死の超越者と白夜の騎士   作:スティレット

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待たせたな!

6/22追記

一部修正しました。


第九話

 現在俺達は布や皮装備でそこらの露店で酒と食い物を買って食べ歩いているところだ。

 

「今日初めてこっちの食べ物を食べたんですが、これなら宿の食べ物も頼んでおいたほうが良かったですよ」

 

 目の前には黒の長袖と長ズボンを履き、眼鏡をかけた中の上程度によくある日本人顔の男が一人、モモンガさんだ。それもそうだろうな。こんな100%オーガニックな食い物なんてリアルに無いぞ。ちょっと、いや、かなり薄味だけどそれは俺達が人工物に慣れきったせいってのもあって素材の味を楽しむ分にはおつりが来るくらいだった。

 

「そういえばエントマさんからカイコ串をもらったのである。いつまでも食べないのもどうかと思うのでここで肴にでもどうであるか?」

 

「お、カイコか。高級品ジャマイカ!」

 

 リアル世界では絹はよほどの金持ちしか身に着けられない高級品、それを生み出すカイコは餓えに負けた生産者が食べてしまい、毎度処分されていると言う黒い噂が立つほどのものらしい。

 

「モモンもどうだ?」

 

「いいえ、私は遠慮します」

 

 やっぱブルー・プラネットさんの虫食講座は好き嫌いが分かれたからな。ましてやモモン、もといモモンガさんはスケルトン系だったので参加しなかったし、オフ会で出ていた超高級品のイナゴの佃煮にも手を着けていなかったのはしゃあないか。

 

「忍者も食べるであるか?」

 

「いただきます」

 

 忍者はサバイバルにも特化しているだけあって、抵抗無くカイコ串を食べている。

 

「ナーべは・・・・・・また今度にしとくか」

 

「ロトさ――んの配慮に深く感謝致します」

 

 プレアデスでもエントマとか以外には不評らしいからな。虫料理。

 

「では、そこそこ情報も集まったし、ここらで各自散開するべ。何か面白いことがあったら〈伝言〉で確認と言う事で」

 

「ああ、分かったとも、ロト。ではまた宿でな」

 

「おう、宿でな」

 

 やっぱこういう時間帯はスラムかな。とりあえずブラブラしてみるべ。あ、その前に鎧をシーフ用のに換えておくか。ここら辺は付与が効くから便利なんだよな。

 

 

 

 さて、スラムにやって来た。おれは実力を隠した状態で気配だけ垂れ流しにしてふらふらと歩いている状態、つまりそこらのモブ冒険者と同じレベルに偽装して歩いている。

 

「チャララ~チャララ~チャララ~ラ~ラ~ラ~ラ~カカカカッ」

 

 鼻歌を歌いながら散策していると、なにやら争う声が聞こえて来た。

 

「んふふ~後はお兄さんだけだね」

 

「なんでこんなことをする!」

 

 これは・・・・・・どうしたもんかな?

 

「あ、こんなこと? お兄さんが欲しいなと思って」

 

「ど、どういう事だ?」

 

「有名なさー、薬師のお孫さんが留守でねー。いつ帰ってくるか監視してくれる人が欲しいの。私はそういう面倒な事はしたくないしー」

 

 そこの冒険者崩れのワーカーとか言うジョブらしき男を助けてもあんまりメリットを感じない。かと言ってこいつは単独犯なのか。それとも何か他に繋がりがあるのか。

 

「・・・・・・助けるか」

 

 正直ワーカーっぽいのに俺の名を売るのも微妙なんだが、この通り魔の女、重心とかからオーガ程度なら倒せる技量を持っていそうだ。こいつなら武技のヒントにも、そして組織犯だったのなら拠点に案内させて名声上げの糧にしてもよさげだからな。

 

「そこまでだ」

 

「あん?」

 

「た、助けてくれ!」

 

 不機嫌そうにこちらへ振り向く女。そして、必死な男。

 

「お前からは何か面白そうな匂いがするからな。とりあえず連行させてもらうかな」

 

「んだてめぇ? 馬鹿な正義漢かと思ったら本当の馬鹿か? 装備だけは立派そうだけど・・・・・・ね!」

 

 女の刺突。装備はスティレット。つまり刺すことしか出来ない短剣だ。刃が無いので斬る事が出来ない。それを俺は手首ごと掴み取った。

 

「ふむ、芯にミスリル、オリハルコンコーティングか・・・・・・。低位魔法効果、そっちのは効果が違うのか? ほむ、一時的付与? 面白い、装備自体は糞だが発想は気に入った」

 

「クソが! 放せ!」

 

 もう片方のさりげなくスティレットを握る手も拘束しているので女はガッツンガッツン膝蹴りをしている。だが無意味だ。

 

「そこの。こいつは俺に任すろ」

 

「あ、ああ!感謝する!」

 

 男は全速力で逃げていった。

 

 さーて、面白そうなネタも手に入ったし、モモンに連絡取るかな。

 

〈モモン、今大丈夫かな?〉

 

〈どうしたロト。早速何かのイベントにでも遭遇したか?〉

 

〈そんなとこだべ。ここらの金ランク程度では持っていない装備を持っている女を捕まえた。しかも通り魔の現行犯だ〉

 

〈それはいい。他には何かありますか?〉

 

〈武技は使わせる暇をやらなかったけど、そこらの鉄ランクでも使えそうなのをコイツが使えないはずもないだろ。一旦連れて帰るべ〉

 

〈分かりました〉

 

 途中でモモンガさんリーマンの癖が出たのかロールプレイが抜けてたけどそこはまあいいか。

 

「ちょっと、私をどうするつもり!?」

 

(無言の腹パン)

 

 これでよし。気配なら探知出来るから人の居ないルートを通って窓から部屋に戻るべ。

 

 

 

「ただいまー」

 

『お帰りロトさん』

 

 ここまでサポシの技能を使って人に会わずに戻り、窓へは跳躍して入ってきた。

 

「こいつが例の奴」

 

「ああ、それが」

 

 おれのアイテムボックスの中にはシーフツールとして、魔力を通すと変形するミスリル製の針金があるので親指に結束バンド代わりに巻いてある。

 

「とりあえずこいつを尋問して、情報を吐かせたら〈人間種魅了〉と〈記憶操作〉で武技の情報を聞き出してから教わるべ。いあ、最初から魔法使えば尋問も必要無いか」

 

「そうですね。そうしますか。〈記憶操作〉・・・・・・。んー、このあたりか。魔力消費が半端じゃないな。よし、〈人間種魅了〉、起きろ」

 

「ん、んん・・・・・・」

 

 レベル100の異形種のマジックユーザーの魅了が決まったのか、敵意の無い表情でこちらを見ている。

 

「どうして私縛られてるの?」

 

 スラムでの出来事ごと忘れているららしい。

 

「ああ、今解くからそのまま腰掛けていてくれ」

 

「分かったわ」

 

「それで、お前の名前は?」

 

「クレマンティーヌよ。忘れちゃったの?」

 

 魅了は親しい友人のような感情を浮かべる。俺がそんなのに見えているんだろう。

 

「そうだったな。クレマンティーヌだったな。で、なんでお前は人を殺そうとしてたわけ?」

 

「殺すつもりは無かったわ。ちょっとこれを刺して、魅了状態にしようと思っただけ」

 

「その武器はお前が作ったのか?」

 

「んーん、特注よ。ミスリルにオリハルコンコートしてるの。すごいでしょ」

 

「ああ、凄いな。他に特徴とかあるか?」

 

「えーとね。魔法を一つ付与出来るってところかな?一度使うとまた補充しなきゃいけないんだけど」

 

「それはどんな魔法でもか?」

 

「私が使う範囲では魔法に不自由した事はなかったわね。って言っても帝国のフールーダみたいな奴はえーと・・・・・・第5位くらいまでだっけ? あのランクの魔法は試したことないわ」

 

 うむ、やはり俺の目に狂いは無かった。

 

「レアってほどじゃないけどこれを下地に一から作ったら面白いものが出来そうだと思わにいか? 場合によっては羊皮紙の消費もなくなりそうだし」

 

「ああ、羊皮紙ですか。今はまだ大丈夫ですけど、スキルも封入出来るなら切り札に「次元断切」とかロトさん用に〈嘆きの妖精の絶叫〉とか雑魚掃討用に使えるようになりますしね」

 

「うみゅ、ナザリックの鍛冶師に再現可能か検証させるのも良いべ。で、後はコイツから武技教わりたい」

 

「ああ、それもありましたね」

 

「後は・・・・・・なんかどっかの孫の監視とか言ってた気がするけど、お前は何たくらんでるわけ?」

 

「私の計画じゃないわよぅ。あの子が「どんなアイテムでも使用出来る」ってタレント持ってるみたいだったから、カジっちゃんの計画の足しになるんじゃないかって思っただけで」

 

「カジッチャンとは?」

 

「ズーラーノーンの幹部だっけ? まあ私も一応幹部なんだけど。ここの墓地でアンデッドの軍勢作る準備してるわよ」

 

「モモン・・・・・・やったな」

 

「ええ、やりましたね」

 

「おめでとうございます。モモンさん、ロトさん」

 

「これで一気に名声が上がるのであるな」

 

「マジかよ・・・・・・ブロントの野郎が女引っ掛けてきたと思ったら棚ぼたにも程があんだろ・・・・・・」

 

 がははーグッドなんだが?

 

「待て、慌てるな。して、クレマンティーヌ。そのカジッチャンとやらは何時頃計画を発動させるんだ?」

 

 モモンが鋭い指摘をする。確かに今すぐ発動とかだったら片手落ちだわな。

 

「んー、あの子が居ないからしばらくは無理かな。叡者の額冠は見せたから急かされるだろうけど、私が居ないと戦力ががくっと落ちてそこらのならともかく、あの子の誘拐は迂闊に出来なそうだし」

 

 これでこいつの使い道が決まった。

 

「モモン、こいつこのまま少しずつ〈記憶操作〉してナザリックの武技担当にしよう。一応他にも複数欲しいけど」

 

「そうですねロトさん。おい、クレマンティーヌ。お前は今困っていることは無いか?」

 

「んー、風花聖典に追われている事とかかな」

 

「よし、うちの拠点で匿ってやる。ついでに美味い飯も出るぞ。来るか?」

 

 六色聖典の事はむしろこっちが知りたい。ついでに監視に草を生やす奴を付けるけど。内藤とかカイエン殿とか。

 

「一応言っておくとお前より強いのはゴロゴロしているからな。多分ズーラーノーンとか言うのより安全だろ」

 

「ふぅん?ま、ズーラーノーンにはそこまで義理とか感じてないし、わかった。行くわ」

 

「よし、決定。それで、どうします?ロトさん」

 

「墓地には顔を出させない方向で。そっちはコイツを送った後かな。叡者の額冠とか言うのもこいつが持ってるみたいだし。・・・・・・持ってるよな?」

 

「うん、持ってる」

 

「一応レアっぽいしそれも研究させる方向で、夜が明ける前に終わらせとこう」

 

「そうですね。転移先は・・・・・・アンフィテアトルムでいいか」

 

「んだばナーベ」

 

「はっ」

 

「お前は叡者の額冠をデミウルゴスかアルベドに渡して来い。後街の現状を見てダークエルフのアウラとマーレは早めに慣れさせないといけにいと思った。手が空いているようだったら交代してもらって来い」

 

「畏まりました」

 

 とりあえず近場に悪の組織ってのがあるらしいので潰すか利用するかは見てから決めるか。




 やったねクレマン家族が出来たよ!

 追記

 修正しますた。やっぱり仕事前に投稿するとチェックミスが多くてダメだね。

 さらに追記

 ちょっと後のあたり加筆修正しますた。修正以前のだとどうもストーリーが進めにくいってのがあってだな。許せ(よし並感)

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