薹徳愁が一位とか、どんな組織票が働いたのかと.....(( ;゚Д゚))
ちなみにこの庵パンは未登場のヒロインに投票してます。まぁ登場してるんですが。
サブタイの北斗六星ですが、なんか便利なんでまた使うかも知れません。
今回は前半に戦闘しましが、説明がメインの回です。
戦って無いので次回は早く投稿したいですが、ストックが無くなってしまいました。
※1月3日、小説全般に出蔵が二種類居たので「出蔵」に統一。
陣を崩さぬまま走った特地戦力調査隊の車列は、瞬く間に大型の龍を射程に収めた。
『炎龍じゃないがっ……コイツぁ!?』
日下部はハンドルを切りつつ、気押し負けされないように確りと心を保ちながら、先程よりもはっきりと近くで見える龍の顔を見る。その後ろでは大柄な女性自衛官、丸山 貴絵(まるやま きえ)二等陸曹がティトに代わって上部ハッチから頭を出し、ブローニングM2重機関銃、別名キャリバー50で龍の頭を撃ち続ける。
「コイツぁ亜龍か!!」
大帝門に掲げられていた炎龍の首よりも小さな頭だが、それでも人間にとってはゾルザル軍が使役する雑多な怪異より遥に脅威である。
成長途中とは言え、フォルマル邸で見せてもらった博物誌や第一戦闘団が討伐した新生龍よりも明らかに大きい。
発見早々M95対物ライフルの5発の徹甲弾を使い、竜の羽に大穴を開けて飛べなくした火威は64式小銃で龍の頭部を射撃し続けている。
成長途中であろう亜龍の羽は、思いのほか簡単に貫く事が出来た。飛べなくなった龍は荷馬車を追う事も出来ず、移動速度は鈍足を極める。
『全員眼を狙え! 炎に警戒!』
炎龍との戦闘を経験した第三偵察隊の報告書を手本に、指揮を執る相沢が、弾倉を交換して亜龍の眼を撃ち続ける。高速で移動する高機動車からでは高い場所にある亜龍の眼を狙撃する事は不可能と言って良い。眼の付近の頭を狙うしか出来ない。
頼りになるのは110mm個人携帯対戦車弾(LAM)しかないのだが、炎龍討伐後は携行数を減らされている。
『全然効いてないですよ!』
「構うな、当て続けろ! LAMの用意しとけ!」
弱音に似た報告を丸山に突き返しながら、火威は64式小銃を片手で撃ちつつ弓矢を用意した。
移動しながらの爆轟の魔法では狙いが定まらない以上、小さな鏃に封じた爆轟を、弓で飛ばすしかない。
龍にとってはBB弾程度の効果しかない銃撃も、痛点がある以上は無視できない。
亜龍は明らかに嫌がり、顔を背けて動きが止まった。
「丸山っ、よく狙え! 外すなよ!」
言いながら火威が強弓に矢を番える。
「Acue-hno unjhy Osalah-dfi jopo-auml yuml-uya whqolgn!」
瞬く間に詠唱を終えると、風の精霊の助力を得た矢は亜龍の顔目掛けて放たれた。
矢が当たる直前、眼の付近に弾丸が当たった龍が反射的に顎を上げた。爆轟が封じられて風の精霊の力を得て放たれた矢は、亜竜の下顎に当たって爆炎を起こす。
『や、やった……!?』
ティトが全員を代表するように呟く。だが直ぐに爆炎が収まると亜竜は大きな傷を負ったものの健在だ。
その姿は下顎の半分を吹き飛ばされた痛々しいものだが、矢に続けて放たれたLAMの弾頭が龍の喉奥まで飛び込む。
龍の喉奥に着弾した弾頭は、本来なら装甲のような鱗を貫く為のメタルジェットを噴出させて柔らかい生体を貫く。頭蓋を砕かれ、脳を粉砕された亜龍は即死した。
頭の後ろから炎を吹き出すようにして、力尽きた亜龍がゆっくりと倒れ伏した。
* * * *
斯くして亜龍は討伐された。
エルフが中核のパーティで亜龍を討伐した歴史や物語は存在したが、成長途中とは言え、発見早々に龍を手際良く討伐するというのは、特地に於いて過去に類を見ない事だったらしい。
実際には倒した亜龍は相当若く、今までは森や草原で馬や雲鹿を捕食する程度の存在だった。しかし初めて見た荷車を見た彼は、食料としている馬が角張った何かを引いている事に興味を持って追いかけたに過ぎない。
そこに、運悪く自衛隊と遭遇してしまったのである。亜龍にとっての不幸は、その隊の中に対物ライフルを持ったウォーモンガーに類する人間が居たことだった。
そんな事情を知らない人間たちは、相沢らを英雄と誉めそやした。
特に『鉄の逸物』と呼ばれているパンツァーファウストで亜龍にトドメを刺した丸山二曹は、ワーウルフの集落で各段に英雄視されていた。
「炎龍を討伐した魔導士レレイの仲間に緑の人が居たって聞いた事があるが……」
亜龍に追われていた荷馬車の主で、中年のヒト種の男は、そんな事を言いながら相沢に礼を言っている。そして龍に止めを刺した丸山には度重なる礼と帝国式の礼剣という宝剣なぞを奉げている。
一介の行商人が何故、帝国式の礼剣などを持っているのかという疑問を持ったが、荷馬車の主、ディーター・エル・ケルフは以前から帝国とイタリカ、そして様々な集落や街に赴く行商人だという。
その証拠に見せてもらったファルマル家発行の通行所には、彼の顔と名前と戦争以前までの履歴が事細かに書かれていた。
「信用できる商人ってことか」と、呟いた男声は少し幼い気がしたが、誰のものか判らないまま荷馬車と戦力調査隊の車列はワーウルフの集落に入っていった。
集落は調査隊の自衛官らが思っていたよりも大きく立派で、石造りの建物も数軒存在する。集落の中央にある広場からは数本の道が延びており、その中の一番大きな道に繋がっている大きな藁葺きの建物は、一目で集落の有力者の建物だと判った。
此の傭兵を多く輩出するという集落は、方々で多発する有事に人員を送る事で恩恵を受けていた。正に、時代の寵栄を集落ぐるみで受けていたと言って良い。
それだから、帝国の正統政府に協力して安定した時代になることを快く思わない者が少なくないかも知れない。
しかし、其処は「交渉の仕方」次第で何とでもなる話だ。正統政府は内戦で、各段の手柄を挙げた者を帝国貴族として採り上げ、素養があり当人が望むなら元老議員としても採り入れることがあるという。
これは「方針」ではなく「決定」した事なのだが、モルト・ソル・アウグスタスの帝国の今までが今までだっただけに、信用する亜人は少ない。
火威なども、モルトが倒れたのはゾルザルの暴発を誘発する為の故意ではないかとも疑っている。
伊丹二尉らと共にピニャとモルト、そしてついでにモルトの侍従のマルクスを拉致してきたロゥリィ聖下も、高機動車の中で意識を取り戻したモルトの仮病を疑っていた。
現実にはゾルザルの愛玩奴隷のウォーリアバニーのテューレの指示で動いた配下のハリョが、モルトの酒杯に毒を入れたのである。ちなみにハリョとは、この世界に於いて多種族同士で交配し、産まれてきた者達が広義の意味とされる。彼らは習性や寿命の違いによってどちらの親の種族にも受け入れられず、そのまま両親が死んで孤独になった時、他の種族が「門」によって異世界からやってきたのに対し、自分たちは特地で生まれた種族であるという理由から、「自分たちこそ世界を支配する正統な権利を持つ」という劣等感からの優生思想を持つようになった者たちが身を寄せ合って作り上げた集団である。
モルトが実際に意識を取り戻したのは何時かは、本人以外には判らない事なのだが、以上のような事から、少なくない人間に「この狸親父、油断ならねぇ」と思われている。
こんな時だから、火威は以前にも相沢にも権謀術数と縁遠そうなピニャの所在を聞いたりもしたが、第三偵察隊のメンバー数人と東大教授や数人の学術研究者、そして巨乳テレビリポーターとクナップヌイへ調査に行っていると聞いている。どういった調査かはサッパリ判らないが、アルヌスの門が開いてる事で発生する『アポクリフ』とやらの調査だという事は、火威らのような幹部自衛官は聴いていた。
そして、グレイ曰く「ピニャ皇太女殿下は政にすっかり意欲を無くしてしまわれた」という。
戦力調査隊の自衛官からしてみれば、ピニャが権謀術数を好もうが好むまいが『帝国の皇帝』という看板を書き換えてくれた方が、遥かに仕事がし易いのだ。
しかし戦争の相手はゾルザルだ。ピニャの長兄にあたる。
身内同士で殺し合う事は、世界の歴史から見ても珍しい事とは言えない。だが、多くの者は普通の事とは考えていない。これが普通と考えないのが普通である。
火威含む自衛官らも同じように考えていたのだが、ピニャ本人も「普通」に考えていると、途端に面倒な事になってしまう。
「ゾル公を殺るならさっさと出来んだろぉが政治家連中が!」
行き詰った今の状況を考えながら、茅葺き屋根の大きな建物に入る相沢、グレイ、ニコラシカとウォルフを見届けると、火威は道すがら救助した行商人の馬車へ向かった。
その火威の言葉が建物の中まで聞こえてたのか、グレイが相沢に零す。
「ヒオドシ殿の言う事はまるで正統政府の将兵のようですな……」
「あぁ、彼はウッカリしてる所がありますからね。日本と貴国の条約締結が済んでないのを忘れてるんですよ。きっと。……ゾルザル殿下、というか旧殿下への罵りは申し訳無い」
「いやいや、お気になされるな。戦意の高い証です。それにゾルザル殿下は最早仇敵」
「そう言って頂けると有り難い。しかし我が国も講和締結に至るハードルを高く設けてしまったのも事実……」
相沢の言う事はある一点で的を射ていた。
今現在、帝国の財源の多くをゾルザル軍側が管理しており、正統政府は日本との講和で空手形を乱発せざるを得ない状況にある。そして正統政府自前の戦力は乏しく、連合諸王国や亜人の力を借りるか、自衛隊の力を借りる以外に対抗する術は無い。
しかも自衛隊が特地に来た際、帝国はアルヌス奪還に向けた戦力を自衛隊に掃滅され、連合諸王国軍も壊滅した。
自衛隊の戦力を連合諸王国に知らせなかったのはモルトの指示である。その事に気付いた連合諸王国は、此度の内乱に立場を決めかねている。
だから火威はピニャがモルトに代わって帝国の代表となって亜人の信用を少しは回復させ、日本政府にも早く講和を結んでほしいのである。
「む、しかし……皇太女殿下を救助して下さった伊丹殿に説得して頂ければ、或は……」
「いやぁ、それは無理だと思いますよ。伊丹二尉は人に強制するような事はしませんから」
「随分と詳しいですな」
「一時期、彼と同じ部隊にいましたからね」
そんな事を話している二人の前に、この集落の長と思しき男がやって来た。
前半にサクっと戦闘してますが、後半はほぼ説明回です。
ですがイマイチ説明が足りないので次回も少し説明です。
そりゃそうと、お気に入り指定が遂に40を突破!!
当小説をお読み下さり、本当に有難う御座います!!!
それでは、ご意見やご感想等ありましたら、是非とも遠慮なく言って下さい。
何卒、宜しくお願いします。
前に、今回で戦力調査隊の役割終了と言ったが、すまん、ありゃ嘘だった。
でもたぶん次か次の次でちゃんと終わります.... …(;´Д`)