サブタイ通りです。サブタイ通りの内容です。
そしてジゼル猊下がサブからメインヒロインに昇格です。
やっぱり猊下のヒロイン力は伊達じゃなかった。
でもジゼル猊下のヒロイン回ですが、次回に出たら暫く出なくなります。
そして栗林がヒロインとして登場するのが余りにも遅いので、外伝1からちょくちょく出していきます。
第一話 火威、帰還す
出蔵はアルヌスにて改装された食堂「あさぐも」の中の路地に面した席で昼飯を取っている。
日本の銀行から給料を降ろせなくなったというのに、幹部自衛官である出蔵は自衛隊の食堂ではしっかり金を取られる。
一応、帝国から日本へ支払われる賠償金の中から自衛官には給料が払われるが、それも小遣い程度の額しかない。
階級に応じて多少は色が付けられるものの、自衛隊の食堂とあさぐもで食べる額に大した違いは無い。
「遅ぇなぁ……」
出蔵に聞かせるように呟いたのは、閉門騒動時に手柄を立ててロゥリィ聖下に借金返済を免除してもらったジゼルだ。
彼女はどういう訳だか、借金が帳消しになったにもかかわらず未だにエプロン姿で食堂の仕事をしている。
最近では雑用だけでなく、料理を運んだり、暇な時間を見つけては作ったりもしてるらしい。
詳しい動機は不明だが、聞く話によれば「誰かさん」から「エプロン姿のジゼル猊下が良い」と言われたらしい。
その誰かさんからしてみれば、「普段のジゼル猊下は露出度が高くて目のやり場に困るからエプロン着用時の姿が良い」という意味だったのだが、ジゼルの考えはそこまで至らなかった。
「今日中には帰ってくる予定なんですけどね」
「帰ってきてもいきなり抱き着いてはダメよぉ?」
ジゼルの呟きに答えた出蔵だったが、そこに被せてきたのはロゥリィだった。
「おっ、お姉様!? 流石にそんなことしませぬです……はい」
「でもちょっと気を持たせ過ぎよねぇ。ヨウジィもそうだけどぉ、ヒオドシィもぉ実力では負けないのにぃ」
何の実力か思い返した出蔵は内心で冷汗をかいた。
閉門騒動時の騒ぎから、火威が隊内の女性自衛官に懸想している事を忘れ、もう少しでジゼルを崖から一押しするところだったからだ。
「で、でもその女と一緒になったとしても、オレ…でなくてアタ、ワタイが愛人とかでもっ!」
ナニソノ先輩リア充、とも思う出蔵であったが、ロゥリィは意見を返した。
「ヒオドシィがそれで構わないならねぇ。問題はぁ……」
ずっと二柱の話を聞いてるだけの出蔵に二つの視線が集中する。
亜神とは言え、視線だけで人は殺せないだろうが、二柱の視線に依る圧力はことのほか重たかった。
* * * *
出蔵の知る限り、女好きである火威なら女性を立てつつも「嫁さん二人」とかいう行為はやり兼ねないと判断した。
むろん、それは帝国限定の婚姻関係であって、一応は日本の領地内であるアルヌス周辺や、再開通後の日本では不可能と言える。
配偶者とならず、愛人ないし事実婚状態のパートナーなら可能にも思えるが、日本に帰還した火威が妻の他に愛人を作ってしまうと大いに問題がある。眉をひそめる行為なのは国家公務員なら猶のことで、出世に響く可能性は大いに高い。下手すりゃ諭旨退職ものである。
まぁ、世間が許しても、火威が懸想してる相手とキャッキャウフフの間柄になれたら、その相手が許さない可能性もあるのだが。
ここまで話したところで、出蔵は次のように話を締める。
「まぁ、アルヌスなら滅多にマスコミ来ないし、事実婚くらいはアリかと思うっすけど判んないっすね。いや、ホント判んないっす。ゴメンなさい」
これを聞いたジゼルは頭を抱えて唸っていたし、ロゥリィは苦笑していた。
この日、火威とティトはアルヌスに帰ってこなかった。彼等が白い羽毛のチョコボと帰還し、発見されたのは次の日の早朝に、食堂「あさぐも」の前だったのだ。
* * * *
「まさかヒオドシが金盗まれるとはな」
ジゼルの給仕の傍らで、必死になって食い物を口に運んでいく火威とティト。
彼等が帰還する際に泊まった雑魚寝状態の宿で、火威の懐にあった金とロンデルで収集した情報を書いたノートが盗まれたのだ。
幸い、ティトは同じ情報を書いた羊皮紙を自分の下にして寝ていたので、情報自体は失われてない。ベルナーゴ神殿で買った鉱石魔法に使う紅い鉱石も、火威自身の下にして寝ていたので盗まれずに済んだという。
彼曰く、「すっごく寝難かった」らしい。それでも金が盗まれたことに気付かない程、彼の神経は太いようだ。
「しゃぁねぇな。盗んだヤツ見なかったのかよ?」
「いや、容疑者は判りますよ。特徴的でしたから」
火威とティトが言うには、宿舎の先客の中に
「なんだ、お前のお仲間じゃねぇか」
「失礼な! 猊下、俺は戦争では遠慮なく敵をブチ殺しますが、みみっちぃ盗みなんぞしませんよ」
ジゼルはからかったつもりなのだが、火威は
本来ならジゼルは火威にでも抱き付いて甘えたい思いがあるのだが、レレイが伊丹耀司を攻略する方法を手本に、ミリミリと近付いていく手法を真似た。
かつて自分がテュバ山で二頭の新生龍と共に解体・幽閉され掛けるに至った力を持っている(と思い込んでいる)イタミと同じように、アルヌスに出現してから即座に蟲獣の大群を屠った火威にも似たような攻略法が有効と思い込んでいるのだ。
実際には伊丹と火威はオタクという共通点しかなく、女どころかエロ本にも飢えている火威に抱き付いたなら、その夜にでもアルヌスの森で一晩掛けてしっぽりと丹念に美味しく頂けたであろう。そんなことを知る筈も無いジゼルは、実に惜しい機会を逃していた。
朝の仕事が終わり、エプロンを取ったジゼルは「あさぐも」から丘の下へと向かった。今は借金を拵えてるワケではないので、必死になって働く必要も無いのだ。
向かった先は
ジゼルはこの場所にハーディーの神殿を建立する為、ロゥリィから割譲してもらっている。
最初は整地費用に頭を悩ませたジゼルだったが、連合諸王国軍の兵士らが金品を持ったまま埋葬されたという話をテュカから聞き、再び弔うことを条件に利用できることになっている。
しばらくすると、閉門騒動時にジゼルと翼竜達の活躍で助けられた自衛官の中の仕事が無い暇な者や、アルヌスの住人が手伝いに来た。その中には火威も居る。
彼は遠出から帰った後に、また離れた場所に行く任務が控えているので五日間の休暇を貰っている。
だがこの休暇、日本に帰れるなら有り難いものなのだが、閉門されている上に移動手段が限られている今では厄介なものにしかならない。だから暇潰しに神殿の整地作業の手伝いに来たのである。
そういった自衛官の事情を知らないジゼルは、ときめいてしまった。そのせいか、彼女には火威がこの上無く男前に見えてしまった。いや、実際に男前とは言える面構えだったのだが、色々と残念な条件が揃ってしまってラスボスめいた面構えになっているのだ。
遺体を掘り起こして金品を回収するという作業は、予想通りにSAN値が削られるものだった。完全に骨になっていれば良いが、骨になりかけとかだとゴリゴリとSAN値が削られていく。
翼竜や飛龍の手伝いが無ければ、出蔵あたりは発狂してたかも知れない。
(手持ち無沙汰が無くなったのは良いけど、これはこれで……)
栗林も五日後にエルベ藩国に行く任務が控えているから、今日は休暇の初日である。
火威と出蔵、そして栗林には一つの任務が言い渡されていた。
本来なら幹部自衛官一人と四人の現地協力者という小さな構成の班で行われる任務なのだが、最初にエルベ藩国側から火威が名指しで指名され、それに追い打ちを掛けるように当該地域に無肢竜が出現したという続報が来たのである。
元はそこまで大きな任務ではなかったのだが、出現した無肢竜はエルベ藩国としても無視出来ない程の被害を出している。
そこでエルベ藩は軍人を出し、それに見合う形で自衛隊側からも複数の幹部を含む自衛官を派遣する事になったのだ。
ジゼルが言うには、ドラゴンとは言え無肢竜程度だと特地の戦力では苦戦するらしいが、自衛隊や火威にとっては指先一つで倒せる相手だそうだ。
派遣される自衛官の中に女性自衛官が居るのは、エルベ藩国側で協力を申し出ている賢者が女性だかららしい。
そこで栗林が選出されたのは、エルベ藩国側に指名された火威としては嬉しいところである。
そうして選出された人員は、傭兵の仕事で他の場に居るアリメルを除いては、ジゼルの他はこの場にいる全員だ。
そして本来の任務の内容の始まりは、帝国との戦争中にまで
柳田二等陸尉が炎龍討伐に際してエルベ藩国内王のデュランに、自衛隊の越境許可の承認と新規開発された金銀銅山の半分と、それ以外の全ての地下資源を要求したことがあった。
ガチ保守愛国者の火威から見ても、中々に欲張りっぷりな資源外交だと思うが、門の再開通が成った暁には相手の無知につけ込んだ不平等条約と言われ兼ねない。
狭間陸将も以前から同じように考えていたのか、ゾルザル派の帝国との戦争が終わって門が閉鎖された直後からエルベ藩国の貴族と交渉を開始し、彼の国の官僚らが自身の国内で行える温泉産業を思い立ったのである。
ファルマートに於いては、敢えて「産業化」することは無かったらしいが、エルベ藩国の特定地域に住む者には一般的であった。その中の賢者は以前から温泉に浸かっていたらしいが、客を呼ぶ産業ならファルマート大陸で一般的な硬水ではなく、水質を一段階上げて観光向けにする事が考えられた。
だから火威は任務としてロンデルに住む鉱物の専門家、レレイ・ラ・レレーナの義姉、アルペジオ・エル・レレーナから意見を聴聞し、可能な場合の方法を確かめに行ったのである。
「そういや先輩、ロンデルどうでした?」
遺体を再葬しながら出蔵が尋ねる。
「面白かったよ。色んな種族が居たりしてね。中にはリザードマンっぽい人もいたし、泊まった宿では
火威とティトは、以前に伊丹が泊まった書海亭という宿に、ロゥリィから紹介状を書いてもらって泊まったが、その従業員の中には見た事のない種族がいた。
悪所でもリザードマンとも言える種族は見たがフェアリーは居なかったので、栗林は驚きの声を上げた。
「あとな、研究窟はU○Jみたいで面白かったよ」
「え、何それ……。学術都市じゃー」
耳を疑ったのは栗林だが、続けられる火威の言葉で一応だが合点を得る。
「賢者が隔離されてる研究区からは水とか火とか、色んなモンが出てさぁ」
にもかかわらず、火威とティト滞在中には怪我人も死人も出ていない。
「リンドン派では先ず最初に防御魔法を憶えるからな。多分これのお陰」
言いながら、火威は眉毛一本の半分を贄に幕のような物で身体を覆ってみせた。
「おっ、スゲェ。Iフィー○ドみたいだ」
「………………」
オタク嫌いの栗林が居る事を考え、心の底で謝りながらナニヲイッテンノオマエ、の視線を贄にした出蔵に送る。
「そういやカトー先生が言うにはアルペジオさんがナイスバディ―って聞きましたけど」
「あぁ、その人はな……」
確かにナイスバディ―の美人だったけど、なんか雰囲気が怖かった。長野に嫁いでる姉を思い出した。イケメンエルフの彼氏が居るのに、きっと金で苦労するとあんなになっちゃうだろう……。そう語り終えると今度はティトが口を開いた。
「ヒオドシさん、凄いですよ。ちょうど開かれてた学会で博士号とっちゃったんですから」
「えッ!? 何をどうしてっ?」
出蔵と栗林が声を揃えて問う。如何に魔導の才覚があると言っても、火威はこの世界の初心者。そんな者が三ヶ月滞在しただけでロンデルで高位の称号を得るのだから、金で買ったか持ち前の威圧感で得たんじゃないかと邪推してしまった。
「あ~、そりゃぁな、波動砲も魔導グライダーも精霊を使役しちゃうから……」
水泡で身体を覆い、マグロ並みの速さで水中を泳ぐ方法を立案したのである。本来は学士号目当てだったのだが、有用性と奇抜性が評価されて博士号を貰ったのだ。あっさりと博士号を取得してしまった後は、苦労して同称号を手に入れたアルペジオに対して、もの凄いバツの悪さを感じていたという。
「そ、そりゃ凄ェ……」
そこまで話すと話題が尽きたのか、火威が思い出したバツの悪さが伝染したのか、皆が黙々と作業し始める。
だが、ふと思い出したように出蔵が問いかける。
「そういや黒いチョコボ、どうしたんすか?」
火威は、少し前の事を思い出して答える。
「すごく……美味しかったです」
行き成りですが、外伝ではR-15程度のエロさを書こうかと考えています。
いや、外伝全部でエロさを出すのは不可能かも知れませんが……。
というか進んでエロいのを書こうにも書けませんが、取り敢えず外伝Ⅰはエロさもあります。
で、最初の外伝1は
モンハンとテルマエに現代兵器と魔法が合わさった感じになると思います。