Fate/stay night ~ For someone's smile ~   作:シエロティエラ

15 / 16



アンケートですが、シャルロットさん人気ですね。
まさかですが、母親が社長の妾だったから娘も……なんて理由じゃないですよね(汗)

今回はこちらを更新します。

それではごゆっくりと





襲撃と追想

 

 

 

 

 日は既に暮れ、夜の帳が下ろされた冬木の街に四人はいた。

 昼間に教会に行ったことによって正式に聖杯戦争の開幕が宣言されたため、恐らく殆どの陣営(といっても残るはキャスターとアサシン、ランサー陣営だが)が行動を大なり小なり起こすだろう。

 

 とりあえず手始めに、一家斬殺事件とガス漏れ事件のあった地域周辺を調査することにした。

 斬殺は長物、ガス漏れは昼間調査すると、生命力を吸われていることがわかっている(認識阻害の魔術で病室に入って調べた)。故に、そこら周辺を調べることで微々たるものでも情報を入手する、というのが今回の目的だ。

 

 魔導の知識は慎二が一番持っているから、俺がその知識を元に魔力運用を行う。セイバーとライダーは、サーヴァントの痕跡がないかを探ってもらっている。

 

 

「……衛宮、どうだ?」

 

「……やっぱ日数が経過しすぎているな。残り香が薄くなりすぎていて詳しくはわからない」

 

「そうか。でも……」

 

「間違いないだろう。実行犯は遠隔地から魔力を吸ったみたいだ。唯一救いがあるとすれば、そいつが対象を殺さなかったぐらいか」

 

「成る程ね、可能性としてはキャスター、若しくはその他陣営のマスターの魔術師だろうね」

 

「ああ」

 

 

 ほんの少しだけど、数ある選択肢から幾つかを省くことができた。まだ戦争の初日、敵もあまり派手には行動してこないだろう。

 ランサーのように始まってもないのに仕掛ける奴もいるが、あいつは思い立ったが、っていう人間じゃあなさそうだからな、あいつは例外だろう。

 

 

「シロウ、只今戻りました」

 

「慎二。ガス漏れは兎も角、斬殺は確実にサーヴァントでしょう」

 

「おかえり、そうだったのか」

 

「長物を使うキャスター、それともアサシン……」

 

 

 アサシンクラスで呼ばれるのは、歴代のハサン・サッバーフのうち一人のはず。だがもしかしたら歴史に埋もれているだけで、長物を使う暗殺者も世界にいたのかもしれない。

 

 ……一度図書館とかで歴史書や伝説・説話を読み漁るか。

 

 

「たぶんここにはもう何も残っていないだろうね。一応土とかは持ち帰るけど」

 

「土? 何故ですか慎二?」

 

「ああ、大気じゃなく、土とかに含まれる魔力の残り香の濃薄を調査する、基本的な魔術があるんだよ。僕や衛宮にはできないけど、桜や遠坂ならできると思ってね」

 

「基本的なものではなく、応用的なものを使わないのですか?」

 

 

 まぁその疑問は尤もだろう。

 でも少し違うんだよな、これが。応用的なもの全部が全部、基本的なものに優るとは言えない。

 その説明は、慎二に代わって俺がすることにした。

 

 

「例えば剣術でも基本的に強い人は、自分なりの剣を持っているよな?」

 

「ええ、はい」

 

「でも殆どの人は、基礎の共通の型を学ぶだろう? そしてそこから幅広く発想を広げて自分の剣を持つ。でも中には愚直に基礎を修める人もいる。セイバーがいた時代にも、何人かはそんな人がいたんじゃないか?」

 

「言われてみれば、確かにいました」

 

「そしてときには熟練で多数の技能をもつ人じゃなく、基礎を極めた人が場を好転させたこともあっただろう?」

 

「成る程、大体わかりました」

 

 

 セイバーは得心がついたように頷き、ライダーも納得するような表情を浮かべた。

 

 

「要は適材適所、今回は基礎の部分が必要だから使うのさ。ライダー、悪いけどこのサンプルを桜に持っていく。衛宮達はどうするの?」

 

「俺達はもう少し見回りをする。いいか、セイバー?」

 

「構いません」

 

「わかりました。セイバー、士郎、御武運を」

 

「ええ」

 

 

 慎二とライダーは、音もなくその場から去った。

 もうここには用はない。

 それにこれ以上ここにいれば、確実に『お巡りさんこっちです』コースまっしぐらになるので、俺達は急いでその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

--------------------

 

 

 

 

 

 

 事件のあった場所を離れ、俺達は記念公園にたどり着いた。

 この公園は十年前の火災の中心地、要するに俺が昔住んでいた地域の跡地である。そしてこの地は龍脈が通っていないのに、比較的『濃い』のだ。

 

 

「……シロウ、ここはもしや」

 

「ああ、セイバーの考えている通りだ」

 

「……そうですか」

 

 

 ……感傷に浸る暇はないな。

 俺達は記念公園を早く通りすぎるため、早足で先を急いだ。

 

 

「!! シロウ、伏せて!!」

 

 

 突如セイバーの声が響き、俺は伏せた。同時に俺の頭があった場所を二本の矢が通りすぎた。

 遠方からの狙撃、だが矢の材質が骨であることから、あのいけ好かないあかい不審者のものではないだろう。何にしても狙撃手をどうにかしないことには、この場を切り抜けることはできないだろう。

 

 

「シロウ、狙撃はできますか?」

 

「場所がわかればなんとか」

 

「シロウ、あそこでは?」

 

 

 セイバーが指し示す場所を見ると二百メートルほど先、確かに二体の弓を構えた骸骨がいた。骸骨ということは、ゴーレムの一つか。

 

 

「シロウ、新手です!!」

 

 

 セイバーの声に意識を周りに向けると、そこには剣を構えたゴーレムが多数出現してきた。その数、三十はいるだろう。加えて狙撃のゴーレムも七体に増えている。

 ここはセイバーに近接ゴーレムを任せ、俺は狙撃を受け持つのが得策だろう。

 

 

「セイバー、周りのコイツラは任せた。俺は狙撃手をやる」

 

「わかりました、ではそのように」

 

 

 俺は弓を投影し、狙撃手に狙いを定めて矢をつがえる。コイツラが無限に湧くのか、はたまたこれを倒せば終わりなのか。

 上等だ、魔力が尽きるまで付き合ってやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 衛宮君たちが出掛けたあと、みんなでお茶の間にいて四人の帰りを待っているときだった。

 

 

「……ん~」

 

「? どうしたの、リン?」

 

「いや、前から気になっていたんだけど、三枝さんっていつから士郎と関わりあったのかなって」

 

「あ、私もそれは気になりました。私が先輩と知り合った頃には、既に三枝先輩はいらっしゃいましたし」

 

「私と衛宮君? そうだね~」

 

 

 別に隠すことでもないし、話しても大丈夫かな?

 何かみんな興味津々な顔をしているし。特にアーチャーさんがすごいな、たぶん本人は隠しているのだろうけど。

 確かあれは三年前だったっけ。

 

 

 

 

 

 

--------------------

 

 

 

 

 

 

 私はあのとき、家族全員で新都に出掛けていた。

 丁度弟たちの洋服とかを新調したり、私の教材を買ったりと結構お金を使う予定だったから、銀行に入った。

 待合室の椅子に座って弟たちの面倒を見ながら、私は両親が戻ってくるのを待っていた。

 

 

 そのときだった。

 突然五人ほどの覆面を着けた男の人達が、ピストルを発砲しながら銀行に駆け込んできた。その人達は強盗で、中にいた人達を人質にお金を要求していた。

 

 無論待合室にいた私達も例外ではなく、弟たち含めて全員が一ヶ所に集められ、ピストルを突きつけられた状態で待機させられた。

 正直に言ってとても怖かったけど、私がしっかりしてないと弟たちを余計に怖がらせてしまうと思い、私は彼らを安心させることを優先した。

 

 でも一番幼かった子はやはりというべきか、泣き出してしまった。それによって強盗犯の一人が苛ついたのか、その泣いちゃった弟にピストルを向けた。

 咄嗟に私はその子に覆い被さり、せめて自分が盾になれたらと思いながら目を瞑った。

 

 でも一向に発砲される気配がなく、寧ろ誰かが倒れこむ音がした。

 私は気になって目を開けてそちらを見ると、一人の男の子が目の前にいた。そしてピストルを持っていた男性を蹴り飛ばしていた。

 

 その子はある意味この街で有名な男の子だった。

 赤銅色の髪なんて、日本人ならあまり見ない髪色である。加えて白いメッシュが入っていれば、自ずとこの街では一人の人物に絞られてしまう。

 

 強盗犯を蹴り飛ばしたのは、衛宮士郎君だった。加えて間桐慎二君も他の強盗犯を殴り飛ばしていた。

 強盗犯達は突然の事態に対処できず、人質に近い人達から次々に昏倒させられて行った。お金を出すカウンターの前にいた人達も、彼らによって制圧されていった。

 

 それはあっという間に過ぎた出来事だった。

 まるで流れるような早さで、警察が来るよりも先に二人が犯人達を縛り上げ、抵抗できないように場を納めた。今回の騒動では誰も死傷することなく終わったけど、一歩間違えていれば彼ら、または私達が死んでいたかもしれなかった。

 でも誰一人傷つくこともなく、犯人達も余計な罪が増えることなく終わったのは、紛れもなく衛宮君と間桐君のおかげだった。

 

 ということで後日、私達三枝一家はお礼を言いにまず衛宮君の家に向かった。彼の家を冬木では知らない人は少ないので、迷うことは殆どなく到着した。

 そして衛宮君の在宅を確認して、家族一堂で衛宮君に頭を下げたのがファーストコンタクトだった。

 

 

 

 

 

 

--------------------

 

 

 

 

 

 

 

「━━……というわけなの」

 

 

 私が話終えると、アーチャーさんとバーサーカーさんを除いた皆は、ひどく唖然とした表情を浮かべていた。

 特に桜さんとイリヤさんは、まるでこの場に二人がいれば容赦なく叱りそうな、そんな雰囲気を身に纏っていた。ちょっと怖いかも。

 

 

「……それ何て小説? まるで王道ラブコメじゃない?」

 

「クスクス、兄さんピストル持った人に素手で向かったんですか。人を助けるためとは言え、死んだら元も子もないのに。クスクス」

 

「今まで詳しいことは知らなかったけど、そんな風にあれは鎮圧されたのね。まったく、シロウってばまた自分を軽視して」

 

 

 あれ?

 もしかして、私地雷を踏んじゃった?

 あわわ、どうしよう? もしかしたら衛宮君と間桐君、帰ってきたらお折檻受けるかもしれない、ごめんね?

 

 

「……やはりこの世界でもその在り方は変わらんか、衛宮士郎。ならば貴様が理想に飲まれて溺死する前に、私が引導を渡す」

 

 

 ポツリとアーチャーさんは、小さく呟いた。

 その誰にも聞こえないようなとても小さく、それでもはっきり聞こえた言葉は、何故か私の耳から離れなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 







はい、ここまでです。

オリジナル要素って考えるのに時間がかかりますよね。それも原作が存在しているものは、尚更矛盾点を最小にするために。
まあ考えているときは本当に楽しいのですけどね(笑)

さてさて、次回はどちらを更新しましょうか。
私としてISを先に区切りよくしてハリポタを更新したいのですが、fateの更新を心待ちにしている方々もいらっしゃいますし、どうしようかと。


まぁ少なくとも、ハリポタの更新はもうしばらく先です。


それでは今回はこのへんで。




▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。