水上の地平線   作:しちご

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72 牛追いの時代

今回の作戦と言えば、こんな事を聞いた覚えがあります。

 

打通艦隊抜錨のカットを貰った後、本社へと電信したら私の仕事が終わりまして

ブルネイ経由で輸送艦隊が出ると言う事で、同行させて貰ったんですよ。

 

そして首都からフィリピン経由で帰国する予定だったのですが、

護衛艦隊が揃っていないとかで、数日足止めをされてしまったんです。

 

その時に聞いたお話なんですけどね。

 

それは、南国だと言うのに妙に肌寒い秋の日の事、ブルネイの国土から外れた所、

セリアの海岸沿いにあった第三鎮守府の5番泊地の事でした。

 

軽空母の艦娘で、仮にRさんとしておきましょうか。

 

そんなRさんが今回の作戦が終わり、泊地に帰投して艦隊を解散

そのままの流れで提督とふたり、泊地本棟に足を向けた時の事です。

 

トゥルルルルゥ、トゥルルルルゥ、トゥルルルルゥ

 

電話が鳴った。

 

すわ急用かと、ふたり急いで入口に向かい。

 

ギイィィィドン……

 

ドアが開く音がして、フッとRさんの目が閉じた。

 

建物の内と外で、あまりに明るさが違ったので、ついやってしまったそうです。

 

目が開くとあたりは真っ暗、うわぁと思って灯りを点けた。

 

影に成っていたせいか少しばかり涼し気な屋内の空気に、

開けた扉から入る陽光が差し込み、僅かに埃が舞っていたそうです。

 

詰まる所そこは、いつものような、いつもの泊地。

 

鳴り続く電話は誰も取るヒトが居ないのか、鳴りっぱなしで。

 

トゥルルルゥ、ヒタ、トゥルルルゥ、ヒタ、トゥルルルルゥ、ヒタ

 

ふと気が付けば、電話に混ざって妙な音が聞こえて来る。

 

何の音だろう、何だか嫌だなあと思って音のする方へと顔を向けようとすると、

 

Rさんは驚いた。

 

身体は動くのに、何故か顔だけがそちらを向かない。

 

驚いて、これは何事かと考えた時、その音がまだ止んでいない事に気が付いた。

 

ヒタ、ヒタ、ヒタ

 

聞いている内に、だんだんと大きくなってくる音。

 

Rさんは思った、もしかしてこれは何かの足音じゃないのかと。

 

そしたら急にゾワッと身体に寒気を感じた。

 

トン、トン、トン

 

と、音のする方の肩を叩く音がした。

 

えっと、Rさんは一瞬、凍り付く。

 

だってそうでしょ、音にはまだ距離がある様なのに、近くから肩を叩かれているのだから。

 

ならばきっと提督だろうと、自分に言い聞かせながら、気にしない様にと何とか取り繕う。

Rさんは身体が震えるのを抑えながら、僅かずつ首を回し、音のする方向へ。

 

2階へと続く階段の在る方へと顔を向けて見た。

 

するとそこには。

 

「ぎゃあああああああああッ」

 

その後どうなったのか聞いても、Rさんはそれ以上話してはくれませんでした。

 

ただ、ポツリと呟いたのをかろうじて聞き取れたんですよね。

 

―― かいだんに むらくもが おんねん

 

一体彼女に何があったのでしょうかねぇ。

 

 

 

『72 牛追いの時代』

 

 

 

居酒屋鳳翔深夜営業とばかり、虚ろな感じにシェーカー振っとる今日この頃。

 

何か溜まりまくった決裁書類に判子を押しては渡し押しては渡し、

誰や作戦中に姫級なんざ釣ってきた阿呆は、ウチや、なら仕方ないなド畜生。

 

打通作戦の横で基地航空隊が華々しくデビューしくさったおかげで、明石関連の

各部署通達や報告その他諸々の書類も雲霞の如くに湧きおってからに。

 

ようやくに仕事が終わったと思ったらもうこんな時間、いつもの事やな泣ける。

 

さすがにそろそろ、ええかげん人生含めて面倒になってきたんでシェーカーを

両手で精一杯広げた指の先だけで、底に当たらない感じで支える様に持ってー。

 

はい、左右にカコカコカコカコ。

 

「何か、見るからに手抜きっぽい振り方なんだが」

 

カウンターに突っ伏して魂を吐いとった提督が、ツッコミを吐いて来た。

 

「カクテルのシェイクってのは、酒を冷やしつつ混ぜるためのもんでな」

 

んで腕の良し悪しってのは、要はどれだけ酒を薄めずに作れるかって話や。

 

振る時の衝撃で中の氷が砕ける以上、どうしてもある程度は酒が薄まってしまうわけで。

 

やから少しでも、体温が伝わって氷が溶けない様にシェーカーは指先で固定するし、

側面に氷が当たって余分に削れるのを防ぐために、天辺と底だけを往復する様に振る。

 

「ぶっちゃけると、上や下に向かって振りまくるんは単なるパフォーマンスや」

 

こんだけ縦横無尽に振り回しても側面に氷を当てないんだぜ、という示威行動でもあるな。

 

巷の上下左右に振りまくるバーテンの、シェーカーだけに注視して見れば

氷が天辺と底だけに当たる様に上手くブン回しとるのが見て取れたりする。

 

まあ選手権に出る様なレベルやと、どう回しとんのか見てもわからんかったりするが。

 

格好だけバーテン真似ても、出来上がりに雲泥の差が付くのはそこら辺の違いが大きい。

 

「つーわけで、実はシンプルに縦や横に往復させるのが一番間違いが無い」

「何か、泣けてくるほどに見栄えがすこぶる悪いけどな」

 

残業明けに厨房入っとんのに、もうやってられっかっつー話や。

 

さて、打通作戦土産に貰ってきたラムとキュラソー、ついでのレモンも良く混ざった所で

冷やしたカクテルグラスに軽く爽やかな香りを伴って、注ぎ込むのはXYZ。

 

サイドカーのブランデーをラムに代えた、バリエーションのカクテルや。

ラムを増やしてレモンを減らすとマイアミに成る、まあどうでもええが。

 

これで終わり(XYZ)、か」

「明日もあるしなー」

 

まだまだ積み重なる書類の塔を想到しつつ、互いに死んだ魚の目で見つめ合えば

急に打通艦隊所属、アメリカ帰りのブロンド巨乳が飛び込んで来て、店を閉め損ねたわけで。

 

「龍驤えもーん、ヘルプミーッ」

「何やねん、アイ、オワ太くん」

 

何や、サラトガイアンが新しい航空機の爆撃心地を試させろとか言い出しそうやな。

 

ともあれ容赦無くカウンターに座ったホルスタインが、虚空に手刀を入れながら一言。

 

「アイの後に句読点入れるのは止めて、プリーズ」

 

そこかい。

 

「んでもう店閉めるで、いきなりもう店閉めるで、何やもう店閉めるで」

 

「言葉の中に、隠し切れない本音が堂々と出ているわね」

「何かもう、本音の方が本体と化している気がするな」

 

そんな事言わずにと必死に食い下がるアメリ艦、おっぱい揉んでいいからとか言い出して、

いや待て、何でそれがウチへの交渉条件に成ると思ったコラ、目を逸らすな。

 

「と言うわけで、ハンバーグ焼いて」

「レトルトでええか」

 

要望を即座に打ち返せば、涙目で上目遣いを含めた無言の圧力、誰や仕込んだん。

 

溜め息一つ、ひき肉は在ったわなと冷蔵庫を開ければ、既に寝かされとるハンバーグ。

鳳翔さんか、コレを焼くとして、無くなった分は今から作って寝かせとくか。

 

ついでにBAVARIAのリンゴ味も在ったから、渡しておく。

ブルネイで人気のオランダ産ノンアルコールビールや、冷やすと結構イケる。

 

んでテキパキとマルチタスク、フライパンに火を入れて、野菜を刻み、香辛料、

差し替え用のハンバーグ種を捏ねながら、ようやくに理由を聞いてみた。

 

「何でいきなりハンバーグやねん」

 

聞けばカウンターでリンゴ味を呑みながら、管を巻き始めるアイオワ。

 

「ステイツの皆、酷いのよー」

 

何かアメリカにハンバーグが無かったらしい。

 

「ハンバーグステーキ? ああ、日本料理だろ、とか言われるし」

 

「米英はソルズベリーステーキと呼んどるやろ」

「それは別の料理じゃなかったか」

 

公式の設定上はな。

 

「ソルズベリーステーキは在ったけど、レストランでは見なかったわね」

 

「というか、何処の料理なんだハンバーグ、アメリカなのか?」

「ステイツだとドイツ系移民が広めてたし、ドイツじゃないかしら」

 

何か疑問を以って見つめて来るので、フライパンにハンバーグを入れながら深刻に言う。

 

「ウチにかて……わからん事ぐらい、在る」

 

嗚呼、何度ウチらの前に立ち塞がるのかノストラダムス、何と言う言い掛かり。

 

「それはそれとして、日本のハンバーグはフランス料理や」

「わかってるじゃねーかッ」

 

司令官がズビシとツッコミを入れつつ、横でアイオワが崩れ落ちた。

 

わからん事ぐらい在るわ、まあハンバーグの事はわかるが。

 

「ほれ、明治政府が公的な洋食としてフランス料理を指定したやろ」

「軽く100年以上前の歴史に、同意を求められても困る」

 

外交とか、公的な場で提供する食事のベースをフランス料理にしたわけやな。

 

んなわけで西洋の食事こと洋食の歴史が日本で花開くわけやけど、

そんな経緯が在ったので主流と言うか、洋食の本場と言えばフランスやったわけで。

 

「ハンバーグはその一種、ハンブルグ風ビーフステーキ(Beefsteak a la hambourgeoise)、古典フランス料理やな」

 

有名所で言えば、ドリアを産み出したかの名高き横浜ホテルニューグランド、

初代料理長のサリー・ワイル氏のレシピにも、ハンブルグ風ビーフステーキが普通に入っとる。

 

挽肉に玉葱、パン粉、卵、ナツメグだの香辛料を加えて小判状に成形して、焼く、そのまんまや。

 

「以前にハンバーグは日本独自と聞いていたんだが、違ったのか」

「ソルズベリーステーキとの違いをプリーズ」

 

「一度に聞くなコンチクショウ」

 

片手間にハンバーグを引っ繰り返しながら蓋をして、続き。

 

「独自と言うか古典フランス料理や、要は現在のフランスでは廃れて無くなった」

「うおい」

 

もともとハンブルグの人間は挽肉に野菜屑や古いパンを混ぜて焼くってんで

ハンブルグ風と呼ばれる様に成った訳やしな、命名は英国、さもありなん。

 

「そもそもパン粉を入れたんは原価を抑えるためでな」

 

今でこそ保水性とか繋ぎかとか尤もらしい説明が付くが、根幹はそんな理由やった。

 

天皇の料理番こと斎藤文次郎氏なども、著書に於いて「一流所ではパン粉を入れない」

とかしれっと書いとるし、パン粉を混ぜる言うんは安い印象が在る行動やったわけや。

 

「戦後に成って、んなクソ貧乏臭い真似が出来るかってんで、あっという間に廃れた」

 

ぶっちゃけると、アメリカでハンバーグと言う名前が消えたんも同じ理由や。

 

「んで、パン粉を入れないハンバーグはミートローフに呑み込まれた感じやな」

 

アメリカだとハンバーガーとかで形は残ったけど、名称はビーフパテやったか。

かくして独自と言うか、生き残ったのが日本だけと言う、相変わらずの文化保管庫ぶりか。

 

「そう言えばハンバーグと一緒に、ソルズベリーステーキも在ったわね」

 

「ふむ、やっぱり違う料理なのか」

「そこらへんも面倒な経緯が在ってなー」

 

かつてハンブルグから来たからハンバーグステーキと命名した英国で19世紀末

栄養学者のJ.H.ソルズベリー氏が消化に良いハンバーグを食べようと言い出したねん。

 

「そして、第一次世界大戦」

「第一次世界大戦」

 

「英国と、ドイツ」

「英国と、ドイツ」

 

鸚鵡返しな司令官に、サラリとオチを告げる。

 

「ハンブルグと言う名前にイラッと来た英国人が、以降ソルズベリーステーキと呼びだした」

「うわぁ」

 

引いた声の司令官横、何か悟ってしまった感じのアイオワが決まり悪げに言葉を紡ぐ。

 

「えーと、ソルズベリーステーキが別の料理って」

「そう言う「設定」なわけやな、第一世界大戦の頃からずっと」

 

そのままアメリカに入って来たから、アメリカでもアレはソルズベリーステーキや。

 

まあ現在ではソルズベリーステーキの定義を細かく設定しているから、

別の料理と言い張れない事も無い、かなり厳しいが。

 

「肉が65%以上で豚肉が35%以下が、現在のソルズベリーステーキの定義やったかな」

「野菜多目で柔らかかったわー」

 

何か思考を放棄してのほほんとするアメリ艦。

 

「って、さっき言ってたがハンバーグも在ったんだろ、アメリカでは」

「そっちはドイツ系移民の広めた料理やな、入って来た経路が違うからハンバーグや」

 

世界恐慌の起こった頃、金は無いが肉を食いたいと言う身も蓋も無い欲求に対して

ドイツ系移民が安い屑肉を捏ねてハンバーグにして、それが流行した感じや。

 

「屑肉を捏ねて作った貧乏臭い代物、あとはわかるな」

「戦後に豊かに成って廃れたんだな」

 

結局、家庭料理として定着したソルズベリーステーキみたいな例外を除けて

日本以外じゃ麦飯の様に嫌われまくって廃れた料理やったわけで。

 

ふむ、現代で再評価されはじめとるのも麦飯に似とるな、そう言えば。

 

「けど何と言うか、美味しく作れない事も無いだろ、そう簡単に廃れるのか」

 

疑問を持った司令官に、横から少しばかり嫌な思い出満載的な声色で答えが来る。

 

「正直、あの頃のステイツのハンバーグステーキは、どうにもならない味だったわ」

 

だから現代ではどう進歩したのか期待してたのにと、21世紀まで浮いていた艦が言う。

 

「最近の動向あたりは、思い切り記憶が在る頃合いやん」

「周囲からハンバーグ自体が無くなったから、知る機会が無かったのよ」

 

今にして思えば、誰もハンバーグが無くなったのを惜しまなかったのねと、苦笑が在った。

 

煮詰めたソースを皿に掛ける頃合いに、司令官が言葉を繋ぐ。

 

「つか、そんなに酷かったのか、アメリカ」

 

「まあ洒落に成ってないわね」

「大量生産で大量消費の社会やからな」

 

どうも品質に関して何か想到していない点がある様なので、捕捉を入れておく。

 

「戦前やからな、発展していたアメリカでも限界言うもんは在ったんや、輸送とかに」

 

戦前の新しい世界は、現在のクラシックなわけで。

 

「まず西部の牧場に牛が居るやろ、ここからスタートや」

 

ええ感じに育ったからと、牧場主が売りに行こうと思い立つ。

 

牛追い(カウボーイ)を雇って数百頭を市場へと連れて行く、所謂キャトルドライブやな」

 

牛歩と言うが、一日20kmも行けば良い感じで、場合によっては数百km離れた

ミズーリやカンザスの鉄道駅の在る市場まで、キャンプを張りながら売りに行く。

 

その間、牛がまともに飲み食い出来るわけが無く、ひたすらに弱り続けていく。

 

「んで市場で売っぱらったら、今度は鉄道で長時間かけて都市まで輸送や」

「着いた頃には、屠殺の必要もないぐらいに弱りきった牛型の屑肉って感じね」

 

まあ西部だと普通に肉が食えるが、そのかわり海産物が同じ扱いやったとか。

 

「鉄道、鉄道かあ」

「しかも今より遥かに遅い、それでアメリカ大陸を横断や」

 

ついでに言えば、現在の冷凍技術の雛型は19世紀には出来とったが、輸送はいまいち

19世紀末時点では冷凍輸送の事業化を試みては失敗、試みては失敗と、

 

結局は技術革新を待つと言った感じで、要するにコストがアレやった。

 

半死半生の牛を運んだ方がまだマシなぐらいには。

 

「つまり、国土が狭い日本と比べれば牛肉に関する質に雲泥の差が出ると」

「当然、屑肉の品質の差もな」

 

貧乏の代名詞、屑の中の屑を捏ねたアメリカのハンバーグ、廃れるんも無理は無い話や。

 

「んで、出来上がりっと」

 

さて、適当にソテーした野菜もそえて、ハンバーグステーキ出来上がりっとな。

 

「キャロット要らないわ」

「食え」

 

仕舞いにゃ刻んで混ぜるぞと、どこぞのパイロット的な発言に何かイラッと来たので

付け合わせをパンでなくライスにしておいたら、普通に喜ばれた。

 

余った米は握っておくかと、何か疲れが抜けない深夜の厨房だったとか。

 

 

 

(TIPS)

 

 

 

早朝の居酒屋鳳翔、冷蔵庫を開けて苦笑している鳳翔の背中に、扉を開ける音が届く。

 

振り返ると其処に居たのは、赤い一航戦。

 

「鳳翔さん」

 

静かな、声だった。

 

「教えて頂きたい事が在ります」

 

早朝の光に、その表情は逆光と成って伺えない。

突然の言葉に、疑問を浮かべた軽空母へと、さらに言葉が続けられた。

 

「航空母艦としての貴女に、教えて頂きたい事が在ります」

 

透き通った空気が、割れる気配がした。

 

訪れた沈黙に、鳳翔の硬い声色が鉛を流し込む。

 

「今更貴女に教える事など、残っていないはずですが」

「いいえ」

 

「残っていません」

「いいえ」

 

頑なな言葉に、声を荒げようとした鳳翔が、息を呑む。

 

手をついていた。

 

下げられるはずの無い頭が、下げられていた。

 

数多の思いを背負い、誇りを以って立つべき立場の赤城が、伏している。

地に伏せ、擦り付けられた額の奥底より、絞り出すような声が在った。

 

確信が、持てないと。

 

「ずっと、考えていたはずだ」

 

何処か奥底より、情念に満ちた言葉が響く。

 

「誰よりも近くに居た貴女だからこそ、私よりも」

 

遥かに強く。

 

遥かに長く、深く。

 

「考え続けざるを得ない」

 

それは、赤城の身の内に在る確信を持って響く、言葉。

 

「私たちは、そういうモノだから」

 

頭は上がらない。

 

どうかお願いしますと、一身を以っての懇願に、沈黙が生まれる。

 

早朝の空間に、氷の如き気配が満ちて、割れた。

 

「私に、何を教えろと言うのです」

 

いまだ泊地の誰もが聞いた事の無い、冷え切った言葉だった。

 

そしてようやくに、赤城が顔を上げる。

 

重力に引かれ地に着いた黒髪の中、感情を伺い知れぬ表で

だがその瞳は情念に黒く濁り、泥の如き色合いが在る。

 

言葉が紡がれる。

 

呪いの如き、魂魄の奥底から滲み出るそれ。

 

龍の ―― 殺し方を

 


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