Fate/stay night ~ For someone's smile ~   作:シエロティエラ

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更新です。

それではごゆっくりと





初戦の行方

 

 

 

 

青が、蒼が、紫が走り、銀と紅と風がぶつかり合う。砂塵が散り、岩塊や金属片が飛び散る。それを浮遊する何本もの剣が打ち払い、蒼に殺到する。蒼は紅でそれを弾き飛ばし、同時にこちらへと向かう。しかしそれを青と紫が阻む。

 

あまりにも早い応酬で、形は見えず、色でしか判別できない戦場に皆はいた。ランサーはその敏捷さを活かして猛攻を繰返し、ライダーは機動性を活かしてありとあらゆる方向から攻撃を仕掛ける。セイバーは現在の全力を出し、ランサーと真っ向から打ち合い、その技量から有利に戦闘を進めている。

 

 

「チィッ!! やりづれえなぁ本当によぉ!!」

 

「ハァァアアアアア!!」

 

「そぉらあ!!」

 

「フッ!!」

 

 

剣戟が鳴り響き、その度にこの世界の地は陥没し、ひび割れる。だがその度に世界はもとに戻っていく。破壊されたそばから修復されていく。

 

 

「ハッハァ!! いいマスターと同盟先を見つけたなぁ!! ええ、お二人さんよぉ!!」

 

「ええ、そうですね!! ハァァアアアアア!!」

 

「甘ェ!! ってうおお!?」

 

「足元がお留守です」

 

 

ライダーの鎖がランサーの足元に巻き付き、そのまま引っ張られた。そしてそのまま、プロレスラー顔負けの見事なジャイアントスウィングをランサーにかました。いや、ハンマー投げか?

 

 

「せぇのっ」

 

「ウオオアアアアアアア!?!? なんじゃこりゃあ!?!?」

 

「こ、これは……」

 

「くそっ!! 鎖が取れn」

 

「それっ」

 

「ノワッ!?」

 

 

ライダーは鎖の先についているランサーを、地面に叩きつけた。そしてまた振り回し、叩きつけた。それを何度も繰り返す。正直ランサーは敵だが、見ていて不憫になってきた。

 

 

「そぉれっ」

 

「わたたたたたたっとと」

 

 

そして最終的に遠くに投げ飛ばされだが、ランサーはそのまま態勢を安定させ、着地した。しかしそこにセイバーは突撃し、ランサーに息をつかせる暇を与えなかった。再び剣戟が鳴り響き、周りを破壊しながら三人のサーヴァントは互いにぶつかり合う。

 

 

「……衛宮君。衛宮君」

 

「? 三枝?」

 

「いま起こってること、夢じゃないんだよね? 現実なんだよね?」

 

 

彼女には本当に申し訳ないが、現実であることをわかってもらわねばならない。だから簡潔にことを伝える必要があるだろう。詳しく説明するにしても、一度心の整理をしてもらわねば、

 

 

「ああ、現実だ。今目の前で起こっていることは全て」

 

「……うん。それと衛宮君」

 

「どうした?」

 

「気のせいかもしれないけど、さっきから変な音が聞こえるの。なんかギチギチと堅いものが擦れ合う音みたいなのが」

 

「……え?」

 

 

三枝の言ったことに違和感を覚え、急いで解析を自分にかける。

おかしい。

俺の予想では、この固有結界は最低でも三分は展開時間が持つはず。『世界』の修正を考慮しても二分は持つはずだった。だがまだ一分しか経過していないのに、限界が来ている。まさかサーヴァントを召喚したことによって、展開時間が大幅に短くなったのか? そう考えているうちに、空にヒビが入りはじめる。それを魔力を込めて押し止める。

サーヴァントの戦いも終わりそうだ。それまでは持ってくれ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅の槍を持ったランサーは、ライダーのダガーについている鎖をつかみ、ライダーを遠くへと投げ飛ばした。そして槍先を下に向け、こちらを見据えて構えた。その途端、まるで貪り尽くすように、槍は魔力を集め始め、纏った。

彼は宝具を使うつもりだ。

 

 

「宝具か!!」

 

「おうよセイバー。こいつで〆だ。こいつが受けきれるか?」

 

「いいでしょう、受けて立つ!!」

 

「いくぜ……その心臓、貰い受ける!!!!」

 

 

━━ 刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク) ━━

 

 

 

濃密な魔力を孕んだ一突きをランサーは繰り出したが、私は回避した。いや、回避したはずだった。しかし槍はその軌道を変え、私に向かってきた。今度は風王結界を纏った私の剣で弾いたが、槍はさらに軌道を変更し、私を穿った。私の右脇腹を。

激痛が体を駆け巡る。幸い霊核は破壊されていないため、マスターの魔力供給や治癒の魔術があれば修復できる。ランサーを見ると、彼は槍と同じように赤い目を爛々と燃やし、鬼の様な形相でこちらを睨み付けていた。

 

 

「かわしたなセイバー……我が必殺の一撃を!!」

 

 

ランサーの目は怒りの一色で染まっていた。そこにライダーが私の側へと戻ってきた。

 

 

「すみませんセイバー、遅くなりました。大丈夫ですか?」

 

「ええ、なんとか。それにしても今の言葉にその宝具。貴公はもしやアイルランド、アルスターの光の御子なのか?」

 

「チッ。ったく有名なのも考え物だな。この槍を使うからには必殺でなけりゃならんのに」

 

 

ランサーは目に灯る怒りを治め、やれやれと首をふると、槍を肩に担ぐようにして構えを解いた。

 

 

「悪いが今日はここらで分けとしねぇか?」

 

「逃がすと思っているのですか?」

 

「さっきからうちの臆病なマスターが帰ってこいって五月蝿いんだよ。それに……」

 

 

ランサーは一度言葉を区切ると、周りを見渡した。結界による世界は、ひび割れてボロボロになっており、今も崩壊を続けている。

 

 

「この結界もそう長くは持たねぇだろうよ。坊主は苦しそうだしな」

 

「何? ……ッ!? シロウ!!」

 

 

ランサーに言われてマスター、シロウを見ると、彼は自らの体を抱え込むようにして、踞っていた。彼の周りにはライダーのマスターとその兄、そして巻き込まれた少女が寄り添い、必死に彼に呼び掛けていた。

私は急いでシロウの元へと向かった。そして彼のもとへ辿り着いた瞬間、世界は壊れ、もとの中庭に私達はいた。どうやら本当に今回はここまでらしい。

 

 

「セイバー、ライダー」

 

「なんでしょう?」

 

「なんですか、ランサー?」

 

「その坊主、大事にしろよ? お前らとやりあう前に一度剣を交えたが、今時珍しい気質の野郎だ。マスターとしても人間としても、とんでもねえ奴になる」

 

「ええ、わかりました」

 

「無論です」

 

「それから坊主に伝えろ。サーヴァントと周囲のことを考えて、戦いの場を用意するのはマスター冥利につきる。だがそれで自分が死にそうになっちゃ世話ねぇとな」

 

「ええ」

 

「必ず」

 

「じゃあな。次会うときは本気で死合おうぜ。てめぇらの命は俺が貰い受けるからな」

 

 

ランサーはそう言うと、彼の持ち味である超スピードで去っていった。彼の言葉もあるが、戦ってみてわかった。どうやら彼は枷をつけられている。次は本気で、という言葉から、その枷は初戦の一度限りのものだろう。召喚直後の万全でない今で相手をしていたらどうなっていたか。

 

それにしてもおかしい。マスターは固有結界を三分は展開していなかったはず。精々二分程度だ。しかし結界は自然崩壊し、シロウは未だ以て苦しそうに息を荒らげている。

 

 

「衛宮君? 大丈夫? 衛宮君?」

 

「衛宮、どうした。おい衛宮!!」

 

「シロウ、大丈夫ですか? 私がわかりますか?」

 

 

必死に声をかけるが、彼は荒い息を絶やさない。それどころかさらに苦しそうな息をしている。気のせいか、何かがギチギチと擦れ合う音もしている。

 

 

「シロウ? 大丈夫ですか?」

 

「……セイ…………バー」

 

「はい、私はここにいますよ、シロウ?」

 

「…………なを……れ………ろ」

 

「今なんと?」

 

 

シロウが何かを言ったのは聞こえたが、内容まではわからなかった。だから私はシロウの口元へと耳を寄せた。

 

 

「俺から……皆を………離れさせろ……ぐっ…………今すぐに!!」

 

 

ギチギチという音に混じって聞こえたシロウの声に、私は普通でないと判断して、少女、ユキカを連れて離れた。話を聞いていたライダーも、シンジとサクラを連れて、シロウから離れた。その直後。

 

 

 

 

ボキャッ ブツリッ ミチッ

 

 

「ガフッ!? ゴボォ……」

 

 

骨を砕き、肉を断ち切り、皮膚を突き破り、互いに押し退け合ようにして、シロウの内側から数えるのも馬鹿馬鹿しくなるほどの剣が生えてきた。

 

 

「「ひっ!?」」

 

「なっ!?」

 

「「ッ!? シロウ!?」」

 

 

サーヴァントである私とライダーは、咄嗟に彼に駆け寄った。

 

何が起きた? 彼は剣で刺された。

 

誰がやった? 今ここにそれをなし得る者はいない。

 

ならこの状況は? 彼の内側から剣が生えている。

 

原因は? わからない、予想するとしたら。

 

 

「固有結界の代償?」

 

「シロウ!! しっかりしてください!! シロウ!!」

 

 

シロウに声をかけるが、反応はない。剣は何度も生えては引っ込むのを繰り返している。まるで過ぎた力を行使した罰であるかのように。

 

私は、見ているだけで何もできない自分が悔しかった。

 

 

 

 






はい、今回はここまでです。

前回教会まで話を書いてからハリポタに移る、と言いましたが、予定を変更して、あと1、2話書いてからハリポタに移るようにします。

その際、教会まで書くかはわかりません。

ではこの辺で




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