死の超越者と白夜の騎士   作:スティレット

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ブロントさんが馴染みすぎてつい多めに書いてしまう。


第一話

 自分の部屋に戻った俺は、メイドに茶を淹れさせた後下がらせ、くつろいでいた。

 

「こんなことにはなるとは思わなかった感。でもまああのあちこち機械をつぎはぎした身体よりこっちの方がいいな」

 

 手をぐっぱぐっぱしながら一人ごちる。モモンガさんはちゃんと寝てるかねぇ?

 

 茶に手を伸ばし、一口すすると芳醇な香りが食道から鼻へと逆流する。

 

 一眠りしたらコキュートスのところにでも行って鍛錬に付き合ってもらうか。アイツ鍛錬用に刃の潰したのとか持っていなさそうだから鍛冶長のところによって研ぎに出す前の奴でも作ってもらうかな――。

 

 

 

 俺のナザリックでの仕事は主に外で稼いでくる事だったから今はやることが無い。いや、在庫整理とかはあるけど。かと言って配下をぞろぞろ引き連れてナザリック内を歩くのもどうかと思うし。

 

「イカガ致シマシタカ?」

 

「いあ、一本ずつの縛りにちょっと飽きてきただよ。ハルバードとかも作ってもらったからコキュートスは武器を追加して欲しいんだが?」

 

 今俺は第五層の氷河エリアでコキュートスと鍛錬の最中だ。

 

「カシコマリマシタ」

 

 そしてまたキンッキンッキンと打ち合う。これはただのアダマン製の研いでない武器だから急所以外は当たってもどうにもならないだよ。万が一でも俺回復出来るし。

 

「ああそうだ」

 

「?」

 

「腕一本程度無くなったくらいで戦闘出来なきゃ仲間は守れないからよ。コキュートス悪いが俺の腕を切ってくれにいか?痛みで集中力途切れない内に回復魔法を使えるか試しておきたい」

 

「オ許シクダサイブロント様。至高ノ御方々ニソノヨウナ事ヲスルナド」

 

「なあに、俺が鍛錬で不覚を取ったってことにすれば良い。それにダメそうなら切断面にポーションかけるから」

 

「シカシ」

 

「まあ、失血とか切断部分が壊死しないようにするのが重要かぬ。それに何故こんな事を言い出したのも後で全員集まったら発表するからまず身体に慣れさせるべき。死にたくないからそうすべき」

 

「・・・・・・御意思ハ固イト言ウ事デスカナ」

 

「必要な事だべ」

 

「カシコマリマシタ」

 

「んだばポーション渡しておく。ガントレ外すから切れる武器を出しておいてくれ」

 

「御意・・・・・・」

 

 俺は左手のガントレットを取り外し、治癒薬をアイテムボックスから出しておく。くっつける程度ならこれで十分だろ。

 

「オ待タセ致シマシタ・・・・・・」

 

 言葉に張りがない。よっぽど気が向かないらしい。

 

「じゃ、手を出せ。薬渡しておく。こっちの外したほうの腕に頼むんだが?」

 

「オ考エ直シ頂ケマセンカ?」

 

「お前なら分かるはず。腕一本切られた程度で動揺して動きを止めていたら死ぬって事を」

 

「デハ・・・・・・御免!」

 

 コキュートスの持ってきた刀は斬神刀皇。かつては武人建御雷さんの所有していた神話級ウェポンだべ。どうやら切れ味重視で持ってきたっぽい。

 

 スッ・・・・・・と腕に切れ跡を残すことなく通過していく斬神刀皇。俺は痛みを感じる前に切った先の腕を押さえて、痛みが来るまで待つ。

 

「ふむ、この程度か」

 

 痛い、確かに痛い。が、我慢出来ないほどでもない。もっと痛いのとか・・・・・・ニューロニストは気が向かにいな。まあ、この辺りで妥協しておくか。

 

「ブロント様、オ加減ハ」

 

「この程度どうって事無かった感。ちょっと待っちぇろ」

 

 〈大治癒〉を唱えてくっつけた腕をねじったりぐるぐる動かしたりする。うん、切断された奴を細切れとか焼かれたりしたらどうなるか分からんけど切り傷くらいなら問題無いな。

 

「辛い役目を押し付けたな。コキュートス」

 

「イエ、我ガ身ナド至高の御方々ニ比ベレバ瑣事デゴザイマス」

 

 ガントレットを着け直しながら応答する。人間だからなー。精神異常耐性があってもゼロじゃないからそこら辺は気合とかで耐えないといけないからな。

 

 ニューロニストに比べればデミウルゴスの方がまだマイルドな拷問方法とかにしてくれるだろ。検討しとく必要があるかな。

 

「そういえばコキュートス、さっき鍛錬始める前になんか言いかけてただろ。なんだったんだ?」

 

「モモンガ様モブロント様モ適齢期デゴザイマス。御結婚ノ予定等ハゴザイマスデショウカ?」

 

「結婚、結婚かー」

 

 モモンガさんは、結婚は出来るだろうけどブツが無いから交渉が出来にい。この世界のアイテムか残っているデータクリスタルでそういう装備を作るくらいしか思いつかにい。俺、俺は・・・・・・アルベドはギルメン愛してるだけど、どちかというとモモンガさん派っぽいし、シャルティアはネクロフィリアだから論外。アウラは幼すぐる。だとしたらメイドから誰か選ばないといけないのか? いや、そもももこの世界に来てから片手で数え切れる日数しか居ないぞ。そう考えたらまだ早いんじゃにいか?

 

「今はまだそんな予定は無いな」

 

「左様デゴザイマスカ」

 

 なにやら肩を落としている。コキュートス。

 

「どうすた? 武人タイポのお前が結婚とは珍しい。誰かに何か吹き込まれたか?」

 

「イエ、コウ言ッテハ不敬ナ話ナノデスガ――」

 

 どうやらいつかは俺達が他のギルメンみたいにここを去る可能性があるから世継ぎとか言う話になったらしい。おいおい(笑)

 

「この先の予定は未定だが、少なくともここを当分離れるつもりは無いぞ。空けるとしたらなんかの仕事が出来たときくらいじゃないかな? まあ一般論でね。だがお前達が懸念している事は分かった。この先どう状況が転がるか分からんが前向きに検討しておく」

 

 そう言って安心させるくらいしか俺には出来ない。腕斬らせてちょっと申し訳なく思うし。

 

「ナント勿体無キオ言葉・・・・・・我々ノ言葉ヲ聞キ届ケテクダサリ深ク感謝シマス」

 

「気にすんな。ならくっつけた腕の調子を見るためにももう少し鍛錬に付き合ってもらうか。そうだな・・・・・・子供が出来たらコキュートスに習わせてみるか。得物は大事だが得物に拘る様じゃこの先生きのこれないからよ。武芸百般は上流階級の必修項目だべ」

 

「カシコマリマシタ。ソノ時ハ全身全霊ヲ以ッテオ教エサセテ頂キマス」

 

 お、気合入ってんな。調子が戻ったって事でいいのか?このことはモモンガさんにも言っておこう。悶える様が目に浮かぶ(愉悦)

 

 この後メチャクチャ鎬を削った。

 

 

 

「――ってコキュートス達が心配してただよ」

 

「あいつ等は・・・・・・」

 

 現在モモンガさんの私室で雑談中。どうもナザリック内でもうろつくたびに儀仗兵が着いてくるから気疲れしてるっぽい。「ナザリックにおいてお前達の警備を信頼しているからもう少し気軽に出歩かせろ。ん? 俺の信頼に背くのか?」とか言って儀仗兵は無理やり解散させたけど。後茶の用意をしてもらったらメイドは下げた。

 

「そういえばアルベドには相談したか?」

 

「完全なる狂騒を使うことはアンデッドの俺が寝室で寝てたら騒ぎになるから伝えてありますけど、その、性欲については・・・・・・」

 

 もじもじする骨。

 

「モモンガさんはペロロンさんくらい開き直ることが必要不可欠。たっちさん程のリア充になれとは言わないから自分に正直になるべき。それにアルベドはサキュバスだから夢の中で【ヤーン】な事をするかもしれないから骨でも関係無いんじゃにいか?」

 

「そ、それは確かに・・・・・・!」

 

「だども夢の中でも出来るものは出来るかもしれないから気をつけろよ」

 

「それって全然大丈夫じゃないって!」

 

「ファンタジーの世界は理屈が通らない時とかあるからしょうがない」

 

「はぁ、しょうがないか・・・・・・」

 

 話が落ち着いたところで茶をすする。うみゅ、リアルでは味わえない芳醇な香気が鼻腔をくすぐるべ。

 

「そうだ、ブロントさん。ちょっと外を見に行きませんか?セバスが星空を見たって言ってたんですよ。ああ、ブルー・プラネットさんにも見せたかったなぁ」

 

「いいなそれ。でもどうせだからこっそり行くか。モモンガさん変装するべき」

 

「そうですね。ブロントさんはどうするんです?」

 

「俺はサポにシーフ持ってるから大丈夫だ。だけど念のためオジエサーコートに着替えておくか」

 

 オジエサーコートはガラントサーコートの黒い奴。夜間行動するのに向いているんじゃないかな?

 

「分かりました。では着替えたら円卓で待ち合わせして、指輪で第一階層に跳びましょうか」

 

「んだな」

 

 一旦俺達は着替えることにした。

 

 

 

「モモンガさん、その格好は?」

 

「たまには甲冑もいいかなって」

 

「でもそれだと魔法使えないだろう」

 

「5個くらいなら何とか・・・・・・」

 

「後で甲冑着けた魔道士の参考画像見せるからよ。魔法が使えるように作ってみるべきそうすべき」

 

「そうですね。魔法詠唱者が甲冑着けてても別におかしくないですよね!」

 

 こんなことを駄弁りながら第一階層を目指していた。

 

 すると目の前に12体の悪魔が。

 

「どうします? ブロントさん」

 

「普通にご苦労って言って通ればいいんじゃにいかな?」

 

「試してみる価値はあるか」

 

 特に気負わず普通に歩く。

 

「やあ、ご苦労」

 

「これはブリリアント・アンルリー・レーザー・オブ・ノーブル・テザー様と・・・・・・?」

 

「ダークウォリアーとでも呼んでくれ」

 

「そう言う事だ。今はダークウォリアーらしいぞ?」

 

〈普通にダークでよかったんじゃにいか?〉

 

〈い、いや咄嗟に出たのがあれだったので〉

 

〈今度お忍びで出かけるとき苗字はダークな。戦士が入ってるのに魔法メインとかQMZだけでいい〉

 

〈解せぬ〉

 

 突然の来訪に困惑する12体の悪魔。

 

「ちょっと通るぞ」

 

「お、お待ちください!」

 

 平伏されながら待ったをかけられる。

 

「何、気にすることは無い。最近警備体制とか強化したし抜き打ちで見て回ってるだけ。でも目立つと意味が無いからこんな格好をしているだ。それとちょっと外の空気吸ってくる」

 

「おや、どうされましたか?ブロント様」

 

 悪魔達の後方にデミウルゴスが居た。影になって見えなかったようだ。

 

「ちょっとこのダークウォリアーさんと抜き打ち検査だ。ついでに外の空気を吸ってくる」

 

「しかし至高の御方々に万が一のことがあってはいけませんので・・・・・・」

 

「ならデミウルゴスでいいや。お前着いて来い」

 

「かしこまりました」

 

〈な? どうってことなかっただろ?〉

 

〈ブロントさんの肝が太すぎるんですよ・・・・・・〉

 

 なにやら呆れられているようだが細かいことを気にしているとはげるので気にしない。

 

「じゃ、行こうか」

 

 行軍を再開することにした。

 

 

 

 第一層の霊廟から出ると、とても素晴らしい光景が広がっていた。

 

「素晴らしいなすばらしい」

 

「これは凄いですね」

 

 一面の星空にしばし見とれる。

 

「ブロントさん、ちょっと上に上がってみませんか?」

 

「いいね」

 

 《飛行》のペンダントを起動し、俺達3人は空を目指す。

 

「まるで宝石箱のようだ。ブルー・プラネットさんに見せてあげたかったな」

 

 黙って同意し、景色を堪能する。

 

「そうですね。美しいのは、至高の御方々の身を飾るためかと思われます」

 

 デミウルゴス、俺は愛でるだけでも十分なんですがね?

 

「そうだな、この宝石箱を手に入れる、なんてのも良いかも知れないな」

 

 やばい、忌まわしき厨二の記憶(クロレキシメモリー)だ!

 

「いや、私一人で独占するのは良くないな。ナザリック大墳墓を――アインズ・ウール・ゴウンの友達を飾るのにふさわしいかもしれないな」

 

 モモンガさんの独白は続く。

 

「お望みとあらば、ナザリック総力をあげてこの宝石箱を手に入れて参ります。そして私が敬愛する至高の御方々に献上できれば、それに勝る喜びはございません」

 

「世界征服とか――いいかもしれないな」

 

 デミウルゴスが感極まっている。

 

「ん? やるか?」

 

 ギルド潰しにも飽きてきていたところだ。

 

「やりましょうか」

 

 俺達は軽いノリで笑って頷きあった。

 

 

 

 その後マーレが大地を大波のごとき魔法で動かしているのを見て、いたわることにした。

 

「ブ、ブロント様、モモンガ様。ようこそお出ていタダキます」

 

「落ち着きたまえ。ほれ、深呼吸」

 

 俺はエースにだけ許される魔法の言葉を発する。俺はナザリックのエースだべ。

 

「すーはー、すーはー」

 

「落ち着いたか?」

 

「は、はい」

 

「何、マーレが頑張っているようだから褒美をやろうと思ってな」

 

 さっき降りるときヘルムを脱いだモモンガさんが幾分か優しい声で話しかける。

 

「え、で、でもこれはナザリックに必要なお仕事ですし・・・・・・」

 

「そう、そしてとても重要な事だ。ナザリックの外においてどうして私達を凌駕する存在が居ないと言い切れる。そういう存在の有無を確認するまではナザリックを他者の目に触れさせてはならん。故にマーレよ。お前の働きに私は大変満足しているのだ」

 

 うむ、アビセアで有頂天になってた俺はアドゥリンでそこら辺のバッタ相手に死にかけた。

 

「・・・・・・分かってくれたか。マーレ」

 

「はい、モモンガ様!」

 

「よし、ではマーレの仕事に対して褒美をやろう」

 

「そ、そんな、当然の働きですよ!」

 

「仕事に応じて褒美が出るのは当然の事だ」

 

「至高の方々に仕える為にみんな働いているんですから貰うなんて畏れ多いです!」

 

 なんか長くなりそうだな。

 

「マーレ」

 

「ブロント様?」

 

「お前は良く頑張っているしこれからも頑張ってくれるだろうから貰っとけ」

 

「モモンガ様にブロント様まで・・・・・・わ、分かりました!」

 

 分かってくれたか。

 

「では手を出せ」

 

 そう言ってモモンガさんは指輪を取り出した。

 

「そ、そんな過分すぎます!」

 

 出したのはリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン。モモンガさんの信頼の証でもある。

 

「お前はよくやってくれている。そしてこれからはこれが必要になるだろう。転移の阻害されているナザリックで間に合わなくなっても仕方が無いからな」

 

 一回俺が喧嘩チームDRAK~ダーク~を作ってしばらくしたときにやらかしただよ。それで1500人相手の時にモモンガさんの世界級アイテムのモモンガ玉が発動して一応難を逃れたが。

 

 だからこっちをチラ見しないで下さいませんかねぇ?モモンガさん。

 

「それとも・・・・・・お前自身が過小評価していると、お前以下の働きしかしていないものは全員受け取れなくなるぞ?」

 

 パワハラだけどこうでも言わないと受け取らないだろうから仕方ないね。モモンガさんの言葉に同意だ。

 

 マーレはモモンガさんからリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを受け取ると、何故か左手の薬指に着けてほうっと眺めていたが――。

 

「も、モ、モモンガ様! 僕にこれほどの褒美をいた、いただき、ありがとうごじゃいます!」

 

 茶釜さんが居たなら「結婚しよ」って言ってたかもしれん。ペロロンさんも言ってたかもしれん。業の深い姉弟だ。

 

「これからも励めよ」

 

 モモンガさんがぽんとマーレの肩を叩く。

 

「はい!」

 

 丸くまとまった。イイハナシダナー。

 

「でも、モモンガ様、どうしてそんな格好をしているんですか?」

 

「そ、それはだな」

 

 俺は色違いであんまり変わらんがモモンガさんは甲冑だ。

 

「簡単よマーレ」

 

 後ろには月を背負ったアルベドが居た。絵になるな。

 

「モモンガ様とブロント様がいらっしゃったらその御威光にみんな仕事の手を止めてしまうわ。それにお二人はナザリックの警備強化に当たって抜き打ちの検査をしていたの。誰よりもナザリックを想っての事よ」

 

「そうだったんですか! モモンガ様、ブロント様!」

 

「さ、流石だアルベド、私達の真意を見抜くとは」

 

「うみゅ」

 

〈モモンガさん、嘘は言ってないんだから気にするんじゃにい〉

 

〈でもぎくってするじゃないですか〉

 

「守護者統括として当然でございます」

 

 にっこりと慈愛を込めて笑うアルベド。聖母のようだ。悪魔だけど。

 

「そ、そうだったんですか!」

 

 驚くマーレに視線を向けたアルベドが温度を感じさせない表情になったが、それも一瞬の事ですぐに元に戻った。

 

「うわぁ(戦慄)」

 

「何かございましたか?」

 

「い、いやなんでもにい」

 

 触らぬ神に祟りなしって言う名ゼリフを知らないのかよ。

 

「で、ではマーレよ。邪魔をして悪かったな。休憩を取ったら隠蔽作業に戻れ」

 

「はい、モモンガ様!」

 

〈やばいモモンガさん!〉

 

〈どうしました? ブロントさん〉

 

〈アルベドがマーレをロックオンしてた! 多分原因は指輪だ〉

 

〈ど、どうしましょう? アルベドにも渡したほうがいいですか!?〉

 

〈だな。アルベドは守護者統括って言う肩書きだけでリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを貰う理由があるだよ。でもデミウルゴスはまだだな〉

 

〈え、守護者全員に配ったほうがよくありませんか?〉

 

〈さっき相応の働きって言ってしまったから散歩に付いて来ただけのデミウルゴスにはまだやれにい〉

 

〈分かりました〉

 

 多分モモンガさん一人でも時間をかければ答えに辿り着くんだろうけどその時間が致命的になったり選択肢に余裕が無くなったりする可能性がある。まだ光らないけどもう少しで光りそうだし。

 

「アルベド、守護者統括、常々ご苦労。見れば身を粉にして駆けずり回っている様子。よってお前にも褒美を与える」

 

「えっ、そんな、モモンガ様! 勿体無いお言葉です!」

 

「いいのだ。みなまで言うな、アルベド。私もブロントさんも解っているのだ」

 

「うむ、常に身だしなみを気にするアルベドが埃とか気にする余裕も無く動いているのは解っているだよ。受け取っとけ」

 

「ブロント様・・・・・・」

 

「それにそこまで一生懸命だからお前の魅力は埃なんかにびくともしないんだが? だろう、モモンガさん」

 

「ああ、そうだとも」

 

 全力でヨイショする俺達。荒御霊には供物を捧げて鎮めなければならない(鎮魂)

 

〈ほら、モモンガさん、サービスして薬指に嵌めてやれ!〉

 

〈ええ!? そんなことしたら取って食われそうじゃないですか!〉

 

〈大丈夫だ。食われるも何もブツが無いじゃにいか〉

 

〈さっき完全なる狂騒の事伝えちゃったんですよ!? 今夜の夢が悪夢じみた淫夢になるじゃないですか!〉

 

〈沈静化するまでシャルティアかアウラのそばに居とけ。デミウルゴスとコキュートスはダメだ。賛成しかねない〉

 

〈でもそれって根本的な解決になってませんよね?〉

 

「モモンガ様・・・・・・?」

 

〈時間切れだ〉

 

〈畜生!〉

 

 ああ、るし★ふぁーさんだったら絶対この状況楽しんでたな。俺もちょっと楽しい。

 

「・・・・・・アルベド、手を出せ」

 

「はい・・・・・・!」

 

 当然のように左手を差し出すアルベド。期待を裏切った時俺は全力でとんずらしなければならない(警戒)

 

 モモンガさんは震える手で嵌める指を選んでいる。前衛の筋力で誘導するアルベド。あ、モモンガさんが負けた。

 

「嗚呼、モモンガ様・・・・・・!」

 

「んん!これからも忠義に励め、アルベド。デミウルゴスはまた次回だな」

 

「はい、その指輪に見合うよう全霊を尽くします」

 

 なんとかデミウルゴスによってお茶を濁したモモンガさん。頑張れ、モモンガさん! 負けるな、モモンガさん! 完全なる狂騒は一時間で効果が切れるから全力で逃げろ! でもプレアデスを召集している時に完全なる狂騒を持ったアルベドが追いかけてきたら諦めろといわざるを得ない。




モモンガさま日野さんだったんですね。どうにも縁があるようです。

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