ゲート 魔導自衛官 彼の地にて斯く戦えり   作:庵パン

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ドーモ、庵パンです。
一周して何だかんだ水曜投稿になってしまいました。
で、結局ゲート付近の騒動も書く事にしました。
書かないとワケが判らんので。まぁ書いてもワケが判らないのは庵パンめの構成力とかが無いせいです。

で、終盤はかなり改変あります。
順番とか時刻とかその他諸々が原作とかなり違います。
べ、別に庵パンが原作を把握できてないからじゃないですよ? (;^ν^)

ちなみにサブタイに深い意味は無いです。
なんかカッコイイから付けたんやで。


第三十一話 落陽の朱

昼下がりのアルヌス。

一時は飲食する客で混む店内だが、昼飯時を過ぎると早々と人が捌けていく食堂である。

それは、必要も無いのに二人以上が集まって話していると、どうしても門を閉じる話題に行きついてしまうのを嫌うせいかも知れない。

出蔵やアリメルにとっては、人が少ない方が、イチャイチャしながら飯を食べられるので都合が良いのだ。

今日に至るまでに、出蔵は特地に残留する事を心に決めていた。と言うよりも、ずっとアリメルの傍に居れる事を希望したのだ。

日本の両親にアリメルを紹介したかったし、一度はアリメルの両親に会って話をする為のエルフ語を覚えるべくICレコーダーも購入している。

だが話を聞くと、アリメルの父親は以前に炎龍が出た際に、亡くなっているそうだ。

妖精種エルフの母親は変わったエルフらしく、相当昔にロンデルで導師号を得て、現在はファルマート中を旅して回っているという。

「それならICレコーダーとか要らんかったかなぁ」

などと言いながら、門の方向を見た。

負傷しても日本の中央病院に行かず、態々休暇を取って特地に居るのは、アリメルの傍に居る為と終戦を特地で迎える為であるが、今更ながらも中央病院の院長に許可を貰ってアリメルが病室に泊まれれば、彼女とも離れず、時間が空いた時に自分の両親に紹介出来るのである。その方が、当然の事ながら負った傷の治りも早い。

「そう上手くは行かないかなぁ」

と、思う出蔵であるが、やはりそう上手くは行かなかいようだ。

門に向かう途中で中央病院に入院している伊丹を見舞いに行くというテュカ、富田、栗林を門まで見送ったが、門の銀座側は外国人のデモで騒乱状態と化していた。

これでは中央病院に行くのに、一層負傷しそうだ。

富田と栗林は、富田が立ててしまった死亡フラグを伊丹に引き受けてもらうつもりらしい。出蔵も戦後にアリメルと結婚する予定だが、こちらは未だ二人だけの秘密である。従って公言されていない以上、死亡フラグなど立っていない。

仮に公言する事になっても、火威に押し付ければ良いのだ。あの三尉なら悪魔のようにせせら笑ってフラグを粉砕してくれるだろう。

さておき、騒乱状態の銀座の中には様々な人種や国の人間が多い。その中でも妙に中国人らしき人間が目立つ。

普段から日本に観光に来る国の人間の割合に比例しているのだが、中には門と関係の無い筈の反捕鯨団体なんかも居たりする。しかも団体の中国人には、やたらと肉付きが良く屈強そうな連中が居るのだから、もはや何者かの意図を感じる。

一度、門を閉じる事は決定しているのだが、実利を得れなかった国々の人間であろうか……

……と言うのが出蔵の推理である。

もし彼が、レレイがハーディから門を開く力を授かったと知ってれば、この後の面倒事は回避できたかも知れない。

だが今の時点では、門を再び開く事が出来る人物が居るとしか聞いてないのだ。

今現在、特地でも地球でも天体の配置が変わって見えているという話は出蔵も聞かされている。夜空の星の光は、その多くが何億年もの彼方の恒星の光の外や、太陽系内の惑星が太陽の光を反射しているという事は出蔵の知識にもあるのだ。

それが歪めて見られるというのは、宇宙の何処かが無理に引っ張られているとしか思えないのである。

出蔵の脳裏には、昔、見た憶えのあるお笑い番組で、極太のゴムの端を咥えて引っ張る芸人に、もう一方が放されて顔面を直撃する、所謂ゴムパッチン芸に似たインパクトが、宇宙規模で起こる様を想像した。

門を開いている弊害については、火威も似たようなイメージで考えてるのだが、これは明らかに拙い。拙過ぎるのである。

下手をすりゃ地球や特地世界が、ゴムパッチンの衝撃で公転軸から外れて太陽までコロコロと……などと考えたりもするが、実際にはどうなるかなど誰にも解ったものでは無い。

だから出蔵としても、早いところゾルザルを仕留めて門を一度閉じてしまいたいのである。以前はアリメルと離れ離れになるから決め兼ねていたが、特地残留を決めた今は迷いなど無い。

「おぉ、デクラ、ここにおったか」

考えながら歩いていて、アルヌスの街まで来てしまったところをカトーに話し掛けられた。どうも最近は自然とアルヌスまで足が向くらしい。そこをレレイの師匠、カトー・エル・アルテスタンに話しかけられたのだ。

「ヒオドシはどうしたんじゃ?」

新難民の事での用事かと思ったら、違ったらしい。

「今は任務中ですよ。どうしたンすか?」

「うむ、やはり触媒も使わずに法理を端折って魔法を使うのが不思議で調べてみたんじゃが……」

カトーが言うには、最初は日本にエルフやセイレーン的な種族が居て、火威にはそれらの血が流れているのかと思ったが違う。それが判ってから、自身がコダ村から持ってきた本を調べてみたところ、火威は魔法を使う度に肉体の一部を消費しているかも知れないのだ。

「デクラは、心当たりあるじゃろうか?」

「先輩が激しく消耗してるものって…………ッハ!!?」

言われたら、あっさり気付いてしまったのだ。特地に来て以降、火威が驚異的な速さで失っているものと言ったら一つしかない。

だが出蔵は思う。「中途半端はみっともないし、良いかな」と。

 

 

*  *                            *  *

 

 

火威が野外通信システムでも持ってたら、すぐにでも教えてやれるのだが……そんな事を思う出蔵は、相変わらずアルヌスの街をふらついていた。負傷していなければ筋トレやガンプラを作る事が出来るのだが、それも出来ない。今はアリメルもアルヌスの傭兵部隊として働いているので、出蔵は独りなのである。

もっとも、負傷していなければゾルザル討滅に出向いているのだろう。

最近はアルヌスの街も、全盛期に比べたら活気が失われてきた。閉門が噂されていて、日本との物流も止まるから仕方ないことなのだが、手持ち無沙汰の出蔵にとってみれば、もう少し活気があった方が有り難いのだ。

活気があると言えば門だが、外国人が日本に来てNGOのデモしているところなど見ていて愉快なものではないし、そもそも何処ぞの国の官製デモっぽい。

門をめぐる官製デモなど、自分の国でだけやってくれれば良いのだが、わざわざ日本にまで来てやらかすのだから、相変わらず迷惑千万な国である。

まぁ他にやることも無いのだから、門に赴いてICレコーダーで言質でも取っておこう。そんな事を考えていた出蔵の目に門に向かう自衛官らの姿が入った。

その自衛官の内の一人が出蔵を見つけて言う。

「出蔵三尉! 韋駄天が発令されてしまいましたよ!」

「な、なにィ――!?」

 

 

*  *                            *  *

 

 

第四戦闘団を始めとするゾルザル討伐部隊は、ヘリコプターという物をよく観察し、弱点を有効に見極めた竜騎兵の大群に苦戦を強いられたものの、神子田一等空佐を始めとする四機のファントムの救援によって事無きを得た。その後、暫し神子田による神子田自身とコ・パイの久里浜の命を質にしたテロ交渉の為に健軍が薔薇騎士団の女性騎士方と合コンをセットする羽目になったが、現在は部隊を纏めて再出撃の用意をしている。

ヘリ二機の墜落という損害はあったものの、それでもゾルザル派帝国軍を斃すのには十分な戦力を有しているのだ。

しかも敵はテルタまで行かずとも、各戦闘団が留守中のイタリカを襲撃しに来ているとのこと。すぐに手の届く範囲まで敵の方から来てくれたのだ。

「今すぐにイタリカに向かうぞ! 負傷者救助と後送に必要な数を残して、残りはこれよりイタリカのゾルザルを叩く為に転進する」

健軍の素早い判断は、遅疑逡巡せず即断・行動を旨とする陸上自衛隊としては良い手本のようなものだ。

だが若い情報幕僚は額に浮かぶ汗を拭うと続けた。

「実は先程、『韋駄天』が発令されました」

「な、何!? 『韋駄天』だと!? どうして先にそれを言わない!」

 

 

状況『韋駄天』……それは特地派遣部隊が特地に踏み込む以前に政府によって作られた緊急対処マニュアルに想定された事態の一つで、『門』に何らかの異常、異変がみられたなど、日本と特地の連絡が絶たれる可能性が極めて高くなった場合に発令され、特地に派遣された全隊員は任務を放棄して、可及的速やかに特地からの退去準備をすることとなっていた。

これに引き続いて、『脱兎』が発令されれば、総員退去、つまり特地派遣部隊の全隊員は日本に逃げ戻らなければならない。

 

 

墜落したヘリに搭乗していた相沢は肋骨数本を折る大怪我をしたものの、自力で脱出した上に自衛官、エルベ藩国兵を救助して今に至る。

その相沢は今現在、後送のヘリの中に居る。

このまま日本に帰還することになるのだろうが、ゾルザル派軍がフォルマル伯爵領に侵入したことも、『韋駄天』が発令された事も無線で後送のヘリの中にも知ることとなる。

アルヌスやイタリカを始め、様々な人と友諠を結び、もう一押しでゾルザル軍を撃破出来るのだから、それもせずにこのまま日本に帰還するのは相沢も薄情だと思うのだ。

このまま自衛隊が特地から手を引けば、イタリカや正統政府の人々はゾルザルによって八つ裂きにされてしまうだろう。

ヒューイを脱出した後、相沢は対空警戒していたが、空の中では落下傘をグライダー代わりにした竜甲の鎧を着た男が竜騎兵と交戦していた。

四頭の翼竜を撃墜した彼は、風に流され、子供が手放した風船のように西に流されていってしまったのを見ている。

都合良くイタリカまで流されるとは考え難いが、広域野外通信システムも持っていない彼は『韋駄天』の事など知るはずが無い。

どういう意図があるのかは知らないが、かなり以前から特地残留を希望している彼がイタリカまで向かう事を期待するしかない。




今回は主人公が出ませんでしたが、結構時間を掛けて書いたのに短めですね。
これは……ホント参った参った。最近は一時期のように素早く書けませんやな。
ラストまでは本職さんが書けば一週間も掛からない量なんでしょうが、
庵パンはアニメの二期終了までに本編を終わらせれるかも不明です。今のペースだと無理っぽいですが。というか無理ですね。
ちなみに韋駄天の説明に関しては、原作をそのまま使ってます。

それはそうと!
お気に入り指定遂に200個を突破!
師弟して下さった皆様、本当に有難う御座います!

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