〈物語〉シリーズ プレシーズン 【裁物語】   作:ルヴァンシュ

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「この度は、二次創作小説『〈物語〉シリーズ プレシーズン 裔物語 しるしスパイダー 其ノ壹、其ノ貮』にひとかたならぬお引き立てを頂き、心より御礼申し上げます! 今回ウラガタリを担当させて頂きますのは、前回に引き続き、あたい、神崎日和でございます! そして、今回のげすとはこの方です!」

「春から私立直江津高校三年生! ジークムント・フロイトの後継者こと阿良々木先輩と戦場ヶ原先輩のエロ奴隷! さてさてそんな私は誰だ! 言うまでもない、神原駿河だ!!」

「ぱちぱちぱち」

「ははは、いきなり気のない拍手で迎えられてしまったな! いやこれは参った。私としてはもっと盛大な拍手喝采で迎えられることになると思っていたので、その場合どう反応するかのイメトレを何時間も掛けてやってきたのだが、どうやらそれは無駄に終わったらしいな。これは一本取られたぞ!」

「ご期待に添えず申し訳ございません。ですがあたいは阿良々木お兄ちゃんから、出来るだけ貴女の言葉に反応しないように、とのお達しを頂いておりますゆえ。どうぞご理解下さいませ」

「ほう? 阿良々木先輩にしては随分優しい気遣いじゃあないか……私に対して!」

「あれ?」

「私を無視しろ!? ロリっ子が私のことを邪険に扱ってくれるだと!? なんだそれは最高ではないか!! いやはや全く阿良々木先輩にはやはり頭が上がらないな。あの人の考える事は私の予想の遥か斜め上を行く! 流石阿良々木先輩だ!」

「無視されるのを楽しみにするとはなんとも奇異な。あれですか、まぞひすととかいう人種ですか貴女は」

「否定する気は毛頭ないな! レズであり腐女子でありネコであり受けでありロリコンでありマゾであり露出狂であり欲求不満、それがこの神原駿河のキャッチコピーだ!!」

「すみません、意味不明な単語が多すぎて何を仰っているのか分かりません」

「まあ要は、私は変態だということだよ」

「分かりました。非常に簡潔で不潔な答えありがとうございます」

「辛辣っ!! 凡そロリっ子がしていいような言葉遣いではないぞ神崎ちゃん!! だがそれがいい!!」

「……はい。そんな訳で不安しかありませんが、ウラガタリ、やっていきたいと思います」

「また無視!! その視線がいい!! こっち向いてくれ神崎ちゃんっ!!」

「注意事項です」


■ 注意事項 ■

・〈物語〉シリーズのネタバレがかなり含まれております。
・『裔物語 しるしスパイダー 其ノ壹、其ノ貮』のネタバレが含まれます。
・台本形式です。


「それではウラガタリ、スタートです」

「機械っ子超萌える」



ウラガタリ しるしスパイダー(上)

[001]

 

 

「〈物語〉シリーズ恒例となっております、メインキャラクターのフルネームから始まる前説です。今回は金髪ねーちゃんですね」

 

「金髪少女は人類の宝だと思う人、挙手! はいっ!!」

 

「はあ。いや、あたいはそうは思いませんね」

 

「何故に!?」

 

「金髪なんて、いかにも不真面目そうと言いますか、淫乱そうと言いますか……あれのどこに魅力を感じるのか、あたいはさっぱり分かりません」

 

「随分偏見に満ちているんだな、神崎ちゃん。いや、まあ確かに、女子の目から見ればそう映るのかもしれないな――金髪がヨーロッパで反映した理由を知っているかい? 氷河期の頃、危険な狩りや遠出の影響で男の数が少なくなり、その結果、男女比率が不均等になったのだ。当然、女達は男を取り合う。その戦いで優位に立ったのが、金髪の女たちなのだ。金髪は女子の魅力を最大限に引き上げる――その顔はまるで少女のように初々しく見えるにも拘わらず、どこか熟した色気も感じさせる――金髪が美しいと感じるのは、金髪とはセックスアピールのために繁栄した髪色だったからなのだ! 分かったかい、神崎ちゃん?」

 

「力説しますね……まあ概ねあたいが抱く金髪のイメージはその本質とそぐわぬことはないということは分かりましたけれど」

 

「うむ。しかしそういう事情から鑑みると、金髪でない女性が金髪の女性にあまり良い印象を持たないというのは、至極当然のことだと思うぞ。まあ私は大好きだがな」

 

「じゃあ貴女は女ではないのですか? 両性具有? 人格破綻? 二重人格?」

 

「うん、前書きの段階でもう分かっていたが、君って相当な毒舌だな……しかも両性具有って……私でも中々口にしないぞ」

 

「じゃあ半月とか」

 

「……一応私は君の言っていることは理解できる。理解は出来るが、しかし神崎ちゃん。一応これR-18タグのついた作品ではないし、もう少しマイルドに話さないか? いや、私は別にいいんだが」

 

「ほう。変態を自称していたような方が怖気づくのですか。タグ如きに。げに笑えますね。まさかぽっと出のあたいのようなオリキャラに変態度で負けるなんてことはありませんよね? だとすればあまりにも貴女の存在意義が分からなくなりますが」

 

「中々聞く事のないような斬新な煽りをしてくるな、君は……え? 本当にいいのか? リミッター外しちゃってもいいのか? いいんだな?」

 

「どうぞどうぞ。よしなに」

 

「よし、良いだろう――正直見た目ロリっ子の前で修正されかねないエロネタを語りまくるのは心理的に抵抗があるが、しかし君が許可したんだからな? よし! じゃあ次の章から私は全力を出すことにしようか――最近は【花物語】とか【愚物語】の所為でファッション変態の汚名を被りがちな私ではあるが、ここでその汚名を洗い流してみせる!」

 

「どう考えても逆だと思いますが、まあどうぞ頑張って下さいね」

 

 

 

[002]

 

 

「よし、神崎ちゃん。まずは服を脱いで全裸になるがよい」

 

「いきなり如何なさいましたか? いきなり狂ったようなことを仰りやがっていますけれども」

 

「やかましい!!! 貴様戦場ヶ原先輩を敵視していたのか!! おのれ許し難い!! キャラ被りもそうだが、それ以上に戦場ヶ原先輩を嫌っているというその事実が何よりも気に食わん!! ほら、早く服を脱いで陶器のように真っ白でスベスベとした肌を、今のうちに読者に見せつけるがいい!! 次に君が肌を晒す時、君の体は蚯蚓腫れだらけになっていることだろう!!!」

 

「まぞひすとだけではなくさでぃすとでもありましたか。流石変態ですねお断りします全力で」

 

「そうか。ならば土下座するしかあるまいな」

 

「貴女も土下座することに抵抗を感じないタイプの人種でしたか」

 

「土下座が嫌いな人間など居るまい。見下される感覚のおかげで脳内麻薬ならぬ脳内■規制■」

 

「貴女の頭を一度斬り裂いて脳を眺めてみたいですね。腐女子? だけあって相当腐ってそうです」

 

「褒め言葉だ」

 

「腐りきったチーズでも頭蓋の中に詰まっているのですかね貴女は」

 

「腐ったチーズと言えば、■規制■」

 

「残念でしたね。■規制■」

 

「そうなのか? ふうむ、機械の体というのはそういう面でも便利なのか……」

 

「憧れましたか?」

 

「別に。そういう面も含めて、私は人間の■規制■」

 

「はあ。左様ですか――まあ、人間の体を機械のものに完全に置換する技術は未だ存在していないらしいので、どうせ無理ですけれども」

 

「ああ。体を機械にするためには、銀河鉄道に乗ってアンドロメダ星雲のどこかにある星に行かねばな」

 

「そんな星があるんですか!?」

 

「あれ、神崎ちゃん知らないのか? 銀河鉄道999」

 

「ああ、漫画の話ですか――はい。知りませんね。あたい、そういう"さぶかる"とやらにはまだあまり詳しくないものでして」

 

「そうなのか。ふむ。まあ私も大して知らないのだがな。私が読むのはBLだし」

 

「びーえるとは」

 

「男同士の美しい恋物語のことだ」

 

「ほう。同性愛ですか。重いテーマを描いていますね」

 

「いやそんなシリアスに思わなくてもいいけどな」

 

 

 

[003]

 

 

「近付いた結果がこれですよ。全く、阿良々木お兄ちゃんの苦労が無駄になってしまったではありませんか。よくもやって下さいましたね作者さん」

 

「阿良々木先輩も大袈裟だな。というか、私を一体全体どれだけレベルの高い性犯罪者と見做しているのだ。私は阿良々木先輩のように現実でロリに手を出す気はないというのに」

 

「何を仰る。現在進行形で貴女はあたいをエロいようにエロいようにと浸食しているではありませんか」

 

「元凶は君だろうが! あと、私的には浸食と言うより調教と言った方が好みだ」

 

「調教ですか。あたいはどちらかと言えばする方が好みですかね。いや、別に調教になんて一切興味はありませんし、あくまでされたくないからする方に回るというだけですけれども」

 

「私はされる方が好きだ」

 

「でしょうね」

 

「いやあ、戦場ヶ原先輩の言葉責めは本当に気持ちが良いんだよなあ……最近ではドン引きされてやってくれないのが残念だが」

 

「じゃああたいが戦場ヶ原の代わりになって差し上げましょうか」

 

「それは断固拒否する」

 

「そうですか――というか、改めて考えるとどうなんですかね? この会話は。ドン引きと言うのなら、もう既に読者様の大半がドン引きなさっていると思うのですが」

 

「いやあ、ドン引きしてるのは所詮女子に幻想を抱いている男性読者だけだろう。問題ない」

 

「それを問題ないと言い切れる貴女の精神力が問題だと思います」

 

「そもそも、この〈物語〉シリーズはそういう男子の幻想を打ち砕くために存在していると言っても過言ではないのだぞ? 美しい理想を抱いている思春期真っ盛りの健全な男性読者に対し、ダーティーな現実を突き付けるのがこのシリーズだろうが。今更何を心配することがある」

 

「鬼畜ですか貴女は」

 

「鬼畜は阿良々木先輩だ。或いは鬼畜ギャルソンか」

 

「鬼畜ギャルソン?」

 

「BL小説だ」

 

「男子同性愛小説ですか」

 

「言い換えるな! なんだかエロさ、というか、禁書感が強くなるではないか!」

 

「まあ、世が世なら禁書認定されて焼かれていたでしょうが。あ、でもご安心ください。あたいの居た時代はそういうのには結構肝要ですから」

 

「らしいな。というか、意外と江戸時代の人とか、そういう昔の人が書いた小説とか絵って、妙にエロいからな」

 

「今では閲覧制限が掛けられそうですね」

 

「それでも何故か掛けられないのが、現代社会の不思議の一つだと思うのだ私は」

 

「芸術だからですかね」

 

「アニメや漫画、小説は芸術品ではないとでも言うのか! くそっ、規制め!!」

 

「規制にはいつもお世話になっています」

 

 

 

[004]

 

 

「神原お姉ちゃんって、意外とシリアスな雰囲気もちゃんと出せるんですね」

 

「当たり前だ。私をなんだと思ってるんだ君は」

 

「おふざけ全開の変態お姉ちゃん」

 

「変態お姉ちゃん!! おお……また斬新な呼び方をしてくれるではないかっ! 良い、良いぞその呼び方!」

 

「しまった、悦ばせてしまいましたか」

 

「これからは私の事を、変態お姉ちゃんと呼ぶがよい!!」

 

「いえ、流石に変態お姉ちゃんと毎回呼ぶことに抵抗がない私ではありません。機械だけに」

 

「分かりにくいボケをやめないか。しかもあんまり上手くない」

 

「ほう、厳しいですね。流石は〈物語〉シリーズ次期主人公と謳われているお方です」

 

「そんなことを謳われた覚えはない……というか、阿良々木先輩の後釜なんて荷が重すぎる。私には無理だ」

 

「いえいえ。阿良々木お兄ちゃんの意志を継ぐことが出来るのは貴女しかいないと、八九寺お姉ちゃんも仰っておりますゆえ」

 

「八九寺Pか」

 

「八九寺Pです」

 

「八九寺ちゃんなあ。いつか会ってみたい、会ってハグしたいと思っているのだが、どうも会う機会がなくてな。実はどんな子なのか、ちゃんとは把握していないのだ」

 

「あれ、そうなんですか。八九寺お姉ちゃんに会いたいのであれば、北白蛇神社に来れば会えますよ」

 

「なにっ!!!」

 

「目を輝かせないで頂けますか――って、何おもむろに立ち上がっているのですか。座って下さい。しっとだうん!」

 

「やかましい!!」

 

「やかましい!?」

 

「これがじっとしていられるか!! くそっ、北白蛇神社かー!! よりによってあそこかー!! あそこは色々と因縁があるから苦手なんだよな……いや、苦手意識を克服することも出来ずして、どうして少女と戯れることが出来ようか!! 今こそ、バスケットボールで養った根性の見せ所だ!! よし、今度北白蛇神社へ行こう!!!」

 

「ほう! ということは、八九寺お姉ちゃんの新たな信者になって下さるのですか?」

 

「私は日本全国全てのロリを信仰している。阿良々木先輩には及ばないが」

 

「左様ですか。でしたら是非いらして下さい。お賽銭を持参することを忘れずに来て下さい」

 

「お賽銭か。どれくらいが良いだろうか? 十万円までなら出せるが」

 

「…………神原お姉ちゃんって、富豪の娘なのですか?」

 

「ふふ。まあな!」

 

「……お嬢様という言葉のイメージがガラガラと崩れていくのを感じますよ」

 

 

 

[005]

 

 

「あ、阿良々木先輩が連れて行かれたぞ!! 阿良々木先輩が拉致された!!」

 

「だいなみっくにやりやがりますねー、あの金髪ねーちゃん」

 

「まずい! このままでは阿良々木先輩の処女が、あの金髪ビッチに奪われてしまうぞ!!」

 

「金髪ビッチって……いやいや、阿良々木お兄ちゃんは男ですから、言うならば貞操ではないでしょうか」

 

「おいおい神崎ちゃん。まさか君がそんなに甘い思考回路の持ち主だったとは思わなかったよ――ふふふ、私を挑発しておいてその程度か?」

 

「む……じゃあどういうことなのですか」

 

「菊、とだけ言っておこうか」

 

「あー。成る程。理解しました。面白い発想をなさいますね。最早穴だったらなんでもいいという人間の、というか貴女の業の深さをしみじみと感じました」

 

「おいおい日和ちゃん、この程度で業が深いなんて言っていては、この人間社会で生きていけないぞ? 世の中にはやおい穴というものがあってだな」

 

「ほう?」

 

「■ 規制 ■」

 

「へー。業が深いというか、ただただ不快で馬鹿と言うべきですね。現実的に考えてありえないことをよくもまあ想像出来るものです。というかそもそもよく思い付きますねそんなこと」

 

「ふっ。腐女子の妄想力を舐めないで頂きたいな。というか、私なんて腐女子の中ではまだまともな方なんだぞ? 遺憾ながら」

 

「魔境なんですね。いえ、魔境というか魔族というか」

 

「私は悪魔なマゾだぞ!」

 

「史上最低な自己紹介ありがとうございます」

 

「日和ちゃんって、何だか私に対してはちょっと、こう、冷めてないか?」

 

「そうでしょうか? あたいは比較的いつも通りでいるつもりですけれども……仮にそう思われるのでしたら、きっと私は無意識のうちに貴女の言動に対して引いているのでしょうね」

 

「ふっ、勝った」

 

「変態度で買って喜ぶような奴は生まれてこのかた初めて見ました」

 

「おお! つまり、私は神崎ちゃんの初めてをもらったということだな!」

 

「もう少し言い方はどうにかならなかったのでしょうかね」

 

「愚問だな! 私は常に自分の思いつく限りで最高の表現を使って喋っているのだから!」

 

「貴女の辞書はぶち壊れているのですか?」

 

「いいや、私の辞書は決して壊れていない……何故ならば、最初から私の辞書はこのようにカスタマイズされていたのだからな!」

 

「ほう。不良品でしたか。これは失礼」

 

「不良品と言うなら、君も相当なものだと思うけどな!」

 

「失礼な!! このあたいが不良品ですって!? 変態お姉ちゃん、言っていいことと悪いことがこの世にはあるのですよ!!」

 

「まさかの地雷だった!?」

 

■ 黒駒 ■




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