Fate/stay night ~ For someone's smile ~   作:シエロティエラ

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ひっさびさに更新しました。最後に更新したのは、何と一年前の四月一日。こうも放ったらかしにしておいたことに、我が事ながら非常に驚いております。

では久しぶりのFate、色々拙い部分があるとは思いますが、どうぞごゆるりと。





夜が明けて

 

 

 

 何とかゴーレムを撃退したが、狙撃のために投影を繰り返してしまったがために、魔力を多量に消費してしまった。流石にこの状態で敵が来たらまずいということで、今日は家に帰ることになった。家につくと既にみんな寝静まっており、屋根の上にアーチャーが、庭にはバーサーカーが佇んでいるだけだった。

 

 

「とりあえず俺は部屋に戻るけど、セイバーはどうする?」

 

「サーヴァントは基本睡眠は不要です。アーチャーと共に見張りをしておきます」

 

「そっか。まぁ一応部屋と寝具は準備しておくから、いつでも言ってくれ」

 

 

 そう言い残して俺は風呂の準備をする。寝る前にイリヤと三枝の部屋をそれぞれ確認する。二人ともそれぞれぐっすりと眠っているようで、これなら蔵で魔術鍛錬しても問題ないだろう。行水ではないが急いで風呂を済まし、敷地内の土蔵に向かう。いつも三枝の弟たちが泊まったりするときは鍛錬を仕方なくずらしてやるのだが、今三枝はこちらの事情を知っている。ならこそこそする必要はないだろう。

 

 

「――同調開始」

 

 

 お決まりの言葉をつぶやき、自身の魔術回路のスイッチを入れる。撃鉄を打ち込むイメージが走り、続いて全身に得も言われぬ感覚が張り巡らされる。そして何も持たぬ腕を虚空に伸ばし、何かをつかむ動作をする。

 

 

「――投影開始」

 

 

 虚空に伸ばされた掌に一振りの刀が握られる。この刀は万華鏡がどこかから持ってきた一振りの贋作。鍔はなく代わりに大きなルビーがはめ込まれており、柄には下地に誰かの髪の毛が、そして柄頭には紫のリボンが結び付けられており、とにかく刀としても剣としても異質なものだった。だが不思議と一番自分にしっくりくるものであり、自分とは全く方向の違う剣製であると感じた。

 

 

「……師匠はどこからこれを持ってきたんだろうな」

 

 

 この不思議な刀は今まで解析した宝具や刀剣類と異なり、この刀は基本骨子から何から色々と混ざっていた。統一されたものでないながらも、全てが奇跡のようにかみ合っているため、最高の刀となり得ているのだ。

 しかしいろんな文献や伝承、時間と共に埋もれて一般には知られてない言い伝えなども調べたが、この刀に該当するものは一切なかった。ということはこの世界では作られず、並行世界にて作られた刀ということになる。

 

 その後二、三本ほど同じ刀を投影した後、今度は自己に埋没する。実際には唱えずも、固有結界を展開するための詠唱を心で唱える。次々に魔術回路が活性化し、自身の魂を解析する感覚になる。次第に目の前が白く染められていき、最後に俺は無限の剣が乱立する草原にいた。剣の一本一本は錆が落とされ、真新しい輝きを放っている。中には普通の刀剣には出せない輝きを放っているものもあり、それらは草原の中心にある小高い丘の周囲につき立っている。

 そしてその丘の中心、頂点を割けるように先程投影した刀が刺さっていた。まるで自分がいるのはそこではないと、頂点にふさわしい剣がそこにあるとでも言うように。

 

 

「しかし俺の最高の剣製ってなんだ?」

 

 

 疑問が頭を埋め尽くす。自分、衛宮士郎の基本は、本物の贋作を作り出すことである。勿論自分がないわけではないが、この力事態が贋作を作り出すと言うもの。それがオリジナルを作るとしたら、どのような制約がついて影響が出るかわからない。

 色々考えているうちに、俺の視界はブラックアウトした。

 

 

 

 

 

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「――ん、――――よ、起きて。衛宮君」

 

「ん、んん……さえぐさか?」

 

「おはよう衛宮君。また土蔵で寝ちゃったんだね」

 

「ああ……」

 

 

 どうやらあのまま土蔵で寝てしまっていたらしい。目が覚めると既に朝になっており、私服に着替えた三枝が俺の頭のチックに座り込んでいた。日の高さからして既に九時過ぎ、いくら休日だからと言って、流石に寝すぎたかもしれない。

 俺は起き上がると一つ伸びをし、彼女に挨拶をして朝食を食べに行った。既に姉さんは朝食を済ませているらしく、バーサーカーと共に本堤へと向かったらしい。アーチャーもいないことから、遠坂もこの家から出かけたのか、ただ霊体化しているだけなのだろう。となると、実質俺が最後に起きてきたということになる。流石に迷惑をかけたか。

 

 

「いつも言っている気がするが、何か悪いな。全部任せっきりになって」

 

「大丈夫だよ。衛宮君昨日は疲れてたみたいだし、仕方がないよ。それに私は守ってもらっている立場だから、せめてこういうことぐらいで役に立たないと」

 

 

 フンスと力もうとするかのように両こぶしを握る三枝。その様子に微笑みながら、俺は朝食を食べる箸を進めた。寝起きに合わせてあっさりとした味付けの魚にだし巻き卵、ほうれん草の御浸しに米という組み合わせは、純和風の質素且つ穏やかな感覚で自分を満たす。今日は桜はおらず、三枝だけで準備したのか。

 

 

「御馳走様、うまかったよ」

 

「良かった」

 

 

 朝食の片づけをした後、今日も道場に赴き、二刀流やあらゆる武具の鍛錬をする。武器を投影して使う以上、並み以上に使いこなせるようにならなければならない。そのためこの道場には通常と二刀流用の竹刀と木刀の他に、薙刀や槍、木剣なども置いてあり、果ては斧などの特殊なものも置いてある始末。その全ての鍛錬をするため、時間単位で時が過ぎていく。途中セイバーとの模擬戦を挟みながら、最後は一人で素振りをしていた。

 

 

「……何の用だ」

 

「……別に、ただ長時間籠って何をしているのかとな」

 

「それで? 俺の未熟さ加減を笑いに来たのか?」

 

「さて、な」

 

 

 鍛錬が一区切りついたところで、途中から覗いていた赤い不審者に問いかける。そもそも霊体化して気配を消せる彼らが姿を現している時点でマスター暗殺もクソもないのだが、やはりどうしてもこいつは好きになれない。

 

 

「……そろそろ昼食だ。私はあの少女に頼まれて貴様を呼びに来たにすぎん」

 

「にしては随分と声をかけるのが遅かったな」

 

「……ふん、頼まれたのはつい先ほどだ。貴様の様子を見始めたのはそれよりもっと前だ」

 

 

 互いに憎まれ口をききつつも、俺は道具を片付ける。流石に汗臭いままで昼食の席につくわけにもいかず、風呂の準備をして汗を流しに行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……奴は何なのだ。何もかもが私の時とは違いすぎている。昨晩の刀も、オレはあんな刀見たことがない。貴様は一体……」

 

 

 

 







はい、ここまでです。
なんかもう自分で書いておきながら自分で設定や過去話を読み返す始末、哀しくなりました。
さて、次回は聖杯戦争を存分に絡ませた話にしようと思います。

それでは皆様、またいずれかの小説で。



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