一方そのころ、スレイン法国では—――。
「絶死絶命様戦死!」
「風花聖典の到着まで後半日との事です!」
「ダメです! 保ちません!」
「風花聖典が戻るまで持ちこたえるのだ! 今こそ信仰を試す試練と知れ!」
未だに熾天使が暴れまわっていた為、法国の最高戦力に繰り返し蘇生魔法をかけ
ただし、堕天のデメリットにより信仰魔法が一切使えなくなり自身への強化が使えず、最高戦力である絶死絶命……すなわち番外席次が復帰するまでの消耗戦を強いられていた。
それでも堕天し変質した種族スキルである眷属招来により、自分より下位の天使を堕天させた状態で呼び出すことが出来る。トラップである彼の本来の使い方は短期決戦において殲滅できれば良し。不可能であればパーティの要を落とし、自身が息絶えるまで消耗戦を仕掛けると言うものであった。その間に索敵により補足されてしまえばトラップの持ち主である謙虚な騎士とその仲間達が加勢するという悪辣さである。
勿論前提条件は厳しく、まず第一に使用主が極善である事。第二に取得クエストをクリアしている事。そして、クリア後に確率でドロップするアイテムを使用し魔法を覚えることである。
この通称「熾天使クエ・裏」はクールタイムが異常に短い〈善なる極撃〉に耐えつつ特定の順番で熾天使達を撃破しなければならないのでオーバーロードのような種族上ダメージ特攻が入るもの、カルマが極悪のものは戦闘開始した瞬間溶けるように死亡する事から論外とされていた。
何より撃破報酬のドロップ率にばらつきがあり、ミカエルは腐るほど出るのにウリエルが出ないなどのプレイヤーの怨嗟が木霊していた。これをオススメのRPGシリーズに例えるとウリエルのドロップ率はクラーケンクラブ以下である。
以上の理由によってトラップとしては破格であるものの、汎用性を考えたら「熾天使クエ」で堕天しない天使が手に入るので十分。要約すると廃人達が暇つぶしに周回して手に入れ、取得済みならバザーに流すものと言う代物であった。
その
もはや全面戦争と言っても過言ではない地獄には惜しみない戦力が投入されるも、六色聖典の内漆黒聖典が壊滅。風花聖典が別任務で国外に居た為に抑えられるものが番外席次のみとなっていた。これも度重なる死亡により大幅にレベルダウンしており、法国に存在するワールドアイテムは瓦礫の下敷きである。
――だが、それは決して無駄ではなかった。
「いい加減、死になさい!」
復帰した番外席次による一撃に吹き飛ばされた堕天せし神の炎。生存している法国の戦闘員全てによる度重なる魔法抵抗難度強化を付与した弱体魔法により……徐々に、本当に徐々にであるが堕天せし神の炎は弱っていった。対する番外席次は常に強化魔法の重ね掛けを最高の状態に維持され、相打ちを狙った捨て身の戦法により確実にダメージは蓄積していた。
「おのれ、地虫共が!」
それでも堕天せし神の炎は主である謙虚な騎士への忠誠を示す為、もはや回復率が3割以下となったオートリジェネに意識を向けながら一振りで周囲の法国兵達を薙ぎ払う。衝撃波により建造物が砕け散り、飛散した瓦礫がさらに赤い花を咲かせる。番外席次を回復させる為の死兵となった彼らはそれでも前進する。
だが、それで良かったのだ。通常ならば。対抗魔法として召喚された己の使命は敵の消耗。この地に呼ばれるまでの記憶は朧気で、その中には酷い時は呼ばれた瞬間こちらが消し飛ばされたり、戦闘区域外に転移させられ戦闘すら行えずに強制送還された事もあった。これが自身の記憶なのか、それとも彼の熾天使の分け身として現界した者たちのものなのかは分からない。だが、それでも主の敵は滅し、害する。主を害される前に。それが自身を支えていた。
怪しげな建物は召喚された際に片っ端から叩き潰した。敵の陣中に降りた時はいつもこうしていた気がする。次点での脅威は目の前の地虫である。潰しても潰しても沸いてくる地虫共を一匹でも多く潰し、至高のあのお方の目に入らないようにする。それこそが我が歓び。
そう考えながらもクールタイムが終了した眷属招来を使い、散開させる。こうすれば目の前の地虫の強化魔法が切れ、自身へのうっとおしい弱体魔法も弱くなる。もはやこのダメージレースは堕天せし神の炎が死ぬか法国の全ての民が死に絶えるかとなっていた。
ウリエルへの弱体魔法貫通は1d100で100出せば徹る状態。100人居れば1人徹る。
ワールドアイテムの大半はザイトルクワエのせいで国外へ。他はウリエルが建物ごと埋めました。
死に戻りを貴重な神の遺産で緩和しながら戦ってる切り札さん。ぜっちゃんがんばえー。
追記
久しぶりに書いてテンポが悪すぎたので加筆修正。