ゲート 魔導自衛官 彼の地にて斯く戦えり   作:庵パン

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ドーモ、庵パンです。
サブタイは今思い付きました。
まぁ紐があれしてこうして、マグロがあぁなってこうなってっていう感じです。
はい、今ちょっと眠いです。

取り敢えず二十話で一部を終わらせることを目標にしてますが
今回みたいな意味の少ない日常回が続くともう少し伸びるかも知れません。


第十七話 紐とマグロ

竜人女性が示した道を征き、世界の理を乱し元凶となっていた魔導士を討つ事でサガルマタを足掛かりにして帝国や生者による大陸の支配を揺るがそうとした死者の軍勢は消え去った。

だがサガルマタにとっては万事が良かったわけではない。帝国が目論んだ通りに施政の全権を明け渡す事になってしまったのだから。

ヒトという種族に失望したサリメルは、先達のエムロイの使徒から言えばまだまた世界を知らないらしい。

彼女は言う。もっと大陸を見て廻れと。

 

氷雪山脈を発とうとした時、ミリエムは番いとなったエティと共にサガルマタとは別の集落で暮らすと言う。その腕の中には産まれて間もない竜人女性の遺児もいた。

改めて思い起こしてみれば、ミリエムも親離れするには良い頃だ。

そんな事をサリメルは考えただろうか。加工して作った飲料を飲むと乳の出が良くなるディゼの実を餞別に渡し、サリメル達は一路西へ赴いた。

 

数百年振りに学都に来たサリメルは、そこで思いも拠らない顔に会う。

最初はグラス半島で会い、次にシュワルツの森で会って子を成したダークエルフのリトだ。

彼は立派な男に成長し、サリメルも気付かなかったものの、彼は混血のダークエルフを連れた精霊種エルフのサリメルのことを少し見ただけで愛し合った妻だと判り、声を掛けたのである。

懐かしい顔に出会い、その日の夜に早速夜伽を設けたが、驚いたことにリトは今回も一晩でサリメルを孕ませてしまった。

相性なのか何なのか、まるで不明だが、生涯で真の夫はリトしかいないと思ったりもする。

学都で五十年ばかり過ごした時、ベルナーゴ神殿からの招請状がサリメルの元に届く。

同じ頃にリトもシュワルツの森に戻る事になった。学都で学問を続け、博士号を会得した彼自身で満足出来る知識を得たからだ。

森に帰る彼にアリメルと産まれて五十年経ったティトを託し、サリメルはベルナーゴへ向かう。

 

 

 

*  *                            *  *

 

サリメルが着替えてる間に、津金らを誘導するためにロマの森を抜けた火威ら三人の先発隊の三人だったが、突然彼らの前に一頭の赤いドラゴンが舞い降りて来る。

共にエルベ藩国までやってきた飛龍のイフリだ。

「ん、なんスか?」

彼女を仰ぎ見る出蔵は少しばかり危惧した。昨夜からイフリを働かせ過ぎたからだ。報酬の無肢竜(餌)が足りんとでも苦情を言いに来たのかも知れない。

だがイフリからは人間に要求するような刺々しさなど一切感じない。そればかりか火威に顔を寄せて甘えている。甘噛みでもするかのように、優し気に小さく口を開いている。

「ちょっ、待て! お前は甘噛みもガチだから痛ェんだって!」

噛まれては叶わんと退く火威。それを逃がすまいと巨体を寄せるイフリは見るからに危なっかしい。

「くっ、ハンゾウの良さを判る者が増えるとは……!」

気が付けば、何処で手に入れたんだか白いYシャツにダメージジーンズという出で立ちのサリメルが居た。どうしてここが判ったんだろう、と思う所であるが、本任務で一番の想定外であるエロフのことだ。考えても仕方ない。

「どういう事ですっ?」

火威に先んじて栗林が聞くと、サリメルは少しばかり火威への同情と勝利が近付いたことの確信を得ながら答えた。

「恋の“らいばる”が増えたということじゃ! 恋仇が飛龍ならば相手に不足はないわっ!」

千歳越えで賢者のエロフなら、きっと多分飛龍語とか判ると思われる。

「サリさん、イフリはもう旦那居るから……」

「浮気は人間だけの物じゃないんじゃよ!」

そこにイフリの合いの手……もとい唸り声が入る。

「浮気じゃなくて本気とな! この男の卵を産むのはヌシじゃとっ? こ、こいつは手強い!?」

「お前ら爛れ過ぎだろ!」

「だがこの恋をモノするのは妾じゃ! ヌシとは何れ決着付ける必要があるな!」

「止めて! 俺の為に戦うのは止めて! この爛れた恋に勝者は居ないから! どっちも無いから!」

 

*  *                             *  *

 

エルベ藩国が新たな事業を起こすに辺り、障害となっていたニャミニアを斃して今日の任務は終了というワケにはいかない。

出蔵達がエルベ藩国内の街道に配置した将兵に彼の大蛇の討伐を知らせ、回収することも任務に含まれているのだ。

津金と一度合流した後、ロマの森に到着した彼らとと手分けしてエルベ藩国の将兵にニャミニア討伐を知らせ、要塞に送るのも任務に入ってしまっているのだ。

シュワルツの森に近い要塞に徒歩で帰還できる者達は良いが、エギーユ公爵など離れた場所にいる者は些か時間が掛かる。

「持ってきた燃料の半分使ったっぽい?」

というのが、高機動車を運転する出蔵の感想である。

ようやく全員を回収して要塞に送り届け、サリメルの宿に帰った時には日が傾き赤くなっていた。

「しかし火威三尉、役得でしたね。裸のサリメルさんを抱っこなんかしちゃって」

「いやな、栗林。アレはイレギュラーだったんだよ。サリさんはもう亡くなられたと思ってたから……」

しかも胃酸で溶かされたのが服だけとか、どこの成人向けバトル漫画だよと言いたくなる。

「まぁサリメルさんも導師号を持ってる魔導士ですからね。それより先輩、なんで物体浮遊の魔法で行き成り飛べるようになったんですか?」

「身に纏った兜跋だと難しいんだけどさ、外から見てるモンに使えばさっきの通りよ」

「えっ、じゃあ魔法の絨毯とかも?」

「堅い絨毯なら出来そうだなぁ」

栗林の声に答えてやる火威自身、製本の仕事が無くて金欠に陥ったアルペジオに5デナリで教えて貰ってから「魔法の絨毯」を挑戦したが、上下に頭があるテルテル坊主状態になったのである。

「でも助かりましたよ。サリメルさんが普通の服を着るようになってくれて」

津金が来る前に体裁だけでも整えられたと喜ぶ出蔵だが、それはお前が心配することじゃないだろうと火威は言いたい。

津金が来た後、部隊長権限を委譲した火威と先発組みの出蔵と栗林も、正式な隊長である津金とサリメルの会合の場である研究小屋に呼ばれていた。

ちなみにアリメルやティトらダークエルフ達は、水源である泉の水質汚染防止と竜鱗拾いを兼ねてニァミニアの「マグロ拾い」をしてくれている。やはり炎を吐く竜はロクデモナイ化学物質を持っているらしい。

研究小屋の一辺に立ち、少し待っていると奥の部屋からサリメルが現れた。

その姿は昨夜、火威と約束し、少し前まで着ていたような露出度を抑えたハンサムレディな服……ではなくエロフを体言したかのようなマイクロビギニのような服……っていうか只の紐とも言えなくもない何かで豊満な身体をラッピングし、少しばかりピンク色の部分が見えてんぞこのエロフーッ。

……と、言うくらいの服(?)だった。

新しく来た津金も、三角も、清水も、反応は皆同じだ。

「足りてないて無いですよ!」

着るべき服が、である。知能の方は千年分あるはずなので、誰も言ってはいない。

そして誰もがサリメルに注意力が向いているので、火威達三人は静かに退席した。

 

*  *                            *  * 

 

 

「ちょっ、なんでっ 約束したじゃんサリさん!?」

宿舎に引き込んだ火威は頭を抱える。昨夜の彼女との邂逅では、ちょっぴり痛い事もあったが命懸けで戦い、もう駄目かとも思ったが結果的に助かった彼女に少しばかり裏切られたような気がした。

そんな火威に、栗林が口を開く。

「前にクロから聞いたことがあるんでけど……」

クロこと黒川茉理二等陸曹は、既に日本に帰還している看護師資格を持つ女性自衛官だ。栗林曰く、彼女が言うには特地にも子供返り……いわゆる認知症があるらしい。

そこまで聞けば火威にも思い当たることがある。サリメルは以前に千歳超えてると自分で言ってたのだ。

アルヌスに住む精霊種エルフのテュカの母親も病気で亡くなったと聞いたことがある。彼女達…或は彼らは不老というだけで、普通に死ぬし病気にも掛かるのだ。

サリメルは長い間、一人で暮らしていたらしいから、外見が若くとも十分に痴呆に掛かっている可能性は高い。

サリエルは長女夫婦が他国から帰って来ていて、現在は長女が対ニャミニア用の魔法具をロンデルまで買い求めに行っていると言っていたが、その記憶が認知症による幻想である可能性もある。

だがそれだと悲し過ぎるし、実際に娘婿のジョバンニが居るから本当の事だと思いたい。

「ナオ、どうしたの?」

その時、ティトの姉……つまりサリメルの娘のアリメルがロマの森に戻って来ていた。ちなみにティトはニムエの親爺から最後のお叱りを受けてる最中だとか。

サリメルの言う長女が彼女だとすると、悲しい結末になる。

「あぁ、言い難いんだけどさ……」

母の事かとアリメルが聞けば、出蔵は頷かざるを得ない。

「まだ確定的な話じゃないんだけどさ、義母さんがもしかしたら子供が……」

言いかけて、アリメルはその言葉を遮る。

「あんな女の事は言わないでちょうだい!」

普段優しいアリメルだったが、エルベ藩国に行く任務が決定してから刺々しい雰囲気を持つようになった。

ならば任務に志願しなければ良いと思うのが普通なのだが、火威に再三に渡って誘惑し続けるサリメルである。火威が行動出来ない場合は同じ階級の出蔵がサリメルの相手をしなければならない。彼女はそのことを最も恐れていた。

「そ、そんなこと言うよ。もしかしたら子供が……」

「誰!?」

鋭く四人に突き付けられた声のした方を見ると、一人の精霊種エルフの女性が弓に矢を番えて立っている。

「ちょっ、ちょと待て! 怪しい者じゃないから!」

隊員の三人は両手を挙げ、怪しいと言うより悪人顔の火威が敵意が無いことを示す。

そして精霊種エルフの女性に皆の顔を明らかにすると、彼女は弓を降ろしてアリメルに走り寄る。

「アリメルじゃない! どうしたの、こんなところでっ?」

「姉さんっ。帰って来てたの!?」

混血ダークエルフと精霊種エルフという違いはあるが、手を取って懐かしみ合う二人を見ると姉妹仲は良いようだ。

そしてサリメルの言う長女が幻想でなかったことも明らかになり、三人の自衛官は取り敢えず安心を得た。

精霊種エルフの彼女はミリエム・ミリ・カルピスという名で、アリメルやティトと“種”は違うが実の姉弟姉妹だ。

セミロングの金髪は蜂蜜のように美麗で艶めいているし、サリメル程では無いが彼女もまた巨乳と言ってよい豊満な身体の持ち主だった。

年齢はアルヌスのダークエルフのヤオと似たようなもので、三百八歳……人間にしてみれば三十歳八カ月程度。火威から言えば「正に旬!」なお年頃である。

彼女は馬や乗用動物を借りてロンデルまで向かい、魔導の障壁を張れるよう加工した木材を得た後、ベルナーゴ神殿からサリメルの伝手で翼竜を借り、近くまで飛んで来たが、ニャミニアによる異変を感じ取って用心深く森を抜けて来たのだと言う。

「ニャミニアはついさっきコロコロしちゃいましたよ」

「……なにそれ?」

火威からすればちょっとした言葉遊びなのだが、異世界含めて多くの者には言葉ですらない。

判り易く討伐を完了したことを伝えると、彼女は大層感心いていた。

「父さんも母さんも、他種族には侮れない者が居るって言ってたけど、こういうことだったのね」

「まぁ、お陰で参ったことも起こりましたけど」

まさか飛龍に熱烈なラブコールを受けるとは、火威半蔵、思いも寄らない。だが人妻飛龍がヒロインに参入ということは、無いと思いたい。

「そういえば、さっき……子供がどうしたの?」

ミリエムも地獄耳なのか、結構遠くからアリメルと出蔵の会話を聞いていたらしい。

この際だから集音器並みに耳が良いのはエルフ全般と判断した方が良いかも知れない。

「あー……それはですね、ミリエムさん」

出蔵が言い難そうに言葉を紡ぐ。

医者でも無いのに「貴方の母親が認知症かも知れないんです」なんて事を言わなければならないのだから、当然言葉は鈍る。

その時、出蔵の肩に寄り掛かるようにしてアリメルが口を開いた。

「私、このヒトと赤ちゃん作ったんだ。産まれるのはまだ当分先だけどねっ」

トンだサプライズが待っていたが、自分でも驚くほど火威は冷静だった。

一年年下で階級が同じとか、その後輩の昇進のスピードが速いとか、そんなことはどうでも良かった。

特地で嫁を見つけ、妊娠し難い精霊種エルフとダークエルフの混血の女性に、早々子種を仕込んだとか、別にどうでも良い。

ただ「コイツに敬語使うのとか嫌だなぁ……」とか、日本に帰還したら幹部レンジャー課程に推薦してやろうとか思っただけである。

 




人妻…っていうか飛龍をヒロインにする事は無いと思いますが
もう少し倒錯的な18禁ライクな物を書きたいなぁ……とか思ってる次第です。
なので第二部はジゼル猊下のターンでエロいのに挑戦したく思います。
流石に生本番は書きませんが。

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