死の超越者と白夜の騎士   作:スティレット

6 / 20
最近暑くなったり寒くなったり忙しい。

6/22追記

一部修正しました。


第二話

 マーレが仕事を終え、守護者各員が顔を出せるようになったので伝えるべきことを伝える為、この短い間に何度も呼ぶのは悪いと思いながらも召集をかけることにした。

 

「お前達、良く集まっちぇくれた。今日は略式でいい。モモンガさんと俺以外の至高の41人と呼んでいるみんなの事にも関わる重大な情報だ。心して聞け」

 

『はっ』

 

 玉座の間でモモンガさんは玉座に座り、俺はその横に立っている。モモンガさんは俺の指導したとおり目を瞑るような感覚で眼窩の奥の赤い光を小さくして沈黙を貫いている。

 

「まず、俺達を含め至高の41人と呼ばれる、分類的にはプレイヤーと言う者達だ。俺達は別の世界に肉体を持ち、この身体には化身として降臨している」

 

 息を呑む。ここに居るナザリック各員。

 

「そしてかつての世界「ユグドラシル」を管理する創造主の下、特に使命とかそう言うのは無く、結構好きに生きちぇいた。創造主はたまに試練とか出したけどこれも受ける受けないは自由で、むしろそれを娯楽として認識していたな」

 

 続ける。

 

「だけど長い年月が過ぎ、創造主に世界を維持し続ける力が無くなって来た。41人が居なくなった理由はそこにもあるべ」

 

「誠で御座いますか!? ブロント様!」

 

 他の連中も同様の疑問だったんだろう。代表してアルベドが問いかけてくる。

 

「うむ、最後まで話すから落ち着くべき。・・・・・・まあそんな感じで創造主に力の限界を感じる中、俺とモモンガさんはせめて最後まで世界と共にしようと言う結論に至ったわけ」

 

 要約すると「サーバー終了するまでINしませんか?」って事。

 

「もちろん他のギルメンにも伝えた。でも肉体が2つあっても操れるのは1つずつだけ。リアルと言う世界でも生活するために働いたりしなきゃいけないから仕方が無い。疲れた身体に鞭打ってヘロヘロさんが来てくれたけど、まあそう言う事だべ。あっちの世界は息一つするにも代償が要る世界だ」

 

 人工心肺が必要とかリアルオワコン過ぎだろ。

 

「だからギルメンは恨んでくれるな。とと、脱線した感。話を戻すぞ。そんな感じで俺とモモンガさんが世界の最後を見ようと玉座の間(ここ)に居たら、そのときふしぎなことがおこった」

 

 誰かがゴクリと息を呑む。

 

「世界が終わったはずが・・・・・・この世界に来ていたわけだ。そこから先はお前等も知っているはず。だけど思い出せ。俺達プレイヤーはリアルに肉体があった。それも三大欲求を必要とする肉体で、俺もモモンガさんも今の身体より脆弱だった。そして一国を統べていたとかそう言う事も無くて、普通。つまり世界に強く影響を与えるような存在では無かったわけだ。質問は最後に受け付ける」

 

 だから黙って聞いとけ。

 

「だからな。俺もモモンガさんも、あまり畏まられると居心地悪いだよ。お前等の事が信頼出来るからモモンガさんと相談してぶっちゃけた訳。俺達から見たらお前達は至高の41人・・・・・・つまり友達の子供みたいな感覚。もう少し畏怖より親しみを込めて欲しい。後期待に背く事を死ぬより怖がっているみたいだけど、俺達の心がそこまで狭いわけが無い。失敗したらダメだったところは叱って、許す。良く出来たら褒める。お前達真面目だからいきなりは難しいかもしれないけど、俺がこう言う事を言ってたなって覚えておいて欲しい」

 

 見回すと感動して泣いている奴も居る。そっとしておいてやろう。

 

「私が言いたい事は事前の打ち合わせによりブロントさんに全て代弁してもらっている。お前達に製作者の面影を感じ、また、ギルドメンバーの「私の子供はこうであって欲しい」と言う願いを感じるのだ。よって相性が悪い者同士も居ると思うが・・・・・・製作者であるギルドメンバー同士が本気で仲が悪かったわけではないと理解せよ」

 

 ここはモモンガさんのアドリブらしい。まあ、アライメントの方向性の違いで仲違いとかは勘弁して欲しいとは思うな。

 

「以上だ」

 

 モモンガさんがその一言で締めた。

 

「モモンガ様もブロント様もそのような事を胸に秘めていたのですね。その辛さは私には想像すら出来ません。それで・・・・・・モモンガ様はアレの存在を私に話してくれたのですね・・・・・・申し訳ありません! 至高の御方々の心中を察せず私だけ浮かれてしまい・・・・・・」

 

 アルベドは自責の念で押しつぶされそうな顔をしている。

 

「よい、よいのだアルベド。その件については後で話し合おう」

 

〈これって二人っきりの方がいいですよね?突然豹変して(性的に)襲われませんよね?〉

 

〈どうしても心配なら俺も同席するが・・・・・・二人の方がいいな。気まずいだろ。俺が居ると単純に〉

 

〈うっ! そうでした〉

 

 玉座の間はしめやかなふいんき(何故か変換できない)に包まれているが、いつまでもこのままでもいかんだろ。

 

「お前等、気分を一新してこれからも俺達に仕えて欲しい。よろしく頼むんだが?」

 

『御心のままに! 至高の御方々よ!!』

 

 感涙して声を裏返しながらも忠誠を示すナザリックの従僕達。俺がやれることは現段階で全部やった感。これでモモンガさんの重圧も解消すればいいんだがな。

 

 

 

「いやー、これで少し楽になりそうですね」

 

 モモンガさんの声が明るい。現在モモンガさんの部屋で慰労会だ。セバスが控えているけどこいつもアレの後思うところがあったようで、口元にかすかな笑みを浮かべている。

 

「こういうのは早めにやっとかないとこじれるからぬ。モモンガさんは嬉しそうな時も何故か光るから、心労は少なくして小さくても楽しいことをたくさん見つければいいと思った(精神分析)」

 

「そうですね。常時心の平静を取るのは戦闘だと有利なんでしょうけど、本当に心までアンデッドになったみたいで強制的に均されるのはあまり気分がいいとは言えませんから」

 

「さて――次はどうするかな」

 

 と、こぼす。

 

「外の様子でも見てみますか?」

 

 モモンガさんが提案を出す。

 

「モモンガ様――」

 

「あー、分かっている。セバス。直接ではない。マジックアイテムを使うのだ」

 

 まだ魔王ロールが抜けていないが、幾分か軽い口調になったモモンガさん。

 

「なんかよさげなのはあるけ?」

 

「特に対策とか取られていないなら遠隔視の鏡でいいかなと」

 

「んだば見てみるべ」

 

 部屋の壁に立てかけてある鏡をモモンガさんが操作しはじめた。

 

「ここは・・・・・・こうで、えーと・・・・・・」

 

「・・・・・・タッチパネル操作するような感じじゃないか?」

 

「ふむ・・・・・・じゃあ、こうして、こう。おっ、出来た」

 

「おめでとうございます。モモンガ様。ブロント様もご慧眼でいらっしゃいます」

 

「どうよ? モモンガさん」

 

「どうもタッチパネルにマウス操作が混じっている印象ですね。ほら、ここをぐるっとやると視点が変わる」

 

「全部タッチパネル式にしたグーグルアースみたいだな」

 

「言いえて妙ですね」

 

 そんな感じで近郊の森から徐々に視点を広げていく。

 

「ん?」

 

「どしたー?」

 

「これは・・・・・・祭り?」

 

「血祭りだぬ」

 

「誰が上手い事言えと」

 

 モモンガさんはさほど気に留めていないようだ。俺も戦争映画の略奪シーンとかを見ているようでこれを見ながら肉食うのは辛いな。とか言う程度の感想しか出てこない。

 

「如何致しますか?」

 

 控えていたセバスが俺達に尋ねてくる。

 

「捨て置く」

 

 さも当然のように選択するモモンガさん。

 

「まあ、落ち着きたまえモモンガさん。見たところ装備に統一感があるから正規兵か騎士団クラスかもしれにい。近場の戦力を測るのに丁度いいかも」

 

「そういう見方も出来ますね」

 

 視線は鏡から外さず答えるモモンガさん。

 

「弱過ぎて即死で瞬殺されたらしょうがないから・・・・・・中位アンデッドでも送って様子を見てみるか。ほう」

 

 鏡の向こうでは村娘が甲冑の兜に拳を入れているところだった。なかなか気合入ってんな。

 

「頑張ったが、こるは拙そうだな」

 

「モモンガ様・・・・・・」

 

 セバスが何か言いたげにしている。ああ、確かアライメントの善性が高かったな。

 

「誰かが困っていたら、助けるのは当たり前。か・・・・・・」

 

「ほう?」

 

「行きましょう、ブロントさん。まずあの娘を助けてから。いいですね?」

 

「うみゅ」

 

 どうやら誰かさんの影を見たらしい。やっぱあの人もナイトだったか。

 

「私とブロントさんで行く。後詰めにアルベドを呼んで来い。編成はアルベドに任せる」

 

「かしこまりました」

 

「行きましょう、ブロントさん!」

 

「ああ」

 

 俺とモモンガさんはこの世界で人助けをしてみることにした。

 

 

 

 俺が〈転移門〉をくぐると、モモンガさんが一人仕留めたところだった。

 

「ブロントさん、こいつ等弱過ぎます。〈心臓掌握〉に全く抵抗しませんでした」

 

「見た感じただの鉄装備みたいだしな。魔法付与もされてない。それでも思わぬ隠し玉とか持っていたりする可能性もあるから油断はしないでおくべき。自分のHPを捧げた分だけダメージ与えてきたりとか」

 

「それは怖いですね。まあ、もうちょっと弱い魔法にしてみましょうか」

 

 俺達がその場でのほほんと会話していてもこいつ等は動かなかった。それとも動けなかったのか?

 

「な、なんだダークエルフじゃねえか! そっちのアンデッドはやばそうだが黒耳長程度なら俺達でもなんとかなるだろ!?」

 

「ぶち殺してやる!」

 

 自分に言い聞かせるように鯨波を上げる騎士達。

 

「この国だとダークエルフはそんなに社会的地位が低いわけ?」

 

「後で誰かに聞いてみましょう」

 

「ごちゃごちゃ喋ってんじゃねぇ!」

 

 一人がこちらに斬りかかってきた。振り下ろしてきた剣を俺は盾で弾き、体勢の浮いた相手に――。

 

「メガトンパンチ!」

 

 グラットンを使わずそのまま殴りつけた。

 

「げはぁ!?」

 

 アッパー気味に殴った相手は宙を浮き、受身も取らず地面に叩きつけられる。

 

「うーむ、俺は前衛なんだがモンクは取っていないんだが?」

 

 見ると鎧が骨ごと大きく陥没し、喰らった騎士は四肢を投げ出し血反吐を吐いて動かない。一撃で死んでしまった(フェイタルK.O.)

 

「こいつ、強いぞ!?」

 

「モモンガさん、こいつ等全力でぶん殴ったら穴が空きそうだ」

 

「それで済めばマシだと思いますけどね。では、〈龍雷〉」

 

 残る敵を第五位魔法で一掃するモモンガさん。魔法抵抗力も無しか。

 

「片付いたな。さて」

 

 村娘二人を見るモモンガさん。

 

「ヒッ!?」

 

 悲鳴を上げる村娘。

 

「あ、あーモモンガさん。レベル一桁っぽい村娘じゃスケルトンでも怖いと思うぞ。一般論でね?」

 

「む、それもそうか」

 

「俺が対処してみよう」

 

「・・・・・・頼みます」

 

 あ、モモンガさん凹んだ。

 

「お前等」

 

「は、はい!」

 

「〈大治癒〉をおごってやろう」

 

 いちいち治療箇所をちまちま治すのがめんどい為、とりあえず〈大治癒〉をかける。

 

「ッ! ・・・・・・痛くない。手も、痛くない」

 

「そっちのちびっ子にはジュースをおごってやろう」

 

 俺はアイテムボックスの中から「ジュース」とラベル打ちされている無限の背負い袋を取り出して、オレンジジュースを取り出した。貧弱一般人の幼女だと栓抜きですら使うことが出来なさそうだったので王冠は取ってやる。

 

「ほれ、甘いものでも飲んで休んでいるべき」

 

 村娘の小さいほうにジュースを渡す。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「ありがとうございます!」

 

「それほどでもない」

 

 無事解決したのでモモンガさんの方を見る。

 

「それどうしたわけ?モモンガさん」

 

「いや、顔が怖いらしいんで隠そうと」

 

 しっとマスクを被り、ガントレットを装備したモモンガさんが居た。

 

 しかしよりによってしっとマスクか。いや、待てよ?

 

「モモンガさん。これは俺も被るべきか? ほれ、同じ組織とかそんな理由で」

 

「いえ、いいです。この世界でしっと団とか結成したくないですし・・・・・・」

 

「そかー」

 

 なにやら間の抜けたふいんき(何故か変換できry)になってしまった。

 

「お待たせしました。モモンガ様。ブロント様」

 

 ちょっと遅れてアルベドが完全武装で出てきた。角ごと保護するフルフェイスヘルムに病んだ緑の光を放つバルディッシュが印象的だ。

 

「ちょうどいいタイミングだったぞアルベド!」

 

 場の空気をごまかすためにモモンガさんが全力でアルベドに振る。

 

「セバスから用件は聞いているか?」

 

「はい、村人の保護、と」

 

「そこの彼女等はその村人だ。敵はそこら辺で倒れている奴等と同じ鎧を着けている」

 

「了解しました」

 

「では、実験と行こう」

 

 ――中位アンデッド作成、デス・ナイト。

 

 兵士の死体の上に黒い靄のようなものが発生し、騎士に覆いかぶさる。靄に包まれた騎士の死体は黒い粘液を吐き出し、それが身体を覆っていく。

 

「ひっ!」

 

 再び悲鳴を上げる村娘達。

 

「・・・・・・殺しますか?」

 

「保護対象を殺してどうする」

 

 モモンガさんがアルベドをたしなめる。

 

「失礼しました」

 

「あー、大丈夫だ。あれは俺達の言う事を聞くモンスターを作っているだ」

 

 村娘に目線を合わせて優しく言い聞かせる。怖がっちぇいるからな。

 

「あ、あの、騎士さま? は、あの人たちとお仲間なのですか?」

 

「ああ、大事な友達だよ。それと人は見た目じゃにいぞ?」

 

「す、すみません!」

 

「分かったんならいい」

 

 ぽんぽんと頭を叩いて安心させておく。すかしこれはどう言う事だ? 器用値とか下がるとこうやって軽く撫でたつもりがスプラッタな事になるか?

 

「オオォオオアアァアアアァアアァアアアア!」

 

「お、出来たか」

 

 大きさは2メートルと2、30センチくらい。元の死体かは考えられないほどの肉体の厚みに加え、1.3メートルくらいのフランベルジュとタワーシールドを装備している。コイツが持つと両方とも片手用に見えるくらいだ。

 

 中位アンデッド、デス・ナイト。レベルは35程度と低いものの、防御力はさらに+5レベルくらいに相当し、一撃なら致死量のダメージに耐え切るスキルを持つ。そのスキル故に壁役として魔法詠唱者に好まれているアンデッドモンスターだ。

 

「よし、デス・ナイトよ。あの鎧を着ている者共を殲滅せよ」

 

 モモンガさんが指令を飛ばす。

 

「アアァアアアアアァ!」

 

 そのままドスンドスンとデス・ナイトは村の方向に駆け出してしまった。盾が盾放棄してどうするわけ?

 

「ええー・・・・・・」

 

 これには思わずモモンガさんも唖然。

 

「自由度が高くなったな」

 

「そうですね・・・・・・ブロントさん。そうとでも考えないとやってられません」

 

「これだったら〈星に願いを〉も選択肢が無くなって経験値込めた分だけ願いを叶えてくれるんじゃにいか?」

 

「ありえそうですね」

 

「まあ、なんにせよもう何体かデス・ナイト作るべき。使い捨ての壁は多くて困ることは無い」

 

 だけど忍者。てめーはダメだ。

 

「そうですね。ならば」

 

 さらに損壊が少ない死体を3体ほど見繕ってデス・ナイトを作成する。

 

『オオォアアアァアアアアァァ!』

 

「お前はこの場でこの娘達を守れ。残りは私達を守れ」

 

『アアアァアア!』

 

「うるさい黙れ」

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

「うむ」

 

 モモンガさんが命じると黙るデス・ナイト。

 

「よし、じゃ、行きましょうか。ブロントさん。アルベド」

 

「おう」

 

「はい」

 

 でももしかしたら先行したデス・ナイトが敵を全滅させているかもしれにい。




デス・ナイト「オオァアアアァ!(`・ω・´)」

モモンガ「うるさい黙れ」

デス・ナイト「・・・・・・・・・・・・(´・ω・`)」

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。