し吊り眼気味であまり優等生という感じでは無く黒い学生服は着崩していて肩掛け袋を背負う様は他人が見たら変な奴に見えるだろう。
だがルークの眼は輝きに満ちていて未来に希望を感じているようである。
周りの人間がルークを見て不審そうにひそひそ話をする中で彼は前に歩き出して行った。
通学路———————
ルークの乗り物酔いはもう回復したようであり元気を取り戻していた。
「いい風だぜ、思わず眠くなりそうだ」
「ピュイ」
腕を上に伸ばし背伸びをしながら通学路を歩くルーク。
「まあここは我慢s「カナタ!なにこんなところで寝ているの?入学式に間に合うの!?」ん?」
ルークは声のする方を見てみると道はずれの芝生のうえで寝転がっている黒髪痩躯の少年とその隣に立ってその少年を叱咤する黒髪ポニーテールに薄紫色のリボンをした少女が眼に映った。
「ん、クロエか? 今日はミストガンで最高の季節の、さらに最高の気象だから、こんな日に入学式のかったるい話を聞きに行くなんてもったいない」
「いや、もったいないっt「お前も寝ていけ」いや、寝ていけって・・・」
少年は横の芝生を指してそう言い少女はその溜息をつきたくなる様な発言に呆れながら困惑し———
「・・・じゃあ少しだけ・・」
と言って少年の横の芝生に寝転がった・・・・少女は少し天然なようで、ミイラ取りがミイラになったようだ、なんともシュールである。
「・・・行くかハヤテ・・・」
「ピュイ」
なんとも言えない気分になったルークは先を急ぐことにした。
段々と学園の正門が見えてきた、この辺りは経済経営科(エコノミック)の学生が経営する喫茶店などが立ち並び早めに登校してきた在学生などがそこらでくつろぐ様がみられる、時間に余裕をもって行動するのは学生の基本である。
「よし、あと少し」
正門まで真っ直ぐ歩いて行くルーク、するとどこからか話し声が聞こえてきた。
「だぁぁぁぁっ!!なんなんだよこのケーキはよ!!」
——————うるせぇ、一体なんなんだよこの耳鳴りがするようなクソ声は!?
ルークは聞こえてきた喚き声の方をウザそうに見やるとそこには喫茶店のテラスの席でくつろぐ異様な五人組がいた・・・・・・・まあ異様というかなんというか。
「うっさいわね、なんだっていうのよ!?」
金髪で肌が褐色の少女が紅いモヒカンで長身のガタイのいい厳つい大男に文句を言っている。
「だってよぉ、このケーキなんでか四等分に切り分けてやがるんだもんよふざけやがって!六等分だろう普通はよぉ!!」
「そんなのどうだっていいわよ!いい加減ウザイわよアンタのそのこだわり!!」
「ふざけんな!【6】はこの世で一番イカス特別な数字なんだよ!!この【ロクデナシ】女!!!」
「ウザッ!」
意味不明・・・ルークはそう思った、するとすぐ隣で苺クレープを食っているスキンヘッドの厳つい少年が二人に話し掛ける。
「ほっとけ、こう言いだしたら聞かねえからなこいつ」
更にその隣にいる深緑色のオールバックで黒いグラサンを掛けた長身のガタイのいい厳つい大男が言う。
「小隊の番号や規定人数にも文句を言っていたからな、始末に負えん」
「当たり前だろ!番号に6が無いうえに規定人数が3~5人、これを文句を言わずなんt「おい」あ”!」
モヒカン男が文句をいい続けているとグループの一番中央にいる紫色の短いリーゼントの眼つきの鋭い少年が話に割り込んできた、そして———
「黙って食え」
とモヒカン男をにらみつけながら言った。
「でもよぉ「黙って食え」・・・ああ・・」
一瞬眼が光ったかのような錯覚が起こるほど凄みがある、どうやらこの少年がリーダー格のようだ。
そして何事もなかったかの様にグループは静かに食事を再開し、リーゼントの少年は何故か裁縫をしていた。
———————学園浮遊都市に不良?さっきの寝てた奴といい治安悪いのかこの学園
そんな風に思っていたルーク、だが素行が悪いといえばルークも人のことは言えないのだが自覚がなかった。
学園正門前—————
「到着、結構長かったなハヤテ」
「ピュイ」
沢山の学生で賑わう正門前、小隊の勧誘に後方支援科(ロジスティクス)の学生よる新入生への入学記念のピンバッジの配布、競技活動連合の競技人口増加のためのパンフレット配布などで在学生たちが奔走している様があちこちにみられる。
「さて、クラス分け表はどこかな「きゃぁぁぁぁっ」今度はなんだ?」
「引ったくりよ!誰かそいつを捕まえて!」
「・・・・やっぱ治安悪いのかこの学園浮遊都市」
学生の少女が叫んで向いている方向を見るとそこには学生バッグを抱えて逃げる中年の男が見えた。
殆どの人口が学生で占める学園浮遊都市において20代を超えた人間を見るのはまれでそんな中そういう人物がそういう犯罪を起こすときは決まってこういう一瞬で行う犯罪であることが多い、こそこそとやるには目立ち過ぎるからである。
「ちぃっ!待ってろあの程度の速さならすぐ「そこまでだ卑劣な悪党め!!」んっ?」
突如引ったくりの上から現れた赤い鉢巻と赤いマフラーを身に着けた白いツンツン髪の少年が引ったくりの背中を蹴り飛ばしそのまま地に踏みつけた、その上で少年は右ひざを曲げて引ったくりの後頭部を踏みつけ同時に左手の中指、人差し指、親指を立てその左手を右肩、額の前、そして真上へといちいち一動作ずつ止めながら移動させ真上へ左腕をピンと伸ばした瞬間同時に右手を閉じ顎の前へと瞬時に移動させるという奇妙なポージングをとり———
「ヒーロー見参っ!!」
などと言い放ったのでルークは自分の中でその少年の事を変人認定した。
「ふっ、決まったな!流石オレ、今日も悪はオレの前に倒れ伏す、そうなぜならばオレはヒーr「なにしてるのまた!?」ふぎゃっ!!」
意味不明な事を少年が言っていると背後から濃い茶色の長い髪を白いリボンでツインテールにした気の強そうな少女がハリセンで少年の後頭部をぶっ叩きそれにより少年が前に倒れて転がった。かっこつけ(はっきり言って周りはドン引きだが・・・)が台無しである。
「ちょっ?なにすn「皆さんどうもこのバカがお騒がせしました!」ちょおいなんでだよ!?オレはヒーローとしてひとd「それでは失礼します!」あいでででででっ!!耳引っ張んなっていでででででっ!!」
少年はそのまま少女に耳を引っぱられひきずられて連行されたて行った。
「・・・・んじゃあ、行くか・・」
「ピュイ」
辺りを沈黙が支配する中、ルークはクラス分け表に自分の名前が書かれていたクラス、空戦魔導士科(ガーディアン)予科一年C組の教室がある本棟へと向かうことにした。
「さ~て、どんな奴らいるのか楽しみだぜ」
大空に情熱を懸ける少年ルーク・スカイウィンドと学園浮遊都市《ミストガン》に集う仲間達やライバル達との大空の頂きを目指す物語が今、始まろうとしていた。
つ・・・・疲れた、このような疲れる作業をスラスラとこなす他の作者を尊敬します。
それではまた次回もよろしくお願いします!