ゲート 魔導自衛官 彼の地にて斯く戦えり   作:庵パン

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ドーモ、庵パンです。
結構暑くなってきたので、いよいよ投稿が遅れてくるかも知れません。
それはそうとブレスクがサービス停止って……
3クール目は無しってことすか!?

ど、どうなんでしょう……
もう劇場版でも良いので続きやってもらいたいものです……。

ついでにタイトルの四文字熟語は捏造です。


第三話 日中飛躍

異世界から来たジエイタイが宿を発ってから四ヶ月。

ロマの森の端に造られたニンジャオンセン郷は、元々この地に湧き出ていた温水と、そこで供される果汁入りの冷えた畜乳とフォル球と呼ばれる武道で人を集め、活気に満ちていた。

サリメルもミリッタの神官なので春を売るのを生業としているのだが、それは専ら宿から離れた森の中の新たに神殿とした小さい小屋の中で行われている。

宿の最高経営者でもあるサリメルは、自身の身体を高い金で売っていて宿の収益を大幅に増額させているのだが、それでも不満はあった。

自身の眷属とした火威や栗林を、みすみすアルヌスへ帰してしまった事である。

子供なら暫く経てば落ち着く麻疹のようなものと放っておくことも出来るが、ジエイタイが帰ってから四ヶ月も経つというのに、今もその時の事を引きずってる。

「フェトラン酒茶を呑ませてもう少しだったのに」

だとか

「くっ、飛龍の邪魔さえなければ」

などと時折ほざくサリメルに、ルフレたるテューレは親切めいたアドバイスをする。

「恐らく、サリメル様が女性である事を前面に出し過ぎたのでは?」

ルフレはサリメルの色気で迫り誰にでも股を開く態度が嫌遠されたのだと指摘する。

「にぁ!?ど、どうすれば良かったんじゃっ?」

「サリメル様はミリッタの神官ですから、神殿までサリメル様を求めに来た者以外には寝屋を共にしなければ良いのではないでしょうか」

「そ、そうか。確かに絵草子を見てもニホンの男は妻を一人しか取っておらんな」

「ですからヒオドシ様の御心を得る為にも、サリメル様御自身からは男を誘うことはせず、客として来る者のみにすれば良いかと」

「うむ、そうじゃな」

サリメルは言うが、その言葉を信じる材料はルフレには無い。心許ない言葉を信用するより、ルフレはもう一押ししてみた。

「サリメル様、でしたら御自分に呪いを掛けてはどうでしょう? サリメル様から男を誘った時にのみ行使されるものを」

「ぅ……そ、そじゃな。これも全てハンゾウのため……」

流石に半ば男絶ちするのは精神に()()ものがあるのか、少し呻きながらもルフレの案を受け入れた。

こうしてウ゛ォーリアバニーの女王の機転によって、ロマの森のニンジャオンセン郷の平和は、取り敢えず守られた。

 

 

*  *                            *  *

 

 

ナッシダと呼ばれる特地版七五三がアルヌスで行われるという話しは、隊の士気に関わるレクリエーション係と言って良い火威の耳にも入って来た。

それに伴って、『日本と特地の文化比較展示』という事で富田とボーゼスの結婚式も行うという話しも、勿論火威が耳にすることだ。

「そういや籍入れてなかったんだな」

ボーゼスが富田と子を成したという事を知ったのは、内戦が起こる前の翡翠宮での事だ。

酸味を欲しがるボーゼスに、従卒の少女だったかヴィフィータだったかは忘れたが、何と無しに指摘ところボーゼスが半ば認めたのである。今思い出しただけでも感慨深い。

そう考えれば妊娠したまま内戦を乗り切り、つい二ヶ月前に子供を産んだボーゼスは凄い女性だと思う。

元々そこいらの女性よりは強いのだろうが、今では更に母は強しという言葉を体言したような女性だ。

「しっかしディアボも困ったモンですねェ」

ロゥリィに剣技の稽古……そして格闘時の体捌(たいさば)きの訓練を終えた火威が、その足でアルヌスの食堂に向かう。

今日から少し前、解りやすい野心家のディアボはロゥリィら三人娘(&ヤオ)と伊丹やロゥリィの神殿に奉る為に来たエムロイの神官の三人と、式を挙げる本人であるボーゼスが居る席で、ナッシダとそれに伴って行われる結婚式と特地派遣隊隊総手で行われる祭の問題を指したのだ。

火威自身、近所の公園の祭くらいに考えていたが、ロゥリィが今現在地上に居る全ての亜神を呼ぼうとしている事に対して、それに伴って発生するであろう費用と押し寄せる人間の数をボーゼス達に言い聞かせたのだ。

それは一組の夫婦には捌き切れるものではなかった。他人の手を借りるにしても常識を持った人間なら躊躇うし、遠慮して避けようと考える。

ディアボはその万難を排して式を成功させようと考えたのだろうが、極めて困難な自体を知ったボーゼスがすっかりやる気を無くしてしまった。

「どうせ困難な式とかを成功させて、今以上の発言権を得ようとか考えてたんでしょうが……」

言いながら、火威はロゥリィの前で夕飯を食う。火威達がロマの森に行ってる間に来たエムロイの神官は三人。火威が見たところ全員女性で二人はヒトだ。そして一人は褐色肌のメーラ種だった。

そのメーラ種女性の視線を感じるようになったのは、ロゥリィに剣技の稽古を受けるようになってからだ。

死神ロゥリィなどと呼ばれる聖下に剣技の稽古を願い出る火威に、恋愛的な意味の熱視線を送って来ているのかと思ったが、違った。ただの殺気だった。

「迂闊だった……。呪いは侮れないわねぇ」

以前までは見えない物は忍者を含めて余り信じない火威だが、特地に来てからは霊魂もあの世も信じるようになった。なにせ、たった今神様と一緒に夕飯を食べてるところだ。

「伊丹二尉ならなんとかしてくれるんじゃないっすかねェ」

最近になって火威も伊丹耀司の人となりが判ってきた。

曰く、高い能力を持ったオタクっぽい上官。そう思い始めたのは戦争時にタンスカから脱出する際に若干予感したのが最初だが、ピニャのゲイ術鍛錬の成果を伊丹に届けるようになってから確信に変わった。

銀座に異世界の軍勢が出現して、偶然近くに居合わせた伊丹二尉が多くの国民の命を救い、二重橋の英雄と呼ばれるようになったのも、同人誌即売会に来てた為だと半ば確信を得られたのである。

偶然居合わせたのは火威も同じであって、こちらも銀座事件で大いに働きはしたが受け取ることが出来たのは五百円だけである。

つまり、伊丹耀司は有能。だから「伊丹なら……伊丹ならきっとなんとかしてくれる!」と思うだ。

それにナッシダと自衛隊祭にボーゼスの結婚式が行われれば、前々から計画し開催日の選定に悩んでいた薔薇騎士団と神子田ら自衛官との合コンを後夜祭にでも出来るのだ。だから火威は、ちょうど良い具合に渡りに船と、自身の任務の都合的にも是非行って欲しいと思うのだ。

「ずいぶんとヨウジィを買ってるのねぇ」

「ちゃっかり手柄立ててるみたいに言われてますけど、実際に二尉の業績は凄いですからね」

その二尉とはピニャのゲイ術の成果を届ける任務が出来てから良く話すようになり、タンスカから脱出するヘリの中での事を話すと、大いに笑われ、「()()()」と思ってた誤解が解けたのだ。

それから少しして、火威は自身の家でヒヨコを飼うようになったのだが……。

まさか異世界に隔離された特地派遣隊で、第一空挺団の選定に関わるような事をする筈が無いと、火威は平静でいれるよう努める。

「あらぁウォルフ、今日はお疲れさまぁ」

ロゥリィが見つけたのは傭兵仲間と夕飯を食べに来たワーウルフの傭兵、ウォルフだ。彼は今日の夕刻、アルヌスの街で開かれた剣技大会の準決勝に出ていたのである。

数週間前からアルヌスでは剣技大会なるものが開かれていた。

表向きでは日本に帰れなくなった自衛隊員のフラストレーションを、良い方向に解消させるためにウレタン棒やらウレタン銃剣やらウレタンソードを使った催しだが、実は勝負を賭けの対象にしていたりする代物である。

そして、この催しを始めたのも賭けの胴元もアルヌス州民自治会……ディアボが代表を務める組織である。

だが自衛官の欲求を解消させるという名目であるから、勝負は何時も終業ラッパ以降に毎日2~3試合……決勝トーナメントでも自衛官が残った場合は中三日空けての試合である。

そして本日夕刻、中三日空けての試合が行われたのだ。

「ども、聖下。それにヒオドシの旦那。旦那が言った通り下手なことしてたら“くっころ”でしたよ」

「そだろ。真面目に相手して勝てたら奇跡の猛者が相手だ。妙な悪戯でもしたら確実に“くっころ”か半“くっころ”だ」

彼らの言う“くっころ”とは、薄い本やサブカルチャーなどで女騎士が敵に捕まった時の台詞ではない。

“栗林”に“殺される”を略した言葉である。

そう、ウォルフは準決勝で栗林を相手に試合したのである。

まさかウレタン製の剣や銃剣を使って試合相手を殺せる筈もないし、相手を殺そうと思って試合する者も居ないが、栗林の試合相手になった者は、その気迫やら気魄、そして試合開始後の膂力を見せつけられ、口々に「クリバヤシに殺されるかと思った」と語ったと言う。

実際、勝負に託けて栗林の爆乳に無礼を働いた者は回し蹴りを喰らって、しばらくの間、()()()()再起不能にされていた。

剣技大会のお陰で日々ツヤテカしている栗林だが、確実に嫁の貰い手は減っている。

そのことが解らない栗林では無いだろうから、彼女の眼鏡に叶う男が現れなければ一生独身でも良いとか思っているのかも知れない。

よもや、未だに富田に横恋慕しているとでも言うのか……。

そうなると、かなりの重症である。だがそんな重症である事態が頭を過ぎるが、火威は頭を振って振り払おうとする。

「?」

「どしたんスか?」

「いや、ちょっとイレギュラーなことが頭を過ぎってな……」

「いれぎゅらあ? それよりヒオドシィ、三日後はちゃんと戦えるんでしょうねぇ?」

「イェア、問題ないっすよ。でもお突き合いの前哨戦ですからね。なるべく長く試合して相手の手の内を見ておこうとも考えてます」

ロゥリィは相手が想い人だからと言って剣が鈍ることの無いよう注意したが、火威はその心配は無用だと答える。

「まぁ勝てるかどうかは解らないんですけど……」

そんな火威の告解を聞き、ロゥリィは少し呆れたような声を出した。

「余り不様に立ち回った挙句に負けると、お突き合いそのものも受けて貰えなくななるかも知れないからぁ。シンヘイキどころかでは無くなる事を良く理解しておいてぇ」

「そ、それは勿論。肝に銘じておきます」

ロゥリィの言ったシンヘイキが何を意味するのか、ウォルフには解らないままその夜は更けていった。

 

 

*  *                            *  *

 

 

次の日の朝方、アルヌスの丘の頂上にほど近く、アルヌス全域を一望できる駐屯地本部の屋上に火威が来ていた。

これからやる事に何の意味があるのか解らないが、準備運動を済ませてから兜跋を着込み背嚢を背負う。

「さて、んじゃやりますが」

一人ごち言ってから、火威は詠唱しはじめて法理を開く。レレイやカトーほど慣れた者なら火威ほど構えて詠唱する必要も無いのだろうが、触媒を使わない魔導展開が初心者レベルの火威には無理な話しだ。

法理を開豁した火威は、高次元から引き出した虚理を己の装備に掛けて空に浮き上がった。

触媒である鉱物の消耗を抑えるため、エルベ藩国で無肢竜相手に戦った時は訓練も出来ずに地面を滑る程度しか出来なかったが、今では地上20mの高さまで浮かび上がり、移動出来るよになった。

兜跋の兜まで装備したのは、目の上に傷がある禿頭のオッサンが飛来してくるのは火威自身が考えても恐怖でしか無いからだ。

そして二階建て、地上7mの駐屯地本部の屋上から飛び上がった火威は、特地の多くの建物よりも高い位置にいる。

課業後の新兵器作成や、ロゥリィとの剣技の稽古の時間を魔導の訓練に充てれば、更に精進するかも知れない。

「フッ、俺ももうすっかり○空術をマスターしてしまったな」

火威は言うが、歴とした魔法であって鶴○流の技ではない。そしてこの魔法を使い、火威は以前にベルナーゴの神殿都市まで鉱物魔法の触媒を買いに行った事がある。

ベルナーゴの神殿で祀られている神のハーディは地下を領域とする神である、その神殿前の多くの店では土産物として他の地域よりも安く鉱物を売っている。そこで火威は朱尖晶という宝石とネモジムという鉱石を幾つか購入したのである。

コンパスと地図を見て、帝都の方角を確認してから猛スピードで空を駆ける。

封土制に従い、フォルマル伯領のイタリカから薔薇騎士団の人員は全員が姿を消して帝都に居る。だから直接帝都まで飛んで行けばよい。途中でちょっとした山脈があるが、現在の火威の位置より高い山があれば走っても良いし、出蔵曰く「熱核ホバー」の魔法で移動しても良い。

閉門前なら空にも空自の戦闘機やヘリなどが飛んでいるのだろうが、今は火威だけの空である。よそ見運転ならぬ、よそ見飛行を気にする必要は無い。

「やっぱ特地にはThinkerだな」

今は懐かしきオークの恐怖に怯え、脱柵した時の事を考えて以前に購入しておいた風力発電機で充電したiP○Dの曲を流す。

すると高次元とリンクした成果を得た火威の耳に、鋼鉄の巨人とリンクした者達の世界が舞台のゲーム音楽が流れた。

音楽を聞きながらも、時速100km程の速さで進む視界の先を注視する。空自の機体やヘリは居なくても野鳥が飛んでくることがあるからだ。

ちなみにこの風力発電機、日本に帰還した施設科の隊員がアルヌス駐屯地の各施設に残して行っている。

一機一機は火威が個人で使う物よりも遥に発電効率が良いが、組織で使うとどうしても発電量が足らず、余り性能を発揮できないでいる。

「アイムシンカ、トゥー、トゥー、トゥー……」

衣嚢な怪物の鳴き声などでなく、火威が聞く曲の歌詞の鼻唄である。

結婚式の話はお流れになり、ナッシダも略式なるかも知れないが自衛隊祭りだけはやって貰わなければならない。

それが火威が、わざわざ往復12時間以上掛けて帝都まで行く理由の一つでもあるのだから。




30日が漫画の更新日でしたが、10巻の発売は何時になるんでしょうねぇ。
やはり12月とかでしょうか。
その頃には魔導自衛官も外伝Ⅲに入っていると思いますが、結構漫画からのネタも頂いてるので、早く読みたいものです。

まぁ……アレです。何が言いたいのかってーと……。
新しいネタがあったらその辺り書き直すかもしr(ry

取り敢えず総撃編と冥門編やってくれよ、と。

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