ラウラご乱心(色んな意味で)です。
シャルが装い新たな男装生活を初めて早一週間と少し。最初は突然変えた髪型や、リィンとの距離感と接し方にみんな不思議がってたけど、慣れるのも早いから今では特に気にされることもなく。そして世間はだんだんと夏に近付いて、でももう暫くは穏やかな陽気が続く見込みな今日この頃。
この一週間で変わったことはシャルの事だけじゃない。シャルの男装修行の翌週末、つまりほんの数日前に、鈴だけじゃなくセシリアや簪達を家に招いて僕やリィン達と束姉の事を話した。後、知らせてなかったメンバーにもシャルの事を。当然口止めしたけど、した後にする必要がなかったと聞かされたのにはちょっと苦笑い。テレサなんて大笑いした後にぎゅうぎゅうと抱きしめてきて、唯々只管に慰めてくれたのが印象的だった。何気に《
それで後は対フランスとの戦い。こっちはもう佳境に入って、言い逃れ不可能な情報を多数取得した上で更に、本当に偶然だけど、シャルがリヴァイブの内部データを整理してたら、シャル自身も忘れてた、リヴァイブで録画してたとある会議の会話データを見つけて、本気のダメ押しの一手まで手に入ってしまったのは幸運なのか。というか政府やデュノア社の連中、
でまあ、ラウラに関してはちょくちょくお話しさせて貰ってます。当たり障りのない授業のことやISのこと、ラウラが苦手な
まあ、そんな感じでトーナメントを目標にした日常を過ごしてる中で今日、ちょっと無視出来ない事件が勃発。お昼を一緒に食べる様になってから、ラウラが何かしら事を起こすってのは少し聞いてたから驚きはしなかった。けど、結果に関してはちょっと笑えなかった。弁護は出来なくても擁護位はするけど、さ。ケガ人四人は流石にまずいって……。
それが起きたのは、ラウラと昼食を食べる様になって数日後の事。その日の放課後訓練は、訓練機やアリーナの貸し出しの都合でみんなが完全にバラバラに。それでも専用機がある鈴とセシリアと簪に、
事が事だけにプチパニック起こしてた簪を弱めにかけた魅了の魔眼で落ち着かせた後、今日の練武場での訓練は中止にして、専用機を持ってる全員で鈴達が借りた第五アリーナにひとっ走り。……あ、僕の緋鋼とエマのゾディアックも改良と改修に装備強化込みで修理から戻ってきてるよ。まだ全体バランスの最終調整中だけど。余談はそれくらいにして、普段は出さない全力で走ってアリーナに駆け込むと、そこにはボロボロの機体を纏い、あちらこちらに裂傷を作って血塗れになって倒れてる鈴とセシリアに、同じような状態でワイヤーブレードに締め上げられながら空中に磔にされたレナの姿が。更に別ルートで救援に来てたらしいテレサも、ひび割れて崩壊寸前の
「みんな、行くよ。エマは直ぐにテレサと交代してテレサを退かせて。フィーと織斑はエマが盾になってる間に鈴とセシリアを回収して医務室に。優衣とシャル、簪は別方向に展開して十字砲火でラウラのAICを妨害。リィンは優衣達に合わせてレナを縛り上げてるワイヤーブレードを斬って回収、医務室に。ラウラ本人は僕が当たる」
「了解だ、ステラ。みんな、タイミングを優衣に合わせる。行くぞ」
全員の同意と準備完了を受け、優衣が飛び出すと同時に一斉に飛び立つ。
最高速度でゾディアックを重防御形態で展開し、蒼鋼改と群雲改を並列展開したエマがテレサの前に立つと同時に、テレサはこちらの意図を読んでくれたのか何も言わずに鈴達の位置まで下がった上で、鈴とセシリアを担いだフィーと千夏と一緒にアリーナの通路まで後退。そのままスタジオーニを解除して医務室に直行してくれた。そしてエマは、テレサの後退とフィー達の撤退を確認しながら、優衣達の射撃が始まるまでの囮役となるためにラウラからの砲撃を全部受け止めつつ、イセリアルバスターと五月雨改で牽制。そうしてる内に優衣達が配置についてラウラのレーゲンに対して十字砲火を開始。上空からは簪による集中爆撃、左右やや後方からは優衣とシャルが濃密な弾幕を張り、ラウラは防御に専念するためか一歩も動けず、集中も切れたのかレナを空中に磔にしていたAICが途切れ、レナの背後から接近したリィンが彼女を抱きかかえると同時に緋皇を一振るいしてレナを拘束してたワイヤーブレードを切断し、直ぐに後退。リィンと入れ替わりに、エマ達が張る弾幕の隙間を縫って僕がラウラに強襲。展開した緋鋼で、シュバルツェア・レーゲン最大威力の装備になるレールカノンを切り裂いて、彼女の首元に結合状態の烈空を添えてチェックメイト。
「まだ、続ける? 今なら僕をAICで釘付けに出来るでしょ?」
そのままラウラに問いかけると、彼女はいっそ清々しい程の笑みを浮かべて、降参すると言った。
「……いや、降参だ。ここまで素早く展開されては、わたし一人で切り抜けることは不可能だからな。そもそもステラが率いる五機のIS部隊を相手にして、わたし一人で勝てるなどと思わんよ」
「そういう割に、鈴達を一人でボコボコにしてるじゃないのさ」
ラウラ対僕と優衣、簪、エマ、シャル。そしてラウラ対鈴、セシリア、レナ、テレサ。同じ一対複数でも結果は逆になるというラウラに思わず苦笑い。
「こう言っては何だが、彼女達……特に中国の凰とイギリスのオルコットは少し煽りに弱いのではないだろうか。もしあの二人がお前達やカナダのシャンティ、二年のランプレディの半分でも挑発を受け流せていれば、わたしはこうまで都合良く勝てなかったのだがな」
「なるほどね。道理であの三人とテレサが勝てなかったわけだ。けど、流石にアレはやり過ぎだよ」
真剣勝負と殺し合いは少し違う。紙一重だけど。でも、今のラウラの指摘はどうしても反論出来ない。鈴は思慮深い部分を持つけど、基本的に熱しやすいタイプだから煽ると割と乗せられる。セシリアに至っては高慢な部分は形を潜めて来てはいるけど、プライドの高さ自体は出会った頃のまま。尤もただ捨て去ってはいけないプライドと、そこを刺激された時に過剰に反応する所はそのうち直さないととは思ってた。そんな二人の欠点がこの結果を引き出したって所か。レナとテレサも、仲間に対する思いが無理や無茶に繋がりやすい性質だし。まあそれでも、今回のラウラがした事は擁護してもやり過ぎとしか言えない。その理由はラウラ自身の独白でわかったけど、うん。この子も大概、激情家な部分が大きいというか、タイプ的に鈴と同じ方向性か。だったら。
「……実はわたし自身、彼女達が煽り返して来た言葉に乗ってしまってな。正直、凰やオルコットの事を責める事は出来んのだ。思わず感情のままに力を振るってしまったのだからな」
「なるほどね。じゃあ僕と一対一でちょこっと鬱憤晴らしでもしよっか。ぶっちゃけ、大切な人達を傷付けられて何も思わないほど、僕も大人じゃないんだ」
ガス抜きだよね、と。そう言いながら、突き付けたままの烈空を僅かに引き、ラウラのIS、シュバルツェア・レーゲンのシールドを素通りさせ、絶対防御も発動させずに彼女の首に僅かな切り傷を入れる。ほんの僅か、ISスーツ毎斬った皮膚から流れた血が烈空の刃を伝い、アリーナの地面に零れ落ちる。
「それだけのことをした自覚はある。反省も後悔もないが、いいだろう。レーゲンの装備は大半が潰されて満身創痍に近いが、それでも足掻かせてもらう。まだ、全ての装備が潰えたワケではないのだからな!」
瞬間、ラウラはスラスターを全開にして僕を押し倒す様に加速。予測しててもスラスター出力上でレーゲンに完全に負けてる緋鋼は踏ん張る間もなく後ろに弾かれ、蹈鞴を踏んで体勢を立て直す間に、ラウラも後退して距離を置き、体勢を立て直して両腕のプラズマブレードと残ってるワイヤーブレードを展開。その間に優衣達は全員アリーナの壁際まで待避して観戦モードに。ま、これなら遠慮は要らないよね、と烈空を左腰の脇に置いて抜刀擬きの構えを。ラウラもワイヤーブレードを真っ直ぐこちらに向けながら、プラズマブレードをクロスして構えた。多分、カウンター狙いかな。まあ、それでも防御と反撃両方ぶち抜いて叩き潰してやるし。
「……いいね?」
「ああ。いつでも来い」
決闘でもなんでもない、ただのケンカ。ただの意地の張り合い。だから小細工無しで、せーのでスラスターを吹かして間合いを詰める。直剣型な上鞘もない烈空は、型だけ抜刀術な擬き技だから、パワーアシストを最大限に上乗せして唯々力任せに振り抜く。ただ力任せに振り抜いて防御の上から無理矢理ラウラを打っ潰す!
「そんじゃぁ、打っ潰れろ!」
「ただで潰されてなどやるものか!」
小細工無し、只管真っ直ぐ突っ込んで叩き潰す。後コンマ数秒。ラウラもプラズマブレードをこちらに向けていよいよぶつかる、そんな時……。
「……はぁ。これだからガキ共は面倒臭い。まったく、何年も問題児ばかりを私のクラスに集めて、本当に、学園は何を考えているのだろうな。ああ、やはり学園長に文句を言いに行こう、そうしよう」
「いつの、間に……。視界にもハイパーセンサーにも、反応はなかったのに……」
「マジ、ですか……」
受け止められた。僕の烈空も、ラウラのプラズマブレードも。気配の欠片も見せずに僕達の間に割り込んで、平然と、学園長に対して愚痴る千冬姉が両手に一本ずつ持つIS用ブレード《葵》によって……。
「事情はあそこに居る緒方妹たちに聞いている。だがこんな形の私闘は今後認めん。来月行われる学年別トーナメントで決着を付けろ。それまでの私闘は一切禁止する。尤も、トーナメントで当たれなくともそれはそれという事になるが。二人ともそれでいいな?」
「うわぁっ! ……あー、はい」
「ふにゃ! ……あうぅ、わ、わかり、ました」
僕達のIS用装備を、生身で持つ葵で平然と受け止め、機体毎弾き飛ばしながらそんなことを言う千冬姉に、僕もラウラそれしか言えなかった。
やっぱバグってるよ。なんで葵を片手で持って、パワーアシスト全開で振るったIS用装備を受け止めた上で機体毎弾き飛ばせるのさ。いや、僕だって素手でIS用装備持つのは出来るよ? けど、ここまでの事は出来ないし。
ていうかラウラ、すっごく可愛い声で悲鳴上げなかった? なんか滅茶苦茶可愛い反応してなかった? もしかしてこの子って、そういうこと?
「よろしい。そこの緒方妹達もいいな。今日ここで起こった事は私の権限で全てなかった事にしてやる。では解散しろ」
それだけ言って千冬姉は、僕達はおろか優衣達の返事も聞かずに葵
「……あー、ラウラ。とりあえず医務室行こうか。立ってるのもやっとなの、わかってるからね」
「むぅ。大丈夫だ、問題無い……とは、これでは言えないな」
とりあえず沈黙。千冬姉のあの行動でこの広いアリーナが純粋に静寂に包まれた。そんな中で、機体にそれなりのダメージが入ってたシュバルツェア・レーゲンが強制解除された途端に、ラウラが頽れた。
鈴達との戦闘で四人をボコボコにしては居たけど、完全な一方的ではなく、カウンターでそれ相応のダメージを受けてたみたいで、改めて見ればISスーツも所々裂けてるし、腕や脚にそれなりの裂傷や痣が見て取れた。だから優衣達に医務室に先に行く様に指示しながら、僕は座り込んでるラウラを横抱きに抱える。途端にラウラが顔を真っ赤にしてわたわたと手足をばたつかせて慌て始めるけど無視。……というかやっぱこの子は
「無理に立つなって。優衣達は鈴達の方に行ってて。僕はラウラ連れて別口から入るからさ」
「にゃっ! す、ステラ! これはどういうことだ! じ、自分で歩けるから下ろせ!」
「やーです。今のラウラほど負傷してる人を一人で歩かせる様な温い状況は経験してないんだ。そういうのはダメージを今の半分以下に抑えてから言いなよね」
とにかく力の入らない抵抗なんて無意味。それに酷いとまで言えなくても、ISを解除した途端に座り込む様なダメージと負荷を負った人間を歩かせるなんて無理。
「何か勘違いしてるかもしれないけど、こんな
「……うぐ。わかった」
注目されている様だけど視線を全部無視して、大人しくなったラウラを抱えて走らない様に、でも全速で医務室に向かう。
「海咲せんせー! 負傷兵一人追加です。あっちの四人とは別にお願いします」
「……もう、本当に面倒なんだから。まあ、優衣ちゃんから聞いてるし、ベッドは余ってるからいいけどね。こっちよ」
本校舎一階の一角、かなり広い区画に設けられてる医務室の、二つある入り口の開けてある方から入ると、直ぐ目の前に学園専属医の
「向こうの四人も相当だけど、君もこっぴどくやれてるねー。まあ骨折や罅がない分、軽傷よりちょっと上って程度だけど。打撲してる所は二、三日痛むから、適当に湿布を張り直しなさい。それと、それなりに疲弊してるからこの栄養剤をちゃんと飲んで、一時間位はここで寝て休むこと。それ、美味しくないけど我慢して全部飲みなさいね」
「は、ふぁい」
ミイラ女……程じゃないけどそれなりに包帯だらけになったラウラに、医務室に常備の予備制服を着せてから、美味しくないと言うより寧ろ某国のMRE以上に不味いらしい即効性の栄養補給ドリンクを飲ませる。当然ラウラは咽せるけど今は無視して、飲み終わったのを確認して改めてベッドに寝かせる。予備だから当然無改造のワンピ型制標準制服しかなく、それを身に付けたラウラは、その小柄な体躯を更に幼く見せる。けど、それが却って、普段のパンツ型の軍服風改造制服姿と違ってラウラを年相応の女の子に見せる。少し顔色を悪くしてベッドに横になってるのもそれを助長させてる。でも、うん。さっきの口調といい、今の素直さといい、この子は普段のあのキャラを作ってるのがわかる。まあ、軍の一部隊の隊長さんだし、仕方ないのかな。
「口の中がまだ生臭い……」
「世界一不味い某国の
「まあ、某Cレーションと同じで即効性と機能性だけ追求した結果の製品だからね。あーそれとね。アレとの比較って展示会で公認されものだから、噂じゃないわよー」
そして栄養剤の不味さに加えて、なぜか口の中に残る生臭さに顔を顰めるラウラ。そして海咲せんせーから聞かされた驚愕の事実。
あの栄養剤。全世界公認のゲキマズドリンクだったのか……。てかラウラがぽかーんと口開けてんだけど、なんで現役部隊長様が驚いてんのさ!?
「あ、いや、そんな不思議そうな顔で見ないでくれ。わたしの部隊を含め、ドイツ軍ではこれを常備してる部隊などなくてだな。その、実物も今初めて見たのだ。少なくとも選定する部署が試飲して購入しなかったのだろうと思うが……その、あの、水が飲みたい。口を濯がせてくださいお願いします」
そうして慌てて弁解するラウラに、やっぱりクロエ達に似て可愛いなとか思いながら、ドイツ軍はそもそも購入してないという事実に、海咲せんせーの話は嘘じゃないんだねと頭の片隅にちょこっとメモしつつ、備え付けのウォーターサーバーから水を汲んでラウラに渡そうとすると、廊下が俄に騒がしくなり、パーテーションで区切られた向こう側、リィン達が居る側の入り口のドアがなぜか轟音と共に天井に向かって跳ね飛び、派手な音を立てて天井に当たり、轟音を響かせながら床に落ちた。そして甲高い声が幾重にも重なって一層騒がしくなる向こう側からは、リィン達の声を掻き消すほどの女子生徒達の声。ガラスが微妙に共振してるのはその人数故か声量故か……。バッカじゃネーの、アイツ等。
「……何が、起こった、の?」
「えっと、ドアが、飛んでたよね」
「あー。向こうってリィン君とシャルル君がまだ居たわよね。だとすると、もしかしなくてもこれのせいね」
そんなザワザワと大声が響き渡る中、セシリアや優衣達以外の女子生徒達が一斉に口にしたのは、まるでプロポーズの如きセリフでリィンかシャルにタッグを組んで欲しいという事。
それを証明する様に海咲せんせーが僕達に見せてくれたのは二枚の紙。一枚は学園から生徒への緊急通知。もう一枚は通知書に書かれた学年別
曰く、今年度は三名もの男性操縦者が居り、且つ一年生のクラス対抗戦で所属不明機乱入事件が起こった事で、突発的な連携による戦闘を視野に入れての実戦を想定した試合を執り行う事とした、と。
「……アレが原因で、また事件が起こるんじゃないかって警戒してこれ、てことですか?」
「ステラちゃんは当事者だから気付くわよね。まあ、そういうことよ。で、あっちはあれで大丈夫そうね」
「妥当な判断だろうな。織斑千夏は苦労しそうだがまあ、わたしが知った事ではないしな」
当然、女子生徒達はリィンやシャルに群がってタッグパートナーの座を争うわけだけど、咄嗟とは言え解決策なんか一つしか無い。
『みんなの申し出は嬉しいが、済まない。今回は、俺はシャルと組ませて貰うことにする。シャルも、それでいいか?』
『うん。もちろんだよ、リィン。みんな、ごめんね』
ということで、千夏を生け贄にリィンとシャルでタッグを。当然、シャルの性別隠蔽のためもあるけど、千夏を犠牲にするだけで混乱が収まるなら安いもの。そしてリィンとシャルの宣言には口々に「男の子同士なら」とか「夏にまだ間に合う」とか聞こえたけど、その辺の意味は……わかるけど、わかりたくないから、わからない事にして静かになったから良しとする。鈴とセシリアにテレサも、トーナメントまでには機体の修復が間に合うらしいからか、鈴とセシリアがその場でタッグを組んでリベンジだと息巻いてたし。なお、二人の勢いに、横で聞いてるラウラは苦笑い。
「……えっと、向こうはとりあえず男二人が組んで静かになった、でいいんだよね」
とりあえずその他大勢が出ていって暫く経ってから、リィン達も医務室を出たらしく、鈴達四人も今は大人しく眠ってるみたいでさっきまでの喧噪が嘘の様に静かになった。そんな時……。
「そうだな。……だが、困ったな。タッグマッチでは、わたしが組める相手が居ない」
そう、小さく呟かれたラウラの声を、聞かない振りは出来なかった。授業なんかで必要な時以外は基本的に排他的に動いてるラウラには、僕以外にもそれなりに話をする相手は居るけど、タッグマッチとなると話は変わってくる。技量の問題で。一部隊とはいえ、一国の、特殊部隊の隊長職を務めてる上に代表候補生の肩書きを持って専用機まで受領しているラウラの技量が、入学してたった二ヶ月の、漸く訓練機で戦闘機動が出来る様になった程度の操縦者をタッグパートナーに選べるわけがない。ついでに言うと、普段の態度と多分、今日のあれこれで更にラウラとパートナーになろうとする子は減る。実のところ、それは僕にも当て嵌まるけど、僕自身にはそう言った風聞を関係無しに出来る候補が居るから問題ない。で、その中には当然彼女自身も入ってるわけで。
「ねえラウラ。嫌じゃなかったら、僕と組まない?」
「……いいのか、わたしなんかで? あの様な事を起こしたわたしで」
今日の凶行について一応気にしている様で、でもそれが、て感じだね。
「そんなの別に問題ないでしょ。ていうか、ラウラのアレで凶行だなんて言ったら、ぶっちゃけ僕やリィンにフィーの方が何倍もエグい事やらかしてきてるから」
「そう、なのか?」
けど僕達がやってきた事を知らないラウラは呆然とした表情。でも、僕が言うエグい事に対する実感がないから仕方ない。内戦中にクロスベルとの国境紛争中は潜入やら破壊工作やら、こっちのスパイやら破壊工作員やら顔負けな事を僕達でやってたからね。
「形だけだけど、一応僕達三人は元軍属なんだ。それも、ラウラみたいな表側の部隊なんかじゃない、裏の、その更に末端の汚れ役担当のね」
「それなら、何となくは。だが、本当にいいのか?」
「勿論。ここで袖触れ合うも多生の縁。ご飯を一緒に食べて名前で呼び合う仲なんだし、ここはいっちょ、僕とラウラでリィン達も優衣達もその他大勢纏めて全員打っ潰して優勝掻っ攫ってやろうじゃん!」
なんて教師の前で過激発言。海咲せんせーは苦笑いだけど、まあまあ半分冗談なのは気付いてるだろうし。
それでラウラの方は、僕が差し出してる右手を見つめ、袖から少しだけ出てる自分の手を見て、普段の無表情さの欠片もない、真逆の怖ず怖ずとした様子で、でもしっかりと僕の手を取ってくれた。
「その、よろしく、頼む。ステラ。優勝、するぞ」
「任せてラウラ。そして、任せた」
「ああ!」
こうして、このトーナメントで一年最強タッグと呼ばれたタッグチームが結成された。
最初の投稿から一年が経って、漸くここまで来ました。
改めて文章を書く、小説を書くというのが如何に難しいか日々痛感してます。
この話でわかる通り、性格改編タグで原作から一番性格が変わってるのは束で、次いで一夏(ステラ)だけど、その次はラウラと決めて書いてます。だって妹二人(クロエとレイア)があれで、遺伝子同じ(三つ子同然)なんだから、根が一緒でも可笑しくないでしょ、と。まあ、他にも性格大幅改変してるキャラ(出番待ちキャラ多数含む)がいるんですけどね。リィンとか、ヴィータちゃんとか(^^
次回、波乱のタッグマッチトーナメント……ではなく、間に一話、全く別のお話を入れる予定です。
年明け早めの投稿を予定してます。