もう異世界は懲り懲りだ⁉︎   作:葛城 大河

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第八話 そして絶望はやってくる

エルステイン皇国の王城内にある、書庫。そこに何時もの如く、篠宮零士は胡座をつきながら読書に勤しんでいた。そして隣には、長谷部 彩が座り、零士と同様に本を読んでいる。あの彩と仲良くなった日から、こうして一緒に黙して本を読む事が多くなった。以前に、訓練は良いのかと尋ねた所、まずは知識を付けたいと彼女は答えた。まぁ、本を読んだらすぐに、その本に書かれていた魔法を試そうと訓練に参加しているが。

 

 

そういう訳で、この二人で読書する光景は日常と化していた。パタンと読んでいた本を閉じて、全身の筋肉をほぐす。

 

 

「くぁ〜、なんか眠くなってきたな」

 

 

両腕を伸ばし大きく欠伸をする彼だ。その隣では、聞こえていないのか本を捲る少女。

 

 

「それにしても、喉渇いたな」

 

 

長時間、なにも飲まずに本を読んでいたからか、喉が渇いた。すると隣から、水が入った瓶が差し出された。そちらに眼を向けると、彩が本を読みながら自分の飲み物である水が入った瓶をこちらに突き出している。

 

 

「えっと、飲んで良いのか長谷部」

 

「…………うん」

 

 

突き出された瓶に、零士が聞くと彼女は一言頷いた。それに、くれるというならお言葉に甘えてと、瓶を受け取り、蓋を外して口に付けて水を飲む。ゴクゴクと渇いた喉が潤う。

 

 

「ぷはぁ、水が美味いな」

 

 

瓶を口から離す。やっぱり水は美味いと口にしながら、飲み物をくれた彩に礼を言いながら、瓶を彼女の隣に置く。

 

 

「ありがとな長谷部。助かったよ」

 

「…………うん」

 

 

だが、彩からの返事は一言だけだ。別に彼女が、何時もこの態度という訳ではない。恐らくは今読んでいる本が、良い展開で眼が離せられないのだろう、と零士は推測する。例え表情が、無表情でも何日も一緒に居れば、少しくらいは感情の変化が分かるというものだ。零士も本を読むのを再開させて、改めて彩をチラッと見る。こうして一緒に居る事が多くなったのだ、仲良くなったと見て良いだろうか。

 

 

よく会話をするし、偶に魔法の事で相談も聞いたりする。これはもう友人と呼んでも良いのではないか。一人目の友人である和樹を脳裏に思い描きながら、もしかしたら二人目の友人なのでは、と今更ながらに零士は思った。これは由々しき事態だ。日本では全くといって友人の一人も出来なかったというのに、まさか異世界に来てから出来るとは。

 

 

まさか、自分は異世界でなければ、友人が出来ないのでは。そこまで至って、なんてこったと頭を抱えてしまう。もう自分はそれだけ、異世界に毒されているとは気付きもしなかった。

 

 

「…………面白かった」

 

「お、読み終わったのか」

 

 

すると、本を閉じる音を聞いて隣に顔を向けると彩が、読んでいた本を閉じていた。無表情であるが、その顔に零士は満足したという感情を読み取る。もう彼女の友人である零士は、感情を読み取るのも造作もない。そう彼女の友人である零士にとっては。大事なので二回言った。

 

 

「そんなに面白かったのか。どんなのを読んでたんだ?」

 

「…………これ」

 

 

彩の満足した顔に(無表情であるが)なにを読んでいたのか気になった零士は、尋ねると、彩は閉じた本の表紙を見せた。そこに書かれていたのは。

 

 

ーーー『大英雄の歴史』

 

 

と、書かれていた。その本の題名に、零士は見覚えがある。確か内容は、何人もの英雄の生涯だった筈だ。事細かに書かれた英雄達の人生を書いた本だ。ようは、ノンフィクションのライトノベルである。

 

 

「へぇ、どんな話なんだ」

 

 

題名や内容は知っているが、ストーリの全容までは知らない。故に、そう聞いた彼だったがすぐに失敗だったと悟る。何故ならそう言った瞬間、彩の眼が光ったからである。

 

 

「……………私が何処が面白かったのか、一から教える」

 

 

零士は忘れていた。彩は普段、無口なのだが、こと本の事になると饒舌になる事を。無表情だが自分の事を見る視線に、零士はワクワクと早く説明したいという感情が見えた。それに零士は諦めて、

 

 

「は、はは。お手柔らかに」

 

 

そう告げる事しか出来なかった。この後、零士が解放されたのは、実に数時間後の事である。

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

スラム街の先にある孤児院。そのシスターであるエミリヤ・ハーメルは、子供達の服を洗濯しながら、ボォ〜と何処か上の空だった。時折、頬を赤らめてはブンブンと顔を振るのを繰り返す。そんな不思議な光景に、子供達は首を傾げるが、一人だけニヤニヤと笑みを浮かべる者が居た。

 

 

「エミリヤ姉ちゃん。もしかして、兄ちゃんの事を考えてんのか」

 

「ーーーッ⁉︎ お、オルク⁉︎ な、なにを言ってるの⁉︎」

 

 

ヒョコっと横から顔を出して言うオルクに、彼女は一気に耳まで顔を赤くすると、あたふたしながら叫んだ。

 

 

「わ、私は別にレイジさんの事なんてーーー」

 

「あれぇ〜、兄ちゃんと言っただけで、一言もレイジなんて言ってないけどなぁ」

 

「〜〜〜〜〜〜ッッッ。お、オルクぅ〜」

 

 

だが、オルクの発言によりいっそう頬を染めるエミリヤだ。しかし次の瞬間、エミリヤはキッと悪戯な笑みを向けるオルクに鋭い視線を向けた。それに「あっ、やべ」と遊び過ぎたと自覚する子供である。そしてそこから始まるのは、シスターと子供の鬼ごっこだった。

 

 

あの後、ジアンを徹底的に心を折ってから返した零士に、エミリヤは心の底から礼を言ったのだ。それに彼は笑顔で、お礼は入らないと言った。思えば、あの時だろう。エミリヤは今の自分の感情の正体を知っている。少し戸惑ってしまったが、この想いは恐らくそうなのだろう。助けられて、このような想いを抱くのは自分でもチョロいなと思ってしまう。しかし、それは仕方のない事だ。何故なら、あのまま彼が来なければ自分は女としての誇りを尊厳を、奪われてしまっていたのかも知れないのだから。

 

 

そんな状況に颯爽と現れて、自分の事を助けてくれた。女性なら誰もが憧れる状況と言えるだろう。英雄(ヒーロー)に助けられる姫様(ヒロイン)というのは。

 

 

オルクを追いかけながら、エミリヤは自分の気持ちを改めて理解する。そうエミリヤ・ハーメルは、一人の少年に恋をしたのだと。

 

 

 

 

 

 

「あぁ、やっと長谷部の長い説明が終わったぁ」

 

 

零士は疲れたのか、体を横にして天井を見た。この書庫にはもう彩は居ない。彼女は上機嫌のまま、出て行った。恐らくは魔法の訓練に行ったのだろう。よくもまぁ、あんな長時間、噛まずに延々と話していたのに体力があるなと、零士は思った。本と訓練は別腹なのだろうか、と少々馬鹿げた事を考えてしまう程に。

 

 

「さて、俺も本を読むのは辞めて、城下町に行くかな」

 

 

今日読む分は終わった。あの日から零士は、ちょくちょくと城下町に遊びに行くようになった。金は多めにステラとかに貰っているので、城下町を楽しめる。脳裏に本だけなにもせずに金を貰う事にヒモという言葉が過るが、頭を振って追い出す事にした。そう自分は決してヒモではないと。そして彼は書庫の扉を開けて出て行った。

 

 

「今日はなにを食べようかなぁ」

 

 

露店の数々を思い出して、なにを食べるかと真剣に悩む。悩みながら歩く彼は、ふとそこで見覚えのある女の子が視界に入った。

 

 

「………イリスちゃん?」

 

 

それは以前に王城の回廊で出会った女の子である。彼女はキョロキョロと周りを見渡していた。なにか、探し物でもしているのだろうか。すると、周りを見渡す女の子ーーーイリスと眼があった。途端、イリスは笑みを浮かべて零士の方に小走りで向かってくる。そして、

 

 

「お兄ちゃん」

 

「え? おっと」

 

 

向日葵のような笑顔と共に、零士の胸に飛び込んだ。その事に困惑しながら、受け止める零士だ。初めて会った時は、警戒していたのに対して、これは如何いう事だと首を傾げてしまう。

 

 

「えっと、イリスちゃんだよな」

 

「うん。そうだよ」

 

「なにか、探してたんじゃないのか?」

 

「それならもう見つかった」

 

「へ? 見つかったって?」

 

「だって、お兄ちゃんを探してたんだもん」

 

 

如何やら探していたのは自分だったらしい。なんで自分を探していたのか疑問に思い、尋ねてみる事にした。

 

 

「なんで俺を探してたんだ」

 

「改めてお礼が言いたかったの」

 

「お礼………?」

 

「傷を治してくれた時の」

 

 

そこまで言ってなにに対してのお礼なのか、零士は気付いてあぁ、と頷く。そんなお礼を言う為に態々探していたのか。良い子だなと思いイリスの頭を撫でる。気持ち良さそうに眼を細めるイリスである。訳が分からないが、随分と懐かれたみたいだ。しかし、イリスの事を見て疑問に思う。この子は、王城に普通に居るという事は貴族なのだろう。だが、一体何処の貴族だろうか。

 

 

思えば、あの時から今日までこの子を見た事がない。イリスが部屋に閉じこもっていたのなら別だが。この分なら違うだろう。

 

 

「イリスは何処の子なんだ?」

 

「ッ、それは」

 

 

気になった零士の発言に、イリスは眼を伏せる。その事になにか事情がありそうだな、と理解した。そして優しい口調で、さらに聞く。

 

 

「出来れば教えてくれないか」

 

「………お兄ちゃん」

 

「大丈夫だ。誰にも言わないから」

 

 

安心させるように頭を撫でる零士。そんは零士の姿をエメラルドグリーンの瞳で見据える。だが、時折、その瞳の色が変色していた。数秒後、イリスは覚悟を決めたのか、零士の体から離れてお辞儀をしてなら再度、自分の自己紹介をした。

 

 

「お兄ちゃん。私はイリス。イリス・ウィル・エルステイン。第三皇女です」

 

「………やっぱりかぁ」

 

 

綺麗なお辞儀をするイリスに、零士は自分の推測が当たっていたのか呟いた。ステラから自分には姉と妹が居ると聞いた事があるからだ。姉は差別問題をなくす為、差別がない国々に赴いて、この国には居ない事が分かっている。しかし、ステラに妹の事を聞くと、彼女は俯いたのだ。それに妹にはなにかあると、思った。そしてその妹であるイリス・ウィル・エルステインが零士の目の前に居た。

 

 

「なぁ、イリス」

 

「なにお兄ちゃん」

 

「教えてくれるかイリスの事」

 

「………うん。良いよ。お兄ちゃんなら信用出来るから(・・・・・・・)教えてあげる」

 

 

何故、まだ二回しか会っても居ない自分を、そこまで信用出来るのか疑問に思ったが、その事も教えてくれるだろうと思い口を閉じた。そしてそこからイリスは話した。イリス・ウィル・エルステインは、生まれつきある魔眼が開眼したのだ。相手の心を読む魔眼である。生まれた時から持っていた、その魔眼をイリスは制御出来ずに姉妹や両親など構わずに心を読んできた。まだ幼かったイリスは、その読んだ心をそのまま口に出したりしたのだ。

 

 

そのお陰か、周りの者達はイリスを気味悪がり、近付かなくなった。そんなイリスの近くに残ったのは、唯一、自分の味方をしてくれた姉達だった。だからこそ、今でもイリスは姉達の事が大好きなのだ。そしてイリスの父親でもある皇王もまた、娘であるイリスの魔眼を気味悪がり、人に会わさないように軟禁したのだ。勿論、その事に二人の姉は憤怒したが、たかが、皇女が皇王に発言権で勝てる筈もなく、イリスの軟禁が決まった。

 

 

だが、こうして時折、イリスは誰にも気付かれないように、ステラの専属メイドであるミントに連れ出してもらっていた。

 

 

「…………そうか」

 

 

そこまで聞いて、零士は呟いた。気の利いた言葉は言えない。何故なら、零士はイリスではない。目の前の少女の気持ちが全部分かる訳ではないのだ。しかし、それでも分かる事は一つある。彼女もまた、自分と同じように他人から冷たくされたという事だ。今の自分は別に気にもとめていない。だが、昔は違った。怖かった。恐ろしかった。

 

 

何故、あぁいう冷たい眼で見る事が出来るのか。同じ人間なのに。少し違うだけで、簡単に態度が変わるのか。あの時の零士は、魔物よりも人間の方が恐ろしかった。故に、その気持ちだけは理解出来る。イリスも望まずに手に入れた魔眼の所為で、自分と同じ目にあっている。

 

 

「イリス」

 

「…………お兄ちゃん」

 

 

話し終えてから、顔を俯く少女の頭に手を置く。

 

 

「なんていうか、二番煎じな事しか言えないけどな。安心しろ。俺だけが、お前の味方でいてやる」

 

「お、お兄ちゃん」

 

 

怖かっただろう。恐ろしかっただろう。まだ、年端もいかない子供が受けて良い筈の視線ではない。だからこそ、もし皇王が、この子にまたなにかをするというのなら、その時は自分の力を持って叩き潰そう。指名手配にされても構わない。犯罪者だと言われても受け入れよう。自分はあの世界で誓ったのだから。誰かが涙を流し、助けを求める者が居るならば、全力で助けると。

 

 

「だから、そんな悲しそうな顔をするな」

 

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

 

頭を撫でて、話していた時から辛そうな顔をする少女に笑みを浮かべた。すると、イリスはジワリと目尻に涙を溜めると、抑えていた物が爆発したかように、零士の胸に顔をうずめて大きな声で泣いた。それを背中をさすり、零士は泣き止むまで待つのだった。

 

 

 

 

「ありがとうございます。レイジ様」

 

「いや、俺は別になにもやってないよ」

 

 

イリスが泣き止んだ後、イリスを探していたのかミントに出会い、そしてなにがあったのかを話した零士は、イリスをミントに預けた。今はミントの隣で手を握りながら、涙で赤くなった眼でこちらを見ている。

 

 

「それでは私達はこれで。もしも、イリス様が外出しているのが、バレたら大変な事になりますので」

 

「そうか。イリス、またな」

 

「うん‼︎ またねお兄ちゃん」

 

 

零士はお別れではなく、また会おうという言葉を告げると、意味を理解したのか、イリスは満面の笑顔で頷いた。そしてミントと共に、零士から離れていった。見えなくなるまで、零士に向けて手を振っていたが。完全にイリス達の姿が見えなくなると、彼は当初の目的だった城下町に向かう事にした。

 

 

「しかし、もう少し別の事を思いつかなかったのかよ」

 

 

歩きながら、イリスの軟禁状態に、別の方法があったのではと皇王に対して呟く。この世界に召喚されてから、零士はあの皇王の事を信用していない。まぁ、幾つもの世界での経験の所為で、すぐに国の王を信用出来なくなっているのだが。それでも零士は、ガリウス・ウィル・エルステインの事を、何処か胡散臭さを感じていた。

 

 

そうこうしていると、零士は王城の門を抜けて、城下町に続く道を下る。この先に美味いものがあると知っている彼は、よだれを垂らしそうになる。

 

 

「そうだ。イリスのお土産も買うとするか」

 

 

恐らくは軟禁状態で、楽しみがないであろう少女の為に、なにか買ってやろうと零士は思う。だが、そう考えた零士は次の瞬間ーーー全身に悪寒が駆け巡った。

 

 

「ーーーーッ⁉︎」

 

 

この感覚は知っている。戦場の空気だ。いや、戦場が訪れる(・・・・・・)気配か。バッと零士は鋭い視線を皇国の東門に向けた。

 

 

「あそこか」

 

 

東門からなにかが来る。醜悪で邪悪な気配を、その先から感じるのだ。そしてーーー

 

 

異形な怪物が、東門を破壊して皇国に雪崩れ込むのだった。

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

「クハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハーーーーーーーーーーッッッ‼︎」

 

 

その者は嗤っていた。エルステイン皇国の上空で、嘲笑と侮蔑を込めて両手を広げて嗤っていた。

 

 

「さぁ、『種』達よッ‼︎ 破壊せよッ‼︎ 蹂躙せよッ‼︎ 矮小なる人など一匹も残さず、喰らい付くせッ‼︎」

 

 

眼下に映る数多くの異形に命令を下す。破滅をもたらせ、と。悉くを破壊しろ、と。

 

 

「勇者よ‼︎ 居るのならば出てくるが良いッ‼︎ 居ないのであれば、そのまま滅びよッ‼︎」

 

 

その者は叫ぶ。己の怨敵に対して、自分達の主の仇敵に対して。その者は魔人。負を背負いし“魔神”の眷属。そして自分の主である“魔神”を倒す存在である勇者を憎む者。

 

 

「人間達よ、見ているが良いッ‼︎ これが我等の力だッ‼︎」

 

 

周りにある国々に対しての宣言。恐怖を植え付ける為の発言。

 

 

「さぁーーー蹂躙の始まりだッ‼︎」

 

 

その者は、いやその男は魔人。魔人グラン・エルディール。冒険者ギルドではSSSランクに分類される『天災』クラスの化け物である。

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

「ひっ………⁉︎」

 

『グルアァァァァァァァァァァッッッ‼︎』

 

 

ーーー斬ッ‼︎

 

 

足を挫いた子供に襲いかからんとした、数体の異形の怪物を剣で斬り裂く。

 

 

「早く逃げろ」

 

 

背後に居る子供に、そう言葉を告げてから眼前の異形を見据えた。少し呆然とした子供は、近くに居た母親と共に逃げ出しすのを零士は気配で感じ取っていた。そして怪物達が、同胞を殺したであろう零士を敵と認識したのか、周りを囲む。

 

 

「へぇ、お前ら知能があるのか」

 

 

襲う機会を探す行動をしている怪物に、零士は口を開く。すると、怪物が零士に向けて飛び掛かった。左右から滑り込むように鋭い爪で迫る怪物に、跳躍したと同時に剣で二体の怪物の首を断頭させる。しかし、跳躍させる事が怪物の狙いだったのか、他の三体の怪物が待ち構えていた。その顔は口を裂いて嗤っているようにも見える。だが、

 

 

「確かに空中に居れば、大抵の奴は身動きは取れない。だけどな、俺は違う」

 

 

怪物に対して馬鹿にしたような笑みを浮かべると、全身から覇気を放出させ、両足に纏っていく。そして壁を蹴るイメージをして、なにもない空間(・・・・・・・)を蹴ってより高く跳躍してみせた。

 

 

『グガァァァァァァッ⁉︎』

 

 

それに驚く怪物だ。しかし、驚くのも束の間、跳躍した彼は、体の向きを怪物達の方に向けて、先程と同じくなにもない空間を蹴り抜き、凄まじい速度で怪物達を通り過ぎて地面に着地した。その後、未だに空中に居る怪物を一瞥したのち、騒がしくなっている場所に足を向ける。途端、空中に居た怪物達の体が斬り刻まれた。後ろで大きな音と断末魔の悲鳴が響くが、零士は気にせずに東門の方へと足を進めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




主人公が二段ジャンプという、超人的な芸当をやってみました。なんか、少しブランク入ったかも知れん。


ではまた次回。第九話 勇者達の戦いでお会いしましょう‼︎

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