Fate/stay night ~ For someone's smile ~ 作:シエロティエラ
さてさて更新です。
今回も短めです。
それではごゆっくりと
道場での彼の鍛練と、昨夜ランサーに言われたことを受け、私はシロウの実力が知りたいと思った。
聞けば本気ではなかったとは言え、ランサーの槍を捌いたとか。
いくら近接戦闘に特化した魔術師とはいえ、サーヴァントの攻撃を凌ぐことは、余程の例外でない限り難しい。
少々強引な形ですが、彼の実力を測ることにしました。
シロウはまず私に一太刀浴びせてきました。ですので、私は試しに自分の扱う竹刀で受けてみました。
なるほど、筋はいいです。
恐らく彼は、どの分野においても、一流に届くことはないだろう。しかしそれを補って余りあるものを有している。
言い方は悪くなってしまうが、戦士としては半端者でしかない。だが、こと戦闘においては、一流となりうる。
私は返す刃で彼に打ち込むが、それを彼はもう一本の竹刀で防いだ。そこからは、私が中心にシロウを攻めていった。
シロウは両の手に持つ竹刀で、私の一太刀一太刀を、右へ左へと受け流していく。その動きはまるで円を描くよう、二本の剣の織り成す、球形の壁のようです。
しかしやはり練度が荒いのか、次第に隙が出来始めました。
私が彼の左から打ち込んだとき、彼の右側に決定的な隙が生じました。
ですので、私はそこに打ち込もうと足を踏み出し……咄嗟に後方に下がりました。
直感で嫌な感覚がしたので後ろに下がると、やはりシロウは反撃してきていました。
隙があった右側には防御の剣を配置し、もう片方の剣でカウンターを放って来ていました。
「これは……」
「俺に才能がないのは、俺自身がよくわかってる。そのぶん、
彼はわざと隙を作っていた。
近接戦闘に特化した魔術師と侮っていた。サーヴァントには届かないが、彼は既に相応の実力と経験をつけている。
彼の戦法は一つ判断を間違えると、自分の命を失う諸刃の剣。ここまでの技量は、実戦でないと積み上げることができない。彼は今までに幾度となく、自分よりも強い者達と戦ってきたのだろう。
だが少しだけ、彼の底が垣間見えた。
彼は防御のこそ神業じみているが、逆に言えば、カウンターを狙わないと、攻撃を当てることは難しい。
「……わかりました。では私ももう少し、ギアを入れましょう」
私も少し力を出すことにし、シロウ目掛けて突進した。
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「す、すみませんシロウ。やり過ぎました」
ついつい力を入れすぎてしまい、私の一太刀がシロウの脳天にクリーンヒットしてしまった。
「い、いや大丈夫だセイバー。俺が未熟だっただけだ」
「いえ、その……私もやり過ぎました」
「そうよ、セイバーにスイッチが入ったのか悪いわ」
「なっ!? イリヤスフィール、訂正してください!! 私は決して戦闘狂では……」
「でも楽しそうだったわよ? 口許に笑みまで浮かべてたし」
「うう……」
「いいんだ姉さん。俺の今の力量がわかってもらえたと思うし、俺は気にしてないから」
結局シロウは気にしてないということで、場が収まったのですが、罪悪感が酷いです。
やがてイリヤスフィールは道場から出ていき、帰ってきた他の人達の出迎えに向かいました。
「……本当に申し訳ありません、シロウ」
「だからいいって。本当に気にするな」
「……はい」
しばらくしてシロウは起き上がり、汗を流しに行った。
成る程、確かにランサーの言う通り、彼は人としてとんでもない領域に到達するだろう。そしてそれを御しきれる精神をも持つ。
ただその道筋は、彼のこれからの選択次第で、よい方向にも悪い方向にも傾きうる。
誰かが側におり、ときどき彼の道を修正する、はたまた彼の重石となるかすれば、彼が荊の道の果てに、破滅を迎えることはないだろう。
もう少し、彼の歩む道を見たい、そう私は思いました。
さて……
「……いつまで隠れているのです」
私は道場の入口近くにいる者に対し、言を投げ掛けました。その者は観念したかのように、姿を現しました。
「……いつから?」
「途中から入ってきたことには気がついていましたよ?」
「なるほど、つまり最初からか」
隠れていた者、赤い外套を纏ったアーチャーはやれやれとばかりに、額に手を当てていました。
「……何を考えていたのですか?」
「別に、あの男の実力が知りたかった。ただそれだけのことだ」
アーチャーはそう言うと、再び霊体化して道場を後にしました。
妙だ。
彼は私とシロウが打ち合っている間、シロウのことを憎しみの篭った目で睨んでいた。まるで親の仇を見るかのような、そんな憎悪の篭った目を。
それにアーチャーを見ていると、何処と無く鍛練中に垣間見た、戦闘者としてのシロウと被る感じがしました。出来れば気のせいであって欲しいですが。
モヤモヤとするものを抱えながら、私は道場を後にしました。
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「セイバーさんこうするんだよ? こう、包み込むような感じで」
「え、ええ……これは……くっ」
「慌てなくても大丈夫ですよ、初めは私もそうでしたから」
時間は過ぎて夕食のあと。
現在何故か私は縁側に座り、ユキカとサクラと共にお握りを作っています。
正直生前から数えて殆ど料理はしたことないので、力加減も過程も全くわからない。
このお握りという基本的なものにさえ、四苦八苦している状況です。
序でに言うと、夕食前にリンとシロウ、イリヤスフィールは教会に行きました。
「慎二、準備できたか?」
「こっちは問題ないよ。ライダーもOKだ」
「了解。んでセイバーは……何してるんだ?」
そうでした。
私とシロウ、シンジとライダーとで夜の見回りに行くのでした。それがお握りを作るのに手間取ってしまい……くっ!!
「あ、衛宮君、間桐君。もうすぐ出掛けるの?」
「あー、うん」
「そうだな」
「ごめんけど少しだけ待っててくれる? セイバーさんは準備してきていいよ、あとは私達がやっとくから」
……すみません、ユキカ。全く戦力にならずに。
私は立ち上がり、台所の流し台に手を洗いに行きました。その間も、彼らの会話が聞こえてきます。
「三枝、これは?」
「衛宮君達はこれから見回りでしょう?」
「ああ、そうだけど」
「兄さん達は結構長く出ていきますよね?」
「まぁそうだね」
「だからお腹が空いたときのためにね。手軽に食べれるように、塩むすびにしたから」
「一人二つずつです」
そういえば、何故シンジが見回りなのでしょう?
彼には悪いですが、シンジは魔術師ではない、一般人とさほど違いはありません。本来なら、ライダーのマスターであるサクラが来た方がいいと思いますが。
そんな疑念を抱きつつ、私は準備を終わらせました。
「お待たせしました」
「おっ、来たか」
「はい、準備万端です」
「お握りは僕が持っとくよ。もし戦闘になったとき、衛宮が持ってたら邪魔になるだろうし」
私を最後にメンバーは揃い、玄関に移動しました。
既に私とライダーは、サーヴァントとしての戦闘服に着替えています。
「セイバー。見回りにおいて戦闘になったとき、慎二以外で迎撃することになっています」
「シンジ以外、ということはシロウもですか?」
「ああ。まぁサーヴァントじゃなく、マスターに対するだけど」
「ではシンジは?」
「慎二は戦略方面を担当してもらう」
「そういうことさ。まぁ経験のある作戦参謀には劣るけど、同年代の中では、追い付かれはしないと自負してる」
「私とあなたでサーヴァントを。シロウが魔術師の相手とシンジの守護。シンジがブレインを務めるのですね? わかりました、異論はありません」
これはなかなかできたメンバーかもしれない、私はそう思いました。
「さて、行ってきます。帰りは遅くなるから、先に寝てていいぞ」
「うん、わかった」
「何か異常があれば、すぐに連絡しなさい」
「この家は私とバーサーカーに任せてね、シロウ!!」
「兄さん、あまり無理はしないでくださいね?」
私達は見送られつつ、聖杯戦争の夜へと繰り出しました。
◆
「……随分と上機嫌だな」
「そうかね?」
「ああ。この10年、お前の顔が綻ばせるのは久しくみていなかったからな。何か気に入ったものでもあったのか?」
「気に入ったもの……ああ確かに、腐れ縁を見つけたな。この上なく、面白いことになりそうな縁が」
「そうか」
「それより、わかっているな?」
「無論、我は出んぞ。精々今回の行く末を見ていくさ。だが、我にとって不愉快なことになれば、そのときは出ていくからな」
はい、ここまでです。
前回後書きで書いていたネタですが、試しに書いてみることにしました。
無論最優先はハリポタ完結なので、そこのところは安心してください。
ただ、場合によっては第2優先事項がこれではなく、新しく書く方になる可能性もあります。
ですがこれも安心してください。
書き始めたからには、完結させるのが私の流儀ですので、これもしっかりと手を抜くことなく、完結させます。
それでは今回はこの辺で