ゲート 魔導自衛官 彼の地にて斯く戦えり   作:庵パン

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書き溜めてましたので、意外と直ぐに投稿できました。
でも次からはホントに少し時間が掛かるかも知れません。いや、加筆する所があるので……(汗)

ちなみに今回のタイトルは∀ガ○ダムのBGMから頂きました。
本来は壮大なものですが、ここでは文の内容が薄い上に重みがありませんね。
状況説明の手伝いってことで……。(汗)

あと、あらすじが凄く簡潔過ぎたので加筆しておきました。

*12月7日、∀○ンダムのBGMから頂いたタイトルですが、正しくは「軍靴の記憶」でした。
でもこちらでは、このままの方がしっくり来るので変更はしないでおきます。


第十話 軍靴の音

帰還命令が出たらどうするか……。その夜はこの対策を考えるので頭が一杯だ。相沢にアルヌスの食堂で夕食に誘われたが、味わって食べる事も出来ない。マ・ヌガ肉6本と白米大盛を食べ、寝る支度をして布団に潜り込んでも、火威の脳内議題は変わる事が無い。

いっそのこと脱走してイタリカにでも逃げ込むべきか。

距離があるが、平坦な道だから最低限の荷物なら、レンジャー訓練を突破した火威なのだから問題は無い。道の途中で現れるかも知れない盗賊等も、今まで培った自衛官の技能と魔法を駆使すれば突破出来るだろう。

問題となるのは特地での生活である。どうやって食べていくかが最大の懸念事項だ。

屯田兵よろしく自分で田畑を開墾していくのは、リスクが高過ぎる。食べ物が少ない状況から土地を拓くような真似をしたら間違いなく飢えて死ぬ。イタリカの近くで多くは無い蓄えを少しずつ削って開墾しても、食えるようになるまで何年掛かるか判らない。街や村で暮らすとしても同じことだ。そもそも農業の知識など、赤土を畜鶏の排泄物で黒土に変えることくらいしか知らない。

そうなると、餅は餅屋という事になる。

イタリカでは先代の当主、コルト・フォルマルが急死してから、現代表であるミュイの二人の姉が、嫁ぎ先の兵力を率いて戻ったものの、両家の当主に帝国から招集が掛かり、異世界の出兵先で戦死したらしいから両家ともフォルマル伯領どころではなくなって兵を引き上げ、フォルマル伯家の遺臣のみで守ってきた。

今はミュイの後見人となったピニャ・コ・ラーダのもと、交易都市として復興しているイタリカであるが、遺臣のみで領地を守っている時は酷く治安が乱れていたのだ。真っ当な家臣が居る以上に己の欲望を第一に考える家臣が居て、イタリカには不正が蔓延り、普通の盗賊、或は連合諸王国の敗残兵から身を変えた盗賊団に襲われる事となった。

元連合諸王国の盗賊団は自衛隊とロゥリィ・マーキュリーが鎮圧したから今は居ない。と言うか火威も鎮圧に行った一人なので知っている。イタリカの治安もピニャの薔薇騎士団によって保たれている。

だが火威は考える。イタリカの治安を維持する人手というものは、多少多くて問題無いのではないかと。また、自衛隊という戦闘集団に所属し、ついでに魔法も使えるのであれば、中々良い条件で雇って貰えるのではないか、と。

それに偶に悪所に行けば、薄毛と共に遺伝した…現在ではただの排泄器官に文字通り成り下がっている自前のドラゴン殺しを、有効活用できるのでは無いかと。よし、そうしよう。

「フヘヘ……」

下世話な想像に思わず声が漏れる。

「寝てる最中に五月蠅いですよ」

オバケコントの思い出し笑いかと、部屋の奥のベッドで寝ている相沢に抗議される。

そうして、その日は静かに終わりを迎えていった。

 

 

 *  *  *                 *  *  * 

 

 

だが次の日の朝早くに飛び込んできた知らせは帰還命令ではなかった。

帝国皇帝、モルト・ソル・アウグスタスが倒れたというのだ。

思いも寄らぬ……いや、少しは予感したかも知れない。だが実際に起きてしまうと誰にとっても、そう、ゾルザル以外の誰もの不幸になりえる出来事に身構えた。

いや、この出来事に小さくない安堵感を得た者が此処にも居る。

火威 半蔵だ。

「悪所のヤツらは精鋭揃いだし、俺の見立てが正しければ特戦群も居るから」

戦争の継続で半ば頭が冴え渡る。人としても自衛官としてもどうかと思うのだが、当分は日本に帰らないで済むという事実は、どんな神の言葉より彼の心に安寧を齎した。

 

「三尉。火威三尉、悪所への荷物は……」

「あぁ、魔法を使うから2トンくらい大丈夫じゃねぇかなあ」

「りょ、了解……」

皇帝モルトが倒れてから数日、城門は閉じ、帝都の外部からの物流は止まっていた。皇太子となったゾルザルが帝国の執務一切を掌握して、その“忠実”な臣下を配すると、宰相までも独自に任命し、戒厳令が敷かれたから食料一切の供給は滞る。

本来なら軽装で機動力の高い空挺隊員だが、今回は悪所の拠点への補給が任務なので出来る限り多くの荷を背負いたい。だが安全の為、携帯していく(もはや携帯とは言える量ではないが)食料は150人分までとした。それだけでは無く、壁を乗り越える為の鈎爪付きのロープまでもが荷物に入っている。

UH-1Jの傍ら、装備を整えていく。火威は戦闘服の上に翼竜の鱗で出来た肩当と肘当て、そして篭手と胸当てを装備した。魔法が使える状態で防御力を維持出来るようにと、コダ村の子供達から貰った一品だ。嬉しい事に兜と下半身の装備も製作中だと言う。

「そういやこのヒューイ、帝都上空まで行くんだよな? ローター音とか大丈夫なの?」

言いながらUH-1Jの窓の脇を軽く叩く。物資輸送が任務なのにCH-47Jチヌークを使わないのは、この任務に付けるのが火威一人だからだ。

「それなら精霊魔法で音を消せるみたいですよ。炎龍の首の時に気付かなかったでしょ?」

炎龍の首が帝都の大城門に掲げられた時、火威は確かに悪所に居た。大城門と悪所は距離的にも近いにも拘らず、自衛隊員どころか帝都の人間は誰も気付かなかったのである。

精霊魔法でそんなことまで出来るのか、と思う火威が見たのは自衛官と同じ戦闘服を着たダークエルフだ。炎龍から隠れ住み、蓄えを失ったダークエルフが仕事を求め、自衛隊に売り込んできたのは火威も知っている。というか出蔵が早速ダークエルフの美女にコナ掛けていたのを目撃したのだ。

その出蔵がコナを掛けていたダークエルフが目の前の美女であるから、一応面識はある。彼女は見た目は二十代半ばくらいで、種族的特徴とも言える長い銀髪とカラメル色の肌を持つダークエルフなのだが、他のダークエルフの女性と違い肉感的な様子は薄く、むしろ金髪エルフのテュカに似た精霊的な雰囲気を備えている。

「あ、ども」と言って会釈する火威に彼女も軽く礼を返す。

出倉のヤツ、特地の言葉を憶えたのかな。そう考えていた火威がヒューイに座して暫く後、ヘリは駐屯地を飛び立った。




深夜テンションって便利ですよねー。
どんどん書けていってしまう。でもまぁ、一日経って見直して見ると意味判らないモノになっていることが多いですが。

因みに本作では深夜テンションで書かれたものはありません。

…………

……ほんと、ホントですよ?
深夜に加筆されたとか、それくらいですよ?

それより!更なるお気に入り指定!
本当に有難う御座います!
これからもどんどん書いていきますので、どうか見守ってやって下さい!
深夜テンションとかも上手く使って進めれたら幸いです!

では、感想やご意見等ございましたら、遠慮なく送って下さい!

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