ゲート 魔導自衛官 彼の地にて斯く戦えり   作:庵パン

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ドーモ、庵パンです。
今回は珍しく火曜投稿です。
ちょっと長めかなぁ……と思いますが、余り進んでません。
サブタイは漫画ネタとピクシブネタです。
まさか本当に亜神認定されるとは……。


第九話 亜神クリバヤシ

賊の潜む洞窟前で、光の精霊魔法で不視化されたアリメルと出蔵が無力化すべき目標の出現を待つ。

賊とはいえ先日まで普通の村人だった者が相手だ。見張りに何人も出すことは無いので、見張りの交代時間を狙って二人を無力化したら騒ぎを起こして賊を引き出す必要がある。

「っちゅーかアリメル、さっきサリメルさんと何話してたの?」

「久しぶりに会ったから挨拶よ」

シュワルツの森に暮らしていたアリメルなら、以前からロマの森に住んでいるというサリメルとは面識が有ってもおかしくない。

出蔵としてはその後にサリメルが何を言ったのか知りたかったが、それよりも気になる事がある。

「あ、そういやさ、ティ……」

一緒に長老達の顔出ししたティトは……そう問おうとした言葉の機先をアリメルが制する。

「賊が二人! ナオ、今!」

言われた出蔵が走り、投げた閃光発音筒は丁度賊の前に落ちて発動する。

一瞬の光と破裂音を立てて発動するも、あまり……というか全然効果は無かった。

やはり昼間に屋外で使っても無意味らしい。

だが閃光発音筒と同時に放たれた爆轟が地を抉り、起こった爆発と砂煙が周囲を包む。

発音筒の空気を裂くような耳を(つんざ)く音と、爆轟の爆発音に驚き、洞窟内部から飛び出して来た賊に向け、何時ぞやのように篭手のみを装備した火威がビームめいた光線とヤクザなスラングを放つ。

「ドコナテッパナラー!」

「って、何撃ってんです先輩ッ!?それ死ぬって!」

いや大丈夫だから、と言いながら、光線めいた光の柱を洞窟から出てくる賊に当てる。

実際に死ぬことは無く、光線に当たっても悲鳴を上げるだけなのだが、その悲鳴の全てがこの世の終わりが来たかの如くに悲痛な物だから、相当痛いらしい。

そんな阿鼻叫喚が根城の中から出てくる犠牲者を次々と呼び、瞬く間にアリメルの眠りの魔法による爆睡者が続出する。

そうしてる間にも、栗林とサリメルとルフレを示す木の枝は洞窟内に侵入していった。洞窟の外に出てきて寝かし付けられた賊の数は、最初に想定していた百人程よりも遥かに多い。

その事実に、火威達は同じ結論を得る。

洞窟から出て来た一人のおっさんの首根っこを掴むと問う。

「おい、どうしたッ? 洞窟ン中で何があった!?」

「ニ…ニァミニアだ!」

蛇だけが通れるような細長い穴を通って、外部から侵入してきたのだと言う。

「クッソ、イレギュラーな…!」

「アリメルはエギーユ公爵呼んで! 賊は縛っておいて!」

出蔵が指示を飛ばし、二人の自衛官は爆睡者とおっさんの身柄をアリメルに預け、栗林達を支援する為に洞窟内に侵入していった。

 

 

*  *                            *  *

 

 

蛇の通路を通って侵入した無肢竜は、現段階では全て小型だった。

見つけると出蔵の64式小銃で捕捉し、火威の爆轟で排除する。数匹が脇を通って洞窟の外まで逃げたが、気にも留めない小さだ。アリメルの精霊魔法や、それこそエルベの兵やレオネ家の私兵の装備でも難無く討伐出来るだろう。

「そういや先輩、さっきのビームめいた光線は……」

「あぁ、ありゃな、爆轟で巻き上げた粉塵を使ったんだよ」

風の精霊魔法を使って砂を高圧で当てる物理的なものだと説明する。

「墓石とかに文字刻むのと同じ手段だよ。○ガ粒子砲と同じ原理だな」

それを聞き、出蔵はメ○粒子砲がかなり威力の抑えられた武器になった気がした。ザ○マシンガンの方が絶対に強い。

そのまま進んで、(ようや)く栗林、サリメル、ルフレ、そして拉致されていたシエラの姿を確認する。

ついでに脳天から銃剣で地に磔にされ、そのまま背開きに捌かれた日本ではまず見ない大蛇の姿も。

「ちょっ……なんで無肢竜が蒲焼の下拵えにされてんのっ?」

しかも関東風! そんな事を言おうとする火威の言葉を遮るようにサリメルが被せてくる。

「凄いぞハンゾウ! クリバヤシ……シノと言ったか? 女子(おなご)ながら瞬く間に無肢竜を斃しよった!」

あぁ、そういやそうですよね。亜神クリバヤシの前ではちょっとした怪異や竜もこうなりますよね……と、悪所のマフィア連中に付けられた女性自衛官の渾名を思い出しながら、シエラやルフレに絶賛されて照れている栗林を見ながら高過ぎる壁に物怖じした。

 

結局のところ、ニァミニア出現は誤報だった。

彼の者によって住んでる村を破壊され、恐怖を植え付けられた賊の一人が、多少は大型の無肢竜が侵入したのを見てニァミニアと叫んだのが事実である。

この洞窟に逃げ隠れる事となった者は、その全てがニァミニアの被害者である。

天敵が出現したともなれば、皆が一様に動揺するのも当然と言える。

その中で洞窟を飛び出す者が出たのだから、洞窟内に居た多くの者が先を争って外に逃げ出し始めた。

結局は痛い目に合って捕まってしまったが。

今では冷静になった賊……というか避難民が、無肢竜が抜けて来た穴を見て、とてもニァミニアが通れる大きさの穴ではない事を証言している。

「帰巣本能でもあるのか知らんけど、近くに無肢竜の巣があるのかな」

二百人を越える賊もどうすンのかな、等と思いながらも、火威は昨夜に示された無肢竜の巣が近い事を思い出す。無肢竜の巣は、洞窟や崖の下などの日が当たらない場所である事が多い。

飛龍のイフリにも無肢竜の巣を発見したら、その上空で待機するようにお願いしてる。

彼女は今、火威達とは別行動だ。

だが巣が近いならば調べなくてはならない。現地協力者(この場合飛龍)が示さないからと言って調べずに、後に異常事態が起きた場合に非難されるのは火威である。

「調べてみよう。今日中に三つ四つは潰しておきたいし」

火威の意見に、出蔵も栗林も異論は無い。多いようにも思えるが、無肢竜の巣は確認されているだけで三十一個もある。

「そういやさ、アリメル」

自衛官が向かうべき方角を確認してる最中、出蔵がハイ・エルフとダークエルフのハーフの恋人に声を掛ける。

「ティトは?」

アリメルと一緒に合流すると思ってた、もう一人のハーフエルフの名を上げる。

するとアリメルは眉間を抑えて答えた。

「シュワルツの森で……引っ掛かってます」

どういうコトなの? 皆思った。エギーユだってそう思う。

 

 

*  *                            *  *

 

 

ティトの心の志は、ロドの森部族の精霊種エルフ、ホドリュー・レイ・マルソーだ。

数十年前、コアンの森に母や姉と訪れたのは父を含む一部のダークエルフがグラス半島まで旅に行っていた頃である。

母が言うには此のホドリューというエルフ、ティトやアリメルとは何の血の繋がりも無いが、一応は叔父のような存在らしい。

実際に母と知り合いらしく、母と会った時は妙な汗を流していた。

だが他の精霊種エルフがティトやアリメルを怪訝そうに見ていても、このホドリューとその娘のエルフだけは、長旅を労わったりと優しくしてくれたものである。

そのホドリューは言っていた。

「女性を口説くために嘘をついたとしても最後まで欺き信じさせることが男の誠意」

えっ、それ、ホントにィ~? と思う所ではあるが、嘘をホントの事にするか、出来るだけ本当の事に近付ける努力をすることには大いに賛成できる。

でも最近判った。嘘をつくまえに結果を出してからの方が楽だって事に。そして彼はホドリューほど器用でも無かった。

 

「ティトはん今日こそイイ返事聞かせてもらいましょうか? ウチの娘 キズモノにしといて、またアルヌスやらロンデルに行くっちゅー事で無くて別の答えをッ」

幼馴染で年上の年頃の恋人のニムエ・ラ・テラスの父親は、我が父のリト・ハー・デルフと共にグラス半島へ旅し、どいうわけか現地のアクアスの女性達の訛りに感化されたダークエルフのオヤジに、ティトは詰問を受けていた。

アクアスの女性達は美しく、彼女たちが喋る訛りのある言葉も可愛げがあるのだろうが、こういうオッサンが使うと威圧感が増す。

「そ、それは勿論、責任を取って娘さんと結婚させて頂いてアルヌスに……」

「そうじゃのうて!! ニムエ孕ましたんならウチの家業継がんかぃ!」

「えぇ!?」

シュワルツの森に帰ってから長老達の元に顔出し、それから早速ニムエとキャッキャウフフな事をしたが、決して同衾等はしていない。

だからニムエを孕ませるような事はないのだが、ニムエのオヤジがグラス半島で身に着けた喋り方に圧倒されてしまっている。

あくまでも特地語で言っている訛りなのだが、日本語に直すとこうなるらしい。特地語の訛りを日本語訳すると、こうなるのである。大事な事なので二度言いました。

ダークエルフの家業に農耕は無い。多少は牧畜もあるが、専ら狩りや傭兵である。そして傭兵家業で使用されるボンテージ鎧を、ティトは敬遠していた。

以前は何の違和感もないボンテージ鎧だったが、アルヌスに行き、イタミというジエイカンから貸してもらった薄い絵草子を読んだり、ジエイタイの戦闘服を貸与されてから、男のボンテージ鎧が絵面的に非常にキツい事に気が付いた。

アリメルも同族の女性達より胸が薄い事に劣等感を抱いていたのか、アルヌスに来て以降、仕事の時は常に戦闘服である。

「か、家業の事については、もう少し考えさせて下さい」

ティトにはそれを言うだけで精一杯だった。

 

 

*  *                            *  *

 

 

無肢竜の巣を探索する前に、自衛官はサリメルの研究小屋近くに停めてある高機動車の荷台から、兜跋と漏斗を含む装備を取り出して、有るかも知れない戦闘に備える。

いや、イフリが一カ所の上空を旋回し続けていたから、一点では確実に戦闘はある。

「最初の内から戦闘があったら、今日中に回るのは無理かも知れませんね」

「あぁ~、そうだな。こりゃ」

栗林の呟きに火威が答える。

二人の言う通り、既に日が傾き掛けている。無肢竜の討伐は日のある内でないと、危険度が一層増す。

「出来て1~2ヶ所か」

考えていたより時間が少なくなってしまった火威は、物質浮遊のの魔法でキャリバーを浮かせる。

 

 

最初の二ヶ所を回って見たところ、発見したのは無肢竜の卵の殻や少し大きめの虫だけだった。

最初に大きめの虫を発見した栗林は、小さく悲鳴を上げて狼狽えていたが、戦闘も無く終わっている。

クリボーも女性らしいところあるなと、そう思いつつ向かった三カ所目はイフリが上空を旋回していた巣である。

草木が生い茂る森林の中、大きく地面が窪んで洞穴を開けている所に巣はあった。

「遅いよ」

とでも言いたげなイフリに「すまんすまん、後で蛇肉あげるから許して」等と許しを請う。

そんな火威の声が聞こえたのか、巣に潜んでいた無肢竜が鎌首を(もた)げ、侵入者の姿を有鱗目の冷たい目で捉えた。

洞穴の中に居る無肢竜は、昨日射殺した者や、昼間に栗林が捌いたのよりも大きい。自衛官が目にした無肢竜の中では一番大きな個体だった。 

「サリメルさん、ニァミニアというのはアレでしょうか?」

「いや、あれでは石造りの塔に寄り掛かれても倒せる身体では無かろう」

だから妾のことはサリメルと呼べと…などと続けようとするエロフを無視して、火威は部下に指示を出した。

「キャリバーじゃこの角度は無理だ。出蔵はバレットで狙撃。栗林は周辺警戒を密にしてくれ。俺は爆轟を使う」

それだけ言うと、火威は射程範囲内まで近付いて行く。それを見ていた無肢竜は鎌首を火威に向ける。

蛇の冷たい眼で見られた火威は(うそぶ)く。「うん、コレめっちゃ爬虫類だわ」という当然の事を。

言いつつも、ジゼルの瞳はもっと可愛げがあったとも記憶していた。

出蔵が対物ライフルで援護射撃するが、ここまで大きくなった無肢竜ともなると簡単に鱗は貫けないでいる。三発目から眼を狙っているが、射撃徽章の甲種も乙種も無い彼には狙撃自体が難しい。

隊内の持ってるヤツにスコープ借りればよかったなぁ……と思う火威は、持ってきた漏斗を撒いて浮かび上がらせる。レレイが皇城やタンスカで使った技の再現である。

「よし、死ねよやァ!」

と言いながら、ファン○ルミサイルアタックしようと考えていたら、無肢竜が炎を吐いてきた。

無肢竜が炎を吐くとは思わなかった火威だが、大蛇めいた無肢竜が口に火を湛えた時点で確りと防御魔法を展開している。

「バーリアー、平気だもんー」等とほざく禿頭のオッサンにげんなりとした二人の自衛官の前で、炎を吐く為に口を開いた無肢竜は、爆轟を口の中に突っ込まれて爆死した。

「よし、計画通り!」

この日、一番の障害を排除した三人の自衛官とサリエル、ルフレ、アリメルは、洞穴内の取り残しを捜索し、対騎剣のような大剣を収穫して任務を終えたのである。




5月1日のイベントでは続編の予告無かったんでしょうかねぇ。
最近はそれが気掛かりです。
どうなるんでしょうか。可能でもJOJO第四部直後は無理でしょうけど……。

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