死の超越者と白夜の騎士   作:スティレット

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今回はややブロント語の難易度引き上げました。

6/22追記

一部修正しました。


第三話

 先行しているデス・ナイトに追いつくために〈全体飛行〉をモモンガさんが唱え、村の上空まで来た。

 

「そこまでだ、デス・ナイトよ」

 

 見ると、敵の騎士がもう4人くらいしか残っていない。ちょっと遅かったかな。

 

「初めまして。我々はアインズ・ウール・ゴウンと言う」

 

 敵の騎士は怯えと、諦め、そして疲れ。そんな感情を煮詰めた顔をしていた。

 

「投降すれば「いあ、待てモモンガさん。まずデス・ナイトにこいつ等囲むよう言ってけれ」ブロントさん?」

 

「ここの村人感情的に一人くらい生贄が居たっていいだろ。だからお前等、お前等の国に伝える奴が1人、生贄が1人、残り2人は俺達と来てもらおうか」

 

〈こいつらを拷問にかけて国の情報を引き出しとかないと。まあかける奴は多いに越したことはないけどこの辺が妥協する範囲だと思った〉

 

〈それは確かに〉

 

〈それにこいつ等は認めたくはないが騎士階級みたいだから識字率も高いはず。言葉は通じてても文字が違うってのはこういう異世界転移のお約束だべ〉

 

〈流石ですねブロントさん。ウルベルトさんと厨二について何時間も議論するだけあります〉

 

〈それほどでもないがこの世界に来たからにはモモンガさんもそこら辺身に着けるべき〉

 

〈・・・・・・善処します〉

 

 俺の言葉に僅かな抵抗の意思を見せるも、さらに増えたデス・ナイトにより心を折られる騎士達。

 

「よし、お前等自推は問わないが立候補したら投石刑か両手足折って死ぬまで棒叩きからせめてもの慈悲として自害してから斬首にしてやる俺は優しいからな感謝しろよ」

 

「うわぁ」

 

「そのような虫けら共に温情を与えるとは流石でございますブロント様!」

 

 ドン引きするモモンガさんとは対照的に尊敬の視線を送ってくるアルベド。

 

〈中世だとこれくらい当たり前だ〉

 

〈いきなり馴染み過ぎですよ!〉

 

「仮に逃げたら逃げた奴はこいつ等のシモベとして肉体が朽ち果てるまでずっとゾンビだからな?」

 

 そこら辺でうめき声を上げながらも号令を待つデス・ナイトとスクワイア・ゾンビ。後から合流した奴は黙ったままだが。デス・ナイトに殺されるとデス・ナイトに従うゾンビになってしまうのだ。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 騎士達はどうしたらいいのか分からないと言った表情をしてお互いを見ている。

 

「ほむ、分かった。じゃ、お前等武器を捨てて殴り合え。勝った奴が伝令、負けた奴3人から適当に生贄選ぶから。ちなみに相手を殺した奴は問答無用でゾンビにして伝書鳩代わりにするからな」

 

 聞き終わるや否や絶望した表情で神を罵りながら殴り合う騎士達。デス・ナイトに囲まれているから村人を人質にすることすら出来ない。

 

「えげつないっすねブロントさん・・・・・・」

 

「敗者はこれくらい妥当だし、ぐだぐだしてるからだ」

 

 体力も限界に達していたのか程なく決まる勝敗。

 

「デミウルゴスにも見せてやりたかったな」

 

「ブロントさん確かアライメント極善でしたよね?」

 

「そら光輪の善神で死ぬくらいならクエストしてアライメント上げるだろうな」

 

「善性カンストしている友人に悪性カンストしている自分がついていけない件について」

 

「よくあることだべ」

 

 逆に悪性が強くてメリットある時はやったけど、そうじゃない時は基本そんな感じだ。ついでに言うとグラットン所持する時にもアライメントが関係してくるだよ。

 

「よし、デス・ナイト達よ。気絶している騎士達を連れて行け。お前は国に帰って同じような事をするなら我々アインズ・ウール・ゴウンが直々に潰しにいってやろうと伝えよ」

 

 モモンガさんの命令で1人を除いて肩に担がれて行く騎士達。最初の1体が2人連れて行ってしまったので1体余ったのが置いてけぼりにされている。

 

「悪は滅びた。どうするお前等。1人やるから処刑するか?」

 

「い、いいえ! 全て貴方様方にお任せします! 村をお救い下さりありがとうございます!!」

 

 村長らしき男が出てきて必死にお礼の言葉を言っている。ん? 対応間違えたかな?

 

「それは良かった。ですが我々も無報酬と言うのは割に合わなくてね。生き残った人数分を報酬に加算してくれるかな?」

 

 モモンガさん抜け目ないね。

 

「こ、この村の状況ですとそれほどたくさんの金額を支払うのは難しいのですが・・・・・・」

 

「モモンガさん、交渉は任せる。俺にデス・ナイトの命令権をくれ。騎士のゾンビとかどっかにやっとかないとな」

 

「分かりましたブロントさん。デス・ナイト達よ。ブロントさんの命令に従え」

 

「でしたら私がモモンガ様の護衛に回ります」

 

「うみゅ、任せたぞアルベド」

 

〈そういやあの村娘放置しっぱなしだったな〉

 

〈ブロントさん迎えに行けます?〉

 

〈行ってもいいが・・・・・・モモンガさんが骨だった顔を見られているから俺だけだとスクロールでも使わないと記憶操作が出来ないだよ〉

 

〈スクロールも補充が効くか怪しいですしね。分かりました。俺が後で行きます〉

 

〈任せた〉

 

 俺は盗賊系のジョブを持っているが、こいつはスクロールを騙して使えるので本来使えるジョブじゃないのに使うことが出来るだよ。

 

 騎士の死体はともかく、村人の死体をゾンビ達に片付けさせるわけにも行かないのでデス・ナイトに命令して騎士の死体だけを片付けることにした。

 

 

 

 俺達は部外者なので遠目から村人の葬儀を見ている。どうもこの世界では死んだらすぐに葬儀をするらしい。

 

「なあモモンガさん」

 

「なんでしょう?」

 

「デス・ナイトはとっくに制限時間来ているはずなのに消えないな」

 

「そうですね。後で媒介なしでデス・ナイトを呼んでみて比べてみましょう」

 

「それがいいべ」

 

「モモンガ様、ブロント様」

 

 声を掛けられたほうを見ると、アルベドに連れられたアメコミ風な忍者装束を着て八本足の先が全て刃物になっている蜘蛛型モンスターが居た。敵意が無いから放置してたけどこいつか。

 

「エイトエッジ・アサシンか」

 

「本日はご機嫌麗しゅう」

 

「用件だけ話せ」

 

「はっ、私を含め400の従僕がこの村を襲撃出来るよう準備を整えております」

 

 どこをどう曲解したらそうなった。

 

「・・・・・・襲撃の必要は無い。お前達を指揮しているのは誰だ?」

 

「はっ、アウラ様とマーレ様です」

 

「モモンガさん」

 

「どうしました?ブロントさん」

 

「さっきモモンガさんが言ってた偽装工作云々だったら今回全滅した件で調査しに別部隊が来る可能性がある。村を見捨ててもいいって言うなら放置してもいいけど現地人に親切してこの村をセーフハウスとかエクスチェンジ・ボックス(シュレッダー)にかける物資とか必要だったら中継点にする為にしばらく張り付かせておくべき」

 

「成る程」

 

「で、どうする?」

 

「そうですね・・・・・・この村だけだとリスクに見合わない気もしますけど、ナザリックが近いですからね。そこまで嗅ぎつけられたら困りますし、威力偵察と捨て駒に消耗戦を仕掛けさせて、戦力の分析と可能なら口封じをしましょう。・・・・・・エイトエッジ・アサシン。今言ったとおりだ。アウラとマーレ以外は捨て駒を用意せよ。エイトエッジ・アサシン。お前達はどのくらい居る?」

 

「コキュートス様と共に周辺警備している者以外の10名です」

 

「ならばお前達を伝達係に任命する。敵の戦力が予想より大きかった場合の保険だ」

 

「御意」

 

「こんな感じですかね? ブロントさん」

 

「いいんじゃにいか? いざとなったら敵を怒らせてとかしてナザリックに誘い込んで潰せばいいだよ」

 

「ダメそうだった場合は?」

 

「村と捨て駒を見捨てて撤退だな。捨て駒に死兵を任せて俺達は散開して撤退後、ナザリックに帰還ってところか」

 

「せっかく救った村ですしそうはならないといいんですけどね」

 

「んだな」

 

 俺達は視線は葬儀に目を向けたままこの村の最悪を想定していた。

 

 

 

 歩きながら色々な事をモモンガさんと情報交換したりこれからの事を話していると、どうにもピリピリした感覚がある。発生源はアルベドのようだ。

 

「どうすた?」

 

「――いえ」

 

「・・・・・・人間が嫌いか?」

 

 モモンガさんが指摘する。

 

「人間自体は今は嫌いではありません。ブロント様やアウラ、マーレなどが居ますし。ですが、ナザリックの外のものは・・・・・・」

 

「そうか。だが侮るなよ。一度で踏み潰せる蟻の中には毒針を持っているものも居るのだからな」

 

「はい」

 

 アルベドの教育はモモンガさんに任せよう。こういうのは寄って集って言ったところで逆効果だ。

 

 村人が複数人、村長と何事か話している。

 

「おお、アインズ・ウール・ゴウンの皆様! どうやら馬に乗った戦士の集団がこの村に近付いて来ているようです」

 

 俺達は顔を見合わせる。

 

〈さっき言ってた別部隊か?〉

 

〈いえ、まだ分かりません。どうしましょう?〉

 

〈仮にさっきの奴等を討伐する為に差し向けられた奴等だったらここは王国だから王国軍だべ。情報吐かせるのは多ければいいけど、1人なら引き渡しても許容範囲だな〉

 

〈では、ナザリックに送った者から一人、記憶操作して引き渡しますか?〉

 

〈まあ、まずは様子見だな。重症でしばらくは動かせないって事で。記憶操作しても知らない技術でボロが出る可能性もあるべ〉

 

〈分かりました。では、まずは会ってみると言う事で?〉

 

〈うみゅ、敵だったらデス・ナイトぶつけてみててこずるようだったら捨て駒ぶつけて撤退。こんなところか〉

 

〈そうしましょうか〉

 

「分かりました。私達にお任せください。村長殿の家に至急村人を集め、村長殿は我々と来ていただきたい」

 

 方針が決定したのでモモンガさんが村長に言う。

 

「おお、そうですか!」

 

 明らかにほっとしたらしい。ここは定期的に賊に襲われるフラグとか立つ村なんじゃにいか?

 

 敵で作ったデス・ナイトならコストパフォーマンスも良いし、後でモモンガさんと相談してみるか。

 

 

 

 広場で陣形を整えて待っていると、騎兵が何人かやってきた。装備に統一性が無いけど一応全員鎧に同じ紋章が刻まれている。だが・・・・・・まあ、ぱっと見それぞれがマジックアイテムだから統一性が無いとかそんなんじゃないらしい。鉄か、ちょっと上のランクか。そんなところ。

 

「――私は、リ・エスティーゼ王国、王国戦士長、ガゼフ・ストロノーフ。この近隣を荒らしまわっている帝国の騎士を討伐する為、王国の命令でこの辺りを回っているものである」

 

 嗤いとかそんなのは一切含まれていない。後ろの連中もだ。どうやら本当の様子。

 

「王国戦士長・・・・・・」

 

「どのような人物で?」

 

 うむ、騎士団長とかじゃなくてちょっと微妙な名前だなと思ったりはしないでもない。

 

「商人達の話では、かの王国の御前試合で優勝を果たし、王の直属の精鋭を率いている人物だとか・・・・・・」

 

「目の前の人物が・・・・・・?」

 

「いえ、分かりません。私も直接見たことが無いので」

 

 モモンガさんは半信半疑だ。と、言うか遅い。ようやく来たのか。もう勝負着いてるから。

 

「この村の村長だな」

 

 言葉の端々に苦労のオーラが見えそうな感じになっちぇいる。多分何度かマモレナカッタって事態になったんだろうな。

 

「彼等は誰なのか教えてもらいたい」

 

 2.3メートルくらいの全身鎧のごついゾンビを4体くらい連れている集団。怪しすぐる・・・・・・。

 

「いえ、それには及びません」

 

 モモンガさんが一歩前に出て答えた。

 

「我々の名はアインズ・ウール・ゴウン。私の名はモモンガ。この村が襲われていたので駆けつけた魔法詠唱者です」

 

「ブロントだ。謙虚だからさん付けでいい。モモンガさんの仲間だ」

 

 ここが中世っぽい世界観だと名前が長かったら面倒な誤解を招きそうだからな。略称でいいだろ。

 

「この村をお救いいただき、感謝の言葉も無い」

 

 王国戦士長は、馬から降りると頭を下げてきた。

 

「いえ、お礼を言われるようなことではありません。それに我々は報酬目当てですから」

 

「ほう、報酬か。モモンガ殿達は冒険者なのかな?」

 

 なんか偉そうな口調に慣れていないっぽいな。

 

「そのようなものです」

 

 モモンガさん絶対裏で「冒険者、そういうのもあるのか!」って思ってるよ。

 

「ふむ、相当腕の立つ冒険者とお見受けするが、アインズ・ウール・ゴウンの名は聞いたことがないな」

 

「遠くからやってきましたから」

 

「そこで一つ聞きたいことがあるんだが?」

 

「何かな」

 

「ダークエルフってそんなに地位が低いわけ?ここを襲っていた奴等はモモンガさんにびびってたくせに俺には調子こいてカウンター入れられる始末」

 

「・・・・・・奴隷にされている者も居ます」

 

「ほむ。アルベド、殺気立つな。理解した」

 

 俺もしっとマスク着けるべきか?

 

「すまないが、ここを襲った奴等の特徴を教えてくれないか?」

 

 王国戦士長が話題を切り替える。

 

「もちろん喜んで。ここを襲っていたものの大半は我々が命を奪いました。あれが全部なら、しばらくは来ないかと」

 

「命を奪った・・・・・・殺したのか?」

 

「そうとも言えますし、そうでないとも言えますね」

 

 少なくとも一人以上は殺ったな。

 

「・・・・・・二つほどお聞きしたいことが有るのだが、アレらは?」

 

 デス・ナイト達を示す王国戦士長。

 

「私の生み出したシモベです」

 

「では、その仮面は?」

 

〈どうしようブロントさん!?〉

 

〈宗教上の理由って事で〉

 

「宗教上の理由です」

 

「ブロント殿は被っておられないようだが」

 

「俺はダークエルフだからな」

 

「外してもらっても?」

 

〈ブロントさん!〉

 

〈肌を晒してはいけにいって方向で〉

 

「肌を晒してはならないからです――宗教上の理由で」

 

「そうですか。では――」

 

「その前に、この村は先ほど武器を持った暴漢達に襲われました。なのでストロノーフ殿の隊の皆さんに怯えている様子。武器を外してもらってもよろしいですか?」

 

 一瞬緊張状態にはなるが、あからさまに柄に手を伸ばしている奴は居ない。ほう。

 

「・・・・・・正論ではある。だが、この武器は国王から頂いたもの。勝手に外すことはできない」

 

「いいのです、モモンガ様。私達は大丈夫です」

 

「そうですか?村長。――失礼な事を言いました、ストロノーフ殿。申し訳ない」

 

「いや、モモンガ殿、あなたの言っていることは非常に正しい。王の命が無ければ武器を置いていただろう。さて、椅子にでも座って話したい。それとそろそろ遅い時間になってきた。この村で一晩休ませていただきたいのだが・・・・・・」

 

「そうですね。では、村長殿――」

 

「分かりました。私の家へ行きましょう。その辺も含めてお話出来れば・・・・・・」

 

「戦士長!」

 

 なんだ急に慌てて走ってきた。騎兵。

 

「周囲に複数の人影。村を包囲する形で接近しています!」

 

 うちの奴等はばれないように森の方で待機しているはず。やっぱこの村なんかフラグ立っているんじゃにいか?




長くなり過ぎたので切ることに。ペース配分難しい。

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