ゲート 魔導自衛官 彼の地にて斯く戦えり   作:庵パン

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…………………………………………(返事がない。サ○バン○ンの自爆でヤムチャしたようだ)


第三十一話 克神

第一次攻撃を終えた後、穿門法によってアルヌスから来る全ての味方の到着を火威は待つ。

凍結帝国中枢に殴り込みを掛けた火威を目標軸に、直に凍結帝国内から侵食していく策である。無論、敵方もそれを黙って見ている筈がない。火威がシンメトリーに配置された要塞を吹き飛ばしたのに伴って、敵方にも大きな動きが見られた。

その敵軍を牽制し封殺しなくてはならない火威は、すべての味方勢が凍結帝内に入り、攻撃部隊の大多数を占める帝国正規軍による編成の確認をしている時、火威はサリメルから信じ難い話を聞く。

「いや、サリさん。筋肉ってそこまで便利なモンじゃ……」

「しかし、ヌシの攻撃魔法が岩肌を砕いたのは事実じゃ」

サリメルから聞いたのは「魔導は筋力で強化される」というものだ。

特地に来てから今日まで、体育会系と魔導は対を成す……どころかの話ではなく、別次元の存在と感じていた火威には受け入れ難い内容である。

しかし、魔法を『現理』に作用させるべく『在理』に触れさせる魂魄は大地のように盤石で丈夫な肉体にこそ宿るという。

…………幕末の剣客に強くて病弱なのがいたが、そういうキャラは駄目なんだろうか?

魔導士の肉体が精神に及ぼす影響は、「理屈」としては解らないでもない。だがサリメルの私見のような気がする。

「さりとて、そろそろパラムスの編成も済む頃だしハンゾウ。先鋒は頼んだぞ」

「厨二病の鹿男って中々斬新な………。ホントでっすか?」

パパラチア・パラ・パラムスと名乗る鹿男は、自身を復讐の神・パラパンという剣呑な神の使徒だと名乗った。

火威の主神・ロゥリィ・マーキュリーに喧嘩を売ったメイベルというズフムートの使徒、そして火威が複数の装備を賜ったモーターに、アルヌスなどの大地に根を座すワレハレン以外の現在確認されている特地の神が山脈に集まったことになる。

サリメル曰く、パラムスは「獣脂が臭いし英雄病が拗れて女好きだから女は隠せ」だそうだ。特地の神は相変わらず個性的だと思う。

個性的というか変態的部類に属すのサリメルが言うと言葉の裏に隠された意味を考えてしまうのだが、鹿男が女性騎士達をエロ目で見るので栗林の貞操が心配になってしまう。

贔屓目になってしまうかも知れないが、見た目にも可愛いらしく、童顔で魅力的な女である。

無事にアルヌスに帰り、引っ越しを終えたらその夜にでも子作りをしようと思う。お互いに子供が欲しいから、互いに種と卵を出し合う需要と供給が一致しているのだ。

「どうしてか……。すぐにでも志乃に会いたい」

心のままに行動したいとの火威の想いは、言葉にのみ現れた。

「…………ハンゾウ。惚気んなよ」

ロマの森から持って来た戦装束に身を包んだサリメルが、浮ついた火威の精神に釘を刺した。正直、エロ衣装に着替えたサリメルに注意されるというのは業腹である。

 

 

*  *  *                      *  *  *

 

サガルマタから81㎜迫撃砲で耕された凍結帝国城門前。

ヒト型の敵性戦力の代わりに現れた蟲人に、自衛官らが遠距離から30秒の征圧射撃を加える。

迫撃砲と弾丸で半ば整地された凍土を敵方戦力は進むが、そこに近接戦に秀でた特地側部隊が衝突した。

「雄のコイツらは飛び度具を持たない! 3週間後には帝都かエムロイの極楽だ! 気合入れて行け!」

今や新鋭隊長であるヴィフィータ・エ・カティが、帝都から派遣されてきた部隊に活を入れて指揮する。そんな中、敵軍の中心に降り立ってハルバードや朱刃の短刀で敵部隊内部から崩壊させていく者がいる。

使徒の務めということで、一時的にアルヌスから支援に来たロゥリィ・マーキュリーとサリメルだ。

「やるようになったじゃないぃ?」

とは暗黒色の唇で蟲人を叩きのめすロゥリィだが、ハルバードに巻き込まれないか心配になってサリメルは若干戦い難そうだ。

このサリメル。たまに自分が神だということを忘れてる節がある。仮に巻き込まれても死なないのに。

しかし何時までロゥリィのハルバードを恐れて戦う必要はなかった。接近戦で無双を誇るロゥリィが、そのまま蟲人の集団を貫くように刺さってサリメルから距離を置いてしまったからだ。

戦線の一部が突出しても「余りいいことないんじゃないかなぁ」くらいに考えるサリメルも頑張らなくてはならない。

「こ、これは……!“にんじゃそおる”がたぎるっ!」

言ったかと思うと、サリメルも本気を出すしかなかった。

「イヤー!」

朱刃が蟲人の頚を抉り、飛ばし、爆散させる。

「グワー!」

蟲人(の?)発声気管から出された断末魔めいた悲鳴が上がる。

「イヤー!」

「グワー!」

「イヤー!」

「グワー!」

「イヤー!」「イヤー!」「イヤー!」

「グワー!」「グワー!」「グワー!」

といった感じに、呪いの類いかノリの類いか、サリメルから半径3メートルは○オサアタマと成り果てていた。

帝国への一時支援ということで来た(賠償に含まれる弾薬費や人件費は増す)第一戦闘団の団長、加茂や副官の柘植は遠距離から双眼鏡で見ててたが、戦闘中ということで言葉にはせずとも同じ感想を抱いた。

――本当にあんなのいたんだな――

以前にも説明したが、火威らがシュワルツの森から帰還してからエルベ藩国に住む変態エルフ出身の亜神の噂は、若い隊員を中心にアルヌスで都市伝説化していたしていたのである。

 

*  *                            *  *

 

氷土の下をグランハムや火威を始め、一時協力者のリッテラやとノスリの集団が進む。

地上にいたらロゥリィやサリメルの活躍を見たユエルが焦燥するのだろうが、部隊の先頭でグランハムと戦列を組むヒト種の戦士の一人が彼だ。

眷属と眷主の関係が、特別な事情でもない限り離れないものなら火威の今までの振る舞いは特地の神々の間で「良し」とされていたのか心配になる。

ロゼナ・クランツを倒した後、サリメルがアルヌスに居を設けるかも知れないからだ。

「まぁ、今まで大丈夫だったんだし……」

そんなようなことを考えていると、右方から火威を呼ぶ声が聞こえてくる。

「どうした!」

可能であれば無線機を使いたいのだがノスリが使えない。時間をかけて教えれば使えるようになるかも知れないが、そんな時間はなかった。

火威が直接行くしかないのだ。

「あいーたた。ダーに噛まれたなぁん」

声のした場所に辿り着くと、リスケとか言う奴が頭からダーに噛まれていた。以前にサリメルの爆発に巻き込まれて指を吹き飛されたヤツだ。ショタがゴツイ指を生やして実にシュールだったものである。

ノスリは知能はともかく身体機能は鍛え上げた戦士に匹敵する。ダーなら火威に報告するまでもなく排除できるのだが……。

「リドラ!」

そう言って来たのはリッテラだ。

キャットピーブルと思われたリッテラがダーに近付くと、鼻頭に皺を寄せてリスケを噛んでた凶暴な獣の顔か緩んだ。

「兄ちゃん!」

栗林の報告ではダーというのは短い言葉なら喋る。喋るのだが、兄弟のいるダーというのは初めて見た。そしてリドラと呼ばれたダーはリッテラに向けて喋ったのだ。

 

*  *  *                      *  *  *

 

自衛官と特地戦力の連携を繰り返し、氷の城の目前まで進軍したサリメルとロゥリィである。

氷の都は無人ながら、薔薇騎士団の女性達が心揺さぶられる彫像で固められていた。

「うっわ、そういやロゼナクランツってそういうのだった……」

と、過去の記憶を頼りに思い返すサリメルとロゥリィであるが、薔薇騎士団の女性達も厳しい戦闘訓練を潜り抜けてきた女性達である。心は揺さぶられるものの「アルヌスの門が再び拓けば再び」との希望を頼りに一切手を付けずに進軍しながら、サリメルの魔法や自衛隊の兵器などで爆破してきた。

ここはロゼナ・クランツの本拠地。何処に魔導式の罠が張られているか解らない。進むべき城庭を発破して進軍するが、そこの円状になった閲兵場のようは場所には、氷雪山脈に来る直前までサリメルが読んでいた『恥女でも解るC言語』なる本が置かれていた。

それを見つけ、サリメルは酷く不機嫌そうに端麗な顔を歪める。

「彼奴らめ、どういう魔導か知らぬが妾を愚弄しよって」

本に向けて最大限まで詠唱し、増やした円錐光輪から爆轟を放った。

先程から精神魔法でサリメルやロゥリィ、そして隊の者達が一番目か二番目に欲しいものを見せてくれてる敵だが、その狡さ気に入らない。

万が一、それが所望する当人にとってアレな代物だとしたら精神的な処刑である。

そして実際に貰える訳じゃないから、二重の苦しみなのである。他者の心を弄ぶことを良しとしないサリメルは全力の爆轟を放ったのだ。

ところが、魔法を放ったサリメルの後方から飛んで来た光弾にサリメルは吹き飛ばされてしまったのである。




三十一話が滅茶苦茶遅れました……。
しかも今回、以前よりだいぶ短めです。
そして相変わらず栗林が目立ちません………。

なので、今回は栗林のターン辞めます。4部を栗林のターンにします。
3部は栗林(筋肉)か栗林と筋肉のターンに置き換えます。
デレ感が出るのは……まぁ出るとしたら4部です。

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