〈物語〉シリーズ プレシーズン 【裁物語】   作:ルヴァンシュ

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「この度は、二次創作小説『〈物語〉シリーズ プレシーズン 衣物語 しるしメイク 其ノ壹、其ノ貮』をお読み下さり、誠にありがとうございます。今回ウラガタリを担当しますのは、あらゆる物語の聞き手こと私、忍野扇です。そして」

「はいはいどうもー! プレシーズン読者の皆様、コンバトラー! 〈物語〉シリーズのロリ担当、そしてプロデューサーの、八九寺真宵です! 今回は私と扇さんの二人で、ウラガタリを進行して参りたいと思いますっ!」

「はっはー。元気いいねえ。何か良い事でもあったの?」

「いえ、特には。良い事と言えば、あれですね。ついこの間宝くじを購入したんですけどね」

「ほうほう。成程、それで当選した訳かい」

「いえ、普通に外れました」

「だろうね。そもそも君、宝くじなんて買えないでしょう」

「ほほう! そこまでお見通しでしたか。流石は平成のホームズこと忍野扇さん! 感服しました!」

「何故だろう、君に言われてもあんまり嬉しくないね」

「はい! 大袈裟に表現しただけですからね! 本心と思ったら大間違いですよ?」

「君は私に何か恨みでもあるのかい?」

「もしかしたら、恨んでいたかもしれませんね。或いは、怨んでいたかもしれません」

「はっはー」

「まあまあ、私と貴女の敵対関係は、今や殆ど皆無と言っても過言ではありませんからね。ちょっとした意趣返しですよ、扇さん。ふー、これですっきりしました!」

「そうかい。それは何より」

「昨日の敵は今日は友と言いますしね!」

「明日からはまた敵同士ですか」

「明日からも敵同士です!」


■ 注意事項 ■

・約1万字です。
・〈物語〉シリーズのネタバレがかなり含まれております。
・『衣物語 しるしメイク 其ノ壹、其ノ貮』のネタバレが含まれます。
・台本形式です。


「では、そんな敵同士の二人で! ウラガタリ、始めさせて頂こうと思いますっ!」

「ごゆっくりお楽しみ下さいねー」

「ウラガタリ、スタートです!!」



ウラガタリ しるしメイク(上)

[001]

 

 

「はい、〈物語〉シリーズ恒例となっております、メインキャラクターのフルネームから始まる前説! 今回は【しるしメイク】ということで、織崎記さんですね!」

 

「織崎かあ。まあ、この露骨すぎる名前については後で触れるとして、相変わらず阿良々木先輩は色々私になすりつけてくるねえ。これ、殆ど『自分の意志じゃないよ、扇ちゃんの所為だよ』と言っているのと限りなくイコールじゃあないか」

 

「誤解されると心外なのだけれど、なんて、そういう反論を封じるかのような予防線を態々張ってくる辺り、流石阿良々木さんと言えましょう。無駄に用意周到と言いますか」

 

「私が望んだ成長、か。私としては、こうして私の話題を絡めることなく素直に自分から語ってくれるようになることを望んでいたのだけれどね。まあ、一応私は何も言ってませんし、成長と言えば成長なのかもしれないけれどね」

 

「ほう。では、扇さん的にはこの成長、何点くらいでしょう」

 

「27点だね」

 

「おっと低いですね!」

 

「200点満点中だよ」

 

「低いどころか落第点じゃあないですか! いや、100点満点でも赤点でしたけれども……」

 

「私は他の方のように、阿良々木先輩に甘くないからね。いや、阿良々木先輩だけではなく、その他の方にも、甘くはないね」

 

「まあ確かに、なんだかんだで私達、あの方には少々甘いところがあるかもしれませんね」

 

「私から見れば少々どころじゃあないんだけれどね。老倉先輩レベルになって漸く、それこそ及第点レベルさ」

 

「あの方を及第点と称しますか! 凄いですね!」

 

「とは言え、私も最近は阿良々木先輩には甘々なんだよ――えっと、このウラガタリが公開される頃には【裂物語】は全部公開されているのかな?」

 

「はい。【裂物語】どころか、【裔物語】の予告まで公開されています」

 

「そうかい。じゃあ読者の皆様はもう私の醜態を見てしまっているという事か。やれやれ、私とした事が大失態だ。あの件については阿良々木先輩は自分が敗北したと思ってらっしゃるようだけれど、私からすれば、あれは言い訳の余地が無いほどの敗北なんだけどねえ」

 

「おっと扇さん、そこまでですよ! 貴女はそういう発言をしても多少は許されるポジションですけれど、私の目の黒い内はそうはいきません、頂けません! その話はここまでです」

 

「ふむ。そうだね。ネタバレ程興冷めなものはないからねえ――承ったよ」

 

「ふふん。分かればいいんですよ、分かれば」

 

 

 

[002]

 

 

「レイニー・デヴィルですか……懐かしい怪異ですね」

 

「八九寺ちゃんにとってはそうかも知れないね。でも私にとってはルーツとも言える怪異――懐かしいだけでは表現出来ない気持ちが多少は渦巻いているのさ」

 

「ほう、扇さんにしては曖昧な物言いですね。どうしたんですか? 曖昧とか誤魔化しとかの天敵を自負していらっしゃるというのに、良いんですか? そんな体たらくで」

 

「はっはっは。私も他人に厳しいけれど、八九寺ちゃんも結構厳しいねえ。流石、祭り上げられたとは言え、神様となるに相応しい器を持った子だよ」

 

「褒めても噛み芸しか出ないですよ、鵬喜さん」

 

「はっはー。八九寺ちゃん。私のことを、かの四国ゲームを生き抜いた薄弱メンタルな少女のように呼ばないでくれるかな。私の名前は忍野扇だよ」

 

「失礼、噛みました」

 

「いいえ、わざとです」

 

「かみまみた」

 

「おや、わざとでない?」

 

「掃きました」

 

「それは唯の箒だね」

 

「ま、まさか扇さんがノってくれるとは……! 正直、無視された挙句に手酷いカウンターをぶちかましてくるのではないかと危惧していたのですが、杞憂でした!」

 

「ははは。私はそんなに酷くはないよ。厳しくはあるけれど、かと言って虐待したい訳じゃあないからね」

 

「そうですか。阿良々木さんとはその辺違いますね」

 

「阿良々木先輩だって、別にそんなつもりはないと思うよ」

 

「いやまあ分かってますよ? 寧ろ、あの方は虐待とかそういうのを心の底から嫌悪なさっているでしょうし――ですが、こう、日頃の行いが……」

 

「まあ、よろしくないよねえ。鏡の世界ではついに女装までしたし。する必要も無いのに」

 

「しかも一回だけならまだしも、この方実は二回女装してますからね」

 

「私の制服に止まらず、フリルの付いたファンシーな魔法少女の服まで着ちゃったからねえ」

 

「困った変態野郎ですよ。その癖、要所要所で無駄に格好良いから何とも言えないんですよねえ、この方は」

 

「まあ、ね。私からしてみれば、それこそ最も矯正したいところなんだけれど――ヒーロー染みた行為は、全く己の為にならないと言うのにいつも首を突っ込む。春休み時代なら兎も角、今のあの方では実力が伴っていない。そんなのは唯の無謀で、愚か者のする事です」

 

「ほほう? まあ確かにそうですが……しかし扇さん、貴女は阿良々木さんのそんなところに助けられたのではないのですか? なら、それを責めると言うのは筋違いの様な気もしますけれど」

 

「そんなところが無ければ、そもそも私は生まれなかったんだよ――こうして阿良々木先輩を糾弾し、弾劾することもなかった」

 

「はあ。では、生まれてこなければよかったとお思いですか?」

 

「当たり前だよ八九寺ちゃん。私みたいな奴は、居ない方がよっぽどいいのさ」

 

「……自虐しますね。その辺、阿良々木さんとそっくりですよ、貴女」

 

「はっはー」

 

 

 

[003]

 

 

「ではでは自虐しながら次の章だよー。触れなかったけれど、今回の私の出番、終わったね」

 

「終わりましたねー。闇の中へと消えて行きましたねー」

 

「で、ここでは八九寺ちゃんと阿良々木先輩の雑談タイムだね。楽しそうにお喋りしているじゃあないか」

 

「ま、私が阿良々木さんに合わせて差し上げているだけ、なのですけれどね!」

 

「そうかい。じゃあ、今はどうなのかな? 君は私に合わせてくれているのかな?」

 

「当たり前ですよ、何言ってるんですか。日本語の伝道師たるこの八九寺真宵と本来のレベルで会話できる方なんてそうそう居ませんよ!」

 

「ふうん。随分な自信だねえ」

 

「強いて言うなら羽川さんくらいですかね? 私のレベルに付いてこれるのは」

 

「あっれー? あれあれあれあっれぇー? ごっめーん、八九寺ちゃーん、今何て言ったんですかあ? 聞こえませんでしたあ。もう一回、もう一回大きな声で、八九寺ちゃん本来のレベルでどうぞ」

 

「……し、強いて言うなら羽川さんくらい」

 

「撤回してください」

 

「何故ですかっ!?」

 

「私よりあの巨乳の方があたかも格上であるかのような発言は即座に速効撤回してください。一から十まで徹頭徹尾撤回して下さい今すぐに、すぐに、今すぐに!」

 

「いや貴女どれだけ羽川さんのこと嫌いなんですか!? そんなに自分より勝っている方がいるということが気に食わないのですか!?」

 

「違いますよー。私はそんなナルシストみたいな奴じゃあありません。ただ、羽川先輩というあの方そのものが気に食わないだけです。専門家連中のことは別にそこまで嫌悪してませんって。奴だけが嫌いなんですよ。あの巨乳。巨乳。雌牛」

 

「いや雌牛は言いすぎじゃあないですか!?」

 

「いやいやあれは雌牛ですよ。ホルスタインですよ。【傷物語Ⅰ 鉄血篇】であの圧倒的なまでの乳揺れをこれでもかと見せつけて下さいましたからねえ。パンツだけでは飽き足らず。あんなぶるんぶるんと揺れていたんですから、そのまま千切れてしまえばよかったんですよ」

 

「巨乳に対する恨みが深すぎますよ扇さん……! わ、分かりましたよ謝りますよ。だからさっきまでの喋り方に戻してください。私達喋り方がそっくりなんですから」

 

「ふむ、そうだね。いやあ、参った参った。柄にもなく熱くなっちゃったよ。キャラ崩壊も甚だしいね。おお、怖い怖い」

 

「ふう」

 

「じゃあ話を本編に戻そうか――で、どうなのかな? オフシーズンの方の進歩は。順調?」

 

「正直あまり順調とは言えません……何せ、阿良々木さんの出演をとうとう許してしまいましたからね……」

 

「おやおや」

 

「八九寺P、痛恨の大失態です……殻があったら入りたいくらいですよ――まさか本当に出張って来るとは」

 

「なんだっけ? 【かれんオウガ】だっけ? 今現在スマートフォン限定の特設サイトがオープン中のエピソード」

 

「ええそうです。まさか語り部形式というルールさえ破って乱入してくるとは……戦場ヶ原さんだけではなく、忍さんも警戒しておくべきでした」

 

「忍さんか。そういえば、かの決死にして万死にして必死の吸血鬼さんは今どの辺に居るのかな?」

 

「さあ……プロデューサー権限を全力で行使して何とか動向を探ってみたところ、どうやら羽川さんと関わったとか関わっていないとかそんな噂を耳にしたような」

 

「またあの巨乳か」

 

「はっ! し、しくじりました」

 

「いえ、いや、別にいいよ。まあ、【ひたぎスリーピング】で散々な目に遭ってくれたから、私は満足さ。はっはー」

 

「……その散々な目に遭って疲弊しきった状態の羽川さんに、貴女は負けたんですけどね」

 

「…………」

 

 

 

[004]

 

 

「さあ、今度こそ本編について話しましょう! ちょっと脱線しすぎです!」

 

「巨乳の所為でね」

 

「ああもう引き摺らないで下さいよ! 貴女そんなキャラじゃないでしょう!?」

 

「残念、私はこう見えてねちねちとねちっこいキャラなんだよ」

 

「そうですか。陰湿ですねー! 暗いですねー! おうぎダークとはまさにこの事ですねー!! ひゃっほう!!」

 

「元気良いねえ」

 

「こうでもしないとやってられませんからね! 何せこの章、私が阿良々木さんにこっぴどく苛められて為す術もなくすごすごと退場する章なんで! ああ、思い出したら苛立ちが芽生えてきましたよ! どうしてやりましょうかあのロリコン!」

 

「君も引き摺るねえ」

 

「なんてったって蝸牛ですからね! えっへん!」

 

「偉ぶるようなこと言ったかな?」

 

「しかも神様ですし! えっへん!」

 

「こんなねちっこい神様なんて誰が信仰してくれるんだろうねえ」

 

「そりゃあ、まあ、阿良々木さんに日和さん、それに、扇さんじゃあないですか?」

 

「私は何も信仰しないよ。特に君はね」

 

「て、手厳しい……!」

 

「私はご都合主義とか、そういうものが嫌いだからね――ええと、本編は、なんだっけ? 君が邪魔者として排斥されたんだっけ?」

 

「何でしょう、貴女が言うと毒味がありますね……」

 

「毒を含ませてるからね。にしても、ここからは阿良々木先輩の本領発揮と言うべきシーンが長々と続くね。いやあ、愚か愚か」

 

「何と言いますか、この自分で自分を言い聞かせているような感じ、貴女と居る時の阿良々木さんそのものですよね。愚か愚か」

 

「織崎記か。厄介なゴスロリ少女が出てきたねえ。織崎って、安易すぎるでしょう」

 

「中々安易な名前に思えますけれど、それでもこの作者が頭が足りないなりに考えた結果なんですから、苛めないであげて下さい。可哀想ですよ」

 

「君も結構酷い事言ってるよ」

 

「だってこの方の名前、最初の設定段階では、さらにそのまんまな四季崎記だったんですからね? それよりはまだマシでしょう」

 

「マシというか最低ラインだよね、ただの」

 

「まあ苛めはこれくらいにして、さあさあ次の章へ参りましょう! 〆切が刻一刻と迫っています!」

 

「急にリアルな話をするね」

 

 

 

[005]

 

 

「はい、【しるしメイク 其ノ壹】最終章にして、格好良く斧之木さんの登場です! ヒューッ!」

 

「斧之木ちゃんも最初に登場した時から随分出世したよね。初登場時、まさかここまで物語に食い込んでくるキャラだと誰が想像したのだろうね?」

 

「まあ最初は明らかに悪役側のキャラでしたからね。キメ顔してましたし」

 

「悪、というか、正義なんだけどね、彼女のポジションは」

 

「ああ、そう言えばそうでしたね。正義の魔法少女、斧之木さんでした」

 

「魔法少女か。まあ本物の魔法少女は怪異じゃあないし、直江津の町には居ないけどね。飛来してきたことはあるけれど」

 

「あの方も大概キャラ被ってますよね……まあ私の方が性格いいですけれども」

 

「自分で性格いいと思っているその人間性、というか神性は如何なものかと思うけれどね」

 

「まあそれは置いておいて。またレイニー・デヴィルですよ。何なんですかこれは」

 

「え? 言っていいのかい? 思いっきりネタバレになるけれど、思いきっちゃっていいのかい?」

 

「いえ、遠慮しておきます!」

 

「そうだよね」

 

「しかし、何でよりにもよってレイニー・デヴィルなのでしょうかね? 他にも色々居るじゃあないですか。蟹とか蛇とか」

 

「そこも詳しく説明しちゃうとネタバレになる――やれやれ、第一話というのは本当に話し辛いね。常にネタバレに気を使わなくっちゃあいけない」

 

「そんなことに気を使うのは貴女か臥煙さんくらいでしょうに……」

 

「えっと、ここらでEDかな? プロデューサー的には、どう? 【whiz】のままなのかな?」

 

「いやあ……どうでしょうかね? 【whiz】も悪くはないですけれど、如何せん【歴物語】がありまして……この曲はそっちのEDですかね」

 

「そういえば、結局【歴物語】はどういう意図で作ったんだい? 作者は」

 

「あー、その辺は【まよいカースト】の『ウラバナシ』で語りますので、暫しお待ちを――とは言え、同日解禁ですけれどね」

 

「果たして出来るかな? この『ウラガタリ』さえも結構ギリギリみたいだけれど」

 

「出来る出来ないではなく、やるんですよ扇さん! この『ウラガタリ』も、場合によってはリアルタイム更新にすればいいのですから!」

 

「……それ、結構な禁じ手じゃあないかい?」

 

「大丈夫です! きっと許してくれますよ! 許されなくとも、謝るのは私達ではありませんから!」

 

「んー。まあ、それもそうだね。曖昧の極致の様なものだけれど」

 

「でしょう? と言う訳で、場合によってはリアルタイム更新になりますので、ご了承ください!」

 

「……無計画の極みですねえ」

 

 

 

[006]

 

 

「と言う訳で続けますよ! ここからは【しるしメイク 其ノ貮】です!」

 

「斧之木ちゃんが阿良々木先輩の危機にタイミングよく駈けつけられた理由を話すところだね。問題提示風に」

 

「多分この章の途中辺りでOPが挿入されるのではないでしょうかね? 其ノ壹ではオミットされたOPが」

 

「誰が歌うんだい? 織崎ちゃんかな?」

 

「はい、そうですね。曲は【否、と姫は全てを語らず】でお願いしたいところです」

 

「あれあれ、それって元は【刀語】のED曲じゃあなかっけ?」

 

「それはそうなのですけれど、〈物語〉シリーズのEDに合うかどうかと考えると、やっぱりちょっと違うんですよねえ。どちらかと言えばOPっぽいかと思いまして」

 

「成程」

 

「織崎さんのイメージボイスは、そうですね、読者の皆様の殆どが想像しているであろうあの方で結構です。って、作者が」

 

「おっと、安全弁を差し込むのを忘れないねえ」

 

「こっちにとばっちりが来ても困りますからね。害は全部あっちへあっちへ! その為の作者なんですから」

 

「はっはー。言いますねえ」

 

「言うべきことはちゃんと言いますからね。それはそれとして、本編の話へ戻しましょう」

 

「うーん、とは言っても、基本的にこの章は雑談しているだけに等しいからねえ。意外とこういう章について語るのって難しいよね。掴み所がないというか」

 

「まあどこを話せばいいのかいまいち分かりませんからね……んー、じゃあ、もう次行っちゃいます?」

 

「行っちゃおうか」

 

「結局メタな話しかしませんでしたね……」

 

 

 

[007]

 

 

「ほいほい、解答編だよー」

 

「いやあ……疲れましたね!」

 

「疲れたかい」

 

「疲れましたよそりゃあ! 神通力って、あれ結構精神を擦り減らすんですよ? ましてや今回操ったのは実体ある生物! 幾ら私の頼りになる卷属たちとは言えど、やっぱり実体のある存在を司るのは体力と精神力をフルに使いますよ、はい」

 

「そうかい。そりゃあお疲れさまだったね」

 

「ですよ。しかも距離はそれなりにあるし、複雑な動きをさせなければなりませんし、時間はありませんでしたし――もっと労って下さいよ!」

 

「君も結構ハードに働いてるよねえ――でも、それじゃあ何で阿良々木先輩を助けるようなことをしたんだい? 阿良々木先輩は君を捨てたのに」

 

「捨てたとはキツい言い方しますね……事実ですが――まあ、その辺が私達と扇さんの違いですよ。なんだかんだで助けてしまうんですよねえ、私達って」

 

「甘いねえ。全く甘いよ」

 

「ううむ、そう言われて返す言葉が余りないというのも辛いところですが……でもまあ、阿良々木さんには日頃から変質行為を受けながらもそれなりに良くしてもらっていますし、これくらいは許して下さいよ」

 

「はっはー。ここで仕方ないなあと言って許すのは私じゃあないよ。何度も言うけれど私は優しくないんだ。厳しく糾弾するのが、私と言う怪異なんでね」

 

「そうですか。では戦争をしましょう」

 

「武力行使かい? 元気良いねえ。何か良い事でもあったのかい?」

 

「良い事ですか? ここ最近良い事なんてありませんよ、本当――日和さんに関しては、あんまり話しちゃあ駄目ですよね?」

 

「駄目だね。ネタバレだもの。というか、その日和という名前を出すだけでもかなりアウトなんだよ?」

 

「ですよねー」

 

「ですです。はてさてそんな訳で、またまたレイニー・デヴィル復活&即撃退、次の章へ」

 

「レイニー・デヴィルさん活躍しすぎでしょう。これギャラとかちゃんともらってるんですかね?」

 

「おっと、ギャラとかそういう世知辛い話をするのはやめようじゃないか八九寺ちゃん。流石にそれはちょっと駄目だ」

 

「冗談ですよ扇さん。私はその辺、ちゃんと分別が付いていますから」

 

「ならいいのだけれどね」

 

「さあ、巻きで行きますよ! せめて次の章までは何とか終わらせましょうっ!」

 

「おー」

 

 

 

[008]

 

 

「またお前かよ、レイニー・デヴィル!」

 

「ここ、誰もがそう思っただろうね」

 

「いい加減しつこいですよねえ。ちょっと不死身すぎませんか? 斧之木さんの例外の方が多い規則(アンリミテッド・ルールブック)を至近距離からモロに喰らったと言うのにこの元気! 忍野さんや扇さんではありませんが、何かいいことでもあったのかと聞きたくなりますね!」

 

「まあこいつには良い事なんて間違いなくないだろうけどね。この怪異が持つのは負の感情のみ、良い事なんて、そういう正の感情は持ち合わせちゃあいないよ」

 

「何だかんだ言っても、悪魔ですからね。レイニー・デヴィルって」

 

「まるで雑魚敵Aのような扱いではあるのだけれどね」

 

「この"蜘蛛"っていうのも気になるところですよね。扇さん、何か知っていますか?」

 

「私は何も知らないよ。阿良々木先輩が知っているんだ」

 

「いや阿良々木さんも知らないでしょう」

 

「まあね。でも一応フリには応えないといけないからねえ。思わずいつもの台詞を使ってしまったよ」

 

「サービス精神旺盛ですねえ、意外と」

 

「あの巨乳とは違うからね――そんなこと言っている間にタイムアップだよ八九寺ちゃん」

 

「うわ本当です!? あー、しまりましたねこれは……やってしまいましたね」

 

「えっと、そう言う訳ですので、ここから先はリアルタイム更新となります。章が一つ終わる度に更新するので、更新を追いたい方は、どうぞ、よろしくお願いします」

 

「とは言いますが、やっぱり一気に見た方が良いという方の方が多い事は間違いないでしょうから、どうぞ、そんな方は本日の午後、また来てください。お手数お掛けしますが、謹んでお詫び申し上げます、って作者が言ってました」

 

「どんどんヘイトを稼いでいくねえ、作者」

 

「もうこれはアンチ・ヘイトタグを付けるべきですかね? はっはっは!」

 

「ではでは、前代未聞のリアルタイム更新、スタートですよー」

 

 

 

[009]

 

 

「ふう、ここから時間を気にせず、のびのびとやってられますね!」

 

「次からはこういうことのないようにしないとね」

 

「そうですね。後で作者をフルボッコにしましょう」

 

「頑張ってね」

 

「あれ、私だけですか?」

 

「制限時間はなくなったとは言え、しかし急がなくてはならないのは確かだよ。巻き目でいこうか」

 

「そうですね。では本編について語りましょう」

 

「この織崎と言う方、中々容赦ないねえ。まさか『くらやみ』まで行使してくるとは」

 

「『くらやみ』……私としてはもう二度と関わりたくない現象ですね」

 

「君が道を外れなければ、今後出遭う事はないだろうけれど。基本的にこの現象は自業自得そのもだからね」

 

「確かにそうですが……でも今回のこれは自業自得とは言い辛いでしょう!」

 

「そうだねえ。ルールを破るように誘導して『くらやみ』を発生させるなんて、そんな自滅めいた方法なんて誰も使いたくないからね――そしてそれ故に、この織崎ちゃんは本気で斧之木ちゃんと阿良々木先輩を消そうとしている、ということの証明となっている」

 

「まさに、怪異よりも怖い、って奴ですね」

 

「そうだね。世界のルールを平然と利用するとは、全く業の深い子だよ。どんな因果応報の結末が待ち構えているのやら」

 

「まあ、そうなったらそうなったで、阿良々木さんは織崎さんを助けるのでしょうけれどね」

 

「助けるべき相手を見失う――まずこれを止めて欲しい。本当に」

 

「切実ですね……」

 

「これをどうにかして頂かなくては、成長も何もあったものじゃあないよ。私が望む成長と言うのは、そういう成長だ」

 

「でもそれだと、阿良々木さんらしさというものが失われてしまいませんか?」

 

「"らしさ"なんて、所詮はその行動を看過してもらう為の常套句でしかないよ。その本質は只の良いのがれであり、体の良い逃げ口上なのさ」

 

「……ですか」

 

「だよ――じゃあ、次の章へ行こうか。次が最後、頑張ろう、八九寺ちゃん」

 

「そうですね、扇さん」

 

 

 

[010]

 

 

「最終章だよー」

 

「いよいよ織崎さんが本性を現しましたね! 私達の視点からすれば、もう初登場時から本性剥き出しだったような気がしますが」

 

「剥きだしならまだしも、牙を剥いてきたからねえ。阿良々木先輩がどうしてこれに気付かなかったのか、というのは後々語られるだろうけれど、それにしても何にしても、愚かだよねえ」

 

「もう少しどうにかならなかったんですかね……」

 

「無理だろう。阿良々木先輩だし――だからそういう所を私は矯正したいんだって」

 

「扇さん、多分それ、無謀ですよ」

 

「無謀でも、私は諦めないよ。諦めの悪い、ねちねちした奴なのさ、この忍野扇は」

 

「ですか……もう執念と言ってもいいですね」

 

「いつだって最後に勝つのは執念だよ――探偵が犯人を突き止めるのだって、それは執念が為せる業だからね」

 

「でもですよ、童女のスカートを掴むのがいつもの癖って、これどうやったら矯正出来るんですか? 無理では?」

 

「八九寺ちゃん。君はどうも私の邪魔をしたいようだね。どうしてだい?」

 

「あれ、最初に言いませんでしたっけ? 私達は、敵同士だと」

 

「はっはー。成程ね。納得だ」

 

「納得して頂けたのなら幸いですよ――忍野扇」

 

「これは、私も全力を出さないとなあ。何せ相手は神様だ、生半可な執念では勝てないだろうね――八九寺真宵」

 

「さて、宣戦布告もほどほどに――って、殆ど本編について語ってないじゃあないですかっ!」

 

「上手くいかないねえ。どうしてだろうか」

 

「これは扇さん、ケジメ案件ですよ! どう落とし前付けてくれるんですか! 現金ですか! 現金ですよね!」

 

「がめついねえ。いっそ清々しささえ感じるよ」

 

「そりゃあ私、神様ですし! お賽銭は常時募集していますよー?」

 

「はっはー。で、どのくらい集まったのかな? 今までで」

 

「大して集まってないからカースト最下位なんですよ私はっ!!」

 

「あーそうだっけ。ごめんごめん」

 

「ここまで気持ちの籠っていない謝罪を初めて聞きましたよ……私が言ったのを聞いて以来です」

 

「性格悪い神様だねえ――で、EDはどうするんだい? 何か曖昧にされていたけれど」

 

「あー……っと、【border】はどうでしょう? まだそれっぽいと思います」

 

「どうでしょうと私に聞かれても、私にはそんな権限、ないからねえ。八九寺ちゃんの意向に任せるよ」

 

「では、【border】ということで」

 

「【border】ですか。アニメ〈物語〉シリーズの演出が大きく変化したのって、【憑物語】からだよね」

 

「いやあ、あれは度肝を抜かれましたよ! カラフルでしたからね、何か!」

 

「本当、色々考えるものだよ――とまあこの話はここまで。閑話休題といこうじゃあないか」

 

「ですね。では、次の章へとレッツゴー!」

 

「いやだからこれが最終章だよ」

 

「失礼、間違えました」

 

「違う、わざとだね」

 

「間違えまみた」

 

「噛んだことで余計疑わしさが増したよ」

 

「失礼、噛みまみた」

 

「おっと、わざとでない?」

 

「去りました。だっ!」

 

「うん、じゃあね」

 

「ちょっ!? 止めて下さいよ! ここまで付き合ってくれたんですから、最後までノって下さいよ!」

 

「残念。もしかしたら知らないかもしれないけれど、私は凄く優しからぬ奴なのさ」

 

「酷いですね」

 

「それも違う。私は、だから――醜いのさ」

 




「さてさて、では不肖私からお別れの挨拶を。この度はウラガタリをお読み下さり、ありがとうございました。今回はこちらの不手際によりリアルタイム連載というトラブルが発生しましたが、今後はこのような事のなきよう勤めてまいりたいので、今後ともよろしくお願いします。と、作者が言ってました」

「うわあ、丸投げしますかー。酷い、いえ、醜いですね! 醜いアヒルの子ですよ!」

「はっはー。だとすれば、私はいずれ美しい純白の白鳥となって飛び立つ訳だ。そりゃあいい」

「ふふーん、でもそうなった場合、キャラ崩壊が著しい事になりますよ? 白鳥の子よりも真黒な存在が現れちゃいます」

「そうなったらそれでいい。私が闇色を捨てる時は、阿良々木先輩、そして神原先輩が、私の望むような更生を遂げてくれた時だからね」

「高望みしますね。阿良々木さんだけでなく、神原さんもですか。生半可な努力では、到底叶いませんよ?」

「叶わなくても敵ってみせるさ。それに、私は努力はしない。あくまでも、闇のように真っ暗で真っ黒な執念で、あの二人をどうにかしてみせる」

「……やれやれ、頑固ですね。そういうところ、件のお二人とそっくりですよ。扇さん」

「そうかい――それはそれで、影冥利に尽きるよ。そっくりということは同じ土俵に立ったという事だからね。あの二人を更生させる日も、近いという事だ」

「ポジティブですね。ダークな癖に」

「いずれは純白の存在になるんだから、当然だよ」

「知ってます? 黒から白になるのって、ゴキブリもなんですよ」

「私をゴキブリ扱いとは、最後の最後でとんでもない爆弾を投下してくれたねえ。覚えておいてね? いずれ投げ返してあげるよ」

「いつでもどうぞ。私はいつでも貴女の挑戦を受けましょう。ただし、ちゃんとお賽銭を持参して下さいね」

「では偽札を用意してこようか」

「そんなことしたらその場で神罰を下してやりますよ!」

「はっはー、冗談さ」

「貴女ならやりそうなんですよ……」

「嘘か真か分からない冗談はさておき、次回のウラガタリは誰が担当するんだい?」

「ふふふ、次回のウラガタリは、私、八九寺真宵と、〈物語〉シリーズ編集担当、斧之木余接さんですっ!!」

「へえ。相性良さそうじゃあないか。良い事あってよかったね」

「はい! 何か良い事、ありました!」

「と、オチも付いたところで。今回のウラガタリ、お相手は、忍野扇と」

「日本語の伝道師、八九寺真宵でした!」

「ばいばいですよー」

「また次回お会いしましょう!」

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