Fate/stay night ~ For someone's smile ~ 作:シエロティエラ
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ではどうぞごゆっくりと
「衛宮君!? 衛宮君!?」
「シロウ!! 私の声が聞こえますか!! シロウ!?」
セイバーと三枝の声が聞こえる。
「兄さん、どうすれば!?」
「桜!! 治癒の魔術は使えるか!?」
「それが……」
「くそっ!! どうすれば!?」
慎二と桜の声も聞こえる。今俺は全身を串刺しにされているのだろう。展開時間を越えることはなかったのに、何故こうなったのか。しかし何とかして俺は死ぬことはないと伝えなければ。
「……セイ…………バー……」
「!? シロウ!!」
「……俺…………は……」
「しゃべらないで下さい士郎。今サクラとシンジが何とかし……!? セイバー!!」
「ええ、新手です!!」
新たなサーヴァントか? それにしても、この地鳴りはいったい……
ドズーンッ!! という音と共に、一人の大男が庭に落ちてきた。
「シロウ!! 無事なの!?」
大男の肩からは、銀髪の少女が降りてきた。あれは、確か本家に行っていた姉のイリヤだ。とすると、この大男は姉の召喚したサーヴァントなのか?
「ッ!! 止まりなさい、
「サクラたちには近づかせません!!」
「そこで倒れて死にそうになってるのは私の弟よ!! あなたたちこそ退きなさい!!」
「その証拠は!!」
しまった、セイバーとライダーに姉さんのことを報告するのを忘れていた。何とかして伝えなければ。それにしても俺の体はどうなっている? 刺されすぎて痛みが麻痺してきたぞ?
「……姉……さん…………」
「シロウ!?」
「なっ!? 待ちなさい!!」
俺が呼ぶと、姉は服が俺の血で汚れることも構わずに、俺の元へと駆け寄ってきた。セイバーがそれを止めようとしたが、慎二と桜によって説得がされている。大男はこちらを静かに見つめ、立っている。
「衛宮君、しっかり!! 包帯、包帯はどこに……」
「ユキカ。あなたは家から桶とタオルを持ってきて。桶にはできればお湯を、なければ水を入れてお願い」
「は、はい!!」
「シンジはユキカの手伝い、サクラは私の手伝いをして。急いで!!」
姉さんが指示を出して場を動かす。俺のことなのに、俺自身が何もできない。何と歯痒いことか。ん? あそこ、塀の上に見えるのは……ッ!!
「……姉さん」
「シロウ、しゃべらないで」
「……塀の……上」
「え? 何?」
「ッ!? ライダー!! 新手です!!」
「またですか!?」
「■■■■■……」
サーヴァント達が臨戦態勢をとり、その時塀の上から二人の赤い人影が降りてきた。冬木のセカンドオーナーである遠坂凛と長身の赤い外套を纏った白髪の男だった。
「!? トオサカの……」
「これはどういうこと? それに何で桜が魔術を使ってるわけ?」
「……仕方がないか。リン!! 手伝って!!」
「え?」
「今は時間がないの!! 私達の情報と宝石二つ、これじゃだめ!?」
「……交渉ってこと?」
「そう!! 受諾するなら急いで手伝って!!」
「……凛、どうする?」
赤い男が遠坂に答えを委ねる。しばらく彼女は考えたのち、姉さんの条件を飲むことにしたらしく、こちらに近づいてきた。そして男に指示を出すと、イリヤにどうすればいいか指示を仰いだ。その間に桶とタオルをもった慎二と三枝が戻り、イリヤの指示で、もう剣が生えないだろう場所を拭いていた。
「手伝うわ。その代わり、きっちり説明しなさいよ? 桜が魔術を使ってるわけもね」
そう言いながら、大きなルビーのついたネックレスを取りだし、ブツブツと何やら呟く。するとそのルビーは淡い光を放ち始め、魔術を使えない者は、その光景に目を奪われていた。だが、俺の意識はそこで途切れた。
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意識が浮上する。目蓋越しに朝日が差し込むのを把握する。どうやら俺は、あのあと朝まで眠ってしまっていたようだ。
目を開ける。
まず目に入ったのは、私物がほとんど無い自室の天井だった。次に目に入ったのは、枕元でタオルを持ったまま、座って眠っている三枝。その隣でこちらを見つめるセイバー。そして最後に目に入ったのは…………部屋の中で苦しそうに正座をする、鉛色の大男の姿だった。
「…………」
「…………」
「……シロウ?」
しばらく俺と大男は見つめあっていた。セイバーが困惑した声をあげた。それを聞くと、大男はゆっくりと立ち上がり、部屋を出ようとして…………ずっこけた。
「~~~~■■■」
どうやら足が痺れてしまったらしい。英霊も足が痺れるのか? まさか霊体しなかったのか? というか今の転ぶ動作で家が揺れたぞ? その時に物凄い音がしたものだから、建物の奥から誰かがドタドタと走ってくる音がする。そして三枝も目を覚ましたみたいだ。
「へ!? なに!? 今の音は? ……あれ? あの男の人どうしたの?」
「シロウ!! 何がって、バーサーカー? あなた何やってるの?」
「■■■……」
「……どうやら足が痺れてしまったみたいです」
「「そ、そうなの」」
しばらく姉さんと三枝は呆然としていたが、俺が体を起こしたと同時にこちら側に帰ってきた。そして枕元へと近寄ってきた。
「シロウ、大丈夫?」
「どこか痛むところはありませんか?」
「衛宮君、大丈夫なの?」
三人が一斉に聞いてくる。三者三様に不安げな目差しをこちらに向けてくる。やはり結構な心配を掛けさせてしまったか。
「ああ。体が動きにくいぐらいでなんともない」
「「本当?」」
「嘘ではないですか?」
「ああ、嘘じゃない」
三人とも俺をしばらく見つめていたが、やがて納得したように俺から少し離れた。三枝はまだ枕元にいたが。それよりも、だ。
「姉さん、セイバー。あの後どうなって「あの後あなたは治療したわ、そしてそのまま一夜明けたのよ」……遠坂か?」
「ええ、おはよう衛宮君。病み上がりで悪いけど、早速話を聞かせてもらえるかしら? いろいろとね」
「わかった。なら居間にいこう。そこなら大人数入れるだろう? 幸い今日は休日だ。登校する必要性が無いぶん、時間はまだある」
「ええ、そうね」
「ならリン、一緒に行きましょう。私達がここにいる理由に関しては、私から話すわ。シロウは着替えてからいらっしゃい」
「ああ。ありがとう、イリヤ姉さん」
そう言うとイリヤと遠坂と大男、バーサーカーのサーヴァントは部屋から出ていった。俺は立ち上がろうとしたが、体に上手く力が入らず、転倒しそうになった。しかし、そこでセイバーと三枝が両脇から支える形で、俺を止めた。
「すまない、二人とも」
「ううん、気にしないで」
「マスターを支えるのはサーヴァントの役目です。ですからお気になさらず」
「ああ、ありがとう」
そして俺は着替えて(その時だけ二人に席を外してもらった)洗面所へ行き、口の中を濯いでこびりついた血を洗い流した後、二人に支えられながら居間に移動した。
居間では既に食事を済ませた面子がお茶を飲んでいた。桜や慎二、ライダーもいる。流しにある食器の数からして、朝食を食べてないのは俺だけだろう。俺はいつもの席まで支えてもらい、そして座った。そして姉さんが遠坂と三枝に説明している間、俺は軽く食事を済ませた。
時々長身の赤い外套を纏った白髪の男が、もう赤い不審者でいいか。どうもこいつとは相容れない。先程から敵意の籠った目を向けてくるものだから落ち着かない。
食事を済ませた後、俺は話に参加した。
「さて、今の衛宮君を見る限り、体が動きにくい以外は特に異常は無いみたいね?」
「ああ、それにこの状態もしばらくすればもとに戻る。今日中に普段通りになるさ。まぁでも、遠坂と姉さんの治療がなければ、明日までこの状態だったかもしれないけど。治療してくれてありがとうな」
「そう、どういたしまして」
一先ず話を始める前に、治療のお礼を遠坂に言った。遠坂も素直にそれを受け取ってくれたみたいだ。
「未熟者が身の程を弁えないからだ」
「なんだと?」
「事実だろう?」
「うるさい。言われなくても自覚してる、この赤い不審者が」
「赤い不審者ではない、アーチャーのサーヴァントだ」
「
「なら貴様は魔術師ではなく、素行不良の学生だな。髪を一部分だけなんぞ染めおってからに、カッコいいとでも思っているのか?」
「地毛だよ。つか若白髪の肌黒なてめえに言われたかねぇよ」
「「ああ? やるか?」」
「はいはい、二人とも喧嘩をしない」
「「ふんっ」」
「さてと、衛宮君。大体のことはイリヤスフィールに聞かせてもらったわ。無論あなたの魔術に関してもね、全てじゃないけど」
遠坂は俺に顔を向けて言った。そしてその目は、『嘘・即・捻切る』と語っていた。
まずい。何がまずいかというと、たまにイリヤ姉さんや桜も同じような目をするんだが、逃げられた試しがない。気のせいか、赤い不審者も冷や汗を顔に浮かべている。
「いろいろと突っ込みたいことはあるんだけど、今は控えるわ。それよりも一番聞きたいことがあるわ」
遠坂は姿勢をただして、俺と姉さん、桜と慎二を見る。
「聖杯が汚染されているってイリヤスフィールから「イリヤでいいわ」……イリヤから聞いたわ」
「なッ!? シロウ、それは本当ですか?」
遠坂の発言にセイバーが食いつく。他のサーヴァントは表情を変えない。とすると、恐らくだが、この場にいる四人のサーヴァントの中で、純粋に聖杯を求めているのはセイバーだけ、というとこになるのか?
「ええ、本当よ」
「……なんということだ」
「爺さん、親父である衛宮切嗣の手記と、アインツベルン現当主、アハトじい様の話によれば、聖杯は確実に汚染されている。まだアインツベルンが妄執に囚われていた頃、第三次聖杯戦争のときに召喚した、最悪のサーヴァントによって」
俺とイリヤ姉さんの返答で、居間は沈黙に包まれた。
はい、ここまでです。
さて、次回の話を書いたのち、ハリポタのほうの二巻内容の執筆を始めようと思います。
ハリポタの二巻が終わる、又は中間のあたりになると、またこちらを進めるという形を取らせていただきます。
それにしても仲の悪いお二方、そして以外にドジなバーサーカー。今後どうなるんでしょう?
では今回はこの辺で
感想お待ちしております