Fate/stay night ~ For someone's smile ~   作:シエロティエラ

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では最新話です。

ごゆっくりと






三人の英霊

Side 士郎

 

 

「……確認しました。サーヴァントセイバー、これより我が身はあなたの敵をはらう剣となり、あなたを守る盾となりましょう」

 

 

目の前のサーヴァントの少女、セイバーはそう言葉を紡ぐ。

 

 

「ありがとう、セイバー。それと真名だけどまだ教えてくれなくていい」

 

「? それはなぜでしょうか?」

 

「俺自身、魔術師のくせに暗示の類いの耐性があまりないんだ。いつキャスタークラスのサーヴァントや他の魔術師にかけられるかわからない。そこからセイバーの情報が漏れるのもダメだろう」

 

「わかりました。では私が告げるべきと判断したときにマスターに伝えると、そういうことですね?」

 

「ああ、それでいい。宝具に関しても同様で頼む。あと俺は衛宮士郎だ。マスターって名前じゃない。好きに呼んでくれ」

 

「ではシロウと。ええ、このほうが私のしても好ましい」

 

 

セイバーはそう言い、暫くうんうんと頷いていたが、突如顔を引き締めて外を睨み付けた。そうだ、今はそれどころじゃなかった。ランサーの迎撃をしなければならない。

 

 

「シロウ、外にサーヴァントの気配が……」

 

「セイバー、一番近くにいるサーヴァントは味方だ。敵じゃない」

 

「なんですって?」

 

「セイバーは騎士、同盟相手はいらないと思うかもしれない。でも今回の聖杯戦争は少々複雑なんだ。詳しいことはあとで説明する」

 

「……わかりました。その代わり、あとでちゃんと説明してください」

 

「ああ、わかった。それから今の状況を手短に説明する」

 

 

それから俺は学校でランサーに襲われ、彼が追ってくること。親しい一般人の同級生が巻き込まれて保護していること。ランサーの目的は、目撃したその一般人の殺害。もうすぐここに来るだろうから、ライダーと共に撃退してほしい旨を伝えた。

 

 

「倒すのではなく、撃退ですか?」

 

「ああ、セイバーも多対一で勝っても気分がよくないだろう?」

 

「ええ、確かに」

 

「それに今は召喚されたばかりだ。完璧なコンディションって訳でもない。だから慣れるという意味でも撃退だ。それでいいか?」

 

「……ええ、構いません。シロウの言うことも一理ありますから」

 

「よし、なら外に行こう。ライダーとも顔を合わせないと」

 

それから俺たちは蔵から出て、ライダーと最終的な打ち合わせをした。三枝は、あらかたの事情を既に桜と慎二から受けているらしく、じっと黙っていた。だが見たところ、まだ震えていた。当然か。何気ない日常から突然血みどろな世界に放り込まれたのだ。俺は三枝な近づいた。

 

 

「……ごめん」

 

「衛宮君?」

 

「こんなことに巻き込んでしまって。怖い思いをさせて、本当にごめん」

 

 

俺の言葉に三枝は首を振る。

 

 

「大丈夫。確かに怖いよ。今すぐここから逃げ出したいよ。でも今ここから私が逃げたしたら、もっと多くの人に迷惑がかかっちゃう。だから私は衛宮君たちに出来るだけ迷惑がかからないように行動する。それが私が今できることだから」

 

「……わかった。三枝がそう言うなら」

 

「うん」

 

「……大丈夫。三枝は俺が守るから……」

 

「え?」

 

「なんでもない」

 

俺はセイバーたちのところへ戻った。彼女たちも話はついたらしい。少々和んているような感じがしたが。そこに殺気が近づいてくるのが感じられた。サーヴァント二人は勿論、慎二も桜も気がついたようだ。三枝も微妙に感じとったのか、口のはしを噛んでいた。

 

濃密な殺気を纏ったモノが猛スピードでこちらに接近したのちに、中庭に大きな音を立てて着地した。紅く輝く槍に蒼い軽鎧、ランサーだ。

 

 

「ほう? やっぱりサーヴァントを喚んだのか坊主。見たところ最後の一体に、同盟相手のサーヴァントってとこか?」

 

「ああ」

 

「いいねぇ、見逃した甲斐があったもんだ」

 

 

そう言い、ランサーは槍を、セイバーは目に見えない何かを、ライダーは鎖で繋がれた双小剣をそれぞれ構えた。

涼しげな風が一筋吹き、葉っぱが一枚地面についたと同時に双方がぶつかり合った。セイバーがランサーと正面からぶつかり合い、ライダーはその機動力を生かして様々な方向から攻撃を仕掛ける。二人を相手しているのに加えて、セイバーの武器が見えないので、ランサーはやりにくそうだ。

 

 

「卑怯者め! 武器を隠すとは何事か!」

 

 

ランサーが吠える。だがその間も三人は手を止めることなく、得物をぶつけ合う。無数の剣戟が鳴り響くなか、その余波が周りをも巻き込んでいく。彼からがぶつかる度に地面には大小様々な亀裂が走り、家が揺れる。

 

……これは不味いな。一応防音の結界がはってあるが、いつまで持つかわからない。そうなれば近隣の家々に音が漏れ、その人たちも巻き込むことになる。なら次に彼らが一息つくときがチャンスか。

そう考えているうちに、一度サーヴァントたちはお互いに距離を取った。

 

 

「一つ聞く。貴様のそれ、得物は剣か」

 

「どうだろうな、斧かもしれぬし鎚かもしれぬ。もしかしたら弓かもしれんぞ?」

 

「ぬかせ、剣使い(セイバー)

 

 

セイバーとランサーがそう言い、ライダーは静かにそれを見つめている。だがやはり全員場所が場所なため、戦いにくそうだ。ならば……

 

 

「二人とも、聞いてくれ! これ以上やったら周りにも被害が出かねない。だから場所を移す!」

 

「私も異存はありません」

 

「私もシロウの判断に従います」

 

「ありがとう。それと少しだけ時間稼ぎを頼む! 桜、慎二、それから三枝は俺の近くに」

 

「なんだか知らねぇが邪魔させてもらうぜ!!」

 

 

本当を言うと、三枝をこれ以上巻き込みたくはない。だが今から俺がしようとしていることに着いてきてもらわねば、俺たちがいない短い時間の間に他のマスターの攻撃に巻き込まれてしまう可能性がある。だから俺は三枝も連れて行くことにした。

 

手を胸に当て、目を閉じて自己に埋没する。周りの皆が、俺の動作に怪訝な表情を浮かべているのが感じられた。サーヴァント達も闘いつつ、俺に訝しげな視線を向けている。だがそれを無視して、俺は言霊を紡ぐ。

 

 

 

 

━━ I am the bone of my sword(体は剣で出来ている)

 

━━ Steel is my body and fire is my blood(血潮は鉄、心は硝子)

 

 

「シロウ、何を……」

 

 

━━ I have created over the thousand blades(幾度の戦場を越えて不敗)

 

━━ Unaware of loss.(ただの一度の敗走はなく)

 

━━ Nor aware of gain.(ただの一度の勝利もなし)

 

 

 

「衛宮? 何をブツブツ言ってるんだ?」

 

「…………あの坊主、まさか…………」

 

皆は俺が何をしているのかわからないみたいだが、一人だけ。ランサーは俺がやろうとしていることを察したらしい。なぜランサーが予想したのかはわからないが。

 

 

 

━━ With stood pain to create weapons(担い手はここに一人) Waiting for one's arrival(剣の丘で鉄を鍛つ)

 

━━ I have no regrets.This is the only path(ならば、我が生涯に意味は要らず)

 

 

 

俺を中心に魔力がプラズマを放ち、足元に炎がちらつき始める。俺は目を開ける。

ここに来て魔術を知るものは俺のやることを察し、同時に間桐兄妹はそんなことあり得ないという目をしていた。

 

 

 

━━ My whole life was "Unlimited Blade Works"(この体は、無限の剣で出来ていた)

 

 

 

 

 

魔力が迸り、焔が疾走る(はしる)。まず視界を紅く染めたのちに、次に眩い白い光が目の前を覆い尽くす。光が治まり、目の前に一つの世界が広がる。

 

 

阻むもののない蒼穹のもと、見渡す限り無限に広がる草原。そこに突き立つ数えるのも馬鹿馬鹿しくなる程の剣群。そしてその体を横たえる錆び付いた大小様々な歯車。

 

 

 

「…………マジかよ……」

 

「これは…………」

 

「これは……固有結界?」

 

「え? え? ここどこ?」

 

「これは正真正銘、俺の固有結界。俺の心象風景だ」

 

「これが……シロウの心なのですか……?」

 

 

右腕を少し振り、サーヴァント三人の周りの剣を退かす。宙に浮いた剣は、はるか離れた場所に突き刺さった。

 

 

「ここなら周りの被害を気にせずに戦える! 安心して動き回って大丈夫だ! こちらに飛び散る破片の類いは打ち払うから心配しなくていい! 但し……」

 

 

俺は言葉を切り、いくつかの剣を俺たちの周りに浮遊させ、待機させる。

 

 

「三分だ。三分でけりがつけてくれ!それ以上は俺が持たない」

 

「成る程な。周りに被害を出さず、味方サーヴァント達が思うままに戦える場所。ならは固有結界はこれ以上にない最適な場所だ。いいぜ坊主。三分でけりが着かなかったら引いてやらぁ」

 

「私は問題ありません」

 

「私も、シロウの言うことに異存はありません」

 

 

そう言って俺たちは、サーヴァント三人から距離を取った。序でに俺は片腕を振り、無数の剣をセイバーとライダーの背後に滞空させた。切っ先を全てランサーに向けて。

 

 

「僅かながら援護もする。二人は思うままに動いてくれ。出来るだけ俺が合わせる」

 

「「わかりました」」

 

「へっ、実質三対一か。おもしれぇ。さぁて、時間も押してるんだ。始めようぜ」

 

 

ランサーのその一言で、三人とも各々の得物を構えた。そして互いを静かに見据える。それだけでこの世界に濃密な殺気が溢れた。指一つ動かすことも出来ない緊張感がこの場を満たす。

 

 

「んじゃまあ、いきますかねぇッ!!」

 

 

再び三人の英霊がぶつかり合った。

 

 

 

 

 




というわけで今回はここまでです。


親切な方にご助言を頂き、思うように修正が入りました。

そして展開が急すぎたので、少々内容書き換えを行いました。


次回更新は未定ですが、近く必ず更新するので暖かく見守っていてください。


それではまた




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