「んじゃどうすっかな」
辞令は後で正式に出すとして、守護者を集めた後またここに戻ってくるのも面倒なんだよな。
「モモンガさん、なんか身分証明の代わりになるもんとか持ってにいか?」
「そうですね。ではこれを」
モモンガさんはなんかシルバーっぽいネックレスを取り出した。
「なんぞー?」
「浪漫装備・・・・・・ですかね」
「ほむ?」
「昔バザーでステ上昇系を詰めるだけ詰めた装備があったんで興味本位で買っちゃったんですよ。まあ安かったんで」
「続けて」
「で、いざ装備しようとした時こんな器用貧乏通り越してゴミ装備だったことに気がついて・・・・・・」
「もういいっ、モモンガさん!」
俺はモモンガさんの黒歴史と言うか自虐ネタをこれ以上聞く気になれなかった。俺もやらかした事があるからだ。おそらく捨て値通り越して処分価格だったんだろう。
「装備の適正レベル自体は50位まで使えそうなんでこれでいいかなと」
「そうだな。んだば俺もなんか出すかな」
クレマンティーヌはこの会話に参加せずおとなしくしちぇいる。
「おい」
「はいぃっ! なんでしょう!?」
いきなり話を振られてビビるクレマンティーヌ。強気なネーチャンがビクビクしている様子はそのスジには需要が高そうな感じだな。
俺は武器を2つ取り出し――。
「どっちがいい?」
とりあえず聞いてみた。
「じゃ、じゃあこっちで・・・・・・」
パラディウムダガーを持っていった。アゾットは突きにくいしな。どっちもヴァナだと一定レベルからの装備だったが、ユグドラシルだと制限を付ける事自体データ容量を消費するので付けていない。どっちもOSR装備なんだがな。
「それおもえの就職祝いな」
「いいっ!?」
ダガーを取り落としそうになり、わたわたとお手玉をするクレマンティーヌ。鞘つきで良かったな。鞘なしだったら指の何本かは落ちてたぞ。
「これもだ。受け取れ」
続いてモモンガさんも暗銀の骨っぽいネックレスを渡す。
「すごい・・・・・・なにこれ」
なにやら呆然としちぇいる。
「あれどんな効果なん?」
「全ステ上昇及びHP、MP自然回復値上昇、全耐性の付与」
「それだけ聞くとやべーな」
「上昇値がゴミだったんです」
「そぉか」
クレマンティーヌがネックレスを着け、パラディウムダガーを腰に差したのを尻目に会話しちぇいた。
「よし、ナザリックでいちゃもん付けられたらとりあえずやった奴見せて自己紹介しろ。ここは部外者に厳しいのが多いからぬ」
「わかりました」
「んだば移動する前に武技の練習軽くやっとくか。流れ星の指輪やるからモモンガさんもな」
「いいんですか?」
「誠心誠意お教え致しますので殺さないで下さい」
クレマンティーヌは腹パンと装備授与で立場を悟ってしまったようだ。
「ほら、そこでグッとためたらシュッてするの!」
「こうか?」
「モモちゃんため過ぎ! そんなぐぐぐってしない!」
「分からん」
俺とモモンガさんはクレマンティーヌから武技の指導を受けていた。こいつ慣れるの早すぎだろう。
「いい? こうして・・・・・・こう!」
なんで戦士職を持っていないモモンガさんもやっちぇいるかと言うと、ジョブに影響されないで覚えらるるかどうかの検証も兼ねているってところか。なんか流れ星の指輪も使ったら光ったし。すかしクレマンティーヌが感覚派すぐる。どちかというと理論派のモモンガさんは理解を諦めて見取り稽古に集中しちぇいる。ちなみに今練習しているのは能力向上だ。
「こうか!」
「うんそう! ブロちゃん意外と早かったじゃない」
「う~ん・・・・・・」
「モモンガさん、こういうのはノリが大事だ」
「ノリ・・・・・・ですか」
「アレだな。青空文庫であった・・・・・・界王拳って言えば分かるか?」
「あ~うん、なるほど」
文字は漫画で覚えた。子供の頃はマスクとゴーグルをして通いつめたもんだ。
「ちょっと離れて下さいね」
「おう」
「何々?」
俺とクレマンティーヌが離れると、モモンガさんは足を肩幅くらいに開き、両拳を腰の高さに構えた。
「ふぅぅぅ、はぁ!」
モモンガさんが気合を入れるとなんか身体全体から黒っぽい波動が出た。
「モモンガさん、絶望のオーラは不味いって」
「あばばばば」
漆黒の波動の他に絶望のオーラまで感知出来るくらいなんか色々噴出しているけど、俺はともかくクレマンティんヌが恐慌状態になっているので止めておかないと危険が危ない。
「〈大治癒〉をおごってやろう」
いちいちバッドステータスをを特定するのもめんどい時は〈大治癒〉だな。MPがあればこれ一つで大体なんとかなる。
「どうだろ。武技発動してます?」
「試しに殴ってみろ」
俺のスキル構成は無効化ではなく基本軽減系で占められているのでダメージ計測をしてみる事にした。
「了解です。行きますよー・・・・・・ふんっ!」
モモンガさんが持っている杖で俺に殴りかかる。俺が仕込み杖で作ってやった死神の剣だ。鞘の部分を額で受けてみる。
「少し痛い。ダメ上がってるんじゃね?」
「やりました」
これで指輪さえ使えばカンストプレイヤーだろうが後衛職だろうが何とかなる事が分かったな。次はカンストじゃないのが武技覚えられるかどうかだな。まあ指輪は守護者レベルでも無いと勿体無くて使う気が起きないが。
「よし、〆に試してみたかった奴やってみるか」
「お、なんです?」
普段俺のスキルはいちいち宣言して使う暇が無いので、斬る時、防御する時などそれぞれまとめて発動しちぇいるのだが、それとは別にオススメのアビリティでも再現してみようと思った。でもまあいきなり難しいのは置いておいて、だ。
「センチネル!」
スキルで防御が上がる感触を思い浮かべながら武技を発動する。技名叫んだのは気分だな。
「よし、モモンガさん殴ってみろ」
「はい。〈竜の力〉からのぉ、ふんっ!」
「ちょ、おま」
言い終わる前に胸部装甲からガンッ!と割と鈍い音が響き渡る。無強化でもそこまでのダメージではないのは分かるが。
「痛くねーな。流石のセンチネルだ。すかしモモンガさん能力向上で良かったんじゃ?」
「いやぁ、また絶望のオーラが暴発したら嫌だなと思いまして」
「しゃあねぇな」
「いきなりオリジナルの武技じゃなくて要塞で良かったんじゃない?」
「要塞ってさっきの説明からするにダメ反射だろ? そっちはパリィ系と併用すっからまた今度な」
俺くらいPスキルが極まっちぇいると、本気で殴る時は無意識でも強撃とか色々スキル上乗せするし、一つじゃにいので技名叫んでいる暇も無い。
「実験も終わりましたし、そろそろ会議にしましょうか」
「だな。クレマンティーヌの挨拶も兼ねて歩いて行くべ」
「守護者以外にも顔は覚えておいて貰わないといけませんしね」
「各階層に顔を出すのは後回しだな。先に墓地のズーラーノーンとやらを見に行くか。クレマンティーヌ道案内な」
「わかったー。でもカジっちゃんに私も挨拶したいなー」
「行ってみてから決めるからおとなしくしとけ」
墓地ね。無限POPしそうならグラットン持っちぇいくか。説明文が設定として反映されてるならどの程度か試してみないとな。
明日はおでかけライブin沖縄に行ってきます。