水上の地平線   作:しちご

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最柊話 鰯の日

これまでのおはなし

 

激化する深海棲艦との戦いの中で、ついにオリーシュ・ランペルージ提督

(古代ベルカ式 陸戦SSSS+)が海原に降りたち、そのまま引き潮に

飲み込まれ海の藻屑と化した。

 

一方その頃、海軍では全艦娘に対する悍ましき裏切り行為、即ち給与未払

が発生しており、龍驤は激怒した、必ず、かの那智暴虐の官を除かねばな

らぬと決意した。龍驤には倫理がわからぬ。龍驤は、戦の空母である。笛

を吹き、敵と遊んで暮らして来た、けれども給与に対しては人一倍に敏感

であった。きょう未明龍驤は泊地を抜錨し、海越え屍越え、十里はなれた

この深海泊地にやって来た。

 

空母棲鬼とマジックで書かれた加賀「伊401(しおい)は譲れません」

 

それはもう鮮やかなスピニング・トゥーホールドであった。タイガーばり

な側転からの引き倒し、そのまま足を取っては地獄の風車が回るは回る、

そう、それは即ち雄漢の浪漫、人生の縮図である。

 

 

 

『涙の別れ!エイプリル・ファイナリティ・フォーエバー(後編)』

 

 

 

第三鎮守府5番泊地、通称魔城ガッデム

 

前編で事細かに説明したように、今まさに泊地提督が深海ハーレム建設のために

太平洋に浮上した幻想大陸ムーの霊力を用い世界の理を書き換えようとしている。

 

そんな事に成ったら艦娘はお飯の食い上げである、健康で文化的な生活のために

龍驤たち救世艦隊は泊地へと吶喊した。

 

突入早々、床に落ちていた婚姻届(提督署名済)を拾いながら床に転がる金剛。

 

「私はもう駄目デース、膝にアローを受けてしまいましタ」

「慣用句の正しい使い方やとッ!?」

 

同じように、ウサギのぬいぐるみ(もふもふ)を抱えて転がる叢雲。

 

「だ、駄目よ、これは艦娘を駄目にするモフモフだわ……」

「叢雲オオォォ!」

 

高精度工具を抱えて転がる明石、2泊3日温泉旅行チケットで転がる大淀、

簀巻きにされた利根を抱えて転がる筑摩、もはや残る戦力は龍驤のみである。

 

涙を振り払い、泊地の奥へと歩を進める、さらば同じ国に仕えた姉妹たちよ。

 

「チクショオオオオ! ウチだけ何も無しかいッ!」

 

遥か突き当り、奥地への扉の前に見慣れた姿が立ちはだかっていた。

 

「さあ来い龍驤センパイィ!実は私はワンパン入っただけで大破します!」

 

全力で投擲された彗星一二型甲が蒼龍の顔面に突き刺さる、前が見えねえ。

 

「このザ・キョニュウと呼ばれた蒼龍が……

 こんなまな板、あ、痛い、ごめんなさいナマ言いました」

 

「烈風拳、烈風拳、ダブゥ烈風拳ッ」

「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」

 

飛龍「ククク、蒼龍がやられたようね」

加賀「フフフ、奴は正規空母四天王の中でも最弱」

赤城「軽空母如きに負けるとは正規空母の面汚しですね」

加賀「ゴフッ」

 

加賀、戦闘不能(リタイア)

 

「くらええええ!」

「「「グアアアアアアァァ」」」

 

一、二航戦を蹴散らした龍驤がひとりごちる。

 

「やった、ついに空母四天王を倒したで

 これであの浪費馬鹿への扉が開かれる!!」

 

その時、部屋の奥にあった扉が静かに開いた。

 

―― よく来たな軽空母龍驤 待っていたぞ

 

こ…ここが提督執務室やったんか

 

感じる…提督のラバーフェチパウワァを

 

薄明に染まる室内の奥、常より見慣れた提督が膝の上の駆逐イ級を撫でていた。

 

腰かけているのは椅子ではない、体前屈の姿勢の離島棲姫(ゴスロリ)である。

左右の足に空母ヲ級と戦艦レ級がしな垂れかかっていた。

 

「姫の待遇悪ッ」

 

長き雌伏の時(ヒキコモリ)を経て、ようやくの姫昇格であったのに待遇は人間椅子。

 

耐えがたき屈辱がその精神を捻じ曲げ、汚濁に残された魂と言う機関が救いを求め

やがて苦痛は快楽へ、羞恥は愛へと変質していった、まあそれはどうでもいい。

 

「是非も無い、ならば今こそ雌雄を決する時、ノルマは3問だ!」

 

 

― 支援艦隊が到着しました ―

 

 

神通「ジャンルセレクトです!」

 

 政治・経済  rァアニメ・漫画 ピコン

 スポーツ    ロードオブワルキューレ

 

 

第一問

 

高度成長期時代に出版された少女漫画に、ハーフの住職と女学生のドタバタ

ラブコメという時代を先取りしすぎた凄まじい作品が存在するが、その題名は

 

超坊主花錦絵(すーぱーすきんへっずはなのにしきえ)!」

 

「何でググっても出てこない名前を即答できんだよッ!」

「ふ、その時代ならまだ存命の乗員も結構居ったからなぁッ」

 

 

第二問

 

某ジブリの某パヤオ監督は自然の声がどうとか言い出して声優を使わない事に

定評があるが、そもそもそんな事になった理由を短くどうぞ

 

「セクハラとパワハラで仕事受けてくれる声優が居なくなったから!」

 

「あと高畑勲が素人起用で好評を博した途端、素人の声が云々と」

「ストップストップストーップ!」

 

 

第三問

 

腐女子に眼を付けられる前のSF雑誌だった頃の月刊ウィングス、創刊50号

特別読み切りはアーシアンとファルコン50の後日談、そのタイトルは

 

「エクスプローラー50!」

 

「TWD EXPRESSとか好きだったなぁ」

「それはコミックNORAや」

 

 

ノルマクリアー チャララン!

 

「グッハアアァァッ」

 

車田飛びで宙に投げ出される提督、何故か拳を突き上げている龍驤。

 

「やった、これで深海との優しい世界はお流れや、殺伐とした日常が帰ってくる」

「ククク、はたしてそうかな……ゴフゥ」

 

提督の言葉に応えるかの如く、床一面に描かれていた魔法陣が発光を始め

怪しげな地響きを持ってその術式の発動を告げる。

 

「これは、まだ発動までには時間があるはずやのにッ」

「ふ、龍驤たちが泊地へと攻めてくるのは前もってわかっていた」

 

血を吐きながら勝利の笑みを持って提督が言葉を続ける。

 

「だから、計画の発動を前倒ししたのだ!」

「な、なんやってー!」

 

極めて明快な理屈を持って当然の対応を果たした提督、震え、端の方が

何か崩れている魔城ガッデムを眺めながら、避難していた金剛が感想を述べる。

 

「あれを一言で言うノナラ……臨機応変……」

 

何もかも、何もかもが遅く、ヲ級さんはヲッとか言いながら天然ボケを振りまき

レ級は無駄に可愛く、離島棲姫はゴスロリのままに何となく酷い目にあい続ける。

 

そう、世界は優しい展開に包まれた。 ―― 完 ――

 

 

 

(TIPS)

 

 

 

「って阿呆かーいッ!」

 

布団を跳ね上げながら龍驤の目が醒める。

 

「ゆ、夢、夢やったんか、ウチはもうほっぽちゃんと

 プレゼント(主に艦載機)の交換をせんでええんやな」

 

あまりのほのぼのぶりに龍驤の全身に脂汗が滲んでいる。

 

そう、幼女はシバきあげて身ぐるみを剥ぐ物、それが現実クオリティ。

遥か中世ヨーロッパから近代英国まで延々と続く、人類の伝統であった。

 

何かナチュラルに英国がディスられてる気がシマース、と何処かで声がする。

 

いつも通り、いつも通りの泊地の朝であった。

 

後に、四月一日だからと真面目な顔で、龍驤は巨乳ですねと言った加賀が

簀巻きにされて吊るされた事は言うまでもない。

 


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