もう異世界は懲り懲りだ⁉︎   作:葛城 大河

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どうも初めまして、葛城大河です。なんかこんなのか、思い付いたので投稿します。


また巻き込まれた一般人
プロローグ 召喚された勇者と巻き込まれた一般人


世界の外れにある無限に瘴気を溢れ出す城。その城の王の間に、四人の男女と一体の化け物が居た。四人の男女は、勇者と呼ばれる者達だ。いや、三人がと言えばいいか。そんな彼等が相対する化け物は、この世界で誰もが知り恐れている存在。

 

 

ーーー邪神。

 

 

常闇を統べ、異形の怪物達を無限に生み出す不浄の化け物。その化け物を倒す為に彼等はこの世界に召喚され勇者になったのだ。

 

 

『ふっ、よもや世界の希望が貴様等のようなガキとは』

 

 

邪神が口を開いた。そのたびに、周りに闇が蠢く。

 

 

「僕達はお前を倒して、この世界を救う‼︎」

 

 

それに一人の少年が叫ぶ。金髪の髪に翠の瞳。手には聖なる光が放たれる聖剣が握られている。少年の発言に後ろに居る二人の少女も頷いた。邪神はそんな彼等を見下し、両手を広げる。

 

 

『ならば、我を倒して見ろ。貴様等に出来るならばなぁ‼︎』

 

 

そう告げた瞬間。邪神の背後で闇が爆ぜた。まるで濁流の如く黒一色の闇が勇者達に襲いかかる。しかし、慌てる事なくその闇を聖剣で斬り裂いた。だが、斬り裂いた後にまだ闇が広がっている。それでも彼は慌てない。闇に飲み込まれる前に、何かを呟くと全身から光が放たれ、黄金の鎧を形成し、飲み込んできた闇を晴らした。

 

 

『ほぅ』

 

「大気よ、我が命に従いなさい『風よ薙げ』」

 

 

少年の行った現象に、感心の声を上げる邪神の耳に、魔法の詠唱が響いた。それは最上級に数えられる風魔法の一つだ。凄まじい暴風が荒れ狂い邪神を巻き込んだ。しかし、煩わしそうに腕を振るだけで、暴風を掻き消す。だが、それを読んでいたのか少年が肉薄しており、聖剣を振り下ろしていた。

 

 

ーーー殺った‼︎

 

 

少年は勝利の確信をした。聖剣は聖の属性、邪神の属性とは相性が抜群だ。聖剣の斬撃さえ与えれば勝てる。そう少年達は確信していたのだ。しかし、侮るなかれ。忘れる事なかれ、邪神はこれでも神の一柱。そのようなただ振り下ろすだけの斬撃が効くはずもない。

 

 

『無駄だ』

 

 

一言。邪神が一言を呟いた瞬間、聖属性の光すら消し切れない闇が邪神に周りに膜のように発生して少年を吹き飛ばす。

 

 

「ぐっっっ⁉︎」

 

「正樹⁉︎」

 

「正樹さんっ⁉︎」

 

 

聖属性すら効かない闇に驚愕しながら、吹き飛んだ少年は地面に何度もバウンドしながらも漸く止まった。それに見ている事しか出来なかった二人の少女は、少年に駆け寄る。一人の少女が傷付いた少年に手を翳せば、彼女の得意とする回復魔法で傷は全快するだろう。しかし、結果は違った。

 

 

「なんでですか⁉︎ なんで、傷が治らないんですかっ」

 

「ど、どう言う事だ」

 

 

本来なら少女の魔法で治る筈の傷が、一向に治る気配がない。少年も疑問に思っていると、嘲笑する笑い声が聞こえた。

 

 

『貴様等、本当にその程度の魔法で、我が与えた傷が治るとでも? ククク、もし治ると思っていたのなら、とんだ馬鹿な者達よ。神である我が与えた傷が、人間が作った魔法で治る訳がなかろう』

 

 

神。それは全種族の最上位の存在。少年に付けられた傷は、言うなれば神の呪いのようなものだ。その呪いを解くには同じ存在である神か、神の術でしか解く事は出来ない。その邪神の言葉に三人は絶句した。

 

 

『ふむ、つまらぬな。まさか、貴様等、この我をよもや簡単に倒せるとでも思っていたのか』

 

 

邪神の発言に彼等は口を開けない。そう昨日まですぐに倒せると楽観視していたのだから。黙する勇者達に邪神は、心底残念そうにして、手を突き出した。そこに集まるのは膨大な負のエネルギーだ。その光景に最早、彼等に戦う意思が砕かれた。随分、脆い者達だ、と蔑みの視線を向けながら集まった負のエネルギーを解放した。ドス黒い闇の奔流が勇者達の命を喰らおうと突き進んで行く。対して彼等は全身をガタガタを震わせながら、自分達の死を幻視した。

 

 

だが、勇者達は死ぬ事はなかった。黒き奔流が彼等に当たる前に何かの斬撃によって奔流は消えたのだから。それに邪神は訝しみ、勇者達は斬撃が放たれた場所に視線を向けた。

 

 

「お、お前は篠宮」

 

 

そこに居たのは黒髪の少年。自分達と同様にこの世界に呼ばれ、しかし勇者としてではなく巻き込まれた一般人として呼ばれた少年だった。自分達に何も告げる事なく城から出て行き、この邪神城に来る前に再会した少年。その時、自分達は一緒に邪神を倒したいと言う少年に、足手まといだと思いながら仕方なく荷物持ちでなら良いと、同行を許可したのだ。その少年が先程の奔流を斬り裂いて見せた。

 

 

『ほぅ、そう言えばもう一人居たな』

 

「あぁ、もう一人居たよ。なに普通に無視してんだ邪神」

 

 

黒髪の少年は、無骨な剣を片手に邪神を見据えていた。そんな少年の視線を受けながら、しかし邪神はまた訝しむ。邪神の瞳は魔力すらも見る事が可能だ。なのだが、目の前の少年の魔力が邪神は見る事が出来ない。いや、これは違うとすぐに判断した。これは魔力が見えないのではなく“無い”のだ。

 

 

『世にも珍しい魔力なしか人間』

 

「まぁな、だけど魔力がなくてもやりようはあるぜ」

 

 

そう言って少年は全身に力を込めた。すると、金色の光が少年の体を覆い尽くす。その現象を興味深そうに見る邪神だったが、次の光景に驚愕した。自分の視界に収めていた少年の姿が忽然と消えたのだ。

 

 

『っ⁉︎ なに⁉︎』

 

 

初めて動揺を見せた邪神は突然、背後に感じる気配に闇の盾を創り構えた。瞬間ーーー斬ッと闇の盾が容易く斬られる。そこに視線を向けると、そこには先程の少年が剣を振り下ろしていた姿があった。なにをした? 突然、消えたように移動した少年の力に邪神は疑問を覚える。この人間は魔法が使えない筈なのだ。ならば、何処かにカラクリがある筈。そこまで考えて、しかしそこで中断する。続いて横から自分の命すら脅かす程の殺気を感じ、邪神はそれを跳躍して躱す事にした。次いで訪れる下からの斬撃音。

 

 

跳躍して居なかったら、あの斬撃に当たっていた。邪神は、その斬撃を放った人物を見ように下に視線を動かすがそこにはもう誰も居ない。

 

 

「何処を見てるんだ? 邪神」

 

『ーーーーッッッッ⁉︎』

 

 

耳に響いたその声に、邪神は生まれて初めて悪寒を感じた。その瞬間、邪神は今戦っている人間は先程の勇者とは比較にならない程の強者と理解し、また迫ってくる斬撃を避け、視線を鋭くした。それに少年も次からが本番だと気付き動きを止める。

 

 

『人間。もう好きかってはさせぬ』

 

「やっと、本気になったか」

 

 

邪神から放たれる負の魔力に、少年は自分が握る無骨の剣を地面に刺した。そして武器が無くなった少年はしかし、笑みを浮かべる。次の瞬間ーーー辺りを極光が覆い尽くした。極光が消えると少年の右手には黄金に輝く剣が一つ。

 

 

『人間っ、その剣は』

 

「さぁ、始めようか。俺が元の世界に戻る為の戦いを」

 

 

黄金に輝く剣をくるん、と手の甲で回して告げると少年から放たれる威圧が変化した。少年の持つ剣に驚愕した邪神も、今は何も喋らず、自身の体を負の魔力で覆う。

 

 

そして静寂が訪れ次の瞬間ーーー両者は同時に飛び込み激突した。

 

 

これは一つの物語。なんの因果か巻き込まれた一般人が、なんやかんやで世界を救う英雄になる話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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