遂に炎龍編が二日後…というか三日後?に迫りましたね。
実は本当なら当小説は炎龍編が始まるまでに終了させる予定でした。
書いてたら思いの外、長くなってしまって……。
で、ゾルザルのキャラデザが大きく変わっててビックリです。
ゾルザルっていうかヤマザルに見えなくもないです。
そしてスイマセン。
書いてる時に思ったのですが、戦闘が殆どありませんでした。
行商人、ディーター・エル・ケルフの荷車の中に存在した品々は種々雑多であった。
戦争中は、様々な品々が至る場所で売れるらしい。
火威はその中の土産物になるような工芸品でも探そうと、木彫りの彫刻を見ていた。
「命を助けて頂いたんですから、緑の人の旦那には安くしますよ」
「いやいや、自衛官なら同然です」
相変わらず型で作ったような返答だとは思ったが、火威は他の言い方を知らない。
「このロゥリィ聖下の立像なんてどうでしょ? ダナンの木を一級の職人集団の頭が職人が手ずから削った一級品ですよ」
ダナンというのは黒檀に似た実の成る植物で、用途も黒檀に似る。
ディータに見せてもらったのは、随分とゴツイ人型の木工品だ。玄人が作った物ではないのは明らかで、もしアルヌスに持ち帰ったら聖下に断罪されかねない。
「うーん、ロゥリィ聖下の立像は以前に買ったからなぁ」
と、言ったが、嘘である。実際にロゥリィ聖下の立像がアルヌスのPXに並んだ事はあったが、2万円という高価格だったのである。
友人にロゥリィファンが居て、自身も少しばかりロゥリィの信徒になりつつある火威は悩んだものの、余り綺麗とは言えない造りの立像に2万円の高き壁は乗り越える勇気はなかった。
しかし、かなり早い段階でロゥリィ聖下の立像を買う者が現れた。火威としては値が崩れるのを待って三~四千円辺りになったら買おうと思ったのだが、自衛隊の中には余程のロゥリィ聖下ファンが居たらしい。
ちなみに出蔵が日本から持ち込んだガン○ラも、特地の人々からは日本の戦神の立像か何かと思われているので、自衛隊の上層や政府ではガ○プラの販売も検討されている。
火威はブキヤのヴァ○アブル.インフィ○ティシリーズの販売を上申したが、パーツが細かく多過ぎるという理由で却下され、火威の自室にあるウェポンセット付きの作り掛けが一点存在するのみである。
「ふむ、どうしようかねぇ」
「火威三尉」
荷車の中の商品を見回して思案する火威の視線が一点に止まるが、そこで火威を呼ぶ声がした。声のした方向を見てみると丸山が居る。
「相沢二尉が三尉を呼んでいます。急いで向かって下さい」
「村長ん家?」
丸山は「はい」と短く明確に答えたが、火威は今現在の自身の面構えを心配した。
「圧迫面接っぽくならねぇかなぁ……」
「それは大丈夫です。早く向かって下さい」
この女は何故こうも現在強面の火威の面構えに太鼓判を押すのだろうか。そう思いながらも村長宅に向かおうとした。
「ふむ、まぁ挨拶は大事。古事記にもそう書いてある」
「三尉、それは色々アウトかと」
「そなの?」
有名なネタにダメ出しを受けながら、火威は大きな茅葺の建物に向かっていった。
* * * *
「……相沢さん、これ死亡フラグなんですけど」
映画では確実に死ぬであろうフラグを立てさせようとする相沢に抗議するが
「火威さんなら大丈夫。そもそも戦国自衛隊に魔法使える隊員いなかったし。絶対大丈夫。火威さんもやる気あるでしょ?」
「まぁその通りなんですけどね」
火威が村長宅に呼ばれて応接室に入った時、部屋には相沢、グレイ、ニコラシカ、ウォルフの他に村長と思しき屈強そうなワーウルフと、虎かジャガーを思わせるキャットピープルの男とその子達らしい三人の子供が居た。
最初は威圧面接に釣り合いを取らせる為に呼ばれたのかと思った火威だが、聞けばキャットピープルの男の家族がイタリカに避難する際、ゾルザル軍に襲われ、妻と娘が拉致されたのだと言う。
その後にフォルマル伯爵領地の亜人に力を貸してもらい、母か娘かは不明だが一人の所在は明らかになっている。近く帝国の砦をそのままゾルザル軍が占拠し、最近になって拉致された一人が連れてこられたのだ。
HMVに積んである完成した竜甲の鎧、
ネーミングは鎧の見た目と漢字の形から探し出して火威本人が付けたものだが、出蔵や一部の自衛官からは『青い巨星』などと呼ばれている。それを纏い、集落で託されたアームブレードを装着した火威は、青い巨星というよりサイバーパンク物の漫画やアニメの登場人物のようであった。
目深な兜の下に普通科とは違う長く赤いマフラーで顔を隠し、肩当は武骨で如何にも堅そうだ。胴体や腕の部分は翡翠宮に向かった時と同様の物で、脚部は曲線を描いた覆いが、竜甲の加工は難しいので、脛や腿、爪先以外は日本製のパーツが使われている。
それに加え、火威の革帯には大型のベルトポーチが付けられている。もとい、ポーチと言うには大きすぎるので帯嚢と言える。
その上で、火威としてはガトリングシールドと熱核ホバーが欲しいが、青い巨星の機体を再現出来るのは電撃を使用した攻撃までに限られる。
ちなみに天部の一つに兜跋毘沙門天がいるが、そちらは全く意識されていない。
現在、自衛隊はゾルザル軍と交戦中にある。そしてゾルザル軍は無辜の民間人にも多くの被害を齎しており、これを救出するのは、自衛隊の活動の一つとして完結出来る。
火威は兜跋に続いて落下傘を引っ張り出す。
「えっ、先輩、それで行くんですか? 敵兵に射かけられません?」
「レクスの砦まで10リーグも離れてたらコレで行く方が早いだろ。浮いてる最中は他の魔法も使えるから、問題なし」
戦闘を活動内容に含んでいない特地戦力調査隊は、他の部隊では考えられない程に装備が少ない。これもゾルザル軍相当に向けて戦力を温存しているためなのだが、其処に火威の戦闘力が過剰という要因が重なっている。
相沢としても、ちょっと纏め過ぎなんじゃないかという気がしなくもない。
これは特地派遣隊の長ではなく、自衛隊の最高指揮官である総理大臣の森田の耳に、特地派遣隊に魔導を憶えた自衛官が居るという話が届いたのが原因だった。
足りない分は現地人協力者を雇うが、それでも総員も装備も足りていないのである。火威がこの事実を知ったら、特殊作戦群設立当初の歩く外交カードのように首相を昏倒させた上で拉致しかねない。
しかもグレイとニコラシカは現地人協力者という立場ですらない。講和が果たせてない以上、 帝国に所属する薔薇騎士団も本来なら未だに敵集団なのである。
今回は任務の性質と自衛隊の立場上、彼等が居た方が良いと判断した狭間が、火威の特地に於ける交遊関係から『帝国の為』という事で、特別に協力してもらっているのである。
ともかく、そんな理由もあって敵地へ向かうのは火威一人なのである。
背嚢に必要な物を入れると、精霊魔法で風を呼び、上昇気流を作りだす。そしてパラシュートを開いて地面を蹴ると、火威の身体は瞬く間に空へ上がっていった。
* * * *
暫く飛び、幾つかの村々を越えた先に目的地は存在した。
フォルマル伯爵領の端に位置するレクスの砦は森の中の小高い山の中にある。帝都やイタリカからもかなり離れていて、戦略的価値は低く思えると火威は推察する。
砦の規模から見て控える敵兵の数も決して多くは無いように思える。グレイの話では砦に駐留出来る総員は50名が限界だという。
だが近頃では
怪異使いという特殊技能持ちでないと使役出来ない物に、鎧を付け、分厚い盾を待たせた大馬鹿者が誰なのか知る由はないが、先に怪異使いをヤッチマえば良いんじゃないか、というのが火威の考えである。
そして、その機会は存外直ぐに来た。
光の精霊魔法で姿を消し、攻め陥すべき砦まで近付くと立哨している複数人の人影が見える。
その中に怪異使いと、明らかに他の者達とサイズが違う影を見た。他の者達の影が、その足の途中くらいまでしかないのだから、某巨大掲示板で出現した八尺様でなければ眼鏡犬しかない。
すぐさま、高圧の風をぶつけて怪異使いを昏倒させると、離れた所で立哨中の敵兵のもとまで堂々と移動する。すると、敵兵達の会話が聞こえてきた。
「チっ……ってらんねぇなぁ。こんな意味の無い砦の守備なんて」
「ボヤくなよ。ここに来るまでに好き放題やってきただろ」
「……違いねぇ。だが周りの村から集めた女などうもイマイチだな。ここに居る猫女はババアだしよ」
「若い方の猫女を取られても仕方ないだろ。タンスカじゃ何時ニホン軍が来るか判らない仕事だしな」
火威は光の精霊の御蔭で堂々と聞く事ができたが、ここに来て漸く眼鏡犬が異変に気付いたようだ。
嗅覚が優れているのか、神殿の大理石柱のような巨大な棍棒を振りかざして一直線に火威が居る方向に向かってくる。
慌てるのは火威が居る事など気付く筈も無いゾルザル軍の二人の兵だ。
「なッ、なんだっ!?」
「怪異使い! おいっ、何をやっている!!」
二人の兵には、自分たちに向かって眼鏡犬が巨大な棍棒を振り上げているように見えた。
火威は素早く駆けだし、眼鏡犬の目前で力一杯地面を蹴った。眼鏡犬も何かを感じ取ったらしく、巨大な棍棒を振り下ろす。すると火威は空中でそれを避け、フェイスガードから露出した口の中に爆轟を封じたアームブレードを突っ込む。
空中で、自身に圧縮した風をぶつけて成せる芸当である。火威本人は『クイックブースト』なぞと内心で命名している。
そうして眼鏡犬の脳幹を貫き、トドメを宣言するように言い放つ。
「爆・発ッ!」
爆音と爆発が同時に起き、眼鏡犬は兜の中に頭部の肉やら骨やらを飛び散らせて斃れた。
腰が抜けたのか、クイックブーストの余波を受けたのか、地面にへたり込む二人の兵に向けて言った。
「さっきの話。kwsk」
ちょっとした言葉遊びをしながらも、二人の敵兵に対して凄んで言う。
後の話では、その表情はエムロイ様か炎龍だったと言う。
* * * *
敵兵の見てる前で眼鏡犬を簡単に倒す事で、砦の制圧はかなり簡単に出来た。
眼鏡犬を斃した上で「欲しい物が二つある。一つは女達。もう一つは貴様らの命だ」と言って相手に絶望を与え、それから「あぁ、やっぱお前らは別に良いや。メンド臭いし」と言ってお得感を与え、更なる情報を引き出すという悪辣な手口で、この後にゾルザル軍が計画しているの動きの一部を得る事が出来た。
ここまで上手く事が運んだのは、この砦の敵兵の中には帝権擁護委員部員が一人も居なかったからだろう。
ゾルザル軍は制圧地域を広げただけで、維持出来る力は無いらしい。砦の総員も最大50名だが、見た限りでは30名と眼鏡犬しか居なかった。
その30名を、捕らえられていた女性達と入れ替えるように牢屋へ放り込む。その女性達は乱暴でも受けてたようで、身体の至る所に傷や痣があるし、妊娠しているのかお腹の大きくなった女性も居る。
ゾルザル軍がこの砦を制圧して、ここに居る女性らを誘拐し始めたのが二十日前にも満たないから、明らかに人妻に類する。
フォルマル伯爵領と聞いてたから亜人の女性が多いのかと思った火威だが、意外にも殆ど……寧ろ最初の救出対象だったキャットピープルの女性以外がヒト種だ。それも美人というワケではないが、宇多 千歳のような純朴系の可愛らしい女性が多い。
彼女達は近隣の村や町から拉致されたのだと言う。
唯一の亜人であるキャットピープルの女性も、ボヤいていた兵士の言葉で「お婆ちゃん」を連想していたが、ムッチリとした肢体の精悍なクロヒョウのような色気を湛えている。
「このビーセンが! 適当なこと言ってんじゃねぇよッ!!」
ボヤいていた兵は牢屋に入れる時に、正拳突きによる三段突きもおまけしておいた。
ド助平半蔵としては、純朴な彼女らと共に一国を築きたいところであるが、常識に沿ってキャットピープルを連れてワーウルフの集落に帰る事にした。
その前に、拉致された女性達を周囲の村々や町に送り返す。そうしてからキャットピープルの女性を連れて、空へ飛び立った。
クロヒョウのキャットピープルは後に、空からは被害に遭った村や町の男達が、鬼の形相で砦に殺到するのが見えたと言う。
文字数見たら結構短いような気がします。
次回もネタはあるので直ぐに書けそうですが、エロゲーに邪魔されないか心配です。
…( ´_ゝ`)ゞ
いや、うん。ごめんなさい。ちゃんと書きます。
で、今回は番外編とDVDに付いてきた短編小説のネタと、pixvで拝見した自衛隊上がりのかーちゃんのネタが含まれています。
そして短編小説のネタが丸山にダメ出しされてました。
そんでオリジナル砦が出て来ましたが、この回だけの登場だと思います。
しかしブレスク、Vitaでも配信されませんかねぇ。
スマホ持って無いんですよ。グーグルのアプリでPCから出来るから良いんですが。
ともかく、今回もご意見等、お気軽に投稿して下さい。
ご感想も頂けると大変嬉しいです!